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第三十二話 不穏なあれこれ
七十九階層の残りというより城の玄関周辺の調査は早々に終わった。八十階層へは階段で降りる他に道は無く特に迷うような造りでもない。広間に潜んでいた魔物も少なくボスと呼べる存在も無しではこんなものだろう。
最後に二階を調査すれば明日は晴れて新階層だ。外に面した窓は全て鎧戸が固く閉ざされ破られた痕跡もなく、転送陣でしか行き来ができずにその陣も隠し部屋の中とくれば当然のこと魔物の居ようはずも無いが、調査しないわけにもいかないと入ったアレグたちは、しかし激しく後悔することになった。
「なんだよあれ…なんなんだよ…」
目にした光景に吐き気を催し全速力で一巡してから応接室に戻るなり、ソファにぐったりと身を投げ出したアレグは呻いた。
「やばいわ。ほんとやばいわ。どう考えても拷問部屋よね…。もしかして城と街をあんな厳重な壁で区切ってたの、あれを漏らさないためなんじゃないの?」
脳裏に焼きついて離れない悍ましい映像に強く眉根を寄せたウェンシェスランは暖炉の火にあたってなお震える肩を両手で握りしめる。
「かもしれんな。拷問対象が魔物とあっちゃ刑罰なんかの筈が無え。…大層なご趣味じゃねえかこの城に住んでいたやつらは」
朽ちかけて転がる道具類はどれもこれも形状といい大きさといい人間に使用するものでは無いことが一目でわかるものばかりだった。唾棄するように言ってイドリックは皮袋の水を煽った。
「どおりでリンドが入る前から青い顔をしていたはずです…」
おそらくは貴族の御用達だったのだろう、夥しい拷問具と拭いきれない血痕を前に設られた豪奢なソファやテーブルが異様さに拍車をかけていた。索敵にあたって先にあの光景を一人で見てしまったのかと痛ましい気持ちでエウフェリオは二階に着いて間もない頃からずっと悄気たままのオリンドを抱き寄せる。
「っ、う。ご、ごめんなさい…言い出せなくて…」
好奇心を滾らせる彼らを前にどれだけ考えても静止の言葉が思い浮かばず、止められなかったことをオリンドは悔いた。城の一階との間を行き来する転送陣に、百階層から出てくる一方通行の転送陣の他には何も無い、無惨な姿を晒すだけの場所へ行かせてこんなに酷く消耗し滅入る結果にしてしまったと胸が引き攣れる。
「いや、だからそれは言いっこ無しだってオーリン。二階でも言っただろ?どっちみち見に行かなきゃいけなかったんだしさ」
「ていうか、あんなの絶対調べなきゃいけないやつよ。行って良かったの」
「ま、あれに関してはギルドの学者組に任せることになるだろうがな。この後の階層に資料やら残されてるかもしれん。そんなものを見る前に心構えをするにも丁度良かったさ」
「ふふ。それに私たちなら貴方に止められたって行っちゃってましたからね」
そこに隠された部屋があったんですから。エウフェリオが言えば「違いない!」と、三人の力強い肯定が返されて、ようやくオリンドは笑うことができた。
「さあさ、そしたらお夕飯食べて、明日に備えてさっさと寝ちゃいましょ」
ウェンシェスランが手を打ったのを皮切りに、五人は手早く夕食を平らげるとせっかくだからとそれぞれソファに横たわった。驚くことに窓の外に広がる人工の庭は地上の時間と連動しているのか今やすっかり夜の様相を呈している。洞窟の天井付近に投影された星空を眺めて夜中に時計が鳴ったら困るだとかソファから落ちてたら勿体無いから戻しといてくれだとか、子供みたいな話で少し盛り上がった後に訪れた静寂の機を見計らい、オリンドを抱き込んだエウフェリオが灯り魔法のランプを落としたことを合図に眠りについた。
翌朝、瞼の向こうが明るいと気付いて目を開けたオリンドはまず、ここどこ?とボンヤリ考え、しばらくしてからクラッスラの七十九階層だと思い出して身を起こした。どうやら夜中は時計の鐘も鳴らなかったらしく、ぐっすりと眠れたようでなかなか覚醒しきらない頭を巡らせると、人工風景に夜明けが再現されている。
「はよ。……やべえ。冒険感皆無…」
起き出した気配に気付いたのだろう、のそりと起き上がったアレグも周りと窓の外を見てしばしの間を置いてから呟いた。
「おはよう。うん…俺もそう思う…」
エウフェリオの腕枕を差し引いてもすこぶる寝心地の良いソファだった。そこらの宿のベッドなど比べるべくも無い。その上起きたら目も眩むほどの光景で、昨夜その辺りは覚悟して眠りについたはずだったが一度寝た頭はリセットされ感情が追い付いてこれないようだ。
「こりゃあ…案外ここを休憩地点にするのは難儀かもしれんな」
鞄から取り出したアルベロスパツィアレの特製スープと焼きたてパンをテーブルに並べればいよいよここがダンジョンであることを失念しそうだ。あまりにも快適すぎる。と、目を細めるイドリックにエウフェリオは首を傾げた。
「どうでしょう?早々に使いやすく改修されそうな気もしますが」
