ヘタレ淫魔は変態小説家に偏愛される

須藤うどん

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ヘタレ淫魔と青少年の孤独

ヘタレ淫魔と青少年の孤独(2)

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 今日はチヒロとデートだ。大きなソフトクリームの乗った苺ミルクを飲む。おいしいなあ。あんまり平和じゃないけど……。

 おれが、まだ子どものヒロネには詳しく離さなかったが、自分が淫魔であることを明かすと、チヒロは自らの生きてきた人生を愚痴った。

「親の言うとおり勉強ばかりしてサボったこともないのに、それで結果を出せなかったら失敗作扱いだよ。大事な受験前に母さんは不倫して出ていくし、つか、受験失敗の原因、普通にそれじゃね? って。それならとことん失敗してやるって今はニートだよ。ニートの俺を父さんは人に見せたくねえから、ほとんど座敷牢住みみたいなもんさ。こうやって外出してるのもお忍びってわけ。俺ってなんなんだろうな。容姿もパッとしねえし……。その点、リケは美しい。それだけで、この世にいることを許されるよな」

 チヒロはおれの声や容姿などの雰囲気がとてもタイプだと言った。リケのタイプは? と聞かれるが、正直、最低な答えしか出てこない。
「おれは……男でおれに優しくしてくれる人なら誰でもいいかな」
 そう答えた。でも、一瞬、ソノオの顔が浮かんだのはなんでだろう?
 「そっ……か。傷ついたけど、同時にきみに有望さを感じたよ。おれはきみに人生めちゃくちゃにされたいわけだから、きみが薄情で残酷であればあるほどいい」
「そんな言い方やめてよ。おれこそ傷つくよ」
 チヒロに聞こえなかったふりをされた。

 人生めちゃくちゃにされたいとは言われたものの……。

 何でも命じてくれ、と言われても、おれみたいなヘタレ淫魔には命令などできるはずもなく、おねだりの域を出ない。それも、

 ジャンクフードの新作が食べたい。
 水族館でイルカショーが見たい。
 夏祭りに行きたい。

 ……そんな、自分でも子どもっぽいと思うような要求ばっかり。 
 大してチヒロの財布の負担にすらならず、おれの要望を叶えたがるチヒロに連れ回されて擬似デートのようなことをするだけの日々が続いた。

 やがて、擬似デートをしても大して楽しそうにもしないチヒロにおれはイライラしてきた。擬似とはいえデートなのにおれに失礼だ!

 ついにチヒロはチヒロでおれに文句を言ってくる。

「きみといてもただの健康的な生活だ。なんて味気ないんだ。話が違う」
「知らねえよぉ! おまえが勝手に言い出した話じゃん! 他人の人生を台無しにするなんて、頭の悪いおれには無理だよ! もう無理! 無理だから!」
「話が違う」
「話なんてどんどん変わってくんだよ。流動的になれない人間は生きづらくなる一方だぜ。流れる水は腐らないけどバケツに溜めた水は腐るだろ? おまえは変わらなくちゃいけない。……って、全部おれのパパの受け売りなんだけど……」

 チヒロはおれの話を興味無さそうに聞いていた。失礼だ!
「でも、俺はリケが好きだし、ずっと一緒にいてほしいと思ってるよ」
 そんなこと言われても残念ながら答えはひとつだ。
「おれ、おまえ、やだ。ごめんけど、やだ」
 すると、チヒロはあからさまにいじけてみせる。
「そうだよな……どうせ俺なんてニートだし……」
 その瞬間、カチンと来た。おれは千尋の自信なさげでいじけたところが自分と似ていると感じ、同族嫌悪した。
「おまえ、生きるのがつらいばっかで楽しくねえみてえにアピるけどよ、おまえは期間限定バーガー食っても、『すげえ美味い』じゃなくて『まあ、普通に食えるレベルかな』って言うし、イルカショーも集中して見ないであくびするし、夏祭りの露店がぼったくりって文句ばっか言うし、そういうのすげえよくねえぞ、自分から生きるのつまんなくしてんだぞ!?」

 おれは、おれにしてはとても珍しく激昂して声を荒らげた。ぎゅっと握った両の拳が怒りでふるふる震えたし、酸欠ぎみになった。

「低級悪魔のくせに偉そうに……!」
 チヒロに頬をぶたれた。
「おれはたしかにダメダメだけど、おれの種族ごと馬鹿にするな!」
 
 ぷんすか怒ったおれは羽を出して飛び去った。

 それから、さすがに本気で怒ったおれはチヒロと会わなくなったが、ヒロネとチヒロ二人分の重荷が自分にまで移った心地で息苦しくて、紛らわすためにソノオに繰り返しセックスをねだった。多分、ソノオは何か勘づいてるけど、何も聞いてこなかった。

 
「あ゙ッ゙♡♡ ソノオぉっ゙っ゙♡♡♡ あたまばかにしてぇぇ゙♡♡♡」

 何も考えたくない。

「けっちょ、う、に、ぶちこんでッ゙ッ゙♡♡」

 もっともっと、強い快楽を……! 全部、上書きして忘れたい!

「こうすればいいの?」

 どちゅ゙っ♡♡♡

「あ゙ぁぁ゙ぁぁ゙ぁ゙ッ゙ッッ゙♡♡♡ お゙ほぉ゙ぉ゙ぉ゙っっ♡♡♡」

 どぢゅ゙っ♡♡ ぐぢゅ♡♡

「ん゙お゙っ♡♡♡ ああ゙あ゙ぁ゙ぁ゙♡♡♡」

「最近、前にも増してヨガり狂ってぢゅうぢゅう♡ 縋ってくるね。自暴自棄にも見えるけれど、何か寂しいの?」

 寂しい? そう。寂しい。ソノオに正直に離せないから、ソノオとの間に距離ができたみたいで、すごく寂しい。

「話してくれないんだね。……くっ」

 寂しそうにしながらソノオはおれの締めつけに耐えきれず普段より早くイった。

 ごくごくごくごくごくごく……♡♡♡
 本当はストレスであまり食欲もないけれど、本能的に精液を飲み下す。

「げふうぅぅっ♡」

 直腸〈おなか〉がちゃぷちゃぷになるまで精液を詰め込んでも、相変わらずの汚いげっぷをするだけして、その実、大好きなはずのソノオの精液の味がよくわかっていなかった。
 来るところまで来てしまったと感じて、おれは無性に寂しくて、ソノオに抱き縋った。ソノオは抱きとめておれの頭を撫でたり、頬擦りしたりしてくれた。
  おれは救われた。
 しっかりしなきゃ、とおれは思った。今、抱えてるもやもやに決着をつけなきゃ、と。


(つづく)
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