異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

文字の大きさ
53 / 58
三 坂井ミリはまだ知らない

18

しおりを挟む
 天井は少しずつ引きちぎれるように剥がれ落ち、巨大なコンクリートの一枚岩となって落下しつつある。天井の剥がれる速度は遅く、まだそれほど状況は差し迫っていないように見えた。
 まあ、そんなことを悠長に考える余裕を持てるのも、人間じゃなくなったこの肉体のおかげだ。おれの感覚では、十分余裕を持って助けに入れた。
 落ちる天井の下はやたらに商品が多い店舗の上だった。陳列棚もマネキンも倒れて服だらけだ。寄生体とナユさんが引っ掻き回したせいだろう。乱雑に跳ね飛ばされ積み上がった布の奥に埋もれるようにして女性が一人取り残されており、彼女を庇うために天井の下へ滑り込む。
 失った片腕で天井を受け止め、もう片方で彼女の背中を抱きかかえた。
 血で出来た腕とコンクリートぶつかって鈍い音が響く。当たり前だがコンクリートの天井は重い。血液を固めて棒状にしただけの腕じゃ細かい動作もできず、ただコンクリートに突き立てて支えにする他ない。
「大丈夫?」
 軋む音がしてんのは、天井の方だろう。おれの骨とかじゃない。そうだとうれしい。
 女性は既にほとんど気絶しているようなショック状態で倒れていたが、おれが背中を揺らすと目を泳がせて意識を取り戻した。
「だれ?」
 曖昧な発音だが、寝起きじゃ仕方ない。
「第二十一緋連雀隊西川カイ。救急隊員じゃなくて悪いけど、外傷ないみたいだからきっと助かるよ」
「あ、に、逃げ……」
「逃げられる。これどかすから、ちょっと落ち着いて待っててくれる?」
 店舗の隅で、背後の棚と天井に挟まれている状態だ。砂埃で視界が霞む。柔らかい服にまみれてクッションになっているのは幸いだった。
 にしてもこのコンクリートの塊、どうしようか。腕もどきを刺してるところにヒビが入っている。ここから真っ二つに割ったら間から出られるかもしれない。この女性をかばいつつ、固めた血の出力を上げる。もう一方の生身の腕で、角度を微調整しながら。
 安全に壊せばいいだけだ。そう難しくない。
 人助けは好きだ。それが正しいか間違いかといえば、人類の立場から言えば絶対に正しい行いだろう。やることなくて暇な人生、絶対に正しいことがわかりきってるなら、それをやらない手はない。
 ――という場面に、頭蓋骨から電子音が鳴る。
『西川――』
「それ今じゃないとだめ?」
『現在地点は』
「わざわざ通信してんだからせめて会話のキャッチボールして」
『応えられない状況なのか』
「いや余裕だよ。増援はいらない。でも話しかけないで欲しい」
 向こうがどういう状況でどういうつもりで通信をかけてきたのか知らないけど、悠長なやり取りのあとの回線越しに隊長が短く不機嫌に息を呑むのが聞こえた。
 そういう細かい反応、目の前に居なくても結構わかるようになってきた。
 何を、浮かれたことを考えてるんだ? 今はそれどころじゃないだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

処理中です...