KAОRU-マタニティ・デビル ~ボクに世界が救えるの?~

齋木カズアキ

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最初の始まり。

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 今から百二十年ほど前のこと。
 
 一九〇一年(明治三十四年)、私はこの世に生を受けた瞬間から独りぼっちになった。

「お前は雪の朝、森の中に捨てられていた。お前の名は私たちが付けたのではない。産着の中にそっと添えられていたお守りの中のお札に『薫』と記されていたのだ」
 私を拾い育ててくれたマタギの老夫婦は、ある日真実をそう打ち明けた。
 老夫婦は私を寵愛した。長い間子宝に恵まれず、そして私に出会い、何の躊躇いもなく慈しんでくれた。
 私はH県にある小さな村で生まれたらしい。
 だがそれしか彼らにも分からなかった。
 二人に対する恩恵は計り知れない。でもそれを知ってから、天涯孤独だと理解してから、私は度々夢を見、うなされるようになった。
 誰も踏み入れていない、誰にも汚されていない一面純白に覆い尽くされた大平原にポツリと置き去りにされ、泣き叫ぶ赤子の姿を俯瞰で見ている夢。
 行き場のない想い。
「お前は親の因果で孤独の宿命を背負った。たとえ本当の親が見つかったとしても、薫の傍にはいられない事情を抱えているはずだ。それならば親との絆など不要と考え、本当の親には見つからぬよう、私たちはお前を育てた。だが二人の天寿はもう近い。お前を何時までも支え続けることはできない。だからお前は独りで生きていかなければならない。独りで生きていく術を身に着けなければならない。もしも私たちのようにマタギとして生きるなら、その全てを伝授しよう。だが望まぬのなら、薫が自分の手で切り開くしかない。私たちの命が尽きるまで、お前の行く末を見守ってやろう。だがその後は薫独り。その時は今以上に本当の孤独を味わうだろう。独りが苦痛なら家族を作れ。お前の美しい姿なら、言い寄る輩は数多いだろう。だが、受け身になってはいけない。数多いる男の中でお前が相手を選ぶのだ。どんなに選り好みをしても
お前なら家族を作るのはきっと容易いはずだ。お前の本当の家族を作り自らの行く末を切り開くのだ。それ以外に宿命に打ち克つ術はない」
 育ての父は私にそう言い聞かせた。
 でも男は私の身に降りかかるであろう数多の災いまでは想像できなかった。
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