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冬のあほうつかい
冬のあほうつかい 22
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22
シミュラは四階にたどり着いた時、なぜか違和感を覚えた。この迷宮に直接足を運んだことはない。いくら迷宮の主の娘だとはいえ小さな子供が迷宮に来ることはない。迷宮は遊び場ではない。主の娘でも遠慮なく魔物は襲ってくることもあるのだ。シミュラが迷宮の仕組みを知っているのはかつて父に最深部の一室で観せてもらった記憶があるからだった。それがこの四階はその記憶と違っている気がしたのだ。先に進むとその理由がわかった。
大型犬ほどの大きさのある蟻が目の前に出てきた時、シミュラは思わず声が出てしまった。
「違う」
シミュラの声をマリが聞いていた。
「違う?」
「何が違うんじゃ?」
ニコデムスは依然魔法を使う気配がない。最初の蟻の相手はグスタフがしていた。大きな丸盾が蟻の顎に食いつかれ少しずつ歪んでいく。体を噛みつかれたらただでは済まない。盾をずらして金棒を叩き込むが蟻はめげた感じがしなかった。丸盾に食いついたまま爪でグスタフを引っ掻こうとする。イラリが脇から蟻の胸と腹の結合部を幅広剣で両断する。それでもまだ蟻は動き続けている。そうこうする間に二匹目三匹目と表れ出てくる。
「こりゃまずい」
ニコデムスが後方へ下がっていく。
狼がシミュラを見る。迷っているシミュラを見続ける。答えを出すのが遅れている。気持ちは焦るばかりだった。
「グスタフ! 上に打ち出せ!」
イラリの声を聞いてグスタフは蟻を叩き潰すのではなく下からすくい上げるように攻撃方法を変えた。そうしてひっくり返った蟻に向かってイラリが駆け寄っていく。
イラリは幅広の剣を手にとって蟻の触覚や脚を切り飛ばしていく。関節部分に上手く当てることで両断することが出来た。それを見てシミュラもオオカミたちに指示を出す。二頭の狼は協力しあって一匹の蟻の脚や触覚を刈り取っていく。
シミュラが感じた違和感は虫の種類が違ったことだった。
「ここのボスは大きな蜘蛛だと聞いていたのよ。だから、出てくる途中で出てくる魔物も蜘蛛だって思っていて焦ってしまったの」
「魔物の配置をやり直すには相当なコストがかかると聞いたがの?」
「はい。それに必要な資材を節約するには魔物の種を揃えるのだと師から教わりました」
本当は父親から教わったのだったが。
「ほおほお、よく学んでおるな。お嬢さんはこの迷宮が欲しいのかな?」
ニコデムスがシミュラを見上げて聞いた。
「いえ、ここで知りたいことがあったので来ただけです」
「爺さん! 魔法!」
マリが怒鳴った。蟻が奥からどんどんやってくるのが見えた。一体一体倒している場合ではないようだ。ニコデムスは渋々身の丈を超える杖を縦に構えてその先をくるくると頭の上で回して魔法を唱え始める。
「良いぞ下がれ!」
ニコデムスの合図でイラリもグスタフも下がり、シミュラも二頭を下げる。
「風刃の嵐(ウインドストーム)!」
風の刃が動く時、風景が少し歪んで見える。その歪んだ空気が刃になって蟻たちの体を切り裂いていく。十数体が一度にバラバラになって地面の上に転がった。
シミュラは四階にたどり着いた時、なぜか違和感を覚えた。この迷宮に直接足を運んだことはない。いくら迷宮の主の娘だとはいえ小さな子供が迷宮に来ることはない。迷宮は遊び場ではない。主の娘でも遠慮なく魔物は襲ってくることもあるのだ。シミュラが迷宮の仕組みを知っているのはかつて父に最深部の一室で観せてもらった記憶があるからだった。それがこの四階はその記憶と違っている気がしたのだ。先に進むとその理由がわかった。
大型犬ほどの大きさのある蟻が目の前に出てきた時、シミュラは思わず声が出てしまった。
「違う」
シミュラの声をマリが聞いていた。
「違う?」
「何が違うんじゃ?」
ニコデムスは依然魔法を使う気配がない。最初の蟻の相手はグスタフがしていた。大きな丸盾が蟻の顎に食いつかれ少しずつ歪んでいく。体を噛みつかれたらただでは済まない。盾をずらして金棒を叩き込むが蟻はめげた感じがしなかった。丸盾に食いついたまま爪でグスタフを引っ掻こうとする。イラリが脇から蟻の胸と腹の結合部を幅広剣で両断する。それでもまだ蟻は動き続けている。そうこうする間に二匹目三匹目と表れ出てくる。
「こりゃまずい」
ニコデムスが後方へ下がっていく。
狼がシミュラを見る。迷っているシミュラを見続ける。答えを出すのが遅れている。気持ちは焦るばかりだった。
「グスタフ! 上に打ち出せ!」
イラリの声を聞いてグスタフは蟻を叩き潰すのではなく下からすくい上げるように攻撃方法を変えた。そうしてひっくり返った蟻に向かってイラリが駆け寄っていく。
イラリは幅広の剣を手にとって蟻の触覚や脚を切り飛ばしていく。関節部分に上手く当てることで両断することが出来た。それを見てシミュラもオオカミたちに指示を出す。二頭の狼は協力しあって一匹の蟻の脚や触覚を刈り取っていく。
シミュラが感じた違和感は虫の種類が違ったことだった。
「ここのボスは大きな蜘蛛だと聞いていたのよ。だから、出てくる途中で出てくる魔物も蜘蛛だって思っていて焦ってしまったの」
「魔物の配置をやり直すには相当なコストがかかると聞いたがの?」
「はい。それに必要な資材を節約するには魔物の種を揃えるのだと師から教わりました」
本当は父親から教わったのだったが。
「ほおほお、よく学んでおるな。お嬢さんはこの迷宮が欲しいのかな?」
ニコデムスがシミュラを見上げて聞いた。
「いえ、ここで知りたいことがあったので来ただけです」
「爺さん! 魔法!」
マリが怒鳴った。蟻が奥からどんどんやってくるのが見えた。一体一体倒している場合ではないようだ。ニコデムスは渋々身の丈を超える杖を縦に構えてその先をくるくると頭の上で回して魔法を唱え始める。
「良いぞ下がれ!」
ニコデムスの合図でイラリもグスタフも下がり、シミュラも二頭を下げる。
「風刃の嵐(ウインドストーム)!」
風の刃が動く時、風景が少し歪んで見える。その歪んだ空気が刃になって蟻たちの体を切り裂いていく。十数体が一度にバラバラになって地面の上に転がった。
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