もふもふと心紡ぐ物語

ゆう

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もふその②

騎士団長の手記:完璧な騎士の、人間らしい心

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​私は、王宮騎士団長アロン・レオンハルト。

​​私は、王弟であり、王宮騎士団長アロン・レオンハルト。

​私は、長年、この国と王室を守るために、己のすべてを捧げてきた。
完璧な騎士であること、それが私の信念であり、誇りだった。完璧な剣技、完璧な判断力、そして、いかなる時も感情を表に出さないこと。それが、私がレイモンドに求めていたすべてだった。
彼は、私の期待に応える完璧な騎士だった。そして、私は、そんな彼を、弟のように思っていた。

​公爵の執務室を後にした私は、ただただ呆然としていた。
王国の宰相であり、常に冷静沈着なあの公爵が、私に頭を下げたのだ。そして、その理由は、彼の娘と、私の右腕であるレイモンドのことであった。

​(レイモンド…馬の心の声が聞こえる…?そして、ソフィア公爵令嬢は、その痛みを癒やすことができる…?)

​私は、あの日の馬小屋での出来事を思い返していた。
怪我で苦しむ愛馬の悲痛な鳴き声に、私自身も苛立ちと無力感を覚えていた。

しかし、レイモンドは、馬に寄り添い、何かを囁いているようだった。そして、ソフィア公爵令嬢は、信じがたい奇跡を起こしてみせた。

​あのとき、レイモンドは言った。

「この馬も、大切にされるべき存在だ…」と。 

​私は、彼の言葉の意味を、今、ようやく理解した。
彼は、馬の心の声を読み取り、その馬が抱える孤独と絶望を知ったのだ。
そして、ソフィア公爵令嬢は、その馬の心を癒やした。

​私は、レイモンドのことを、完璧な騎士だと信じていた。
彼の剣の腕は、誰よりも優れている。
彼の判断力は、誰よりも冷静だ。だが、彼の心は、誰よりも温かかったのだ。

​私は、彼に「氷の騎士」というあだ名をつけた。感情を表に出さない彼が、騎士として完璧だと、そう信じていたからだ。
しかし、彼は、その完璧な仮面の下で、一人孤独に苦しんでいたのだろう。

​完璧であることは、時に、人から孤立させる。完璧な人間は、不完全な人間には理解されない。レイモンドも、そして、あの公爵令嬢も、きっとそうだったのだろう。

​私は、自身の過ちに気づき、深く反省した。私は、完璧な騎士を求めるあまり、彼の人間らしい心を理解しようとすらしなかった。

​私は、レイモンドとソフィア公爵令嬢の二人を、陰ながら見守ることを決意した。彼らは、完璧な騎士でも、完璧な令嬢でもない。しかし、彼らは、誰よりも人間らしい、温かい心を持った、特別な二人だと記す。
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