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第二章 魔導士学園 編
アバロン湯けむり殺人事件 ~真相編 sideーA~
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~奴隷・アンナの視点~
私はハリス様に嫁ぐ前は医者の娘としてそこそこ裕福で幸せな生活を送ることができていました。しかし、その幸せな生活を一変させる事件が起きたのです。
父が営む診療所で誤診騒ぎが起こったのです。誤診治療を受けた患者の何人かが父を訴えました。その時からです。私の家族が転落し始めたのは………
毎晩のように病院や自宅に嫌がらせが行われるようになり、患者の数も減っていきました。そして、病院を建てた時に借りたお金の返済が滞るようになったのです。そこにハリス様の使いがやってきて私が妻になるなら何とかしてくださるという事でした。
親達は反対しました。ハリス様の悪い噂を聞いていたからです。しかし、私は決心しました。私が犠牲になるなら家族みんなが助かるのです。妻になるからといって命までとられることはないでしょう。
しかし、その考えは甘いものだったという事をハリス様に嫁いでから痛感しました。私は何もわかってなかったのです。
ハリス様には複数人の妻達がいました。皆私と同じように窮地から救う代償として妻となったようでした。kこうなってくると誤診騒ぎも仕組まれたものだったのかもしれません。今となっては分からない事です。
私達はハリス様の性奴隷として扱われ、気に食わぬ事があると痛めつけらる毎日でした。
中には突然いなくなったもの達もいます。あまりにも痛めつけられて死んでしまっただとか、飽きてしまったのでS級薬師であるドミニク様の治験体として扱われ、廃人同然になってどこかに幽閉されている等と噂されていました。
私達は『隷属の首輪』をつけられているのでハリス様に危害を加えることも逃亡することもできません。そして、何度も死のうと思いましたが、それすらも『隷属の首輪』の効果ですることができませんでした。まだ痛めつけられて死ぬことができた者は幸せと言えるのかもしれません。
私達は自由を奪われた人形だったのです。
しかし、今回の旅で予想もしない事が起きたのです。すべてを諦めた虚ろな目に、力が宿ったのです。宿泊先に近づくにつれて、それを顕著に感じる事ができました。
今まで考えることさえ叶わなかったことです。それは、この豚を殺害するという断固たる意志でした。
どうやら『隷属の首輪』が故障したのかもしれません。この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいけません。この豚を殺して私も死ぬ。
そうすれば、残された女性達は救われるのです。私は馬車に乗りながら殺害の方法を考えました。
豚を守るグスタフは数々の戦場で名を馳せたという強者です。その目をかいくぐり確実に仕留めなければなりません。チャンスはそんなに多くないでしょう。入浴時か就寝時、いずれにせよ、グスタフとドミニクの2人がいない時にやらねばならないのです。私の非力な力で豚を殺害する事ができるのか。失敗すれば死よりも恐ろしい未来が待っています。しかし、私はやらなければならないのです。
私は覚悟を決めました。
そしてとうとうそのチャンスが巡ってきました。入浴時に私とインジシュカが一緒に混浴風呂についてくるように指示がありました。
そして混浴風呂の入り口にさしかかると、豚は予期せぬことを口走り始めました。
「女湯に行って、田舎娘を混浴風呂へと連れてきなさい。」
豚は『隷属の首輪』が故障していることを知らないので私が命令を素直に聞くと思っています。私は命令に反する事もできるのですが、豚にはまだ警戒されるわけにはいきません。私はその命令に従うふりをして質問をしました。
「田舎娘とは誰でしょうか?」
「大魔法使いと名乗るティーエという女性の事です。今女湯にいることは分かっているのです。何、一番胸のない女性を連れてくれば、それがその女性ですよ。」
豚は醜悪な笑みを浮かべました。
「かしこまりました。」
私はひとまず女湯の脱衣所へと向かいました。
さて、これからどうするか。混浴風呂へ戻り、首を絞めて殺すか。いや、それでは万が一叫び声をあげられれば隣の男湯にいるグスタフとドミニクの2人が混浴風呂へと入って来てしまう可能性があります。
何か武器となるものはないか………
私は脱衣所の衣服が脱ぎ捨てられた籠が目に入りました。
もしかすると、冒険者の誰かが短剣か何かを持ってはいないでしょうか。私はいくつかの籠を漁りました。
