宝石探しの怪盗を追って

笛みちる

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5.リュカと笹本

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リュカは学園長の孫という立場を利用して大学内に自分の部屋を持っている。
私権乱用も良いところだ。
笹本はため息をついてから部屋をノックした。
「失礼するよ。」
「きゃっ」
淑女の悲鳴にも気に留めず笹本は部屋に入っていく。
「いらっしゃい」
リュカは裸の体に薄い布を巻きつけた状態で笹本をちらりと見た。
「あんたって奴はデリカシーってものはないの」
彼の隣りにいた女性が金きり声を上げた。
当たり前だ彼女も薄い布で上半身を隠しているが肩が出ていてあからさまにあれである。
「君の汚い体に興味はないな」
「だから今日は『デリカシーはないの』と初めから聞いているでしょう。セクハラとデリカシーはまた違う質問よ!」
「だから汚い君にデリカシーも何も関係ないだろう。良く毎日していて飽きないね。何が楽しいのか」
よくある光景らしい。
「まったく・・リュカ。僕が予定を入れている時間に性行為をしているのは何かの嫌がらせかい。不愉快。」
「ふふ。そう怒らないでくれ。君があまりにも女性と仲良くしないものでね、心配で」
「帰るよ?」
仕方ないと肩をすくめてリュカは隣の女性の耳元に話しかけた。
「富貴子・・・また後で」
名残惜しそうに見つめあう二人に笹本は咳払いをした、急かさないといつまでも見つめあっているからだ。
リュカの頬に優しくキスをして富貴子と呼ばれた女性は去っていった。
「それにしても今日の君の案は君らしくないね。エキサイトだ。」
今日立てた作戦に関しては皆からの反感をかった。リュカは大喜びだったが。
「君がメインで戦う。素敵過ぎるよ!!」
「リュカ・・盗難は犯罪だよ」
「そうだね。芸術とは罪なものだものね。だからこそ捕まるわけにはいかない。」
「・・・」
「捕まらなくても死ぬ人は死ぬ。」
「君の・・・」
そこから先は何も聞かなかった。
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