引きこもりニートのオレが大賢者の手違いで異世界に召還された挙げ句、なぜか魔王から世界を救う予言の勇者をムリヤリやらされています!?

髙橋 ななし

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第一章 異世界に馴れるまで

なぜか異世界に!?

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「ではナナミン殿、汝を予言の大勇者様と認め、世界を脅かす魔王討伐を命ずる」

「だからなんで!!! 無理!無理だから! 絶っっっ対に無理だから!」




 さかのぼること数時間。

 七雄はパソコンの前でうーん、うーんと唸っていた。

「動画編集とは難儀なものですのぉ」

「最近の若人わこうどは良くこのようなものができますのぉ」

「在宅勤務志望で履歴書を送ってもどこもかしも一度は面接に顔を出せってうるさいもんでなぁ」

「こうなればオレ、異世界の勇者ゲーム実況者になるしかないじゃあないか?ははははは」

 七雄はよくいじめの対象にされがちだった。そのため引っ込み思案になり、高校も何とか保健室登校で卒業することができたが、もう何年と自室を出ていなかった。

 だが、七雄の両親は切羽詰まっていた。

『いずれは良くなるだろう』『一時期的なことに過ぎない』そう自分たちに言い聞かせていたが、三十路を目前にしても変わろうとしない七雄に両親は「何かしらの方法で収入を得なければ、家から追い出す」と追い打ちを掛けたのだった。

 そんな七雄も良いきっかけだと思い、いくつかの在宅勤務可の会社に履歴書を送ったが、どこも面接で一度顔を合わせるよにと返事を送っては七雄が断る始末だった。

 どうしたものかと悩んでいる時に、新作ゲームの広告を見て七雄はふと思いついた『異世界の勇者ゲーム実況者になろうと。

「そうだ、オレはゲームが好き。今時、ゲームのプレイ動画を乗せて金稼ぎをしてる人なんて五万といる。もしかしたら....オレにもできるのでは?」

 そうと決まれば話は早かった。七雄は直ぐに今注目を浴びているゲームをリストアップし、その中で自分が得意、なおかつ気になる物を選んだ。

「やっぱり王道のRPGゲームですよねぇ」

 ゲームをプレイして、それを録画するまでは良かったが編集に手間取っていた。

 気付けば事項は夜中の四時を回っていた。

「うーん、今日はこのくらいにしてそろそろ寝ようかのぉ」

 その時、部屋の床に魔法陣が現れて白く大きな光が七雄を包み込んでシュッと音と共に消えた。彼を連れて。

「....へ? ここは、どこ? ....え? なん....で....?」

 困惑した七雄が辺りをきょろきょろ見渡す。大きな部屋に赤く綺麗な絨毯があり、その上に七雄が尻もちをついていた。

 直ぐ近くにいた人物と目が合うと彼の顔から血の気が引いたようにみるみる青白くなる。

「友永....さん?」

 友永と呼ばれた女の子は黒いローブを身にまとっていて、綺麗なブロンドの髪を左側に流していた。さらに、右手には魔法使いのような大きい杖と左手には分厚く古い本を持っていた。