そして、私は一つの籠の中から見つけてしまったのです。それは天が与えてくださった救いだと確信しました。
『テトラニチン』とラベルの貼られた小瓶が服の中から出てきたのです。この『テトラニチン』は滅多に手に入れることができない毒薬です。この毒薬は何種類もの毒素を配合する事によって作り出すことができるのですが、その配合によって死の時間を操れることから『死神の宣告』と呼ばれ、暗殺や拷問で使用される劇薬です。
私は家にあった医学書でその存在を知っていましたが、S級薬師しか扱う事ができない類の薬なので実物を見たのは初めてでした。
何故、こんなところにあるのか。今女湯にはS級薬師がいるのか。それとも1週間前に起きて捕まっていないという犯人がいるのか。疑問はいろいろありますが、今はそんな事を考えている場合ではないのです。
『隷属の首輪』の効力が弱まっている今しか、私たちを好き勝手扱うあの醜い豚を殺すチャンスはないのです。
私は小瓶を持って混浴風呂の脱衣所へと戻りました………
~奴隷・インジシュカの視点~
私はこの地獄のような生活を送る前は神に祈りを捧げる敬虔な修道士でした。
私は騙されてこの地獄へと来てしまいました。
教会では本部に送らねばならぬお金がで足りなくなったから、ハリス様のところへと嫁ぐようにと教会の神父に言われました。それが神の教えだと言われ、私は疑うことなくハリス様のもとへとむかったのです。今考えればおかしな話なのは簡単に分かる事ですが、その時の私にとって神父の教えは絶対的なものであり、異を唱えるなど考えられないことだったのです。
後で分かったのは、その神父は定期的にいろいろな貴族へと修道士を商品のように斡旋する悪魔のような男だったのです。
私は世間のことなど何も分かっていなかったのです。
そして、今回の旅には私とアンナと新しく妻として迎えられることになった10歳にも満たない女の子でした。
あー、神はいないのでしょうか。こんな幼い子まで地獄に突き落とされるというのでしょうか。こんな世の中は間違っています。しかし、『隷属の首輪』をはめられた私にはどうすることもできません。
奇跡が起きました。私の祈りが神に通じたのです。
神の御力により『隷属の首輪』が無効化されたのを私は感じました。そして、温泉宿である『アバロン』に近づくにつれて私の中にあるどす黒い感情がだんだんと大きなものになっていきました。
私は神に祈りを捧げました。そして、私は神に懺悔しました。
どうか私にあの悪魔を殺す力をお与えください。どうかお許しください。人の命を奪ってしまう事を。
私はあの悪魔を殺すことを決意しました。
そしてその神の力はアンナの『隷属の首輪』をも無効化しているようでした。
混浴風呂の脱衣所で一人で帰ってきた時に私はそれを悟りました。『隷属の首輪』がはまっているのに、あの悪魔の命令に背いて一人で帰ってくるのはおかしいからです。
私は聞きました。
「もしかして、『隷属の首輪』の効果がなくなってるの?」
アンナはびっくりした顔をしてました。
「もしかして、あなたも?」
そこからは話がスムーズに進みました。私達はお互いに同じことを考えていたのです。
そして、アンナは毒薬について説明しました。これを血液中に少しでも入れることができれば必ず殺すことができるという事でした。
私は一人でそれを行うことにしました。アンナが一人で混浴風呂へと入れば、私が気付いたように、『隷属の首輪』が機能していないことにあの悪魔も気付くかもしれません。
アンナは私も一緒にと言っていましたが、あまりここで長い間言い争う時間がないと言うと最後はしぶしぶ了承してくれました。そして、私に感謝の言葉を何度も述べました。
感謝等必要ありません。これは私が神から授かった使命なのですから………
私は爪に毒薬を塗り、混浴風呂へと足を踏み入れました。
~奴隷・アンナの視点~
私は殺害をインジシュカに任せて、小瓶を元の場所へと返すために女湯の脱衣所へと向かいました。しかし、小瓶のあった衣服がなくなっていたのです。私は呆然としました。小瓶の持ち主は、わずかな時間の間に風呂から出て行ってしまったのです。
その時です。私に悪魔がささやいたのです。この小瓶をS級薬師であるドミニクの衣服のポケットに入れるという悪魔的発想を………
私はあの豚を殺して自分も死ぬつもりでした。しかし、ドミニクに罪をなすりつける事ができるなら、私にもそしてインジシュカにも自由に生活できる可能性があるのではないか。いえ、今は私一人ではないのです。インジシュカの事を考えれば必ず成功させねばなりません。
