7人の大人~たとえばこんな白雪姫~

大秦頼太

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第三場

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●第三場
   森の中にある山小屋。
   大きいが、ゴミが散乱していてとても人が住んでいるような状態ではない。
   真ん中に大きなテーブルがあるが、汚れた食器や骨などが、放置されている。
   どかどかと小屋の中に入ってくる7人の大人。姫は袋の中に入っている。

F  で、この後のことなんだが、
B  まずは晩飯を食べないとね。
A  その辺のものを拾って食ってろ。
F  じゃあ、まずはこのお譲ちゃんの身元を調べようじゃないか。
G  そうだね。

   袋から姫を出す。

姫  くさいくさいくさいくさい! こんなところにいたら死んじゃうわ!
C  うるさいな。ちょっと黙らせろ。
D  お前が黙らせろ。
E  お前が黙らせろ。
F  お前が黙らせろ。
G  お前が黙らせろ。
A  お前が黙らせろ。
B  お前が黙らせろ。
C  何で戻ってくるんだよ! 俺はいやだよ!
A  俺もいやだ。
D  俺もいやだ。
F  俺もいやだ。
E  俺もいやだ。
B  僕もいやだ。
G  俺もいやだ。
A  言い出した奴が、責任を持て。
C  お譲ちゃん、我慢しな。
姫  くさーい。(ぶんむくれ)
D  それで、おうちはどこだい?
姫  こんなくさいところじゃ、会話はしないわ。
A  あのなぁ。
C  よし、窓を開けろ。
E  お前が開けろ。
B  今忙しいから無理だよ。
F  窓くらい自分で開けろ。
D  窓くらい開けてやれよ。
姫  私が開けようか?。
A  お前は動くな。

   C、自分で窓を開けに行く。

C  これで大分ましになっただろ?
姫  ほんの少しね。
E  よし。で、お前は金持ちなのか?
姫  お金持ちよ。普段なら、あんたたちみたいな貧乏人とは口も聞かないけど、今日は
  仕方がないわ。特別にお話してあげる。
A  激しく腹立たしいな。親の顔が見てみたいもんだ。
D  こんな憎まれ口叩くから、捨てられたんじゃないのか?
姫  うるさい!(Dのすねを蹴り上げる)
D  ぎゃ!(うずくまる)
B  ねー、何もないよ。
D  このちび!
姫  私に何かあったら、あんたたちには金貨一枚も手に出来ないんだからね!
A  そんなこと言って、たいした家の子じゃなかったら、どうなるか分かってるんだろ
  うな? スープにして食っちまうぞ。
B  人間は食べたくないなぁ。
姫  あなたたちこそ、私の身分を知って、怖気づくんじゃないわよ?
F  もったいぶってないで、さっさとどこの家の子か言えよ。
E  お城の子とか言い出したりしてな。
姫  そうよ。少し離れてるけどお城が私の家よ。
D  馬鹿言うなよ。
F  そんなわけあるかい。
A  嘘をつくならもっとまともな嘘をつけ。
姫  嘘じゃないわ。
B  嘘じゃないよ。
他6 え?
B  だってあんな美味しいもの食べたことないもん。
E  なんだよぉ。
D  お前は黙ってろ。
A  証明するものは?
姫  ないわ。
F  じゃあダメだな。縛っておけ。

   D、姫を縛り上げる。

姫  ひどいわ! こんなの虐待よ! 児童相談所に訴えてやる!
D  地蔵双眼鏡ってなに?
F  知るか! 地蔵を見る双眼鏡だろ。
C  大人を騙すんじゃない。
姫  お前! 解きなさい!
G  嘘をついちゃいけないよ。
A  うるさいから猿轡もしとけ。

   C、姫の口に猿轡をする。

A  で、これからのことだが…。
E  どうする?
B  どうする?
F  どうしよう?
B  ご飯にしよう。
C  どうするかなぁ。
A  よし、(CとFに)お前とお前、俺と一緒に来い。
E  どうするの?
B  また狩りにいくの?
A  ちょっと町まで行って来る。
C  なるほど。
B  買い物だね。
F  そんな金ないよ。何か売るの?
A  お城のお姫様が本当に行方不明なら、町はきっと大騒ぎだ。俺たちはそれを調べに
  行くんだよ。
B  いいなぁ。
E  俺も町に行ってみたいなぁ。
A  他の連中は、そいつを見張ってろ。
C  逃がすんじゃねえぞ。

