19 / 78
創造Ⅱ
第19話 裁き
しおりを挟む
ヤミがこうなった理由は分からない。問い詰めても何も話さない。尋問しようとしても、その体がないからろくにできない。
もたついている間、世界は闇に包まれている。ヤミが大蛇となって世界中を這い、黒い炭を撒き散らしたせいで空も大地も黒く腐敗している。
太陽神でさえもその侵攻は止められない。大地の上にある生命全ての物が無に。魂ごと消滅。輪廻転生も出来ない宇宙で塵となるのみ。
肉体は死んだら黄泉に行く。それは、全ての、生命を持っている神でさえも輪廻は回る。でも魂消滅は非常に重い。
ヤミが撒き散らした灰のせいで数千人の魂が消滅。数千人失くなったのならまた数千人作ればいい。
「はっ」
ヤミが鼻で笑った。
ようやく口を開いた。
「何を笑っている」
大地の女神が問いだした。
ヤミはあはは、と笑い続けた。その声は低く不気味に耳にまとわりつく。周りがしん、と静まり返ているせいで余計にその笑い声が響き渡り誰もが震えた。
暫くしてからヤミは呼吸を整えてこう言った。
「神さまでさえも狼狽えるんだな」
どこがおかしいのか、屈託なく笑いヤミは話を続けた。
「世界は闇に染まった。やがて宇宙と一体する」
そのとき、月の女神が会議場に姿を現した。
「あなたの思惑通りに行きません。我々を甘く見ないでください。太陽神とわたくしが地上に光を注ぎ、消滅は免れました」
二柱の光により世界中に撒き散らした闇は消えていった。ヤミの笑い声はそれでも止まらなかった。二柱が闇を消滅させるのをわかっていたからだ。
地上の闇が消え去り、代わりにヤミの体が半分戻っていく。生気を吸い取ったみたいにみるみると。撒き散らしたのはヤミの一部分に過ぎない。
次いて、ヤミを殺せと批判殺到。
鏡から引っ張り出して、燃やして、削いで、刺して、吊るして、あらゆる方法で殺しても死なない。そこに実態は確かにあるのに。
ヤミは一体何回死んだか。
幾度に渡って苦痛と死を与えた。しかし死なない。
黄泉の神が提案してきた。
「黄泉に閉じ込めておきましょう。こうして物理的に痛めつけても死なないなら、死の場所で永遠に閉じ込めておけば、解決では?」
各々なるほどと理解の空気。黄泉の神の提案に異議を唱える神はいなかった。ヤミは黄泉で永遠に閉じ込める判決が下された。
あの世の門がヤミを迎えにギィと開いた。
「俺がいなくなっても闇は続いている。たとえあんたたちが世界をまた塗り潰しても、人の心に闇がある限り世界は暗雲だ!」
ズルズルと鎖に引っ張られながらもヤミはそう叫んだ。嘲笑うかのように目を細めて。扉が閉じる間際でも叫び続ける。
「いいか? 俺は世界中の人間一日1000人殺し、あの世に来させる! 死者が蔓延し、再び黄泉の門が開かれる! その時をまっていろ!」
「だったらこちらは、人間を1500人産み落とす。一日1000人殺すというなら1500人の人間が生まれる」
月の女神が閉じていく門に向かって叫んだ。ヤミは閉じていくまで神々の目を見据えていた。神々もその姿を最後まで見届ける。
もたついている間、世界は闇に包まれている。ヤミが大蛇となって世界中を這い、黒い炭を撒き散らしたせいで空も大地も黒く腐敗している。
太陽神でさえもその侵攻は止められない。大地の上にある生命全ての物が無に。魂ごと消滅。輪廻転生も出来ない宇宙で塵となるのみ。
肉体は死んだら黄泉に行く。それは、全ての、生命を持っている神でさえも輪廻は回る。でも魂消滅は非常に重い。
ヤミが撒き散らした灰のせいで数千人の魂が消滅。数千人失くなったのならまた数千人作ればいい。
「はっ」
ヤミが鼻で笑った。
ようやく口を開いた。
「何を笑っている」
大地の女神が問いだした。
ヤミはあはは、と笑い続けた。その声は低く不気味に耳にまとわりつく。周りがしん、と静まり返ているせいで余計にその笑い声が響き渡り誰もが震えた。
暫くしてからヤミは呼吸を整えてこう言った。
「神さまでさえも狼狽えるんだな」
どこがおかしいのか、屈託なく笑いヤミは話を続けた。
「世界は闇に染まった。やがて宇宙と一体する」
そのとき、月の女神が会議場に姿を現した。
「あなたの思惑通りに行きません。我々を甘く見ないでください。太陽神とわたくしが地上に光を注ぎ、消滅は免れました」
二柱の光により世界中に撒き散らした闇は消えていった。ヤミの笑い声はそれでも止まらなかった。二柱が闇を消滅させるのをわかっていたからだ。
地上の闇が消え去り、代わりにヤミの体が半分戻っていく。生気を吸い取ったみたいにみるみると。撒き散らしたのはヤミの一部分に過ぎない。
次いて、ヤミを殺せと批判殺到。
鏡から引っ張り出して、燃やして、削いで、刺して、吊るして、あらゆる方法で殺しても死なない。そこに実態は確かにあるのに。
ヤミは一体何回死んだか。
幾度に渡って苦痛と死を与えた。しかし死なない。
黄泉の神が提案してきた。
「黄泉に閉じ込めておきましょう。こうして物理的に痛めつけても死なないなら、死の場所で永遠に閉じ込めておけば、解決では?」
各々なるほどと理解の空気。黄泉の神の提案に異議を唱える神はいなかった。ヤミは黄泉で永遠に閉じ込める判決が下された。
あの世の門がヤミを迎えにギィと開いた。
「俺がいなくなっても闇は続いている。たとえあんたたちが世界をまた塗り潰しても、人の心に闇がある限り世界は暗雲だ!」
ズルズルと鎖に引っ張られながらもヤミはそう叫んだ。嘲笑うかのように目を細めて。扉が閉じる間際でも叫び続ける。
「いいか? 俺は世界中の人間一日1000人殺し、あの世に来させる! 死者が蔓延し、再び黄泉の門が開かれる! その時をまっていろ!」
「だったらこちらは、人間を1500人産み落とす。一日1000人殺すというなら1500人の人間が生まれる」
月の女神が閉じていく門に向かって叫んだ。ヤミは閉じていくまで神々の目を見据えていた。神々もその姿を最後まで見届ける。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる