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第十八話 休息日
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起き抜けからまた目が腫れて重たく、二日続けて号泣してしまったとオリンドは上体だけ起こしたまま苦笑する。
幸せな時って泣くの止められないんだなあ。
膝を立てて引き寄せた掛布に顎を乗せ、ぽやぽやと考えているとノックの音が聞こえてきた。柔らかな朝の挨拶が木肌を通して届けられる。
「おはようございます、オリンド」
昨日と同じく入りますよと声をかけられ、返事をするとエウフェリオが入ってきた。
「お加減いかがですか?」
ベッドでまごついていたことをどう取られたものか、少し屈み込んで覗き込まれ、朝日に照らされてやや赤味を帯びた蜂蜜色にも見えるアイスシルバーの髪が視界に降り注ぐ。夢のような光景に脳がくらくらした。
あれ、待って俺これから毎日起き抜けにこれ見るの?
そのうち脳貧血を起こすのではないかしら。目元に手を当てると、その少し上にエウフェリオの手が重ねられた。
「熱は無いですね。ひょっとして気分が優れないですか?」
「えっ? ううん。気分は最高」
「……なら、良いのですけど。無理はしないでくださいね?」
昨日のあの騒ぎがやはり効いてきているのではないだろうか。心配気に見てくるエウフェリオに、オリンドは慌てて首を振った。
「や、だ、大丈夫! ほんとに大丈夫! エウフェリオが夢みたいに綺麗でぼえってしただけだから!」
ほらこの通り。とオリンドは腕を上げ曲げて胸を張ってみせた。が、エウフェリオはそれどころではない。赤くなって倒れるのを堪え深呼吸をしてから、一拍の後。
「っあ、朝ごはんに、しましょうかっ」
「えっ? うん」
彼にしては珍しく性急な口調だなあ。と、首を傾げてから身支度を整えたオリンドは、なんとなくふらふらとした足取りの後をついて一階へ向かった。
「おはようリンちゃん。あららあ、またお目々腫らして。いらっしゃい、治したげる」
「お、おは……うあ、あり、ありがとう……」
「おう、オリンド。あんまり泣いてたんならもうちょい寝てても良いんだぞ」
「あ、お、おはよう……だ、大丈夫」
「おっはよー! オリンド! ベルぅ! 飯なにー!?」
「あう、あ、おは……」
相変わらず賑やかな食堂だ。以前なら苦手とする雰囲気だったが、今はこの仲間に入れたのだと思うと、調子の合わせ方はまだよくわからないけれど、嬉しい。
「……ふへ……」
思わず笑みを溢せば四人も笑い返してくれる。朝っぱらから胸がいっぱいで動悸がしてしまいそうだ。
「ところでねえアルちゃんリッちゃん。リンちゃんの鍛錬は今日からするの?」
「あー! それ! それどうしよう? オリンド体調どう? 昨日のあれこれで疲れてるなら明日からにするか? 帰り道とかほんとうんざりしたっていうか気がささくれたっていうかぐったりしたっていうか俺が休みたいっていうか」
「はいはい、最後が本音ですね。明日からで良いんじゃないですか?」
「ふっは。うん、俺も明日からで大丈夫」
「ありがとうオリンドぉおおおお! ……でっ、デザートいる? 俺の分食う?」
「あっはは、いい、大丈夫だから自分の分食べて」
それ確実に無理してる。アレグの気の遣いかたがいかにも食いしん坊で、声を上げて笑った。そうするとみんなが嬉しそうに笑うことが、本当に幸せで気分も軽くなる。
「うっし。そしたら俺の防護術も明日以降にするか。……魔法の勉強会とやらはするのか?」
「えっ、どうしようかしら。あたしとしては早くリンちゃんの循環法を体感してみたい欲望が渦巻いてんだけどそれさえ叶えば勉強会は後でもいいわ」
