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しおりを挟む「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれはもう遠い昔の出来事ですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
────────────────
「ルイ、貴方は将来どうするの?」
「分からないよ、まだ決めてない。」
「そうよね、私も分からない。
将来のことがとても不安だわ。」
「君はローレンスに嫁ぐんだろう?
不安になることないよ、きっと幸せに生きるさ。」
そう何の気なしに答える彼、ルイ・クリードに私は憤りを覚えた。
「どうしてそんなに普通なの?
あなたの恋人が他の人に嫁ぐのよ、それでいいの?」
当時、私とルイとローレンス王太子は学友だった。
ルイと私は同じ侯爵貴族ということもあってか幼い頃から家同士で交流があった。
だからか自然と惹かれあった。
彼と密かに恋人関係にもなった。
いつかは彼と結婚、なんて夢見ていた。
しかし学園に入学して間もなく、ルイから彼の学友ローレンス王太子を紹介された。
それからはルイと共にローレンス王太子とも交流する機会が多くなった。
しかし次第にこう噂されるようになった。
私がローレンス王太子に嫁ぐらしい、と。
不本意だった。
そんなつもりは全くなかった。
私は、ルイの友人だから仲良くしていた。
ルイと長く過ごしたくて、いつもルイと行動するローレンスと仲良くなれば、ルイと一緒に過ごす時間も増えると思って…
「ごめん、僕も君を手放したくはない。
だけど…」
ルイはそれ以上なにも言わなかった。
それからしばらくして、国王が急逝した。
すると当然ローレンス王太子が国王となる。
ローレンスは父である国王の死に深く悲しんでいた。
中庭の影でうずくまる彼を放っておけず、何度も肩をさすっていた時、彼は私にこう言った。
「エレーナ、君の恋人がルイなのは知ってる。だけどこれからは…僕の傍で僕のことを支えてくれないかな…」
「え…?」
これは、求婚されてる?
しかし、いつもは覇気のある彼の、弱々しい声と姿に私は同情した。
だから…
「私、あなたのこと支えるわ。」
つい、そう答えてしまった。
それからはトントン拍子に、ことが運んだ。
そしてすぐローレンス王太子の側室として嫁ぐことになった。
当然、ルイとも別れることとなった。
────────────────
どうやらローレンスは、遠い昔、私の恋仲を引き裂いたことを今も悔やんでいるらしい。
けれど安心してほしい。
私はあなたに嫁いだ日に彼への想いは断ち切ったのだ。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、過去に戻ったの?!
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