「いやぁあ!やめて!でも絶対そうなっちゃうわ!あーん、こんな素敵な…、やりすぎて素敵の向こうに行っちゃってる感ありありの部屋ではあるけど、こんな煌めく部屋をぉお…!お願い八十階層に良い部屋があってえ!」
飾り立てすぎて下品の領域に足を突っ込みかけてはいるがひとつひとつの意匠は素晴らしく精巧で美しい。この部屋を冒険者たちの溜まり場もとい休憩所にすることはウェンシェスランには惜しいとしか思えなかった。
「うんん…残念ながら次は安全そうな場所無いなあ。…ん、と。家具だけでも、王様にあげ…あ、献上、か。しちゃだめなの?」
いくら掃除の魔法がかかっていても傷の修復や泥の染みを落としたりなどできまいし、ここで冒険者が使いたい放題に汚すよりは城に置いた方が綺麗なまま使えて長持ちもするんじゃなかろうか。そう思って提案すると四人は千切ったパンを持ったままぽくんと手を打った。
「ああー!良いわね!ここで勿体無い使われ方するよりは全然マシだわ!」
「時計だけは置いといてほしいけどな。しかし流石だなオーリン。俺たちじゃあどうやって金に変えるかって算段をつい考えちまうが、その手があったか」
「全くです。物が家具ときて、これだけ高級ではそれこそ国が買い上げるような値段になるでしょうし、王にそのような不敬は働けませんし、どうするかと考えてましたが…。なるほど献上ならば多少の見返りも得られますね」
「まじ!?見返り!?そしたら俺クラッスラとアストロフィツムが終わったら一年くらい王宮からの干渉無しがほしい!」
「…へあ?…か、干渉?」
王宮からの干渉て、なにされてるんだ。
聞き捨てならない言葉にオリンドがギョッとしてアレグを見ると、彼はちょっとだけ苦く笑った。
「あー、いや大したこと無いんだけど、…あ!あと干渉されてんのは俺だけだから!オーリンには及ばないからそこは安心してくれ!」
「や、そ、そういう心配はしてない」
「うおお、おまえほんと良いやつだよな!…えーとな、俺ほら勇者の称号持ってるじゃん。これ、ギルドのランクにするとSランクのもひとつ上って扱いなんだよ」
「ええっ!?…え、Sランクが最高クラスなんじゃ…」
「そう。そうなんだけどさ。…あー、Bランクから貴族の指名が入るのは知ってたっけ?」
「え?うん。Bランクは指名が入って、Aランクからお抱えの打診があったりして、Sランクは貴族お抱えから王宮のお抱えになると呼ばれる、って聞いてる…けど…」
えっ、あれ、そうすると勇者って王宮お抱えどころか専属…?
気が付いたオリンドは一瞬仰け反りかけた。勇者、勇者と単語で覚えていただけで階級に対する認識は皆無だったと思い至り、同時に改めて畏怖の念が沸き起こったからだ。しかしここで引いてはいけない気がして踏み留まる。
「…へへ。おまえほんとそういうとこ真っ直ぐだよな」
スープを木匙でゆっくりとかき混ぜながらアレグが嬉しそうに笑うのを見て深く安心してから、それで、と緊張を解いたオリンドは首を傾げた。
「ええと、王宮の専属?だから、任務とか依頼とか、干渉を受けてたりする、のか?…あれ?えっと、け、賢者の称号もそういう?」
「勇者の方はそんな感じ。称号を授けた国のほぼ専属になる。賢者はキルタンサスが最高最強の魔法使いって認めたって称号だから別モンだよな?」
「ええ。そうですね。良識や節度ある行動は求められますが、縛りと言っても年に一度か二度ほど学会に出席するくらいですし…。むしろ世界中の魔法機関で優遇優待される便利な称号です」
「べ、便利な称号…」
えっ、俺の気のせいじゃなければ全魔法使いが憧れる世界一の栄誉じゃなかったっけ…。便利?…いや、でも、そうか、…便利なのか。
戸惑うオリンドを他所に、いいよなあ賢者はあ、と子供っぽく口を尖らせたアレグは話を続ける。
「でまあ、たとえばこういう調査なんかの長期依頼を遂行中でも、緊急の用事があれば引っ張ってかれるんだよ。てか今回が正にそれじゃん。アストロフィツムの解明は後回しにしてクラッスラで何かいいもん拾ってこいって」
「ああ、そうか。そういえば」
単に王様の命令だから無碍にできなくて、そこにギルドからのお願いもあって引き受けたのだと思っていたが、そうではなく、アレグは干渉と言ったが契約なのだとオリンドは理解した。
「…ゆ、勇者の称号にそんな意味があったなんて、知らなかった…」
「俺もなってからオッサンに会うまで知らんかったチクショウが!…そんで、ほれ、今のところ聖剣は一本しか見つかって無えから勇者も一人しかなれねえじゃん。その上、聖剣の存在は知られてても物が手に入らんから勇者の席はずーっと空っぽだったとか何とかで、法?決まり?は、あってもナントカ…カントカ…よくわからんけど各国ですげえ揉めたらしい。けど、俺がグラプトベリア出身だからレウクテンの所属にするつって、オッサンちがう王の知らんとこで貴族連中が強引に進めたらしくてさ」
「…お、おっさ…」
王様のこと、おっさんって言った?というか一回目の『おっさん』も王様のことか!?