「素直ですか。……どうしますオリンド。とりあえずでも今すぐウェンシェスランに循環法を披露すれば一日お休みになりそうですけど。そうなれば私としては貴方の髪を整えて差し上げたい」
晴れて恋人になれたからには沢山スキンシップを取りたいと、前々から目一杯触りたくて仕方なかった黒髪を見詰めてエウフェリオは提案した。
「えっ、じゃあすぐ循環やる」
もちろんオリンドに否やのあるはずも無い。
「フェリのこと大好きかよ!!」
アレグが楽し気に突っ込みを入れればウェンシェスランもイドリックも追随して口笛を鳴らす。咳払いをして三人を諌めるエウフェリオの声もまんざらでは無さそうで、茹で上がった顔を覆った両手の下でオリンドはくしゃくしゃと笑った。
「ふへぁ……頬っぺた痛い」
「おや、どうされました」
朝食の後で井戸付きの裏庭へ出る扉の設けられた、理容室として使用している部屋に通されたオリンドが頬を包んで言うことに、すわ虫歯かとエウフェリオは口元を覗き込みかけた。
「笑いすぎて、この辺がびきびきする」
「ああ、……ふふっ、頬っぺたの筋肉痛ですか」
これまであまり笑った例しが無いのだろう。思い至ればなんとも悲しいけれど、思い切り笑えたことの証左でもある。せっかくオリンドが笑っているのだからと、エウフェリオも喜ぶことにして、頬を覆う手の平の上に自分の手を重ねると、うりうりと捏ねた。
「あっははは、くすぐったい」
「ふふふ。……ああ、お髭はどうしますか? 残すなら顎が良いかと思うのですけど」
「えあ、これ、剃れてないだけだから剃刀借りられるなら剃りたい……」
「わかりました」
では髪を洗って香油を馴染ませる間に髭を剃って……。などと何だか貴族がやるような内容が聞こえてきて、勧められた角度調節付きの椅子に座り損ねるところだった。ずり落ちかけた体を即座に横から支えてくれた腕が力強いやらかっこいいやら優しいやらで、ただでさえ痛む表情筋がまたぞろニヤけ引きつれて痛い。
「大丈夫ですか?」
「うっ、うん。大丈夫。……っあ、あの、そ……ええと、あっ、あれ……あの、そう。ウェ、ウェンシェ、スランさん」
このまま瓦解した顔を見続けられるのは恥ずかしい。ちょっと慌てたオリンドは何とか気を逸らせようと、今から行う散髪と髭剃りからウェンシェスランを連想して口に乗せた。
「? ……シェスカがどうかしましたか?」
「ええと、あの、髭の剃り跡とか、何にも無いなあと思って。ずっと不思議で……。元からあんまり生えないとか?」
「ああ。……シェスカの、髭……ですか……」
椅子のすぐ側に置かれた小ぶりの箪笥から大きめのケープを取り出してオリンドの肩にかけながら、エウフェリオは口籠り、言うか言うまいかとケープの上から少し肩を揉んだ。
「? ……え。……うん。……えっ? 言いにくいこと?」
「いえ……。言いにくいことと言いますか……」
「そうか……あっ、聞いちゃまずいことなら聞かない」
なんだろう、なにがあってそんなに歯切れが悪いんだろう。聞かないけど気になる。
もよもよとする心地を抱えたオリンドだったが、人には知られたく無いことのひとつやふたつあるだろう。そう思って首を振った。
「いえ、聞かせてまずいわけでも無く。……ええ、と。生えなくしたんですよ。彼」
「……えっ?」
生えなく?
生えなくって、つまり生えてたけど生えなくしたってこと?
「えっ、どうやって?」
そんな髭剃りの手間と剃刀負けから解放される術があるなら知りたい。俄然興味を持ったオリンドは聞いていいならとエウフェリオを振り返った。
「……えー。……一度、顔を焼いて、髭の毛根以外を回復させたんだそうです……」
「…………えっ……?」
なんて?
オリンドはそっと顎周りに両手を当てた。
なんて? 顔を? ……焼い……? ……はあ!?
