人魚奇譚CLARISSA

大秦頼太

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SIRENA

第十一場

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●第十場●
   海の底。
   クラリッサ、ヨハンの卵に会いに来る。
   イルカが入りそうなくらいかなり大きくなっており内側が光っている。
   クラリッサの手には猛毒の入った瓶。

クラリッサ こんなに大きくなって……。この大きさならきっとクジラの赤ちゃんね。ヨハン。あなたとまた話がしたかった。でも、もう無理ね。私は人魚であなたはクジラ。あなたがいくら長生きでもずっと一緒にはいられないし、一緒に育った子どもの頃からの記憶ももうないのよ。それなのに生き返って何の意味があるの? ヨハン、私を許してくれる? いつもゴメンね。私が人魚になりたいだなんて思ったからこんな事になったのよね。

   クラリッサ、猛毒の瓶を持って立ち去る。

   暗転。

 
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