随分と仲が良いんだ。王様から孫みたいに思われてるのかな。そうだ。そうなんだろう。たぶんきっと。と、アレグの言葉の端々を拾っては押し寄せるヒヤリとした感覚をやり過ごすため、オリンドはそう思うことにした。
「かわいそうだよな。立場が立場だからそうそう軽々しく頭下げらんねえじゃん?俺が騙されて勇者にされたってんで、授与式の前後で執事の兄ちゃんから代わりにって平謝りされたもん。…おっとと、話逸れたな。それはそれとしてオッ…王、三度の飯より珍品好きなヤツでさ」
「やつ…」
「まあ俺も、王のこと嫌いじゃねえからさ、言うこと聞いてやってんだけど。収集癖が出るとまあ抑えらんないらしくて、あっちこっち行かされるんだこれが」
「ああ。それで、不干渉の見返りが欲しい、っていう話に…」
「そうそう!あんまみんなを付き合わせるのも悪いしさあ」
「あらまあ、あんたそんな殊勝なこと思ってたの?」
意外だわ。スープを含んだ口元に手を添えて急ぎ飲み込んだ後、ウェンシェスランは目を丸くしてアレグをまじまじと見た。
「そんなもん気にしてたのか。こちとら渋々付き合ってんじゃなくて、楽しいから組んでるだけだぞ?」
一口齧ったパンを頬側に避けてイドリックが呆れた顔で呆れた声を出す。
「うわー!んだよその恥ずかしい台詞!こっちが照れんだろ!?」
「何を今更。私たちがSランクを蹴っているのは、こうして貴方と組んでいると赴ける面白い任務にいつでも参加するためと知ってるじゃないですか」
「へぁあ!?えっ、フェリもイドリックさんもウェンシェスランさんもAランクに留まってる理由ってそれだったの!?…ひゃぁあ~、き、絆すごい…」
少しばかり意地悪な笑顔でエウフェリオが言った内容に胸を打たれたオリンドは感動に輝く純粋な目で一同を見渡した。
実力は十二分以上に備わっているのにと巷で好き勝手考察されているSランクに昇級しない理由が、こんな厚い友情のためだったなんて胸が熱い。
「あっはっは、いやいやオーリン、騙されんな!こいつらが蹴ってんのは、その結託した胸糞貴族連中のお抱え打診をメッタメタに断りたいからだって!」
「…え。…ん…と。…それって、アレグさんのために仕返ししてるんじゃ…?」
「…おお!?」
めしり。
力加減を誤ったアレグの手の中で木匙が折れた。
「んっほっほ。だあって、ご丁寧にあたしたちを個別任務で遠ざけた隙にって手口まで使ったんだもの。一生許すわけ無いわよ」
とてもいい笑顔が真っ赤になった勇者に目一杯降り注がれる光景を前に、ほんとうに素敵な人たちだなあ、とオリンドの胸の内はますます温まった。
その温かくなった心持ちが伝播したわけでもないが八十と八十一階層は一気に走り抜けた。八十階層は長い廊下からなり、美しかったであろう絵画の額ごと割れ破れていくつも転がる回廊の左右に連なる扉は悉く破壊され、魔物の爪や牙、魔力攻撃の痕といったものが色濃く残されている。
戸枠に囲まれぽっかりと開いた四角い穴からは室内を根城や産卵場所にする魔物が襲い来たが、全てアレグの聖剣に払われイドリックの盾に防がれエウフェリオの魔法に打たれあえなく撃沈した。
八十一階層は城というより寄宿舎のような造りだった。おそらくは騎士や近衛兵といった城を守る兵士の滞在する場であったのだろう、格子状に通る廊下の左右にいくつも部屋の並ぶ間取りで、しかしながらその廊下がいただけない。どれもこれも途中で不自然に途切れて八十二階層に繋がる最奥への移動を困難にしていた。オリンドの描いた地図がなければ迷うこと間違い無しの迷路めいた道筋を辟易しつつ魔物を退けつつ辿ると、次の階層への階段が現れる。が、今回の調査はここまでだ。
最後に階段横の多目的室らしき部屋に巣食っていた、階層の主らしき白擢老狐、全身が真っ白の長い毛に覆われ目の下を縁取る黒い線模様が特徴的な狐様の魔物を討伐にかかった。狡猾な性格をしており魔力も高く、自らの周辺に幾重にも浮かべた瑠璃紺色の炎を操って中遠距離から攻撃を仕掛けてくるばかりでなく、人の三倍ほどはある体躯から繰り出される前足の斬撃でもって近接攻撃もこなすことから、Aランクでもなかなか手こずる厄介な存在だ。その毛皮は侯爵も通うほどの高級娼婦御用達の一品であり、核は一旦地中に埋めて重力魔法などを使用した加工を施せば上級の魔石にもなる。一頭仕留めれば大金貨二十枚は下らない。
「っしゃー!今回はこんなもんだろ!ちょっと拍子抜けだけどさ」
