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第一話「三人はこんな日常」
魔法省の廊下を如月伊央(きさらぎ・いお)は走っていた。
「もーっ! ルミくんもルカくんもワガママ言ってーっ!」
三階の端っこに位置する撮影スタジオのドアを「ごめんね持田くん迷惑かけて!」と勢いよく開けると、撮影セットの隅に置かれた二つのソファーにそれぞれ同じ顔がぐったりと座っていた。
「あー兄さんだー」
「イェーイ、来てくれたー」
「ワガママ言ってみるもんだねー」
「ねー」
全く同じ顔をした双子の如月ルミとルカが顔を見合わせてケラケラ笑う。制服のブレザーを着ているので、撮影用衣装に着替える気すら湧いていないようである。
はあああ、と伊央が盛大なため息を吐いた。
「まだ着替えてもないじゃん…」
「俺たちさっきガッコ終わったばっかでーす」
「疲れたー」
「今日体育で走ったんだよねー」
「数学でめちゃくちゃ頭も使ったしー」
「…どうしたら撮影する気になりますか」
ルミとルカがにんまりと笑い、そして声を揃えてこう言った。
「兄さんがキスしてくれたらがんばれるかも?」
魔法省専属モデルである双子の兄弟、ルミとルカ。
全く同じ顔で全く同じ見た目をした双子はネットを中心にアイドル並の人気を博していた。
そんな双子の弟を持つのは魔法省護衛課に勤務する事務員の伊央。
現在十六歳の双子とは十二歳離れた二十八歳、双子とは腹違いの義兄弟である。高校を卒業してすぐ一人暮らしを開始したのであまり接点はなかったはずなのに、なぜか双子にとんでもなく気に入られていた。
「はいはい…キスしてあげるからこっちおいで」
「兄さんから来いよ」
「そうだそうだ」
「…」
はあああ、と盛大なため息を吐いても双子はどこ吹く風。これは早急になんとか機嫌を回復させなければ今日の撮影自体中止になってしまう。それにこちらだって早く仕事に戻りたい。
並べて置かれるソファーの真ん中に膝をつき、まずは右側のルミの頬にちゅっ。続いて左側のルカの頬にちゅっ。
「これでいいでしょうか?」
しかし双子は眉間に皺を寄せる。
「は? ほっぺた?」
「あのさあ兄さん、やる気ある?」
それはこっちのセリフだけどなあ…。
「俺ら疲れて帰ってきてんのにこっから仕事するんだぜ?」
「もうちょい労りの何かがあってもいいと思うんだけどなー」
頭が痛い。さてどうしようか悩んでいると、胸ぐらを掴まれぐいっとルミに引っ張られた。
「んんっ」
勢いよく唇を塞がれすぐに舌が入ってくる。
「んっ、んうっ、んっ」
口の中をべろりと舐められ、ぢゅ、と舌を吸われる。その感覚にジンジンと舌が痺れていると、今度は反対側から首根っこを引っ張られてルカに無理矢理口付けられた。
「んうっ、うっ」
こちらも同じく痛いぐらいに舌を吸ってくる。舌だけでなく頭の中まで痺れてしまいそうだった。
ルカにキスされたまま、背後のルミに体をまさぐられる。シャツのボタンをぷつぷつと一つずつ外されネクタイさえも取られてしまう。
「こ、ら…っ、僕は仕事中…っ」
「俺らだってこれから仕事だよ」
「だからその前に兄さんに構ってもらおうと思って」
双子の低い声が両耳を奪う。脳に響いてクラクラしていると、コンコンコン、とドアをノックする音で伊央は我に返った。
「おーい双子、さっさと着替えてこんか」
カメラマンの持田(もちだ)だ。三人を見て呆れた顔をしている。
「持田くん!」
「あれモッチーもう来たの?」
「もう三十分経ったっけ?」
ちゅ、ちゅ、と双子は伊央の頭に額に頬にとキスをする。伊央は慌てて引き剥がそうとするのに双子は離れない!
持田が掛け時計を指差した。
「とっくに休憩の三十分経ってんだよ。せっかくお前らのモチベーション上げようと伊央連れてきたってのに盛ってんじゃねえよガキ共」
しかしそれでも双子は離さない。ルミにシャツのボタンを全て外された上にルカに鎖骨をべろりと舐められた。
「こ、こらっ! いい加減にしなさいっ!」
「ちぇっ、兄さんに怒られた。モッチーのせいだ」
「へーへー、着替えりゃいいんでしょ着替えりゃ」
「兄さんまだ仕事戻んないでよね。今帰ったら俺らも帰るから」
「今日は金曜だから兄さん家泊まりに行くから」
「あとでしっかり遊んでね、兄さん」
双子がスタジオを出て行った。閉まったドアを見ながらため息を吐いていると持田に笑われる。
「アイツらの愛重いなー」
「はは、それが二人分だよ…。ところで今日は何の撮影?」
「ポスター。レトロな感じで撮影しろ、って上から言われてる。小物も色々用意した」
「刀に拳銃…うーんこれだけじゃあテーマはわかんないなあ。二人が何着てくるか楽しみ」
「それにしても今時のガキは足が長えな。衣装係も驚いてたぞ」
「ルミくんもルカくんもスタイルいいからねえ」
「お前も負けてねえだろ伊央。ほら、さっさと前締めろ」
ボタンを締めるのにモタモタしていると、スッと持田の手が伸びてきた。腹を撫でられくすぐったい。
「今日はアザ出てないんだな。最近は体調大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう心配してくれて」