 黒いローブの女の子は七雄を一瞥してから向きを変え、隣に立っていた男性に分厚い本を丁寧に渡しながら訊ねた。

「お師匠様、こちらがかの予言に出てくる大勇者様ですの?」

「あぁ、吾輩の召喚術に間違いなどない」

 長身の白髪の男性が力強く答えると、七雄を目尻で睨みながら黒いローブの女の子は納得しないそぶりでまた言う。

「お言葉ですがお師匠様....随分と冴えない勇者様ですのね」

 お師匠、予言、勇者、召喚、馴染みのない言葉が次々と出て来て眩暈がする七雄を置いて、今度は長身の男性が誰かに向かって声を上げた。

「ごほん、ベルン陛下!こちらがかの勇者です」

「ほほう....。この者がか....」

 大きな王冠に赤いマント。いかにもアニメやゲームに出て来そうな王様が七雄をまじまじと見つめ呟いた後に、長身の男性は肯定した。

「はい陛下」

「えええええええ? なになに? どっきりか何かですか? 王様とか予言とか、どっきりですよね?? ねぇ! 冗談ですよね⁈ てかここどこですか⁈」

 理解が追い付かず、七雄はパニックになってしまった。彼の思考は停止し怯えながら周りをきょろきょろし「どっきりですよね?」と誰かからの肯定の意を得るのに必死だった。

「ふむ....勇者らしい覇気は無いように見えるが....」

 ベルン陛下はそう呟きながら情けないほどに震える七雄を上から下まで、今度は下から上へとゆっくりと見て手を顎に当てた。

「お言葉ですが陛下様、お師匠様は陛下様のご命令でかの予言で記されているよりも先に勇者様を召喚したのですのよ。きっと鍛錬の途中なので未熟に見えることですの。お師匠様とわたくしの指導があれば直ぐ魔王討伐に行けますの」

 黒いローブの女の子が言うと、王様はまたふむふむと言いながら何かを考えているようだった。

 落ち着いた二人とは逆に『魔王』という単語を聞いてから七雄は変な汗が流れるのを感じてしどろもどろに話し始めた。

「えっと....あのぉ。た、たた大変申し上げ難いのですがぁ....な、何かの間違いかと思いますよぉ? こ、ここ、ここここんな、お、お、オレななんかがゆ、ゆゆゆ、ゆうしゃぁ?な訳な、ないですぅ....ま、ま、まおうとかもよくわかりませんし? き、ききっと人違いですよ!」

 ベルン陛下の刺さるような視線に耐え切れなくて七雄は吃りながら言葉を並べる。

「情けないな。大賢者とその弟子よ、早く指導とやらを始めたまえ。我に時間はない」

 吐き捨てるように言ってその場を立ち去ろうとしたベルン陛下に七雄は縋って今度はもっとはっきりと言葉を放った。

「ま、まってください王様! きっと話せば誤解だってわかります! ほら、ま、まず初めましてしましょう? お、オレは藤田七雄、冴えないヒキニート....です。だ、だから! 魔王討伐なんてできるわけないでしょう⁈」

 『七雄』と聞いてベルン陛下は一瞬を眉を寄せた。

「ななおと言ったか? お主の名はふじいななみではないのか?」

「は、はい! 七雄です、ふじたななお!」

 あまりの圧に七雄はまた小さくなりかけたが、直ぐにはっきりした口調で答えた。

 するとベルン陛下は大賢者と呼ばれた長身の男性に視線を向けて訊ねた。

「大賢者、説明を」

 大賢者と呼ばれた男性は持っていた本をそのまま宙に手放したかと思うと、指をパッチンと鳴らしたと同時に本が消えた。そのまま指をこめかみまで持って行き、そこをとんとんとリズムよくたたきながら何かを思い出すような難しい顔で答えた。

「そうですね、予言では『来るきたる日に大勇者は天から舞い降りる、その名をフジイ ナナミ』とあります。古い予言なので、古代文字の読み間違いの可能性もございますね」

 『フジイ ナナミ』と聞いて七雄はほっとした。人違いだと分かればきっと家に帰してくれるはずだと思った。

「ふむ、なら勇者はこの者で間違いないな?」

「ちょ、ちょっと待って! 絶対別人だよ! そんな微妙なところを読み間違えるわけないでしょう!」

 なぜそうなる?というい気持ちで七雄は敬語までを忘れて必死にベルン陛下や大賢者に自分は勇者じゃない事を説得しようとしていた。
 
「もう人違いってわかったなら家に帰してくれよ!」

「それは無理だ」

 大賢者が静かに言う。

「え....む、無理? な....んで」

「あなたをここに呼び寄せるために吾輩の全魔力を使い果たした。あなたを帰すことも、予言の正しい勇者を呼び寄せることも....今更無理だ」

 大賢者の言葉を聞いたベルン陛下は絶望してへなりと力が抜けた七雄の肩にポンと手を乗せ声高らかに言い放った。

「ではナナミン殿、汝を予言の大勇者様と認め、世界を脅かす魔王討伐を命ずる」

「だからなんで!!! 無理! 無理だから! 絶っっっ対にイヤだからね!」



















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