その白擢老狐を易々と倒したアレグは聖剣を担ぎ直して首の関節を鳴らした。
「わりと魔物も少なかったものねえ…」
「魔物同士の縄張り争いが熾烈だったようですね。いくつか壁も崩れ落ちているような有様でしたし」
「ってか、階層自体が狭いじゃん。地図見た時にいきなり狭くなるなって思ってたけど、つまりこの先ほとんど城だけってことか」
帰り道を辿りながらふとアレグはオリンドを振り返って聞いた。狭いと言っても八十一階層は大人数を収容するべく小さな村程度はあったし、八十階層は玄関前で見たような庭を内包する造りになっており、端から端まで真っ直ぐ歩くだけでも十数分はかかりそうな広さだ。そこに並みのAランクでは苦戦するような魔物が跋扈している。拍子抜けを味わうのは彼らくらいのものだろう。
「ええと、九十九階層まではたぶんお城」
ちょうど百階層目で突然様相が変わるから覚えている。と、オリンドは描いた地図の記憶を引っ張り出した。
「けど、確か八十三階層は城だけじゃ無かったよな?」
パキフィツム出のならず者どもを撒く時に描いてもらった予備の地図にも、城下町風の地形が描かれていたと思ったが、と、イドリックが思い返しながら言うとエウフェリオが立ち止まって鞄の中を漁った。
「ええ、確かそのはず…。あれはギルドに提出していないので持ってきていますよ。…ふむ。そうですね、城と街、ですねこれは」
取り出した紙を眺めたエウフェリオは知ってから見れば確かにそうだと頷いた。それも街の方は家々がかなり入り組んだ配置になっている。
「なんだそれ、ほんと変なダンジョンだな」
「アルちゃん一回全部地図を見たんじゃないの?」
「えー、転送陣のルートばっか考えて見てたから覚えてねえよ。この辺てか城は記憶に無えから隠し部屋通ったかすっ飛ばしたんだろし。…オーリンは?」
「あうう、なぞるのに夢中で、すごい印象的なとこ以外はあんまり覚えてない…」
「ふふっ。大興奮でしたものねあの時は」
「ありゃあな。過集中だったろうから、そりゃ覚えてなくてもしょうがない」
「ちょっと待って、何で誰もアルちゃんに突っ込まないのよ、前夜祭の前に城すっ飛ばしといて通路ほぼ全部見てきたとかぬかしたのよこの子」
「え、だって百から先?かどうか知らんけど最後の方はちょっと見てきたもん、そしたらほぼ全部だろ?」
思わず四人とも立ち止まった。やはり地中なのに強靭な風が吹いたような気がする。
「…な?こんな返事が返ってくるのに突っ込むのは、間が抜けてるってもんだろ」
「…そうね…。あたしが馬鹿だったわ。まあ、いいわよ。アルちゃんじゃ無いけど次にどんな階層が待ってるかわからないのは楽しみだわ」
「違いない!」
地図はあれど城の内装だ家具だのが描かれているわけでもないし、再び城下町が待ち構えているなら街並みも楽しめそうだ。きっとこの先でもクラッスラはたっぷりと驚かせてくれるはず。
次回への期待を胸にギルドまで戻ったアレグたちは、しかしてその前に驚く羽目になろうとは思いもよらなかった。
「っちょっと、なによこの張り紙!?」
受付カウンター付近にある壁の張り紙が目に入った瞬間、ウェンシェスランは転がりそうな勢いで走り寄った。
何枚も貼り付けられたポスターに描かれているのはどれもこれも行方不明者の似顔絵だ。
自警団やギルドを頼っても探し出せなかった人物に対する情報を広く集めたい時や、いっそ冒険者を募り人海戦術で捜索したい時に使用されるのが、依頼掲示板の隣に設けられたこの掲示板であるのだが。
「なんで、…なんでデティちゃんの捜索願いが出されてるわけ!?」
きつく問いかけられたカウンターの向こうに並ぶ職員は、誰も彼も顔を曇らせていた。
最後に二階を調査すれば明日は晴れて新階層だ。外に面した窓は全て鎧戸が固く閉ざされ破られた痕跡もなく、転送陣でしか行き来ができずにその陣も隠し部屋の中とくれば当然のこと魔物の居ようはずも無いが、調査しないわけにもいかないと入ったアレグたちは、しかし激しく後悔することになった。
「なんだよあれ…なんなんだよ…」
目にした光景に吐き気を催し全速力で一巡してから応接室に戻るなり、ソファにぐったりと身を投げ出したアレグは呻いた。
「やばいわ。ほんとやばいわ。どう考えても拷問部屋よね…。もしかして城と街をあんな厳重な壁で区切ってたの、あれを漏らさないためなんじゃないの?」