私はその考えを実行に移すことに決めました。ドミニクとグスタフはあの豚と同時にお風呂に入ったのです。時間は十分にあるはずです。私は男湯の脱衣所へと足を踏み入れました。
そしてドミニクの衣服のポケットに小瓶を入れることに成功したのです。私は混浴風呂へと戻りました。すると、混浴風呂からインジシュカが出てきました。どうやら成功したとの事です。
私達は誰にも見つかることなく部屋へと戻り、明日のために口裏を合わせることにしました。
~奴隷・インジシュカの視点~
私達の企みは成功を収めました。
あの悪魔が死に、ドミニクが犯人として連れていかれたことを私たちは泣いて喜びました。
その時、私達が使った薬の持ち主も食堂にいることを小さな声でアンナから耳打ちされました。小瓶の入っていた衣服を着ていたものが食堂にいるとのことでした。
私はその食堂にいるものとその仲間を見ました。
そして、その者は私たちが薬を持ち出したことを何も言いませんでした。私達を救済してくれたのです。私は心の中で謝辞を述べました。
私達はあの悪魔との奴隷契約を解消され、解放されることになりました。
私は戦争孤児として教会で育ったので両親もいません。あの悪魔のような神父のいる教会に帰ることなどありえないので、帰るところがありませんでした。そこで私は、私を受け入れてくれる教会を何件か渡り歩きました。
そしてある教会に行きついた時、あの事件の全貌が分かりました。やはり、あの温泉宿には神がいらっしゃったのです。そして、あの時神の傍らにいたあの方は聖女様だったのです。私達に悪魔を屠る勇気を下さり、そしてその手段を提供してくださった………
私は神に祈りを捧げました。
~奴隷・アスの視点~
お姉ちゃんたちと りょこうにきました。お姉ちゃんたちは 私のことを かわいそうだと何回も言ってました。わたしは、はりすさまに へやで ずっと まつように 言われました。後で いいことを してくれるということでした。わたしは わくわくして へやで まちました。
がんばって まっていたのだけど、とちゅうで ねむっちゃいました。朝おきると、はりすさまは もうどこにも いなくなってしまいました。お姉ちゃんがいうには はりすさまは 夜空にかがやくお星さまになった とのことでした。すごいと思いました。わたしはお星さまにおねがいごとをしました。
お母さんとお父さんにもういちどあわせてください。
そのおねがいごとはききとどけられました。ほんとうによかったです。
私はハリス様に嫁ぐ前は医者の娘としてそこそこ裕福で幸せな生活を送ることができていました。しかし、その幸せな生活を一変させる事件が起きたのです。
父が営む診療所で誤診騒ぎが起こったのです。誤診治療を受けた患者の何人かが父を訴えました。その時からです。私の家族が転落し始めたのは………
毎晩のように病院や自宅に嫌がらせが行われるようになり、患者の数も減っていきました。そして、病院を建てた時に借りたお金の返済が滞るようになったのです。そこにハリス様の使いがやってきて私が妻になるなら何とかしてくださるという事でした。
親達は反対しました。ハリス様の悪い噂を聞いていたからです。しかし、私は決心しました。私が犠牲になるなら家族みんなが助かるのです。妻になるからといって命までとられることはないでしょう。
しかし、その考えは甘いものだったという事をハリス様に嫁いでから痛感しました。私は何もわかってなかったのです。
ハリス様には複数人の妻達がいました。皆私と同じように窮地から救う代償として妻となったようでした。kこうなってくると誤診騒ぎも仕組まれたものだったのかもしれません。今となっては分からない事です。
私達はハリス様の性奴隷として扱われ、気に食わぬ事があると痛めつけらる毎日でした。
中には突然いなくなったもの達もいます。あまりにも痛めつけられて死んでしまっただとか、飽きてしまったのでS級薬師であるドミニク様の治験体として扱われ、廃人同然になってどこかに幽閉されている等と噂されていました。
私達は『隷属の首輪』をつけられているのでハリス様に危害を加えることも逃亡することもできません。そして、何度も死のうと思いましたが、それすらも『隷属の首輪』の効果ですることができませんでした。まだ痛めつけられて死ぬことができた者は幸せと言えるのかもしれません。
私達は自由を奪われた人形だったのです。
しかし、今回の旅で予想もしない事が起きたのです。すべてを諦めた虚ろな目に、力が宿ったのです。宿泊先に近づくにつれて、それを顕著に感じる事ができました。
今まで考えることさえ叶わなかったことです。それは、この豚を殺害するという断固たる意志でした。