「やっ……焼く!? 焼くってあの、あれ!? 火を付け……はぁあ!?」
「ええ。火ではないですが。焼きごてでじゅっと。……と、聞いてます。髭と、それから腕や脇や足の、曰く無駄な毛というものは全て」
回復魔法が使えれば誰でもできる、などという芸当ではない。飽くなき探究心でもって身体の構造を日々研究してきたウェンシェスランならではの脱毛法である。それを十六だか十七歳の頃にやってみせたというのだから、これも大概の話だ。
「痛い!! 熱い!! ……なんの情熱!?」
「美の追求だそうで」
「怖い! なんか、山で俺の探査スキルが怖いとか言ってたけど! そっちのほうが怖い!」
聞かなきゃ良かった! ……あっ、歯切れが悪かったのはそれでか。なるほど……。
先刻だって食事の後に循環法を披露したら、滂沱と感涙を流して膝から崩れ落ち、やっぱり怖いだの尊いだの咽び泣いていたが、自らに焼きごてを当てるなどという行為に比べれば絶対に怖くなどない。断じてだ。と、オリンドは頭を抱えて深く思った。
ちなみに今は披露された循環法のあまりの魔力量と高速さに酔ったと部屋で寝込んでいる。
「理想を追いかけると苦痛も寒暖も健康も二の次になるそうですよ。……恐ろしい話です……。さて、ちょっと待っていてくださいね。水を汲んできます」
椅子の背を少し倒して楽に寝そべられる角度に調整してから、エウフェリオは裏庭へ出ていった。
「……うへえ。……焼きごて……。うわ怖……っ、え? な、何回当てたんだ? ……うわあ! 嫌だ考えちゃダメだ!」
ひぃいい。しばらく両足をバタつかせて眉を寄せ必死に思考を他に逸らせていると、水を湛えたタライを抱えたエウフェリオが戻るなり軽く吹き出した。
「っふふ。ごめんなさい、やっぱり刺激が強すぎましたよね」
「つっ、強いってもんじゃない……! いやっ、でも聞きたがったの俺だし……!」
「それではアルやリックの話でもして中和させましょうか」
「ぜひ! お願いします!」
このままでは今夜眠れなくなる。
ちょっぴり涙目になっているオリンドに相好を崩したエウフェリオは、タライの水を空に浮かせ火魔法で温めてから戻した。湯加減をみて吸水性の高い布に染み込ませ、軽く絞り上げて癖の強い黒髪を包み込む。
「ふわ……。あったか……」
少し熱いくらいの温度が心地よい。
憧れと言えばオリンドには理髪店も憧れだった。行けるほどの稼ぎもなく、いつも遠目に見るだけで通り過ぎてきた店のひとつだ。ずっと髪は自分で切ってきたが、何度やっても毛先は揃わないし、たまに左手の指先を怪我してしまうのが悩みだった。
「少し蒸らしたら洗いにかかりますよ。熱かったら言ってくださいね」
だというのに今は憧れの人に手ずから洗って散髪してもらえるだなんて。
「……うわああ!? うわっ! 俺! けんっ……ちが、え、エウフェっリオにっ、頭っ! 頭切ってもらうの!?」
「頭は切りませんよ」
いくら世の理髪店が外科医歯科医兼業でも私までそんな真似はしません。神妙な顔で首を横に振られて再度足をバタつかせた。
「っちがう、髪ぃい!」
「ふっふふ。わかってますとも。……ふふふふっ!」
うぎい。思ってたよりちょっと意地悪だ。……でも好き。……うわ。ちょっ……。こんなこと、こんなこと思う日が来るなんて。
穴があったら横穴掘り込んで隠れたい。
茹だりかけた顔に、飛沫避けの布を被されてほっとひと息吐いた。
次いで髪と頭皮を蒸らしていた布が取り去られ、心地よく冷える。
「お湯をかけますね。熱かったらすぐに言ってください」
「あ、うん。……うわ、すごい、気持ちいい」
ここに来た翌日にイドリックから湯で洗うといいと用意され、生まれて初めてお湯を使って洗わせてもらったことを思い出す。あの時にも水が温かいだけでなんと気持ちのいいものかと感動したが、誰かの手が頭にたっぷり触れることがこれほど安らぐこととは知らなかった。
「良かった。石鹸を少し揉み込みますから、痛かったら教えてくださいね」
布の向こうで引き出しを探る音がしてから少しの間を置き、再び髪を梳くように地肌を撫で揉んでくる指の感触が、心地よすぎてとろとろとする。
「ところで、好みの髪型などありますか?」
「……う……? ……うん。……や、考えたこともない……」
ゆるゆると眠気を帯びだしたオリンドの声に気付いたエウフェリオは、一旦手を拭うと部屋の隅に設られたクロゼットからブランケットを持ち出してきて、肩口まで覆う。
「では、お任せで良いですか?」
「……うん……。任せ……る」
「ふふ。アルやリックの話はまた今度ですね」
そっと声を掛けてから、ゆっくりと洗髪を再開する。かぷかぷと湯を掻き混ぜる音も鼓膜に優しく、オリンドは穏やかな眠りに落ちていった。
「っ、ひゃやゃやや……!?」
次に起きた時には三時間ほどが経っていた。
眠っている間に居間へ移されていたらしく、日の光が当たるソファの上で目を覚ますと、すっかり頭も顎周りもさっぱりとして、おまけに自分から良い匂いが漂ってくる。と、目を白黒させたところにエウフェリオから手鏡を渡され、覗き込んだオリンドはそこにものすごく見慣れない自分が居て思わず驚愕の声を上げた。
誰これ、誰だこれ、俺こんな顔してたっけ!?