脳裏に焼きついて離れない悍ましい映像に強く眉根を寄せたウェンシェスランは暖炉の火にあたってなお震える肩を両手で握りしめる。
「かもしれんな。拷問対象が魔物とあっちゃ刑罰なんかの筈が無え。…大層なご趣味じゃねえかこの城に住んでいたやつらは」
朽ちかけて転がる道具類はどれもこれも形状といい大きさといい人間に使用するものでは無いことが一目でわかるものばかりだった。唾棄するように言ってイドリックは皮袋の水を煽った。
「どおりでリンドが入る前から青い顔をしていたはずです…」
おそらくは貴族の御用達だったのだろう、夥しい拷問具と拭いきれない血痕を前に設られた豪奢なソファやテーブルが異様さに拍車をかけていた。索敵にあたって先にあの光景を一人で見てしまったのかと痛ましい気持ちでエウフェリオは二階に着いて間もない頃からずっと悄気たままのオリンドを抱き寄せる。
「っ、う。ご、ごめんなさい…言い出せなくて…」
好奇心を滾らせる彼らを前にどれだけ考えても静止の言葉が思い浮かばず、止められなかったことをオリンドは悔いた。城の一階との間を行き来する転送陣に、百階層から出てくる一方通行の転送陣の他には何も無い、無惨な姿を晒すだけの場所へ行かせてこんなに酷く消耗し滅入る結果にしてしまったと胸が引き攣れる。
「いや、だからそれは言いっこ無しだってオーリン。二階でも言っただろ?どっちみち見に行かなきゃいけなかったんだしさ」
「ていうか、あんなの絶対調べなきゃいけないやつよ。行って良かったの」
「ま、あれに関してはギルドの学者組に任せることになるだろうがな。この後の階層に資料やら残されてるかもしれん。そんなものを見る前に心構えをするにも丁度良かったさ」
「ふふ。それに私たちなら貴方に止められたって行っちゃってましたからね」
そこに隠された部屋があったんですから。エウフェリオが言えば「違いない!」と、三人の力強い肯定が返されて、ようやくオリンドは笑うことができた。
「さあさ、そしたらお夕飯食べて、明日に備えてさっさと寝ちゃいましょ」
ウェンシェスランが手を打ったのを皮切りに、五人は手早く夕食を平らげるとせっかくだからとそれぞれソファに横たわった。驚くことに窓の外に広がる人工の庭は地上の時間と連動しているのか今やすっかり夜の様相を呈している。洞窟の天井付近に投影された星空を眺めて夜中に時計が鳴ったら困るだとかソファから落ちてたら勿体無いから戻しといてくれだとか、子供みたいな話で少し盛り上がった後に訪れた静寂の機を見計らい、オリンドを抱き込んだエウフェリオが灯り魔法のランプを落としたことを合図に眠りについた。
翌朝、瞼の向こうが明るいと気付いて目を開けたオリンドはまず、ここどこ?とボンヤリ考え、しばらくしてからクラッスラの七十九階層だと思い出して身を起こした。どうやら夜中は時計の鐘も鳴らなかったらしく、ぐっすりと眠れたようでなかなか覚醒しきらない頭を巡らせると、人工風景に夜明けが再現されている。
「はよ。……やべえ。冒険感皆無…」
起き出した気配に気付いたのだろう、のそりと起き上がったアレグも周りと窓の外を見てしばしの間を置いてから呟いた。
「おはよう。うん…俺もそう思う…」
エウフェリオの腕枕を差し引いてもすこぶる寝心地の良いソファだった。そこらの宿のベッドなど比べるべくも無い。その上起きたら目も眩むほどの光景で、昨夜その辺りは覚悟して眠りについたはずだったが一度寝た頭はリセットされ感情が追い付いてこれないようだ。
「こりゃあ…案外ここを休憩地点にするのは難儀かもしれんな」
鞄から取り出したアルベロスパツィアレの特製スープと焼きたてパンをテーブルに並べればいよいよここがダンジョンであることを失念しそうだ。あまりにも快適すぎる。と、目を細めるイドリックにエウフェリオは首を傾げた。
「どうでしょう?早々に使いやすく改修されそうな気もしますが」
「いやぁあ!やめて!でも絶対そうなっちゃうわ!あーん、こんな素敵な…、やりすぎて素敵の向こうに行っちゃってる感ありありの部屋ではあるけど、こんな煌めく部屋をぉお…!お願い八十階層に良い部屋があってえ!」
飾り立てすぎて下品の領域に足を突っ込みかけてはいるがひとつひとつの意匠は素晴らしく精巧で美しい。この部屋を冒険者たちの溜まり場もとい休憩所にすることはウェンシェスランには惜しいとしか思えなかった。
「うんん…残念ながら次は安全そうな場所無いなあ。…ん、と。家具だけでも、王様にあげ…あ、献上、か。しちゃだめなの?」
