クローバーの友達

寛子

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クローバーの友達

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 一つ空席の机を見つめる

 私、朝乃矢イチカ 15才

 現在悩みちゅう


 チャイムが鳴り。


「今日はここまで

 午後も授業頑張りましょう」


 生徒きりーつ

 れーい

 ありがとうございました


 ボーッとしている

 イチカ

 の肩を軽く揺さぶる

 石田ななみ

「イチ、ご飯食べよー」

「あ、うん、ねぇねぇ、私の隣の席の子っていつ来ると思いますかー?

 」

 トントンと指で机を叩くイチカ。

 ななみが、首をかしげ

「入学してから1ヶ月たつのにねぇ」


 次の朝

 イチカは誰もいない廊下で鼻唄を歌いながら、スキップをしていたイチカ。

「朝は誰にも怒られぬ~♪」

 ニンマリしながら

 教室の扉を勢い良く開けたのだが……

「一番乗りで楽しいなぁーよほほいよほほい♪」


 そんなイチカの声に体がビクリっと

 震える田中詩音


「よほほい!」扉が完全に開き。

 イチカと詩音が

 目が合ったままカキーンと固まる。

 カチっカチっカチ

 掛け時計の音が教室に大きく響き渡る

 あれ?あの子もしかして………

「ねぇ」

 イチカが声をかけようとしたその瞬間…

 空いているベランダの窓から

 強風がピューーーーーッと教室に吹き込こまれる

 瞬間的に目をギュッと閉じるイチカ

 カーテンがバサバサバサと踊り終わるのを待ち、

 目をそっと開け



「なにこれ?やばくないかい?」

「ごめんなさい……あたしが開けてたから…」

 慌てて窓を閉めに行く詩音を見て

「大丈夫!そんなことより、そこの席の人だよね?」

 窓際の一番後ろの席を指差す、イチカ、

 苦笑いで、

「分からないの自分の席が」

 もう一度指差す、イチカ、元気いっぱいで


「そこであってる!その隣が私!楽しみにしてたんだもん」

 イチカはテンションマックスで

 スキップをして、自分の席に行き目を丸くさせ……

 こんなことってあるの!?私最大のキセキかも?!


「…今日キセキかも」

 詩音の腕を引っ張り机の前に連れていく、


 四つ葉のクローバーがイチカの机にポツン1つ置いてある。


 イチカがキラキラして

「どぉしよー!どぉしよー!ねぇねぇさっきの風だね!うそうそ嘘ーーキセキだよーーっ」

 跳び跳ねているイチカ、

 キョトンとし、優しくクローバーを撫で、クスッと笑う詩音


 数日後

 お弁当箱箱を開け

 ウキウキしてる、

「今日のご飯はなーにかなー」

 その隣でクスクス笑う詩音

 ふふんとニヒルな顔でななみが、

「イチのおバカさんが詩音に電線したんじゃ無いですかー?」

 イチカはぷんぷんと頬を膨らませ

「酷いじゃないですかー?ななみさん」

 ヒラヒラと手を振って廊下に出ていくななみ


 慌てる詩音に気づき

「あ~。毎日一緒に食べてる訳じゃないよ?悩んでる時とか1人で食べたいって言って屋上で食べてんの」

 深く頷く詩音。


 放課後の職員室

 って嫌いなんだよなぁ。

 好きな人もマレだけど………

「…でね、イチカさん部活決まったかしら?後決まってないの2人だけよ?」


「囲碁部は無いんですもんねー。う~ん」

 嫌だなぁ今さら行っても仲間外れにされそーじゃん。

「とりあえず入るだけ入いちゃいなさいな」

「「とりあえず」すか?」

 不満そうなイチカだが、しぶしぶ

「じゃーとりあえず将棋部入りますー」

「それと、詩音さんのこと、ありがとう。彼女学校楽しいって言ってるのよ」

 楽しそうに笑うイチカ

「いーえー」


 歌いながら教室に入るイチカ。

「今日はどうかな~♪ハイホー♪…あや?」

 目が合いふわっと笑う詩音

「残念!一番乗りはあたしです。…ね?」

「うん?」

「あたしね、養護施設から来てるの。」

「へぇー」

「携帯も自分で買うから今は持てないんだー、バイトしてる子は別よ?」

「いつ持てるの?」

「あたしは16かなー?施設を出て働いたらだから」

「へぇーそうなんだー」気の無い返事をしているイチカ

 詩音の顔が輝いて

「でね!下の子が自由帳が欲しいって言ってるんだけど、あるのに管理してる人が

『ダメだ』って

 あるのによ?」


 顔を歪めながらイチカが

「ムカつくね」


「でしょー出ていきたいけど、家無いし」

「それは困った!」

 クスッと笑う詩音

 イチカが首を傾げ

「どったの?」

 首を横に降り

「ううん」



 教室

 四つ葉のクローバーの栞を自慢気に見せつけているイチカ

「おはよーあ!出来たの?スッゴク素敵ね」

 鼻の穴を膨らませながら

「でしょー☆

 勉強したの!

 …でも、ひとつだから…」

 クスリと大人っぽい笑いかたをする詩音

「今度一緒に四つ葉見つけに行こーね」

「うん!」

 元気いっぱいに頷いたイチカ。

「あのさ。下の子達がね言うこと聞かなくて大変だったのー」

 詩音が頬っぺたをぷーっ

 と膨らませるのを

 見てイチカも頬っぺたを風船のようにしている。


「何それー(笑)」

 笑い会う2人だが、ふと詩音が真顔になり、


「実は…先生から部活早く決めちゃいなさい。って言われちゃって」

「そうなの?」

 苦々しく笑う詩音にイチカは…

「とりあえず入るだけ入ちゃえば?」

 詩音が下を向き

 表情が分からなかったが、声が震えていた。

「大人と同じこと言うんだね」

 クローバーの栞がイチカの手から滑り落ちていた……

 追いかけようとしたが、足が動かなくて追いかけられなかった私



 数日後

 ななみが落ち込んでいるイチカの顔を覗きこんだ。

「おーい。お昼ですよ、イチカさーん」

 暗い顔のイチカ

「あ、うん」

 ななみが、イチカの隣の席を見て、ポツリと

「来なくなっちゃったね」

「バカだ私

 自分が嫌だったのに人に言って」

 ……電話番号も、住んでる所も知らないよ……バカバカバカ

 机には、いくつものポツポツと雫が出来ている。



 18才になるイチカが駅のベンチで本を読んでいた、クローバーの栞の位置を変えようとしたら

 スルンと滑り落ちた。

 あちゃー、落ちちゃったよー

 パンツスーツ姿の女性が栞を拾ってくれて、

「あ、ありがとうございます」

「すっごくステキねこれ、貰っても良い?イチカ」

 顔を凝視し、涙が溢れ、詩音に抱きつくイチカ。


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