髭は余程丁寧に剃られたのだろう、つるりとしていて手に当たることもなく、きっと肌も洗顔なり保湿なりされたと思しき白さとしっとり具合だ。
一度洗ったくらいではあまり落とせなかった皮脂に覆われべたついていた髪は、目に掛かる程度の短髪に整えられ、癖を活かして全体的にふわふわと明るく無造作に踊っている。後頭部は耳の真ん中より少し下あたりまで軽く刈り上げられ、見た目にもすっきりとしていた。
「お気に召していただけたら良いのですけど」
「ありがとう、すっごい清潔そう! さっぱりして軽いのも、すご、すごく気持ちいい」
「それは良かった」
エウフェリオこそ嬉しくてオリンドの髪をくすぐるように撫でる。
「アルたちにも見てもらいましょうか。ちょうどそろそろお昼の時間ですし」
「そ、そんなに寝てたのか俺……」
どうりでお腹が空いている。
促されて廊下へ出ると、食堂のほうから食欲を刺激する良い香りが漂ってきていた。
今日のメニューはなんだろう。期待に胸を膨らませてウッドビーズカーテンを潜ると、アレグとイドリックは既に席に着き、どうやら起きてこられるようになったらしいウェンシェスランも二人の前に座るところだった。
「おう、随分さっぱりしたなオリンド」
こちら側を向いていたイドリックが軽く手を上げて微笑んだ。
「おっ、いいじゃん、すげえ似合ってる!」
つられてオリンドを見たアレグが顔を輝かせて伸び上がる。
「えっ、どんな髪……っぁあぁあぁああかわっ、かわぁああぁあぁぁああ!!」
腰を浮かせて振り返ったウェンシェスランは循環法を味わった朝より腰を砕かせて膝から崩れ落ちた。口元を片手で覆い、オリンドに向けて片手を伸ばし真っ赤な顔をぶるんぶるん振っている。動きにつれて右に左に涙が飛び散らかった。
「……っごい、すっっごい可愛いわリンちゃん! っていうかフェリあんたきっちり趣味そっちのけでリンちゃんに似合うほう優先しやがってこの野郎! 大好きかよ!!」
「ふへぁ!?」
「大好きですとも」
「へぁああ!?」
な、なに、なにゆって、なに、だ、大好きって俺のこっ……へあぁああぁあ!?!?
胸元まで赤くなってふらついたオリンドの後退した先に、しっかり椅子を用意して座らせたエウフェリオは、踵をゴツゴツ鳴らして急接近したウェンシェスランと無言のままガップリ握手をした。もう訳がわからない。
「オリンド。気にするな。せっかくベルが美味い飯作ってくれてんだ。昼にしよう」
「そうそう。こいつら二人とも好きな人間には馬鹿になっちゃうんだよ。気にせず俺も好きーとか言って流しちゃえばいい」
「えぁっ、う、うん。……おっ、俺も、みんなのことっ、好き……っ!」
茹だりっぱなしで涙目で、いっぱいいっぱいさ加減が手に取るようにわかる様子と一生懸命な言葉に、イドリックとアレグは破顔して俺たちも好きだぞ。と返した。
昼食にありつけたのは三人だけだった。
幸せな時って泣くの止められないんだなあ。
膝を立てて引き寄せた掛布に顎を乗せ、ぽやぽやと考えているとノックの音が聞こえてきた。柔らかな朝の挨拶が木肌を通して届けられる。
「おはようございます、オリンド」
昨日と同じく入りますよと声をかけられ、返事をするとエウフェリオが入ってきた。
「お加減いかがですか?」
ベッドでまごついていたことをどう取られたものか、少し屈み込んで覗き込まれ、朝日に照らされてやや赤味を帯びた蜂蜜色にも見えるアイスシルバーの髪が視界に降り注ぐ。夢のような光景に脳がくらくらした。
あれ、待って俺これから毎日起き抜けにこれ見るの?