いくら掃除の魔法がかかっていても傷の修復や泥の染みを落としたりなどできまいし、ここで冒険者が使いたい放題に汚すよりは城に置いた方が綺麗なまま使えて長持ちもするんじゃなかろうか。そう思って提案すると四人は千切ったパンを持ったままぽくんと手を打った。
「ああー!良いわね!ここで勿体無い使われ方するよりは全然マシだわ!」
「時計だけは置いといてほしいけどな。しかし流石だなオーリン。俺たちじゃあどうやって金に変えるかって算段をつい考えちまうが、その手があったか」
「全くです。物が家具ときて、これだけ高級ではそれこそ国が買い上げるような値段になるでしょうし、王にそのような不敬は働けませんし、どうするかと考えてましたが…。なるほど献上ならば多少の見返りも得られますね」
「まじ!?見返り!?そしたら俺クラッスラとアストロフィツムが終わったら一年くらい王宮からの干渉無しがほしい!」
「…へあ?…か、干渉?」
王宮からの干渉て、なにされてるんだ。
聞き捨てならない言葉にオリンドがギョッとしてアレグを見ると、彼はちょっとだけ苦く笑った。
「あー、いや大したこと無いんだけど、…あ!あと干渉されてんのは俺だけだから!オーリンには及ばないからそこは安心してくれ!」
「や、そ、そういう心配はしてない」
「うおお、おまえほんと良いやつだよな!…えーとな、俺ほら勇者の称号持ってるじゃん。これ、ギルドのランクにするとSランクのもひとつ上って扱いなんだよ」
「ええっ!?…え、Sランクが最高クラスなんじゃ…」
「そう。そうなんだけどさ。…あー、Bランクから貴族の指名が入るのは知ってたっけ?」
「え?うん。Bランクは指名が入って、Aランクからお抱えの打診があったりして、Sランクは貴族お抱えから王宮のお抱えになると呼ばれる、って聞いてる…けど…」
えっ、あれ、そうすると勇者って王宮お抱えどころか専属…?
気が付いたオリンドは一瞬仰け反りかけた。勇者、勇者と単語で覚えていただけで階級に対する認識は皆無だったと思い至り、同時に改めて畏怖の念が沸き起こったからだ。しかしここで引いてはいけない気がして踏み留まる。
「…へへ。おまえほんとそういうとこ真っ直ぐだよな」
スープを木匙でゆっくりとかき混ぜながらアレグが嬉しそうに笑うのを見て深く安心してから、それで、と緊張を解いたオリンドは首を傾げた。
「ええと、王宮の専属?だから、任務とか依頼とか、干渉を受けてたりする、のか?…あれ?えっと、け、賢者の称号もそういう?」
「勇者の方はそんな感じ。称号を授けた国のほぼ専属になる。賢者はキルタンサスが最高最強の魔法使いって認めたって称号だから別モンだよな?」
「ええ。そうですね。良識や節度ある行動は求められますが、縛りと言っても年に一度か二度ほど学会に出席するくらいですし…。むしろ世界中の魔法機関で優遇優待される便利な称号です」
「べ、便利な称号…」
えっ、俺の気のせいじゃなければ全魔法使いが憧れる世界一の栄誉じゃなかったっけ…。便利?…いや、でも、そうか、…便利なのか。
戸惑うオリンドを他所に、いいよなあ賢者はあ、と子供っぽく口を尖らせたアレグは話を続ける。
「でまあ、たとえばこういう調査なんかの長期依頼を遂行中でも、緊急の用事があれば引っ張ってかれるんだよ。てか今回が正にそれじゃん。アストロフィツムの解明は後回しにしてクラッスラで何かいいもん拾ってこいって」
「ああ、そうか。そういえば」
単に王様の命令だから無碍にできなくて、そこにギルドからのお願いもあって引き受けたのだと思っていたが、そうではなく、アレグは干渉と言ったが契約なのだとオリンドは理解した。
「…ゆ、勇者の称号にそんな意味があったなんて、知らなかった…」
「俺もなってからオッサンに会うまで知らんかったチクショウが!…そんで、ほれ、今のところ聖剣は一本しか見つかって無えから勇者も一人しかなれねえじゃん。その上、聖剣の存在は知られてても物が手に入らんから勇者の席はずーっと空っぽだったとか何とかで、法?決まり?は、あってもナントカ…カントカ…よくわからんけど各国ですげえ揉めたらしい。けど、俺がグラプトベリア出身だからレウクテンの所属にするつって、オッサンちがう王の知らんとこで貴族連中が強引に進めたらしくてさ」
「…お、おっさ…」
王様のこと、おっさんって言った?というか一回目の『おっさん』も王様のことか!?