   A、C、F外に出て行く。

D  なぁ。
E  ん?
D  (Bを指差して)あいつとは一緒にされたくないんだが、流石に今日食うものが無
  いのもいやだよな。
E  そうだね。
G  何か取りに行く?
B  なになに?
D  晩飯のことだよ。
B  何食べるの?
E  お前は無しだよ。さっきなんか食ったろ。
B  えー。ずるくない?
G  なんか取りに行くの?
D  (Eの肩を叩く)こいつと俺でなんか取ってくるから、お前たち二人は、こいつを
  見張ってろ。
B  僕も行きたい。
D  あのなぁ、お前が来たら、
E  取ったそばから食べるからダメだろ。
B  そんなことしないよ。
D  信用できない。ここにいろ。
G  じゃあ、俺たちでアレの相手をするの?
D  晩飯無しはいやだろ? 見張ってたらなんかやるからよ。
B  うん。
E  じゃあ、頑張れ。
G  わかった。

   DとE、外に出て行く。

B  どうしよう。
G  どうしよう。

   姫、暴れる。

B  暴れてるね。
G  暴れてるね。

   姫、急におとなしくなる。

B  静かになった。
G  疲れたんだよ。泣いたり怒ったり忙しかったからな。
B  そうか、よかった。……でも、死んだりしてないかな?
G  え?
B  死んじゃったら、マズイよね。
G  怒られちゃうな。

   姫に近づいていくB、G。

B  大丈夫?

   姫、ぐったりして答えない。

G  これ、まずくないか?

   G、猿轡をはずし、姫の頬を軽く叩く。

G  大変だ。どうしよう。
B  きつく縛りすぎたんだよ。
G  そりゃ大変だ。解こう。
B  解こう。
G  うん。

   解いた途端に、走り出す姫。

B  生きてた。
G  よかった。
B  でも、逃げ出されたら困るね。
G  怒られちゃうね。
BG 捕まえよう!
B  おとなしくするんだ。
姫  いやよ!
G  もう縛らないから。
姫  信用できないわ!

   姫を捕まえようとする2人。華麗に逃れる姫に、息も絶え絶えの2人。

姫  じゃあね!

   外に出ようとする姫。

G  待て、今から外に出ると大変なことになるぞ!
B  道に迷うと、森の獣の餌になるよ。ここには狼も多いからね。グズリも出るし、あ
  ぶないよ。ここにいたほうが安全だよ。
姫  そ、それもそうね。
B  僕らも叱られるし、ここにいてくれよ。
姫  ……じゃあ、お前とお前、今から私の家来になりなさい。
G  え。
姫  いやなら出て行くわ。そうよ。道に迷うくらいたいしたことないもの。それでお前
  たちは、叱られればいいんだわ。
B  どうする?
G  家来はいやだなぁ。
B  でも、晩御飯抜きもいやだし。
G  とりあえず従っておく?
B  そうしようか。
姫  ブツブツ言ってないで、どっちにするの?
B  なります。
G  なります。
姫  じゃあ、まず名前を教えて。
B  名前?
G  名前って?
姫  お前たち、名前も知らないの?
B  まだ食べたことない。
姫  食べ物じゃないわ。お前たちどういう風に呼び合ってるの?
G  おい、とか、お前とか。
姫  不便じゃない?
B  あんまり考えたことがない。
G  だよねぇ。
姫  不便よ。
B  どうしてさ?
姫  (Bに)あなただけを呼ぶときにどうしたらいいのよ。
G  あー、そういうことか。食いしん坊とかかな。
姫  じゃあ、あなたは?
G  俺? 俺は……、
B  お人よし。
G  何だとこの野郎!
姫  ほら! 用事があるたびに喧嘩をしてたら、話が進まないわ。
BG 確かに。
B  そうは言ってもねぇ。
G  俺たちこの森に捨てられて、ここで長いこと暮らしてるけど、そんなに不便じゃな
  かったもんなぁ。
姫  信じられない。
B  じゃあ、お前はなんて言うんだ?
姫  スノウよ。スノウ・ホワイト。
G  相撲? 相撲ファイトかぁ、なんかどこかの国技っぽい名前だな。
B  あははは。
姫  スノウ! 雪のことをスノーって言うでしょ!
B  ああ、雪のことか。雪はスノウね。
G  雪にしてはずいぶんうるさい雪だな。
B  雪は食べても美味しくないからなぁ。冷たいし。
姫  こら! 家来の癖に主人の悪口を言わないの。
BG はいはい。
姫  んー、でもいざ名前を考えると、びしっとっ来るものがないわね。なんかいいのな
  い?
B  そんなこと言われてもなぁ
G  何でもいいの?
姫  いいわよ。
B  じゃあねぇ。ビーフ、ポーク、ラム、スペアリブ、サーロイン、わとん、ジンギス
  カン……。迷う~~。
姫  (Bに)お前はヘンリーね。
B  え? なんで?
姫  ぐずぐずしてるからよ。
G  あははは。
姫  お前はジョージ。
G  ええっ!
姫  あと何人いるんだっけ?
B  5人。
姫  5人か
G  みんなにも名前をつけるの?
姫  もちろん。名前がないからあなた達は争ってばかりなのよ。
B  なんてつけるの?
姫  一人ずつ見てつけるのは面倒だから、入ってきた順につけるわ。次に入ってきた人
  は、そうね……。
G  俺、ジョージか。
姫  決めた。次はスチュワート。その次が、エドガー、次がリチャード、次はハロルド、
  最後は、ロバート。
B  それが入ってきた順になるの?
姫  そうよ。ヘンリー。
B  おお、僕はヘンリー。
G  そうさ、ヘンリー。
B  ええと、お前は?
G  俺はジョージ。
姫  ヘンリー、ジョージ。二人にお願いがあるの。
G  何でも言ってくれたまえ。
B  そうそう。
姫  これから帰ってくる人たちを一人ずつ縛り上げて欲しいの。
B  え?
G  できるかな?
姫  できるわ。一人じゃ勝てなくても、二人でかかれば簡単でしょ?
B  そっか。
G  やってみる。
姫  お願いね。
B  あ、帰ってきたかも。
姫  ヘンリー、ジョージ。準備して。