そのうち脳貧血を起こすのではないかしら。目元に手を当てると、その少し上にエウフェリオの手が重ねられた。
「熱は無いですね。ひょっとして気分が優れないですか?」
「えっ? ううん。気分は最高」
「……なら、良いのですけど。無理はしないでくださいね?」
昨日のあの騒ぎがやはり効いてきているのではないだろうか。心配気に見てくるエウフェリオに、オリンドは慌てて首を振った。
「や、だ、大丈夫! ほんとに大丈夫! エウフェリオが夢みたいに綺麗でぼえってしただけだから!」
ほらこの通り。とオリンドは腕を上げ曲げて胸を張ってみせた。が、エウフェリオはそれどころではない。赤くなって倒れるのを堪え深呼吸をしてから、一拍の後。
「っあ、朝ごはんに、しましょうかっ」
「えっ? うん」
彼にしては珍しく性急な口調だなあ。と、首を傾げてから身支度を整えたオリンドは、なんとなくふらふらとした足取りの後をついて一階へ向かった。
「おはようリンちゃん。あららあ、またお目々腫らして。いらっしゃい、治したげる」
「お、おは……うあ、あり、ありがとう……」
「おう、オリンド。あんまり泣いてたんならもうちょい寝てても良いんだぞ」
「あ、お、おはよう……だ、大丈夫」
「おっはよー! オリンド! ベルぅ! 飯なにー!?」
「あう、あ、おは……」
相変わらず賑やかな食堂だ。以前なら苦手とする雰囲気だったが、今はこの仲間に入れたのだと思うと、調子の合わせ方はまだよくわからないけれど、嬉しい。
「……ふへ……」
思わず笑みを溢せば四人も笑い返してくれる。朝っぱらから胸がいっぱいで動悸がしてしまいそうだ。
「ところでねえアルちゃんリッちゃん。リンちゃんの鍛錬は今日からするの?」
「あー! それ! それどうしよう? オリンド体調どう? 昨日のあれこれで疲れてるなら明日からにするか? 帰り道とかほんとうんざりしたっていうか気がささくれたっていうかぐったりしたっていうか俺が休みたいっていうか」
「はいはい、最後が本音ですね。明日からで良いんじゃないですか?」
「ふっは。うん、俺も明日からで大丈夫」
「ありがとうオリンドぉおおおお! ……でっ、デザートいる? 俺の分食う?」
「あっはは、いい、大丈夫だから自分の分食べて」
それ確実に無理してる。アレグの気の遣いかたがいかにも食いしん坊で、声を上げて笑った。そうするとみんなが嬉しそうに笑うことが、本当に幸せで気分も軽くなる。
「うっし。そしたら俺の防護術も明日以降にするか。……魔法の勉強会とやらはするのか?」
「えっ、どうしようかしら。あたしとしては早くリンちゃんの循環法を体感してみたい欲望が渦巻いてんだけどそれさえ叶えば勉強会は後でもいいわ」
「素直ですか。……どうしますオリンド。とりあえずでも今すぐウェンシェスランに循環法を披露すれば一日お休みになりそうですけど。そうなれば私としては貴方の髪を整えて差し上げたい」
晴れて恋人になれたからには沢山スキンシップを取りたいと、前々から目一杯触りたくて仕方なかった黒髪を見詰めてエウフェリオは提案した。
「えっ、じゃあすぐ循環やる」
もちろんオリンドに否やのあるはずも無い。
「フェリのこと大好きかよ!!」
