もふもふと心紡ぐ物語

ゆう

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もふその③

もふと王太子の報復

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​王宮の執務室で、公爵と王弟アロンは安堵の息をついていた。
彼らが仕掛けた綿密な計画は、順調に進んでいた。王太子の注意は、彼らが意図的に流した、隣国との貿易協定に関する偽情報に釘付けになっていた。

​「これで、しばらくは二人の旅路は安泰だろう」

​公爵がそう呟くと、アロンも静かに頷いた。しかし、その安堵は、一通の手紙によって、一瞬にして打ち砕かれた。

​それは、王太子からの呼び出し状だった。公爵とアロンは、嫌な予感を覚えながら、王太子の執務室へと向かった。

​王太子の執務室には、既に王国の宰相である公爵、王弟アロン、そして王子の側近たちが集まっていた。
王子の顔には、いつもの傲慢な笑みが浮かんでいた。しかし、その瞳の奥には、冷たい怒りが宿っていた。

​「叔父上、そして公爵。お二人が、私の知らないところで、私の元婚約者と、私の騎士団の右腕を庇っていたと聞きましたが、本当ですか?」

​王子の言葉に、公爵とアロンは顔を見合わせた。

​(なぜ…なぜバレた?我々の計画は問題がなかったはず…)

​「何を言っているのか、わたくしには分かりかねます」

​公爵は、あくまで平静を装って答えた。しかし、王子の次の言葉で、彼の顔から血の気が引いた。

​「ほう…では、この報告書は、何ですか?」

​王太子は、一枚の報告書を、公爵の前に投げつけた。

それは、レイモンドとソフィアの旅のルート、そして、二人が旅の途中で森の守護者を助けた、それ以前にも迷子の犬を助けたという、詳細な情報が記されたものだった。

​「どうやら、お二人が密かに派遣した私兵や、騎士団の兵士たちが、私の追手を撒こうと動いていたようですね。そのおかげで、彼らはお二人の行動を把握することができたのです」

​王太子の言葉に、公爵とアロンは愕然とした。
彼らの想定を遥かに超える、王太子の周到な罠だった。

​「ソフィアは、私の婚約者として、この国の未来を担うべき存在だった。そしてレイモンドは、私の優秀な騎士として、この国の発展に尽くすべき存在だった。二人が、私の許可なく旅に出るなど、言語道断です」

​王子の声は、冷たく、そして激しい怒りに満ちていた。

​「二人の能力は、この国のために使われるべきだ。私が、直接、二人を連れ戻しに行きます。そして、二人の能力を、この王国の繁栄のために、存分に利用させてもらう」

​王太子は、そう宣言すると、執務室の扉を開け、そのまま出て行った。

​公爵とアロンは、ただただ呆然と、その場に立ち尽くしていた。

彼らが、愛する者たちを守るために築いた密約は、たった一人の王子の、冷徹な策略によって、無残にも打ち砕かれてしまったのだ。
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