折々再々

ハコニワ

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創造Ⅱ

第19話 裁き

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 ヤミがこうなった理由は分からない。問い詰めても何も話さない。尋問しようとしても、その体がないからろくにできない。
 もたついている間、世界は闇に包まれている。ヤミが大蛇となって世界中を這い、黒い炭を撒き散らしたせいで空も大地も黒く腐敗している。  
 太陽神でさえもその侵攻は止められない。大地の上にある生命全ての物が無に。魂ごと消滅。輪廻転生も出来ない宇宙で塵となるのみ。
 肉体は死んだら黄泉に行く。それは、全ての、生命を持っている神でさえも輪廻は回る。でも魂消滅は非常に重い。
 ヤミが撒き散らした灰のせいで数千人の魂が消滅。数千人失くなったのならまた数千人作ればいい。
「はっ」
 ヤミが鼻で笑った。
 ようやく口を開いた。
「何を笑っている」
 大地の女神が問いだした。
 ヤミはあはは、と笑い続けた。その声は低く不気味に耳にまとわりつく。周りがしん、と静まり返ているせいで余計にその笑い声が響き渡り誰もが震えた。
 暫くしてからヤミは呼吸を整えてこう言った。
「神さまでさえも狼狽えるんだな」
 どこがおかしいのか、屈託なく笑いヤミは話を続けた。
「世界は闇に染まった。やがて宇宙と一体する」
 そのとき、月の女神が会議場に姿を現した。
「あなたの思惑通りに行きません。我々を甘く見ないでください。太陽神とわたくしが地上に光を注ぎ、消滅は免れました」  
 二柱の光により世界中に撒き散らした闇は消えていった。ヤミの笑い声はそれでも止まらなかった。二柱が闇を消滅させるのをわかっていたからだ。

 地上の闇が消え去り、代わりにヤミの体が半分戻っていく。生気を吸い取ったみたいにみるみると。撒き散らしたのはヤミの一部分に過ぎない。
 次いて、ヤミを殺せと批判殺到。
 鏡から引っ張り出して、燃やして、削いで、刺して、吊るして、あらゆる方法で殺しても死なない。そこに実態は確かにあるのに。

 ヤミは一体何回死んだか。
 幾度に渡って苦痛と死を与えた。しかし死なない。
 黄泉の神が提案してきた。
「黄泉に閉じ込めておきましょう。こうして物理的に痛めつけても死なないなら、死の場所で永遠に閉じ込めておけば、解決では?」
 各々なるほどと理解の空気。黄泉の神の提案に異議を唱える神はいなかった。ヤミは黄泉で永遠に閉じ込める判決が下された。

 あの世の門がヤミを迎えにギィと開いた。 
「俺がいなくなっても闇は続いている。たとえあんたたちが世界をまた塗り潰しても、人の心に闇がある限り世界は暗雲だ!」
 ズルズルと鎖に引っ張られながらもヤミはそう叫んだ。嘲笑うかのように目を細めて。扉が閉じる間際でも叫び続ける。
「いいか? 俺は世界中の人間一日1000人殺し、あの世に来させる! 死者が蔓延し、再び黄泉の門が開かれる! その時をまっていろ!」
「だったらこちらは、人間を1500人産み落とす。一日1000人殺すというなら1500人の人間が生まれる」
 月の女神が閉じていく門に向かって叫んだ。ヤミは閉じていくまで神々の目を見据えていた。神々もその姿を最後まで見届ける。
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