アレグが楽し気に突っ込みを入れればウェンシェスランもイドリックも追随して口笛を鳴らす。咳払いをして三人を諌めるエウフェリオの声もまんざらでは無さそうで、茹で上がった顔を覆った両手の下でオリンドはくしゃくしゃと笑った。
「ふへぁ……頬っぺた痛い」
「おや、どうされました」
朝食の後で井戸付きの裏庭へ出る扉の設けられた、理容室として使用している部屋に通されたオリンドが頬を包んで言うことに、すわ虫歯かとエウフェリオは口元を覗き込みかけた。
「笑いすぎて、この辺がびきびきする」
「ああ、……ふふっ、頬っぺたの筋肉痛ですか」
これまであまり笑った例しが無いのだろう。思い至ればなんとも悲しいけれど、思い切り笑えたことの証左でもある。せっかくオリンドが笑っているのだからと、エウフェリオも喜ぶことにして、頬を覆う手の平の上に自分の手を重ねると、うりうりと捏ねた。
「あっははは、くすぐったい」
「ふふふ。……ああ、お髭はどうしますか? 残すなら顎が良いかと思うのですけど」
「えあ、これ、剃れてないだけだから剃刀借りられるなら剃りたい……」
「わかりました」
では髪を洗って香油を馴染ませる間に髭を剃って……。などと何だか貴族がやるような内容が聞こえてきて、勧められた角度調節付きの椅子に座り損ねるところだった。ずり落ちかけた体を即座に横から支えてくれた腕が力強いやらかっこいいやら優しいやらで、ただでさえ痛む表情筋がまたぞろニヤけ引きつれて痛い。
「大丈夫ですか?」
「うっ、うん。大丈夫。……っあ、あの、そ……ええと、あっ、あれ……あの、そう。ウェ、ウェンシェ、スランさん」
このまま瓦解した顔を見続けられるのは恥ずかしい。ちょっと慌てたオリンドは何とか気を逸らせようと、今から行う散髪と髭剃りからウェンシェスランを連想して口に乗せた。
「? ……シェスカがどうかしましたか?」
「ええと、あの、髭の剃り跡とか、何にも無いなあと思って。ずっと不思議で……。元からあんまり生えないとか?」
「ああ。……シェスカの、髭……ですか……」
椅子のすぐ側に置かれた小ぶりの箪笥から大きめのケープを取り出してオリンドの肩にかけながら、エウフェリオは口籠り、言うか言うまいかとケープの上から少し肩を揉んだ。
「? ……え。……うん。……えっ? 言いにくいこと?」
「いえ……。言いにくいことと言いますか……」
「そうか……あっ、聞いちゃまずいことなら聞かない」
なんだろう、なにがあってそんなに歯切れが悪いんだろう。聞かないけど気になる。
もよもよとする心地を抱えたオリンドだったが、人には知られたく無いことのひとつやふたつあるだろう。そう思って首を振った。
「いえ、聞かせてまずいわけでも無く。……ええ、と。生えなくしたんですよ。彼」
「……えっ?」
生えなく?
生えなくって、つまり生えてたけど生えなくしたってこと?
「えっ、どうやって?」
そんな髭剃りの手間と剃刀負けから解放される術があるなら知りたい。俄然興味を持ったオリンドは聞いていいならとエウフェリオを振り返った。
「……えー。……一度、顔を焼いて、髭の毛根以外を回復させたんだそうです……」
「…………えっ……?」
なんて?
オリンドはそっと顎周りに両手を当てた。
なんて? 顔を? ……焼い……? ……はあ!?
