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第2章 確かなもの
第49話 紗耶香の狼狽
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「そんな・・・あたしは、確かに何も感じられなかったんだ・・・お前たちと一緒にいても」
紗耶香が、まるで幼子のように頭を振りながら、必死になって咲那の言葉を否定しようとする。
「感じなかったんじゃない・・・気が付けなかっただけだろう?そうじゃなきゃ、お前があたしらと長い間つるむなんてことはなかったはずだ・・・何よりも、お前自身が耐えられなかったんじゃないか?」
咲那が、少しずつ歩み寄ってきた。それに対し、紗耶香は後退るが、咲那の歩み寄りの方が早かった。
「紗耶香・・・あたしは、お前自身が思っているほど、相手に対して共感できないわけではないと思っている・・・」
「知ったような口をきくな、咲那!!」
今度は、紗耶香の方が激昂する番だった。
「高々2年程度、お前たちと一緒にいたくらいで、お前にあたしの何がわかるっていうのさ!」
「そうだな・・・高々2年程度だ」
紗耶香の鋭い視線を真正面から受け止めながら、ひるむことなく紗耶香を見返す咲那。
「だが、それでも、ある程度は人を見ることはできる。その上で言っている。お前は、共感できないんじゃない・・・そのことに気が付いていないだけだ」
「・・・!!」
パァァン!
今度は紗耶香が平手打ちをした。妹弟子である咲那に見透かされたようで、それを否定したかった。
「・・・ふん」
咲那は、頬を打たれながらも、かすかに笑みを浮かべた。
「ようやく、お前の本音が見えてきた気がするよ・・・紗耶香。お前は、あたしに怒りをぶつけてほしいとかぬかしてたけど、それは、あたしもおなじさ」
「・・・どういうことさ」
咲那は、打たれた頬を軽くさすりながら、
「人間、どれだけ親しい間柄だろうが、本音でやり合う時ってこうなるもんさ・・・お互いの感情をぶつけあって、相手に憤りをぶつける・・・自分の言い分を相手に聞いてもらいたくて、相手に手を上げることもあるだろう。そうしないと、分かり合えないことだってあるしな」
咲那は、ニカっと笑みを浮かべながら、
「どうだい、紗耶香。精一杯叫んで、あたしを張り飛ばして、少しはすっきりしたかい?お前があたしに怒ってほしいというなら、あたしもお前を怒らせてやるよ…そうして、お互いの心をぶつけ合うんだ。お前にとって、これが一番わかりやすいだろう?少なくとも、うわべだけの仲良しこよしなんてのよりも、よっぽどはっきりしてると思うぞ」
「咲那・・・」
紗耶香の瞳から、先ほどまでの激しい怒りの色はもはや消えていた。
「なるほどな・・・確かにお前の相手は、鏡香じゃあ無理だろうな。あいつは、あまりにも相手のことばかり考えすぎちまう。あたしと違って、元々優しいからな、あいつは」
鏡香のことを思い浮かべる。誰にでも優しく、いつも相手のことばかり気にする苦労人だった。元々世話焼きな性格もあるのだろう。咲那は、鏡香に対して、もっと自分も大事にしろと何度も言ってきた。
「紗耶香・・・さっきも言った通り、あたしはお前の恋人役になんてなれない。それこそ演技に過ぎないからだ。少なくとも、あたしは恋愛を演技でしたくない」
「・・・」
「ただ、お前が望むなら、いくらでも喧嘩相手になってやるよ。好きなだけあたしに思いをぶつけるといい。その代わり、鏡香には手を出すな・・・ああ、言い方が違うか。鏡香とは、今まで通りやってくれないか」
「何だよ、それ・・・あたしは、お前が・・・お前の関心そのものが、あたしから鏡香に向けられてしまうのがいやなんだよ。独占されたくないんだ」
咲那は、軽くため息をついた。こいつは、根本的に誤解している。
「あのなあ、紗耶香。あたしと鏡香が付き合ったとしても、別に鏡香に独占されるってわけじゃないんだぜ・・・恋愛は恋愛。確かに、今まで以上に鏡香に関心は向かうかもしれないが、それは独占なんかじゃない。お前との関係も、これから先もそんなに変わらないよ」
「・・・本当にそうか?」
どこか子供じみたような目で見つめ返してくる紗耶香に対して、咲那は微笑しながら、
「ああ、大丈夫だよ」
と、静かに答えた。
紗耶香が、まるで幼子のように頭を振りながら、必死になって咲那の言葉を否定しようとする。
「感じなかったんじゃない・・・気が付けなかっただけだろう?そうじゃなきゃ、お前があたしらと長い間つるむなんてことはなかったはずだ・・・何よりも、お前自身が耐えられなかったんじゃないか?」
咲那が、少しずつ歩み寄ってきた。それに対し、紗耶香は後退るが、咲那の歩み寄りの方が早かった。
「紗耶香・・・あたしは、お前自身が思っているほど、相手に対して共感できないわけではないと思っている・・・」
「知ったような口をきくな、咲那!!」
今度は、紗耶香の方が激昂する番だった。
「高々2年程度、お前たちと一緒にいたくらいで、お前にあたしの何がわかるっていうのさ!」
「そうだな・・・高々2年程度だ」
紗耶香の鋭い視線を真正面から受け止めながら、ひるむことなく紗耶香を見返す咲那。
「だが、それでも、ある程度は人を見ることはできる。その上で言っている。お前は、共感できないんじゃない・・・そのことに気が付いていないだけだ」
「・・・!!」
パァァン!