随分と仲が良いんだ。王様から孫みたいに思われてるのかな。そうだ。そうなんだろう。たぶんきっと。と、アレグの言葉の端々を拾っては押し寄せるヒヤリとした感覚をやり過ごすため、オリンドはそう思うことにした。
「かわいそうだよな。立場が立場だからそうそう軽々しく頭下げらんねえじゃん?俺が騙されて勇者にされたってんで、授与式の前後で執事の兄ちゃんから代わりにって平謝りされたもん。…おっとと、話逸れたな。それはそれとしてオッ…王、三度の飯より珍品好きなヤツでさ」
「やつ…」
「まあ俺も、王のこと嫌いじゃねえからさ、言うこと聞いてやってんだけど。収集癖が出るとまあ抑えらんないらしくて、あっちこっち行かされるんだこれが」
「ああ。それで、不干渉の見返りが欲しい、っていう話に…」
「そうそう!あんまみんなを付き合わせるのも悪いしさあ」
「あらまあ、あんたそんな殊勝なこと思ってたの?」
意外だわ。スープを含んだ口元に手を添えて急ぎ飲み込んだ後、ウェンシェスランは目を丸くしてアレグをまじまじと見た。
「そんなもん気にしてたのか。こちとら渋々付き合ってんじゃなくて、楽しいから組んでるだけだぞ?」
一口齧ったパンを頬側に避けてイドリックが呆れた顔で呆れた声を出す。
「うわー!んだよその恥ずかしい台詞!こっちが照れんだろ!?」
「何を今更。私たちがSランクを蹴っているのは、こうして貴方と組んでいると赴ける面白い任務にいつでも参加するためと知ってるじゃないですか」
「へぁあ!?えっ、フェリもイドリックさんもウェンシェスランさんもAランクに留まってる理由ってそれだったの!?…ひゃぁあ~、き、絆すごい…」
少しばかり意地悪な笑顔でエウフェリオが言った内容に胸を打たれたオリンドは感動に輝く純粋な目で一同を見渡した。
実力は十二分以上に備わっているのにと巷で好き勝手考察されているSランクに昇級しない理由が、こんな厚い友情のためだったなんて胸が熱い。
「あっはっは、いやいやオーリン、騙されんな!こいつらが蹴ってんのは、その結託した胸糞貴族連中のお抱え打診をメッタメタに断りたいからだって!」
「…え。…ん…と。…それって、アレグさんのために仕返ししてるんじゃ…?」
「…おお!?」
めしり。
力加減を誤ったアレグの手の中で木匙が折れた。
「んっほっほ。だあって、ご丁寧にあたしたちを個別任務で遠ざけた隙にって手口まで使ったんだもの。一生許すわけ無いわよ」
とてもいい笑顔が真っ赤になった勇者に目一杯降り注がれる光景を前に、ほんとうに素敵な人たちだなあ、とオリンドの胸の内はますます温まった。
その温かくなった心持ちが伝播したわけでもないが八十と八十一階層は一気に走り抜けた。八十階層は長い廊下からなり、美しかったであろう絵画の額ごと割れ破れていくつも転がる回廊の左右に連なる扉は悉く破壊され、魔物の爪や牙、魔力攻撃の痕といったものが色濃く残されている。
戸枠に囲まれぽっかりと開いた四角い穴からは室内を根城や産卵場所にする魔物が襲い来たが、全てアレグの聖剣に払われイドリックの盾に防がれエウフェリオの魔法に打たれあえなく撃沈した。
八十一階層は城というより寄宿舎のような造りだった。おそらくは騎士や近衛兵といった城を守る兵士の滞在する場であったのだろう、格子状に通る廊下の左右にいくつも部屋の並ぶ間取りで、しかしながらその廊下がいただけない。どれもこれも途中で不自然に途切れて八十二階層に繋がる最奥への移動を困難にしていた。オリンドの描いた地図がなければ迷うこと間違い無しの迷路めいた道筋を辟易しつつ魔物を退けつつ辿ると、次の階層への階段が現れる。が、今回の調査はここまでだ。
最後に階段横の多目的室らしき部屋に巣食っていた、階層の主らしき白擢老狐、全身が真っ白の長い毛に覆われ目の下を縁取る黒い線模様が特徴的な狐様の魔物を討伐にかかった。狡猾な性格をしており魔力も高く、自らの周辺に幾重にも浮かべた瑠璃紺色の炎を操って中遠距離から攻撃を仕掛けてくるばかりでなく、人の三倍ほどはある体躯から繰り出される前足の斬撃でもって近接攻撃もこなすことから、Aランクでもなかなか手こずる厄介な存在だ。その毛皮は侯爵も通うほどの高級娼婦御用達の一品であり、核は一旦地中に埋めて重力魔法などを使用した加工を施せば上級の魔石にもなる。一頭仕留めれば大金貨二十枚は下らない。