   Dが入ってくる。

D  いやぁ、ちょっと冷えてきたぞ。冬が近いな。
BG おかえりスチュワート!

   B、GがDに襲い掛かる。

D  何が!
姫  はい。ロープ!

   姫、Gにロープを渡す。あっという間に縛られるD。

姫  さ、次よ。

   Eも中に入ってくる。

E  結構釣れるもんだね。
D  おい、気をつけろ!
BG おかえりエドガー!

   B、GがEに襲い掛かる。

E  なになに?

   同じように縛られるE。

D  気をつけろって言ったじゃねえか!
E  そんなもん俺に言ってるとは思わねえだろうが!
姫  よくやったわ、ヘンリー、ジョージ。
B  えへへ。
G  それほどでも。
E  お前ら、こんなことをしてただで済むと思うなよ。
B  ねね、今持って来た魚食べてもいい?
姫  ダメよ。まずは、部屋を片付けなくちゃ。
D  あいつらが戻ってきたら、ひどい目にあうぞ!
G  どうしよう。
姫  大丈夫よ、ジョージ。
D  何だよジョージって?
B  名前だよ。
E  何だ名前って?
G  俺らはあの子の家来になったのさ。
D  本気でそんなこと言ってるのか?
B  うん。家来になったら、美味しいものをたくさん食べさせてくれるんだって!
姫  そうよ。すぐじゃないけど、約束は守るわ。
E  そうか。まんまと丸め込まれたってわけか。
D  どこの誰かもはっきりしないのに。
姫  さあ、ヘンリーとジョージ、ここを掃除して。
B  掃除?
G  どうやって?
姫  え? したことないの?
B  うん。
G  ないなぁ。
姫  困ったわね。私もいつも見てるだけだったから……。

   部屋を見回す姫。

姫  いいわ。今日は特別に私も手伝ってあげる。まずは邪魔なものや汚れたものを
  外に出しましょう。
G  邪魔なものや汚れたもの。

   BG、DEを見る。

DE なんだよ。
B  スチュワートとエドガーも?
姫  二人は中において置いていいわ。外に出したら風邪引いちゃうもの。流石にそれは
  可愛そうだわ。
E  あ、優しい。
B  わかった。
D  なぁ、おい。そのスチュワーデスの江戸川ってのは何だ?
G  (Dに)お前がスチュワートで、(Eに)お前がエドガー。
E  なんで?
D  勝手に決めるなよ。
E  何で俺がエドガーなんだよ。
姫  入ってきた順番よ。
D  スチュワートなんて、舌噛みそうだ。
姫  自分の名前なんて自分じゃ呼ばないからいいじゃない。
D  ああ、そうか。
姫  で、スチュワートとエドガーに提案があるんだけど?
E  何だよ。
姫  家来になるなら、縄をほどいて自由にして上げるし、晩御飯を食べさせてあげるけ
  ど、どうする?
D  断ったら?
姫  名前もご飯も無し。

   DとEコソコソ話。

E  どうする?
D  外の3人が帰ってくるまでの辛抱だ。こういうときは強い方に付けばいいんだ。
E  よし。
D  わかった。お前の家来になる。
E  家来になる。
D  ところでお前は、名前なんていうんだよ。
G  相撲だってさ。相撲ファイト。
姫  スノウよ! スノウ・ホワイト!

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