もふもふと心紡ぐ物語

ゆう

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もふその①

もふとある日の最高級クッキーの密輸作戦

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公爵の執務室の扉は、いつも通り重厚で威厳があった。
ソフィアは、お父様に頼まれた書類を届けに来たものの、少しだけ緊張していた。

​「お父様、ソフィアです。書類をお持ちしました」

​扉の向こうから「入れ」という声が聞こえ、ソフィアはそっと扉を開けた。
お父様は机に座り、難しい顔で書類を読んでいた。
しかし、ソフィアはすぐに異変に気づいた。

​(なんか…甘い匂いがする?)

​それは、公爵執務室にはあるまじき、甘く香ばしい匂いだった。
ソフィアは不思議に思いながらも、机の上の書類を置いた。

​その時、ソフィアの足元にいたスノーが、くんくんと鼻を鳴らし始める。彼は匂いの元を探すように、公爵の机の周りをぐるぐると回った。

​「スノー、何をしているの?」

​ソフィアが声をかけると、スノーは公爵の机の引き出しの前に立ち止まり、「もふん!」と力強く鳴いた。
その小さな体で、一生懸命に引き出しを指し示しているようだった。
​公爵は、はっと顔を上げ、焦ったように言った。

「何でもない!その引き出しは開けるな!」

​公爵の慌てぶりに、ソフィアは好奇心をくすぐられた。
もしかして、お父様は秘密のお菓子を隠しているのでは?

​「お父様、もしかして、何か隠していますわね?」

​ソフィアがそう言うと、公爵は顔を赤くし、しどろもどろになった。

「い、いや、これは…」

​スノーは、そんな公爵をよそに、小さな前足で引き出しをカリカリと引っ掻く。
そして、諦めが悪い子どもがするように、ちいさな体をぴょこんと揺らし、もう一度「もふん!」と鳴いた。
公爵は観念し、深くため息をついた。

​「…好きにするがいい」

​ソフィアは恐る恐る引き出しを開けた。すると、中から現れたのは、小さな袋に詰められた、最高級のバタークッキーだった。
​ソフィアは目を丸くし、公爵を振り返った。

「お父様…まさか…」

​公爵はバツが悪そうに顔をそむける。
「お前たちが来た時に、驚かせてやろうと思ってな…」

​ソフィアは、その言葉に思わず笑みをこぼした。そして、公爵の心遣いに胸を熱くしながら、クッキーを一つ取り出した。

​「お父様、これ、スノーと半分こしましょう。もふもふは、最強の癒やしですものね」

​ソフィアの言葉に、公爵は少し照れながらも頷いた。こうして、公爵の「クッキー密輸作戦」は、あっけなく終わりを告げたのだった。
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