Vicky!

大秦頼太

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第九場

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●第九場● 港町
   木の販売先を知る木の精。

黒豹   それではここでお別れだ。アタシはここからかすかな臭いを追って妖精を見つ
    けないといけないからね。じゃあね。
木の精  ありがとう。お元気で。なんだか色々な匂いがするなぁ。

   黒豹が去ると商人の娘が木の精に気がつく。

商人の娘 いらっしゃい。何か用かい? おや、お客さん海外の人かい? 面白い格好を
    してるね。ここは見ての通り世界中の木と言う木を扱っている材木商さ。どんな
    木をお探しだい?
木の精  木の精です。
商人の娘 そうかい。悪かったね。じゃあ、こっちは忙しいんで。
木の精  探してるんです。
商人の娘 なるほど、やっぱり海外の人なんだね。いいよ、言葉って言うのは難しいもん
    だ。よしきた。ゆっくりあんたの相手になろうじゃないか。
木の精  妹を探しているんです。妹は木で年齢が500年を過ぎています。
商人の娘 これは難解だ。いや、そうか。樹齢500年の木ってことだな。だとすると、
    そんなに難しくは無いよ。

   商人の娘、台帳を見て調べる。

商人の娘 ああ、あったよ。どうも一足違いで売れてしまったみたいだ。残念だったね。
木の精  どこに行ったんでしょう?
商人の娘 おっと、直談判しに行くのかい? 今頃はもう家の柱になってるかもしれない
    ぜ?
木の精  それでもかまいません。教えてください。
商人の娘 熱心な人だな。嫌いじゃないよ。
木の精  木の精です。
商人の娘 そんなに謙遜するなって。ええっと、購入者はマイエンフェルトのあたりに住
    んでいるみたいだな。そこから注文が来てたよ。ああ、マイエンフェルトはここ
    から南東の町だよ。向こうから馬車が出ているはずさ。
木の精  ありがとう。

   木の精、上手に歩いていく。

商人の娘 あれはどこの国の人だろうかなぁ。(別のところに客を見つける)はい、いらっ
    しゃい! 何をお探しだい? ここにはどんな木材でもあるよ!

   暗転。

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