「やっ……焼く!? 焼くってあの、あれ!? 火を付け……はぁあ!?」
「ええ。火ではないですが。焼きごてでじゅっと。……と、聞いてます。髭と、それから腕や脇や足の、曰く無駄な毛というものは全て」
回復魔法が使えれば誰でもできる、などという芸当ではない。飽くなき探究心でもって身体の構造を日々研究してきたウェンシェスランならではの脱毛法である。それを十六だか十七歳の頃にやってみせたというのだから、これも大概の話だ。
「痛い!! 熱い!! ……なんの情熱!?」
「美の追求だそうで」
「怖い! なんか、山で俺の探査スキルが怖いとか言ってたけど! そっちのほうが怖い!」
聞かなきゃ良かった! ……あっ、歯切れが悪かったのはそれでか。なるほど……。
先刻だって食事の後に循環法を披露したら、滂沱と感涙を流して膝から崩れ落ち、やっぱり怖いだの尊いだの咽び泣いていたが、自らに焼きごてを当てるなどという行為に比べれば絶対に怖くなどない。断じてだ。と、オリンドは頭を抱えて深く思った。
ちなみに今は披露された循環法のあまりの魔力量と高速さに酔ったと部屋で寝込んでいる。
「理想を追いかけると苦痛も寒暖も健康も二の次になるそうですよ。……恐ろしい話です……。さて、ちょっと待っていてくださいね。水を汲んできます」
椅子の背を少し倒して楽に寝そべられる角度に調整してから、エウフェリオは裏庭へ出ていった。
「……うへえ。……焼きごて……。うわ怖……っ、え? な、何回当てたんだ? ……うわあ! 嫌だ考えちゃダメだ!」
ひぃいい。しばらく両足をバタつかせて眉を寄せ必死に思考を他に逸らせていると、水を湛えたタライを抱えたエウフェリオが戻るなり軽く吹き出した。
「っふふ。ごめんなさい、やっぱり刺激が強すぎましたよね」
「つっ、強いってもんじゃない……! いやっ、でも聞きたがったの俺だし……!」
「それではアルやリックの話でもして中和させましょうか」
「ぜひ! お願いします!」
このままでは今夜眠れなくなる。
ちょっぴり涙目になっているオリンドに相好を崩したエウフェリオは、タライの水を空に浮かせ火魔法で温めてから戻した。湯加減をみて吸水性の高い布に染み込ませ、軽く絞り上げて癖の強い黒髪を包み込む。
「ふわ……。あったか……」
少し熱いくらいの温度が心地よい。
憧れと言えばオリンドには理髪店も憧れだった。行けるほどの稼ぎもなく、いつも遠目に見るだけで通り過ぎてきた店のひとつだ。ずっと髪は自分で切ってきたが、何度やっても毛先は揃わないし、たまに左手の指先を怪我してしまうのが悩みだった。
「少し蒸らしたら洗いにかかりますよ。熱かったら言ってくださいね」
だというのに今は憧れの人に手ずから洗って散髪してもらえるだなんて。
「……うわああ!? うわっ! 俺! けんっ……ちが、え、エウフェっリオにっ、頭っ! 頭切ってもらうの!?」
「頭は切りませんよ」
いくら世の理髪店が外科医歯科医兼業でも私までそんな真似はしません。神妙な顔で首を横に振られて再度足をバタつかせた。
「っちがう、髪ぃい!」
「ふっふふ。わかってますとも。……ふふふふっ!」
うぎい。思ってたよりちょっと意地悪だ。……でも好き。……うわ。ちょっ……。こんなこと、こんなこと思う日が来るなんて。
穴があったら横穴掘り込んで隠れたい。
茹だりかけた顔に、飛沫避けの布を被されてほっとひと息吐いた。
次いで髪と頭皮を蒸らしていた布が取り去られ、心地よく冷える。
「お湯をかけますね。熱かったらすぐに言ってください」
「あ、うん。……うわ、すごい、気持ちいい」
ここに来た翌日にイドリックから湯で洗うといいと用意され、生まれて初めてお湯を使って洗わせてもらったことを思い出す。あの時にも水が温かいだけでなんと気持ちのいいものかと感動したが、誰かの手が頭にたっぷり触れることがこれほど安らぐこととは知らなかった。
「良かった。石鹸を少し揉み込みますから、痛かったら教えてくださいね」
布の向こうで引き出しを探る音がしてから少しの間を置き、再び髪を梳くように地肌を撫で揉んでくる指の感触が、心地よすぎてとろとろとする。
「ところで、好みの髪型などありますか?」
「……う……? ……うん。……や、考えたこともない……」
ゆるゆると眠気を帯びだしたオリンドの声に気付いたエウフェリオは、一旦手を拭うと部屋の隅に設られたクロゼットからブランケットを持ち出してきて、肩口まで覆う。
「では、お任せで良いですか?」
「……うん……。任せ……る」
「ふふ。アルやリックの話はまた今度ですね」
そっと声を掛けてから、ゆっくりと洗髪を再開する。かぷかぷと湯を掻き混ぜる音も鼓膜に優しく、オリンドは穏やかな眠りに落ちていった。
「っ、ひゃやゃやや……!?」
次に起きた時には三時間ほどが経っていた。
眠っている間に居間へ移されていたらしく、日の光が当たるソファの上で目を覚ますと、すっかり頭も顎周りもさっぱりとして、おまけに自分から良い匂いが漂ってくる。と、目を白黒させたところにエウフェリオから手鏡を渡され、覗き込んだオリンドはそこにものすごく見慣れない自分が居て思わず驚愕の声を上げた。
誰これ、誰だこれ、俺こんな顔してたっけ!?
