異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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一 第21緋連雀隊

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 呆れたように口を閉じる。なんか言われる前に、口答え。これはおれの癖・習性。
「おれが返事するまで、そこでじっと待ってたんじゃないの。聞こえてないの気付かないでさ」
「貴様の回復まであと丸二日かかる。その後は通常通り任務に戻る……これを告げるのは三度目だが」
「それは別に返事いらないやつじゃん。答えが必要なのが別にあったはずだ」
「……本当は聞こえていたんじゃないか」
 眉をひそめる。口を尖らせる。もとの顔面が人形じみて、変に無表情な印象があるが、見慣れてくるとそれなりの変化がわかるようになってきた。もちろん、おれが直接顔を合わせる機会のある表の異世界人どもはほぼほぼこいつだけだから、他の奴の表情は見分けられないかもしれない。
「聞こえてないよ。マジで気絶してたんだ。でもわざわざあんたが待っててくれたんだから、何かあるのかと考えるのが自然でしょ」
「どうせまともな答えは返ってこないだろうと判断したからだ」
「なに? もういいって?」
「こうして対話をしていて貴様がどういうものかを思い出した」
「命令違反のこと?」
「やはり聞こえていたな」
「違うって、他に詰められる心当たりがないだけだよ」
「他にないだと?」
 更に一層、眉をひそめた。おれを見下ろした顔の陰影が濃くなる。
「ないな。他の話、今してもいいの? おれの方は、いつでもあんたとこの間みたいな話しいたいけど、あんたはそうでもなさそうだからさ。ここは確かに二人きりだけど」
「その話はいい。……命令違反の理由だ」
 忌々しそうにおれの話を遮った。そのやり方は人間的だ。奴らの何もかもが、非人間的な訳じゃない。
「大した理由なんかないよ。冷静に考えて、逃げるってのができなかっただけなんだ。人間ってのはそう、それほど頭の出来がいいわけじゃないからさ……咄嗟に、後ろに逃げようと思っても、前に走り出しちゃうことってかなりあるんだよね。うん、そうだ、恐怖で身体が言うことを聞かなかったってことさ」
「真実を語っているのか?」
 それを見抜くつもりであるかのように、じっとおれを見つめる。おれもこいつの顔をじっと見る。
 この距離は、期待していたよりも近い。おれはこいつの目を見つめたが、こいつはおれの目を見ていなかった。表情……目の他に、口や頬の動き、皮膚に浮かぶ汗、呼吸のリズム、そんなものを見て、おれの言葉の裏を取ろうとしているらしかった。
 だから見つめ合えない。人類にとっては、見つめ合うことに特別な意味があるんだが。残念ながら今日のところは、それを共有することはできなそうだ。
「嘘だよ」
「貴様――」
 吐き捨てられ、顔が遠のいていってしまった。言わなきゃよかった。が、まあいいか。
「なんか罰則とかある?」
「治療リソースの追加を検討していたが今の答えでそれもなくなった」
「それさっき聞いたのと別件? もうないって言ったけど、やっぱ後で優しくしてくれるつもりだったの? 隊長として? 個人として?」
「その質問に答えることに意味があるとは考えられない」
 治療用ベッドの横に立ち上がって、高いところからおれを見下ろす目。本気で質問の意義がわかってなさそうな目。それは怒りや焦りが含まれるでもなく、平坦な、無垢の――と考えるのは、人類視点の奢りかもしれない。
「いいさ。とにかく軽い命令違反ぐらいじゃ、大した罰もないってわかった。戦力は貴重だもんな」
「我々は人間を何らかの力によって縛り付けるつもりはない。ただ、戦場での命令違反は貴様の命が危うくなるだけだ」
「優しいな」
 罰がないことに関して、じゃない。わざわざ忠告してくれたことに対してでもない。それはこいつら全体の方針ってだけだろう。そうじゃなくて、それが理由で――人類の駒が貴重だという理由で――おれの治療をしたとして、だからって枕元で目が覚めるまでじっと待っててくれるってのは、優しさじゃないか? それこそ人類視点の勘違いで思い上がりか。でもそれでもいいじゃないか。おれは「こいつは優しい」と考えることに決めた。
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