「っしゃー!今回はこんなもんだろ!ちょっと拍子抜けだけどさ」
その白擢老狐を易々と倒したアレグは聖剣を担ぎ直して首の関節を鳴らした。
「わりと魔物も少なかったものねえ…」
「魔物同士の縄張り争いが熾烈だったようですね。いくつか壁も崩れ落ちているような有様でしたし」
「ってか、階層自体が狭いじゃん。地図見た時にいきなり狭くなるなって思ってたけど、つまりこの先ほとんど城だけってことか」
帰り道を辿りながらふとアレグはオリンドを振り返って聞いた。狭いと言っても八十一階層は大人数を収容するべく小さな村程度はあったし、八十階層は玄関前で見たような庭を内包する造りになっており、端から端まで真っ直ぐ歩くだけでも十数分はかかりそうな広さだ。そこに並みのAランクでは苦戦するような魔物が跋扈している。拍子抜けを味わうのは彼らくらいのものだろう。
「ええと、九十九階層まではたぶんお城」
ちょうど百階層目で突然様相が変わるから覚えている。と、オリンドは描いた地図の記憶を引っ張り出した。
「けど、確か八十三階層は城だけじゃ無かったよな?」
パキフィツム出のならず者どもを撒く時に描いてもらった予備の地図にも、城下町風の地形が描かれていたと思ったが、と、イドリックが思い返しながら言うとエウフェリオが立ち止まって鞄の中を漁った。
「ええ、確かそのはず…。あれはギルドに提出していないので持ってきていますよ。…ふむ。そうですね、城と街、ですねこれは」
取り出した紙を眺めたエウフェリオは知ってから見れば確かにそうだと頷いた。それも街の方は家々がかなり入り組んだ配置になっている。
「なんだそれ、ほんと変なダンジョンだな」
「アルちゃん一回全部地図を見たんじゃないの?」
「えー、転送陣のルートばっか考えて見てたから覚えてねえよ。この辺てか城は記憶に無えから隠し部屋通ったかすっ飛ばしたんだろし。…オーリンは?」
「あうう、なぞるのに夢中で、すごい印象的なとこ以外はあんまり覚えてない…」
「ふふっ。大興奮でしたものねあの時は」
「ありゃあな。過集中だったろうから、そりゃ覚えてなくてもしょうがない」
「ちょっと待って、何で誰もアルちゃんに突っ込まないのよ、前夜祭の前に城すっ飛ばしといて通路ほぼ全部見てきたとかぬかしたのよこの子」
「え、だって百から先?かどうか知らんけど最後の方はちょっと見てきたもん、そしたらほぼ全部だろ?」
思わず四人とも立ち止まった。やはり地中なのに強靭な風が吹いたような気がする。
「…な?こんな返事が返ってくるのに突っ込むのは、間が抜けてるってもんだろ」
「…そうね…。あたしが馬鹿だったわ。まあ、いいわよ。アルちゃんじゃ無いけど次にどんな階層が待ってるかわからないのは楽しみだわ」
「違いない!」
地図はあれど城の内装だ家具だのが描かれているわけでもないし、再び城下町が待ち構えているなら街並みも楽しめそうだ。きっとこの先でもクラッスラはたっぷりと驚かせてくれるはず。
次回への期待を胸にギルドまで戻ったアレグたちは、しかしてその前に驚く羽目になろうとは思いもよらなかった。
「っちょっと、なによこの張り紙!?」
受付カウンター付近にある壁の張り紙が目に入った瞬間、ウェンシェスランは転がりそうな勢いで走り寄った。
何枚も貼り付けられたポスターに描かれているのはどれもこれも行方不明者の似顔絵だ。
自警団やギルドを頼っても探し出せなかった人物に対する情報を広く集めたい時や、いっそ冒険者を募り人海戦術で捜索したい時に使用されるのが、依頼掲示板の隣に設けられたこの掲示板であるのだが。
「なんで、…なんでデティちゃんの捜索願いが出されてるわけ!?」
きつく問いかけられたカウンターの向こうに並ぶ職員は、誰も彼も顔を曇らせていた。
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