どうやら『隷属の首輪』が故障したのかもしれません。この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいけません。この豚を殺して私も死ぬ。
そうすれば、残された女性達は救われるのです。私は馬車に乗りながら殺害の方法を考えました。
豚を守るグスタフは数々の戦場で名を馳せたという強者です。その目をかいくぐり確実に仕留めなければなりません。チャンスはそんなに多くないでしょう。入浴時か就寝時、いずれにせよ、グスタフとドミニクの2人がいない時にやらねばならないのです。私の非力な力で豚を殺害する事ができるのか。失敗すれば死よりも恐ろしい未来が待っています。しかし、私はやらなければならないのです。
私は覚悟を決めました。
そしてとうとうそのチャンスが巡ってきました。入浴時に私とインジシュカが一緒に混浴風呂についてくるように指示がありました。
そして混浴風呂の入り口にさしかかると、豚は予期せぬことを口走り始めました。
「女湯に行って、田舎娘を混浴風呂へと連れてきなさい。」
豚は『隷属の首輪』が故障していることを知らないので私が命令を素直に聞くと思っています。私は命令に反する事もできるのですが、豚にはまだ警戒されるわけにはいきません。私はその命令に従うふりをして質問をしました。
「田舎娘とは誰でしょうか?」
「大魔法使いと名乗るティーエという女性の事です。今女湯にいることは分かっているのです。何、一番胸のない女性を連れてくれば、それがその女性ですよ。」
豚は醜悪な笑みを浮かべました。
「かしこまりました。」
私はひとまず女湯の脱衣所へと向かいました。
さて、これからどうするか。混浴風呂へ戻り、首を絞めて殺すか。いや、それでは万が一叫び声をあげられれば隣の男湯にいるグスタフとドミニクの2人が混浴風呂へと入って来てしまう可能性があります。
何か武器となるものはないか………
私は脱衣所の衣服が脱ぎ捨てられた籠が目に入りました。
もしかすると、冒険者の誰かが短剣か何かを持ってはいないでしょうか。私はいくつかの籠を漁りました。
そして、私は一つの籠の中から見つけてしまったのです。それは天が与えてくださった救いだと確信しました。
『テトラニチン』とラベルの貼られた小瓶が服の中から出てきたのです。この『テトラニチン』は滅多に手に入れることができない毒薬です。この毒薬は何種類もの毒素を配合する事によって作り出すことができるのですが、その配合によって死の時間を操れることから『死神の宣告』と呼ばれ、暗殺や拷問で使用される劇薬です。
私は家にあった医学書でその存在を知っていましたが、S級薬師しか扱う事ができない類の薬なので実物を見たのは初めてでした。
何故、こんなところにあるのか。今女湯にはS級薬師がいるのか。それとも1週間前に起きて捕まっていないという犯人がいるのか。疑問はいろいろありますが、今はそんな事を考えている場合ではないのです。
『隷属の首輪』の効力が弱まっている今しか、私たちを好き勝手扱うあの醜い豚を殺すチャンスはないのです。
私は小瓶を持って混浴風呂の脱衣所へと戻りました………
~奴隷・インジシュカの視点~
私はこの地獄のような生活を送る前は神に祈りを捧げる敬虔な修道士でした。
私は騙されてこの地獄へと来てしまいました。
教会では本部に送らねばならぬお金がで足りなくなったから、ハリス様のところへと嫁ぐようにと教会の神父に言われました。それが神の教えだと言われ、私は疑うことなくハリス様のもとへとむかったのです。今考えればおかしな話なのは簡単に分かる事ですが、その時の私にとって神父の教えは絶対的なものであり、異を唱えるなど考えられないことだったのです。
後で分かったのは、その神父は定期的にいろいろな貴族へと修道士を商品のように斡旋する悪魔のような男だったのです。
私は世間のことなど何も分かっていなかったのです。
そして、今回の旅には私とアンナと新しく妻として迎えられることになった10歳にも満たない女の子でした。
あー、神はいないのでしょうか。こんな幼い子まで地獄に突き落とされるというのでしょうか。こんな世の中は間違っています。しかし、『隷属の首輪』をはめられた私にはどうすることもできません。
奇跡が起きました。私の祈りが神に通じたのです。
神の御力により『隷属の首輪』が無効化されたのを私は感じました。そして、温泉宿である『アバロン』に近づくにつれて私の中にあるどす黒い感情がだんだんと大きなものになっていきました。
私は神に祈りを捧げました。そして、私は神に懺悔しました。