髭は余程丁寧に剃られたのだろう、つるりとしていて手に当たることもなく、きっと肌も洗顔なり保湿なりされたと思しき白さとしっとり具合だ。
一度洗ったくらいではあまり落とせなかった皮脂に覆われべたついていた髪は、目に掛かる程度の短髪に整えられ、癖を活かして全体的にふわふわと明るく無造作に踊っている。後頭部は耳の真ん中より少し下あたりまで軽く刈り上げられ、見た目にもすっきりとしていた。
「お気に召していただけたら良いのですけど」
「ありがとう、すっごい清潔そう! さっぱりして軽いのも、すご、すごく気持ちいい」
「それは良かった」
エウフェリオこそ嬉しくてオリンドの髪をくすぐるように撫でる。
「アルたちにも見てもらいましょうか。ちょうどそろそろお昼の時間ですし」
「そ、そんなに寝てたのか俺……」
どうりでお腹が空いている。
促されて廊下へ出ると、食堂のほうから食欲を刺激する良い香りが漂ってきていた。
今日のメニューはなんだろう。期待に胸を膨らませてウッドビーズカーテンを潜ると、アレグとイドリックは既に席に着き、どうやら起きてこられるようになったらしいウェンシェスランも二人の前に座るところだった。
「おう、随分さっぱりしたなオリンド」
こちら側を向いていたイドリックが軽く手を上げて微笑んだ。
「おっ、いいじゃん、すげえ似合ってる!」
つられてオリンドを見たアレグが顔を輝かせて伸び上がる。
「えっ、どんな髪……っぁあぁあぁああかわっ、かわぁああぁあぁぁああ!!」
腰を浮かせて振り返ったウェンシェスランは循環法を味わった朝より腰を砕かせて膝から崩れ落ちた。口元を片手で覆い、オリンドに向けて片手を伸ばし真っ赤な顔をぶるんぶるん振っている。動きにつれて右に左に涙が飛び散らかった。
「……っごい、すっっごい可愛いわリンちゃん! っていうかフェリあんたきっちり趣味そっちのけでリンちゃんに似合うほう優先しやがってこの野郎! 大好きかよ!!」
「ふへぁ!?」
「大好きですとも」
「へぁああ!?」
な、なに、なにゆって、なに、だ、大好きって俺のこっ……へあぁああぁあ!?!?
胸元まで赤くなってふらついたオリンドの後退した先に、しっかり椅子を用意して座らせたエウフェリオは、踵をゴツゴツ鳴らして急接近したウェンシェスランと無言のままガップリ握手をした。もう訳がわからない。
「オリンド。気にするな。せっかくベルが美味い飯作ってくれてんだ。昼にしよう」
「そうそう。こいつら二人とも好きな人間には馬鹿になっちゃうんだよ。気にせず俺も好きーとか言って流しちゃえばいい」
「えぁっ、う、うん。……おっ、俺も、みんなのことっ、好き……っ!」
茹だりっぱなしで涙目で、いっぱいいっぱいさ加減が手に取るようにわかる様子と一生懸命な言葉に、イドリックとアレグは破顔して俺たちも好きだぞ。と返した。
昼食にありつけたのは三人だけだった。
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嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
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十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。
しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。
全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。
クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
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「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
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貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
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王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
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