わたしとあなたの夏。

ハコニワ

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二 名取美優

第37話 名前

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 私はどうも怖い話とか心霊スポットとか超がつくほど苦手なのだ。毎年あるテレビの心霊番組なんか、いつも違う番組にかえてしまうほど。お母さんも怖いものが苦手らしい。遺伝かな。

 7月29日(日)

 スマートフォンの充電バッチリ、タオル二枚とコンドーム箱持参、日焼け止めクリームを全身塗っていざ、男物色。
 コンビニエンスストア一軒も建ってないけど、流石に男はいるよね。

 ちょっと一日ヤってないだけで気が狂いそうだよ。今日の朝なんて、子宮がムズムズして家族がまだ布団で寝ているその横で、オナニーしちゃった。しかも二回も。

 パンティはおもらししたみたいにベチャベチャで、布団まで濡れてたからお母さんなんか、五年生にもなって情けない、って悲しんでた。

 まぁ、お母さんの話しは置いといて、早く疼きを沈めないと。朝ヤったオナニーがまだパンティを濡らしている。どうしても痒いのに手が届かないこの疼きを沈めるには、やっぱり、ぶっといおチンチンでしょ。

 私の好みの長さは約十八㌢、亀頭の直径五㌢だ。この長さと太さには無駄に拘っているの。だって、このベストな太さじゃないと満足できないし、あとでオナニーしちゃうじゃない。

 一度だけこのベスト以上の男の人とこの前ヤったんだけど、ありえないほど最高だったの。潮が何度も出て、気持ち良すぎて体がトロトロになるあの感覚が忘れられない。
 この村にこのベストなおチンチンあるかな。

 家を出て、少し行くと風景が変わる。二三軒家が並んで駄菓子屋とか本屋とか賑わっている中心部に辿りつく。車がやっとのことですれ違う狭い道路。

 その道の遠くは、陽炎がゆらゆらとうごめいていた。遠くの景色が蝋燭の火のように惑わし、大地からの暑さが足を火照る。

 まだ八月にもなっていないのにこの暑さ、異常気象だよ。陽炎はいとも簡単に目につくのに男は一項に現れない。というか、家を出てから村人一人見つけてないようにみえる。どうしよう、と思いつつ足取りがだんだん重くなっていると、第一村人発見! しかも男の子。

 私みたいに道路の白線からはみ出て歩いている子。

 私は盛大に転んだふりをした。
「い、いったたた! 尻もちついて立てないやぁぁぁ!!」
 男の子が振り向いた。雪のような真っ白な肌に顔以上に大きな眼鏡。昨日会った男の子だ。しかも、あの八重歯野郎も隣にいる。
「げぇぇえ!!」
「あ、大丈夫!?」
 眼鏡の男の子、確か、暁修斗っていったけ。修斗くんがすかさず手を差し伸ばしてくれた。八重歯野郎と違って親切だ。
 私は素直にその手を取って立ち上がった。修斗くんはニコニコ笑って語りかける。
「気をつけないと。あ、僕、修斗ていうの。昨日はごめんね。こっちは田村 司たむら つかさつーくんだよ」
 うん。知ってる。暁修斗くんね。へぇ、この八重歯野郎にもちゃんとした名前があるのね。今度呼ぶときつーくんじゃなくて、つーちゃんと呼ぼう。もちろん、親しみこめて。

 つーちゃんがあからさまに嫌そうな顔をして、紅色の舌をベロとだした。
「こいつ、絶対お前狙ってるわ。もしくは俺様だったりして! ハハハ!」
「そんなのありえないから」
 即効であしらうと、つーちゃんは口を金魚みたいにパクパクしてみせた。
「なんだぁ! 口の利き方がなってないなぁ」
「まぁまぁ」
 私とつーちゃんの間に修斗くんが割って入ってきた。私とつーちゃんはお互い、息そろって顔をそむく。修斗くんはその光景を見て、フフと微笑んだ。

 まるで、仲睦まじい夫婦を見ているような微笑みかただ。やめて。ほんとにそんなのないわ。考えただけで寒気がする。
「これからどこ行くつもりだったの?」
 修斗くんがのんびりした口調で問いかける。その目は真っ直ぐで、汚い世界を知らない無垢な瞳だった。男漁りなんて、とてもや言えない。

 私は戸惑いながら、嘘でもない本当でもない、曖昧な返事を交した。
「観光……かな?」
「それなら、僕たちと一緒のほうが良いね! ねっつーくん」
 修斗くんがつーちゃんのほうに顔を向ける。突然の展開に私は頭がついていけなくなった。一人で家を出たのに、厄介な展開にいってしまった。

 絶対無理。今日は本当にヤんないとこのウズウズはどう止めろというんだ。今にでも目の前にいる修斗くんらに飛びついて逆レイプしたい。洪水のようにとまらない濡れ口を大きいので塞いでほしい。

「はぁ!? ガチ言ってんの!? 今日こそあいつらと決着つけないといけないのに、こんな派手に化粧しているし、耳とへそなんかに穴が空いて、どう見ても都会ヤンキーの相手しなきゃならないのかよ!」
 誰が都会ヤンキーだ。ヤンキーは化粧なんかしません。それと、ピアスだから。ピアスも言えないのか。

 修斗くんは膝を曲げて、私のヘソ辺りを凝視して、目をおしあげた。
「ほんとだ! ヘソにピアスがはまってある! 痛くないの?」
「あ、あんま……そんなまじまじ見られても」
 顔が赤くなるのを感じた。
「かー! こいつ、いまさら隠してやがる!」
 つーちゃんが指差してゲラゲラ笑う。私はキッと睨んだ。
「あんたと違って繊細なのっ!」
「一応言うけど、俺ら学年上だかんな。先輩だぞ!」
 腰に手をつきフンと鼻息をこぼし、ふんぞり返った。信じらんない。修斗くんは学年上って言えば分かるよ。でも、こいつは無理があるよ。私女子の中では身長あまりないんだけど、五年生の平均は届いているよ。つーちゃんはその私とほぼ同じなの。五年生女子の平均身長と同じってどうなの。

 私はハンと鼻で笑ってみせた。つーちゃんは憤然とした態度で睨んできた。まさに一触即発。

 そのとき、向こうから大勢の子どもが群がっていた。近所の子どもだろうか。それにしては、物騒なものを持っている。釘が四方八方にうってあるバットをそれぞれ手にしている。

 今から野球でもするのか、それは多分、違うだろう。あんなバットで野球をやるにはしんどい。
「んげ! あいつら、自分たちから来やがった!」
 つーちゃんが目をおしあげ、体全体をわなわなさせた。
 修斗くんとつーちゃんたちがなにやら、決闘する相手らしい。その相手たちは二人と違って人数が多いし、体格がアメフト選手のように大きい。

 それなのに、決闘だなんて、はっきりいって勝ち目がないんじゃないの。 
 修斗くんは私の手を引いて脇道に走りだした。
「え? つーちゃんは?」
「つーくんはあとから来るよ!」
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