どうか私にあの悪魔を殺す力をお与えください。どうかお許しください。人の命を奪ってしまう事を。
私はあの悪魔を殺すことを決意しました。
そしてその神の力はアンナの『隷属の首輪』をも無効化しているようでした。
混浴風呂の脱衣所で一人で帰ってきた時に私はそれを悟りました。『隷属の首輪』がはまっているのに、あの悪魔の命令に背いて一人で帰ってくるのはおかしいからです。
私は聞きました。
「もしかして、『隷属の首輪』の効果がなくなってるの?」
アンナはびっくりした顔をしてました。
「もしかして、あなたも?」
そこからは話がスムーズに進みました。私達はお互いに同じことを考えていたのです。
そして、アンナは毒薬について説明しました。これを血液中に少しでも入れることができれば必ず殺すことができるという事でした。
私は一人でそれを行うことにしました。アンナが一人で混浴風呂へと入れば、私が気付いたように、『隷属の首輪』が機能していないことにあの悪魔も気付くかもしれません。
アンナは私も一緒にと言っていましたが、あまりここで長い間言い争う時間がないと言うと最後はしぶしぶ了承してくれました。そして、私に感謝の言葉を何度も述べました。
感謝等必要ありません。これは私が神から授かった使命なのですから………
私は爪に毒薬を塗り、混浴風呂へと足を踏み入れました。
~奴隷・アンナの視点~
私は殺害をインジシュカに任せて、小瓶を元の場所へと返すために女湯の脱衣所へと向かいました。しかし、小瓶のあった衣服がなくなっていたのです。私は呆然としました。小瓶の持ち主は、わずかな時間の間に風呂から出て行ってしまったのです。
その時です。私に悪魔がささやいたのです。この小瓶をS級薬師であるドミニクの衣服のポケットに入れるという悪魔的発想を………
私はあの豚を殺して自分も死ぬつもりでした。しかし、ドミニクに罪をなすりつける事ができるなら、私にもそしてインジシュカにも自由に生活できる可能性があるのではないか。いえ、今は私一人ではないのです。インジシュカの事を考えれば必ず成功させねばなりません。
私はその考えを実行に移すことに決めました。ドミニクとグスタフはあの豚と同時にお風呂に入ったのです。時間は十分にあるはずです。私は男湯の脱衣所へと足を踏み入れました。
そしてドミニクの衣服のポケットに小瓶を入れることに成功したのです。私は混浴風呂へと戻りました。すると、混浴風呂からインジシュカが出てきました。どうやら成功したとの事です。
私達は誰にも見つかることなく部屋へと戻り、明日のために口裏を合わせることにしました。
~奴隷・インジシュカの視点~
私達の企みは成功を収めました。
あの悪魔が死に、ドミニクが犯人として連れていかれたことを私たちは泣いて喜びました。
その時、私達が使った薬の持ち主も食堂にいることを小さな声でアンナから耳打ちされました。小瓶の入っていた衣服を着ていたものが食堂にいるとのことでした。
私はその食堂にいるものとその仲間を見ました。
そして、その者は私たちが薬を持ち出したことを何も言いませんでした。私達を救済してくれたのです。私は心の中で謝辞を述べました。
私達はあの悪魔との奴隷契約を解消され、解放されることになりました。
私は戦争孤児として教会で育ったので両親もいません。あの悪魔のような神父のいる教会に帰ることなどありえないので、帰るところがありませんでした。そこで私は、私を受け入れてくれる教会を何件か渡り歩きました。
そしてある教会に行きついた時、あの事件の全貌が分かりました。やはり、あの温泉宿には神がいらっしゃったのです。そして、あの時神の傍らにいたあの方は聖女様だったのです。私達に悪魔を屠る勇気を下さり、そしてその手段を提供してくださった………
私は神に祈りを捧げました。
~奴隷・アスの視点~
お姉ちゃんたちと りょこうにきました。お姉ちゃんたちは 私のことを かわいそうだと何回も言ってました。わたしは、はりすさまに へやで ずっと まつように 言われました。後で いいことを してくれるということでした。わたしは わくわくして へやで まちました。
がんばって まっていたのだけど、とちゅうで ねむっちゃいました。朝おきると、はりすさまは もうどこにも いなくなってしまいました。お姉ちゃんがいうには はりすさまは 夜空にかがやくお星さまになった とのことでした。すごいと思いました。わたしはお星さまにおねがいごとをしました。
お母さんとお父さんにもういちどあわせてください。
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