今度は紗耶香が平手打ちをした。妹弟子である咲那に見透かされたようで、それを否定したかった。
「・・・ふん」
咲那は、頬を打たれながらも、かすかに笑みを浮かべた。
「ようやく、お前の本音が見えてきた気がするよ・・・紗耶香。お前は、あたしに怒りをぶつけてほしいとかぬかしてたけど、それは、あたしもおなじさ」
「・・・どういうことさ」
咲那は、打たれた頬を軽くさすりながら、
「人間、どれだけ親しい間柄だろうが、本音でやり合う時ってこうなるもんさ・・・お互いの感情をぶつけあって、相手に憤りをぶつける・・・自分の言い分を相手に聞いてもらいたくて、相手に手を上げることもあるだろう。そうしないと、分かり合えないことだってあるしな」
咲那は、ニカっと笑みを浮かべながら、
「どうだい、紗耶香。精一杯叫んで、あたしを張り飛ばして、少しはすっきりしたかい?お前があたしに怒ってほしいというなら、あたしもお前を怒らせてやるよ…そうして、お互いの心をぶつけ合うんだ。お前にとって、これが一番わかりやすいだろう?少なくとも、うわべだけの仲良しこよしなんてのよりも、よっぽどはっきりしてると思うぞ」
「咲那・・・」
紗耶香の瞳から、先ほどまでの激しい怒りの色はもはや消えていた。
「なるほどな・・・確かにお前の相手は、鏡香じゃあ無理だろうな。あいつは、あまりにも相手のことばかり考えすぎちまう。あたしと違って、元々優しいからな、あいつは」
鏡香のことを思い浮かべる。誰にでも優しく、いつも相手のことばかり気にする苦労人だった。元々世話焼きな性格もあるのだろう。咲那は、鏡香に対して、もっと自分も大事にしろと何度も言ってきた。
「紗耶香・・・さっきも言った通り、あたしはお前の恋人役になんてなれない。それこそ演技に過ぎないからだ。少なくとも、あたしは恋愛を演技でしたくない」
「・・・」
「ただ、お前が望むなら、いくらでも喧嘩相手になってやるよ。好きなだけあたしに思いをぶつけるといい。その代わり、鏡香には手を出すな・・・ああ、言い方が違うか。鏡香とは、今まで通りやってくれないか」
「何だよ、それ・・・あたしは、お前が・・・お前の関心そのものが、あたしから鏡香に向けられてしまうのがいやなんだよ。独占されたくないんだ」
咲那は、軽くため息をついた。こいつは、根本的に誤解している。
「あのなあ、紗耶香。あたしと鏡香が付き合ったとしても、別に鏡香に独占されるってわけじゃないんだぜ・・・恋愛は恋愛。確かに、今まで以上に鏡香に関心は向かうかもしれないが、それは独占なんかじゃない。お前との関係も、これから先もそんなに変わらないよ」
「・・・本当にそうか?」
どこか子供じみたような目で見つめ返してくる紗耶香に対して、咲那は微笑しながら、
「ああ、大丈夫だよ」
と、静かに答えた。
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