もふもふと心紡ぐ物語

ゆう

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もふその③

もふと森の守護者、もう一つの奇跡

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ソフィアとレイモンドの旅は、静かで穏やかなものだった。
王都を離れ、二人は馬車に揺られながら、見慣れない景色を眺めていた。
ソフィアは窓の外に広がる田園風景に目を輝かせ、レイモンドはそんな彼女の隣で、時折、地図を広げては、先を急いでいた。

「レイモンド様、ここは何という場所ですの？」

ソフィアが尋ねると、レイモンドは地図を指差しながら答えた。

「ソフィア嬢、ここは『風渡りの丘』です。この丘を越えれば、伝説の森への入り口が見えてきます」

二人は、馬車を降り、丘の頂上へと歩いていく。風が、ソフィアの髪を優しく揺らす。彼女の腕の中では、スノーが、満足そうに「もふん！」と鳴いた。

丘の頂上からは、果てしなく広がる深い森が見えた。森は、昼なお暗く、どこからともなく不気味な獣の声が聞こえてくる。

「レイモンド様、この森は…なんだか、少し怖いですわね」

ソフィアが、レイモンドの騎士服の裾をそっと掴んだ。彼女の腕の中では、スノーが、いつもとは違う緊張した面持ちで、あたりを警戒していた。

その時、レイモンドがぴたりと足を止めた。
彼の瞳が、森の奥をじっと見つめている。

「ソフィア嬢…この森の心の声が聞こえます。この森は…ひどく悲しんでいます」

レイモンドの言葉に、ソフィアは首をかしげた。

「森が…悲しんでいる？」

その瞬間、森の奥から、うめき声のような音が聞こえてきた。
二人が声のする方へ向かうと、そこには、巨大な木が横たわっていた。
その幹には、大きな斧の傷が深く刻まれており、木は、まるで血を流しているかのように、樹液をにじませていた。

その木の根元に、一匹の動物がうずくまっていた。それは、まるで木そのものが命を得たかのような、鹿のような姿の生き物だった。
その体長はソフィアの腰ほどしかなく、木の葉でできた毛皮を持つその姿は、まるで苔むした小さな彫刻のようだった。
その体からは、樹木の香りが漂い、その瞳は、深い悲しみと絶望に満ちていた。

「この子は…この木の守護者です。木が傷つけられたことで、この子も…ひどく傷ついているようです」

レイモンドは、その動物の心の声を聞き取ると、苦しそうに顔を歪めた。
ソフィアは、その姿を見て、いてもたってもいられなくなり、その動物にゆっくりと近づいた。

「大丈夫よ…わたくしが、あなたの悲しみを癒やしてあげるから」　

ソフィアがそっとその動物に手を触れると、彼女の指先から、蛍のような光の粒が放たれた。光の粒は、動物の体を優しく包み込み、その傷を癒やしていく。
動物は、安堵したように体をソフィアに預け、その瞳に、再び穏やかな光が宿った。

「ソフィア嬢…この子は、あなたに感謝しています」

レイモンドの言葉に、ソフィアは嬉しそうに微笑んだ。
そして、その動物は、感謝の印として、自らの角から、小さな木の枝を一本、ソフィアに差し出した。

ソフィアは、その枝を大事そうに受け取ると、優しく動物の頭を撫でた。

「わたくし…この子を、一緒に連れて行きたいですわ！この子には…**『リーフ』**と、名前をつけますわ。葉っぱの毛皮を持つ、森の守護者ですもの」

ソフィアの言葉に、リーフは、嬉しそうに首を振った。

こうして、ソフィアとレイモンドの旅に、新たな「もふもふ」が加わったのだった。

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