崩れ壊れ堕ちてゆく

青桜さら

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武志の人生

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 武志の人生はごく普通より、ほんの少し恵まれいたと自身でも思っていた。
 将来、共に過ごそうと思える彼女。
 裕福な家庭の中で、不自由ない暮らし。
 家を出てからマンションに移り住むときも、親が自立を祝い金銭的補助をしてもらえた。
 順調な人生。
 そこそこ幸せな日々。
 就職も結婚も決まっていた……はずだった。

 何事も悪くない、そこそこ良い生活。
 他の人より幸せだろう。

 祖父母も唯一の孫を溺愛していた。
 彼らの財産も武志に相続させると、両親と祖父母は決めてくれた。
 お金に執着はないけど、あれば助かるもの。
 いずれ結婚して、生まれてくる子供へ渡してしまうのもいいだろう。

 親友の理久にも恵まれた。
 彼ほどに信頼出来る人は、なかなかいない。
 全てにおいて、武志は幸せだった。
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