もふもふと心紡ぐ物語

ゆう

文字の大きさ
33 / 45
もうその④

もふと能力が織りなす奇跡

しおりを挟む
ソフィアとレイモンドは、公爵の私兵に守られながら、伝説の魔獣の故郷へと続く道を順調に進んでいた。

彼らがたどり着いたのは、一面が荒れ果てた、不毛な大地だった。乾いた風が吹き荒れ、砂が舞い上がる。かつては豊かな森だったのだろうか、黒く焦げた木々が、まるで亡霊のように立ち並んでいる。

​「レイモンド様…この土地は…ひどく悲しい声をあげています」

​ソフィアが、その土地の痛みに、思わず顔をしかめた。彼女の癒しの力が、大地から発せられる絶望の心を感じ取っていた。
​レイモンドは静かに目を閉じ、大地の心の声を聞き取った。

​「ソフィア嬢…この土地は、深い悲しみに包まれています。かつて、ここには巨大な炎の魔獣が住んでいたようです。その魔獣は、孤独と怒りから、この土地の生命をすべて焼き尽くしてしまった…」

​レイモンドの言葉に、ソフィアは息をのんだ。その魔獣の怒りと悲しみが、今もなおこの大地に残り、癒されることなく苦しんでいる。

​「わたくし…この大地を、癒やしたいですわ!」

​ソフィアは、そう言うと、馬車を降り、ひび割れた大地に手を触れた。
彼女の指先から、月光の欠片のような光の粒が放たれ、大地に吸い込まれていく。しかし、大地の絶望は深く、ソフィアの力だけでは、大地を癒やすことができなかった。

​ソフィアは、自分の力の限界を感じ、悔しさに唇を噛みしめた。 

​「ソフィア嬢…」

​レイモンドは、ソフィアの苦しむ心の声を聞き、彼女の隣に寄り添いひざまずいた。そして、枯れた大地に、彼の手を重ねた。

​「私の力は、心の声を聞くことしかできない。しかし…もしかしたら、あなた様の光と、この大地の心が、私の心を通り抜けて、一つになるかもしれません」

​レイモンドは、そう言うと、ソフィアの手を優しく握りしめ、二人の手を大地に重ねた。

​その瞬間、レイモンドの心の中で、奇跡が起こった。
ソフィアの癒しの光と、大地の悲痛な心の声が、レイモンドの心を通り抜けて、一つになったのだ。

​レイモンドは、大地の悲しみをすべて感じ取った。そして、ソフィアの光を、その悲しみに満ちた心へと流し込んだ。

​すると、二人の手から、夜空の星々を凝縮したかのような、力強い黄金色の光が放たれた。光は、大地を優しく包み込み、乾いた土に水が染み込むように、生命の息吹が蘇っていく。
やがて、光が消えると、そこには、新芽を芽吹かせた若木が、いくつも育っていた。

そして、その中心には、一匹の小さな炎の鳥が、安らかな表情で眠りについていた。

​その鳥は、手のひらに乗るほどの大きさで、燃えるような赤い羽毛は、まるで宝石のように輝いている。
 眠っているにもかかわらず、その体からは、まるで暖炉のような温かい熱が伝わってくる。

​ソフィアは、その鳥にそっと手を差し出した。鳥は、目を開けると、小さな頭をソフィアの指にこすりつけ、 可愛らしい声で「ピィ…」と鳴いた。
その鳴き声は、まるで小さな鈴の音のように澄んでいた。

​ソフィアとレイモンドは、顔を見合わせ、静かに微笑んだ。

二人の能力が組み合わさることで、彼らは、大地の絶望を癒やし、新たな命を蘇らせるという、奇跡を起こしたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております

鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。 彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う! 「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」 「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」 貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。 それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム! そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。 ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。 婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。 そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!? 「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」 復讐も愛憎劇も不要! ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!? 優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

婚約破棄は了承済みですので、慰謝料だけ置いていってください

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢アナスタシア・オルステッドは、第三王子アレンの婚約者だった。 しかし、アレンは没落貴族の令嬢カリーナと密かに関係を持っていたことが発覚し、彼女を愛していると宣言。アナスタシアとの婚約破棄を告げるが── 「わかりました。でも、それには及びません。すでに婚約は破棄されております」 なんとアナスタシアは、事前に国王へ婚約破棄を申し出ており、すでに了承されていたのだ。 さらに、慰謝料もしっかりと請求済み。 「どうぞご自由に、カリーナ様とご婚約なさってください。でも、慰謝料のお支払いはお忘れなく」 驚愕するアレンを後にし、悠々と去るアナスタシア。 ところが数カ月後、生活に困窮したアレンが、再び彼女のもとへ婚約のやり直しを申し出る。 「呆れたお方ですね。そんな都合のいい話、お受けするわけがないでしょう?」 かつての婚約者の末路に興味もなく、アナスタシアは公爵家の跡取りとして堂々と日々を過ごす。 しかし、王国には彼女を取り巻く新たな陰謀の影が忍び寄っていた。 暗躍する謎の勢力、消える手紙、そして不審な襲撃──。 そんな中、王国軍の若きエリート将校ガブリエルと出会い、アナスタシアは自らの運命に立ち向かう決意を固める。 「私はもう、誰かに振り回されるつもりはありません。この王国の未来も、私自身の未来も、私の手で切り拓きます」 婚約破棄を経て、さらに強く、賢くなった公爵令嬢の痛快ざまぁストーリー! 自らの誇りを貫き、王国を揺るがす陰謀を暴く彼女の華麗なる活躍をお楽しみください。

本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**

鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、 突如として現れた「本物の聖女」。 空中浮遊、瞬間移動、念動力―― 奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、 王太子はその力に目を奪われる。 その結果、 王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、 一方的に婚約を破棄されてしまった。 だが、聖女の力は―― ・空中浮遊は、地上三十センチ ・瞬間移動は、秒速一メートル ・念動力は、手で持てる重さまで 派手ではあるが、実用性は乏しい。 聖女の力は、見世物レベル。 少なくとも、誰もがそう判断していた。 それでも人々は喝采し、 権威は少女を縛り、 「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。 そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、 ある違和感に気づき始める。 ――奇跡よりも、奪われているものがあることに。 派手な復讐はない。 怒鳴り返しもしない。 けれど静かに、確実に、 “正しさ”は明らかになっていく。 見世物にされた奇跡と、 尊厳を取り戻す少女たちの物語。 ---

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

処理中です...