貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)

文字の大きさ
上 下
4 / 15

新たな選択

しおりを挟む


「エレーナ、ちょっといい?」


ローレンスを見送り、私もその場を後にしようと振り向くとそこには見覚えのある顔が立っていた。


「シアナ…?」


彼女、シアナはローレンスの正妻だった。
私にとって姉同然の人。


「立ち聞きしてしまったのだけれど…貴女ローレンスを振ったの?」


シアナにそう言われて私はギクリとした。

彼女は私がローレンスを愛す前から彼に一途だった。
きっと彼女にとってみれば、想い人と噂になっていた私は恋敵も同然だったはず。
私がローレンスに嫁ぐとき一番の心配事は、彼女との関係がうまくいくかだった。

けれど私の心配は杞憂に終わる。
結婚後、私たちは姉妹同然の仲になったから。

私は子宝に恵まれなかったが、シアナには子供が2人できた。
あの時、嫉妬という感情は沸かなかった。
ただ純粋に姉同然の彼女に子供が産まれて、とても喜んだのを覚えている。


「私が振ったなんて、滅相もないです。
ローレンス様には、私がルイにプロポーズされたことを相談していました。」


「そうなの?
私はてっきり…」


シアナは噂を信じているようだった。
当然よね。
実際結婚したもの。
でも…今度は違う。


「根も葉もない噂ですわ。
私にはルイがいますから。」


私はきっぱりと否定した。
するとシアナは安心したように顔を綻ばせた。


「それなら安心したわ。
2人ともお幸せにね。」


彼女にそう言われて、私は微笑み返す。
次の人生ではシアナと関わりになること少ないだろう。

その事実に、私は少し寂しい気持ちになった。


「エレーナ、今のはどういうこと?」


シアナが去っていき1人、立ちすくんでいると後ろからルイの声がした。


「僕と、結婚してくれるの…?」


私が振り向くとルイは驚いたように目を瞬かせていた。


「立ち聞きしていたのね。」


「それは、君が何を話しているのか気になったし…」


ばつが悪そうにそう言った彼に、私は愛おしさを覚えた。


「私、貴方と結婚することに決めたわ。」


「本当…?」


私の真意を確かめようとする彼の目を、まっすぐ見て私は言った。


「ええ、本当よ。」


「それは、夢のようだ…」


私が了承すると、ルイは感極まったというように目頭を押さえる。


「そ、そんなに?」


予想もしないルイの反応に私は慌てる。


「当たり前じゃないか、君と結婚できるなんて…僕は幸せだ。」


「私もよ。」


そう頷きながら私はルイの胸に顔を埋めた。
そんな私をルイは離さないというように、強く抱き締める。

ルイとこうして抱き合ったのは本当に久しぶりだった。
彼のこんな嬉しそうな表情を見るのも…

これからは彼の色んな表情を見ることができるのね。
私は期待に胸を膨らました。
しおりを挟む

処理中です...