上 下
3 / 10

三章 砂を掴む

しおりを挟む
 アーディの夢は不可解なものが多い。

 炎、水、白銀の子犬、体の長い水龍。
 それらは、断片の映像で流れゆく。取り留めのない、繋がりがわからないものばかり。

 たったひとつだけ、覚えているのは兄の存在。兄がアーディにいたという記憶だけが残っていた。

 何かを探さないといけないはずなのに、それが思い出せない。
 そのために、何があっても生き延びること。

 すべての夢と記憶は砂のようにこぼれ落ち、かき集めようとしても消えてしまう。残ったのは兄の『生きろ』という言葉だけだった。

 生き続けなければいけない。
しおりを挟む

処理中です...