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色欲も良いことばかりでは無い

《六之罪》非道な傷痕

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ブラーズに別れを告げ、私は一人王都を何処へともなくただぶらぶらと歩いていた。
散歩がしたいと言うのは本当の事であり、目的など特に無かった。

戻ってきた道を再び戻り、城を眺める。うん、いつ見ても大きいものだ。

感動も適度ににすませ、地理の把握という名目で改めて王都内を歩き回る事にした。

北の大通りには西ほど商人はいなかったが、それでも数人は行商をしていた。
それらをすべてスルーし、私は北門近くの小道に入った。

暫らくすると私は足を止めた。理由は単純である。

路地裏の行き止まりに、人が倒れていたのだ。

私よりも幼い、淡い桃色の髪を腰まで伸ばした女性が、仰向けに倒れていた。薄汚れた服は所々が破けており、その唇からは、血が流れていた。

いや、唇以外、身体の至るところから血が流れていたのだ。

「っ...大丈夫か!?おい!?」

流石の私もこれを見過ごす訳にはいかない。
すぐにその子の元に駆け寄り、その身体を揺さぶる。
反応は無い。

呼吸がしやすいように服を脱がして傷口を見ると、私は顔をしかめた。
どうやら切り傷自体はそれほど大きなものではなさそうだ。なら何故しかめたのか。

それは彼女の身体の至るところにある、あまりにも夥しい打撲痕だった。

手や膝に十箇所、お腹や背中に至っては十をはるかに超えるほどの紫色のこぶし大のおおきさの痣が幾つも幾つもみられた。これほどの暴行、恐らく骨も何本か折れているだろう。
顔にも沢山の打撃痕があり、幼さを残していたであろう顔は醜く紫色に晴れ上がっていた。

「これは...酷いな...。」

誰がこんな事をしたのだろう...。
傷の凄惨さを見るに恐らく男の仕業だ。見つけ次第、殺してやろう。

傷口が小さいとはいえ、それなりに血が流れている。恐らく半日以上はここに放置されていたのだろう。
このままでは体力が無くなって死ぬが早いか、失血が早いかの問題である。

「安心しろ、お前を助けてやる。」

意識の無い彼女に声は届いていないだろう。
私は彼女を抱き抱えた。背中にべっとりと張り付いた血が糸を引き、彼女の命が残り僅かである事を物語っていた。


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