「何かあったら言えよ? 俺がすぐ…」
「兄さんに触んじゃねえよ!!」
腹を撫でていた持田の手が叩き落とされ顔を上げると額に青筋を浮かべるルミとルカが立っていた。あっという間に持田から隠すように双子の腕の中だ。
早い着替えだったなあと伊央は双子を眺める。
「今日は軍服がテーマかあ。すごくよく似合ってるね」
「兄さん危機感なさすぎ!」
「ていうかさっさとボタン締めて!」
詰め襟軍服姿の二人が伊央のシャツのボタンを締めようとするのに、衣装の一つである手袋が邪魔をして滑るらしく「手袋邪魔!」と叫びながら床に叩きつけ、伊央のシャツは綺麗に前を締められた。
ていうか外したのキミたち二人だけどね? そう思いながら伊央はされるがままだった。
ルミとルカは伊央を抱きしめ、持田に向かって低い唸り声を上げている。
「こらこらふたり共、年配者に向かって」
「ちょっと待て伊央。それじゃあ俺がジジイみたいじゃねえか。お前と同い年だぞ」
「兄さんは絶対あげねえからな」
「兄さんは俺らのだからな」
これはしばらく撮影は始まりそうもない…伊央は双子の腕の中、諦めたように晩ごはんのおかずに何を作ろうか考えていた。
「ていうかずっと思ってたんだけどさ、兄さん」
「モッチーと兄さんってどういう関係?」
「ずっと聞いてんのになかなか教えてくれないし」
「俺らずーっと嫉妬しまくってんですけど?」
前後に挟まされ、しかも同時に二人分の性器を受け入れているものだから伊央はそれどころではない。
「うっ、あっ、あっああっ、や、だからっ、ふたり同時、は…っ、あぁあっ」
「おっと、兄さん大丈夫?」
バランスを崩しかけると背後にいるルカに肩を支えられ、ついでとばかりに腰を動かされる。
「んんっ!」
「兄さんすげー汗かいてる。大丈夫?」
前にいるルミは張り付いた前髪をかき上げてくれ、ちゅ、とキスをされる。
そのまま唇も奪われた。
「ん、んん…」
「俺も兄さんにキスしたい。兄さんこっち向いて」
「あ、ちょっ、む、むり…っ」
「じゃあ舌出して」
この体制では振り向けないというのに無茶ばかり言うルカに赤い舌を出してみせると、なぜか指で強く引っ張られた。
「んうぅっ」
「兄さんの舌ちっちゃくてかわいい」
「兄さんは口もちっちゃいもんなあ」
「かわいい」
「全部かわいい」
背後のルカには指先で舌を弄ばれ、前面のルミには尖らせた舌でちろちろと唇の端を舐められる。
「はああっ、あっ、……んっ、んんっ、ん…」
舌を出し合い三人で舐める。もう誰がどの舌かわからない。左右から伸びてくる赤い舌に、伊央は必死になって吸い付いた。
ちゅ、と軽く吸い、ぢゅ、と強く吸ってみる。どちらのものかわからない唾液が唇の端を伝い、ぽたりとシーツに染みを作った。
気持ちいい。
受け入れる箇所はすごく熱くて痛みも感じるけれど、こうやって三人一緒でいられるとそれだけで気持ちがいい。
伊央の小さめサイズの性器の先端から、とろとろと蜜はあふれ続けている。
背後のルカの手が伸びてその性器を掴み、緩く上下に動かした。
「あっ、あっ」
「だからさー、兄さん。モッチーと兄さんってどんな関係なのって聞いてんですけど」
「ほら早く兄さん答えて」
「答えねえとイかせてやんね」
ぎゅ、と性器の根本を指で締め付けられ、若干の痛みがビリビリと体に走った。
「やっ、いた…っう、んっんっ、は、あ、あ…んんんっ」
それでも内側から快感が押し寄せてきて伊央の体の中でぐるぐると回り続ける。
伊央は甘い声と涙目で懇願した。
「イきた、い、よお…っ、んっんんっ、ね、おねがい…っ、ん、んっ」
内側で双子の性器が、ドクッ、とさらに大きく膨らんだのを感じた。
前と後ろで双子がため息を吐く。
「あー兄さんのおねだりかわいい」
「イきそうだったヤバい」
「やっぱ兄さんってかわいいんだよね。これで一回り離れてるとかマジ意味わからん」
「兄さんはかわいい。ーーねえ兄さん、中出ししていい?」
「あとでしっかり掻き出してあげるからいいでしょ? ね?」
「ダメ? ね、いいでしょ?」
「今日は兄さんの中でイきたい。ね、いい?」
左右の耳元で低い声で囁かれるようにしてお願いされるとゾクゾクする。思わず体だって甘く震えてしまった。
しかもその耳元では二人が一緒に擦り寄ってくる。かわいい。
おねだりがかわいいのはキミたちだよーーそんな言葉は飲み込んで、こくこくこく、と頷いた。
締め付けられていた根元の指が解かれ、上下に強く扱かれる。
双子と一緒に伊央は快感を追い求め、内側に叩き出される熱を感じながら伊央も吐き出した。
ころんと横になった伊央は、見下ろしてくる双子を睨みつけた。
「あのさあ」
「はい…」
「なんでしょう…」
おずおずと目線を逸らしながらルミとルカが返事をする。
「僕はずっと言ってるよね? 二人同時は無理だと。あのね、こっちはね、めちゃくちゃ痛いんだよ? 裂けそうなんだよ? わかる? すっごくすっごく痛いんだよ? そりゃあ気持ちいいよ? でもね、痛いのほうが勝つんだよ?」
「わかってるけどさあ…」
「だって兄さんが悪いんじゃん…」
ブツブツ文句を言う双子の頭をコツンと叩いた。
「だって兄さんとモッチーめちゃくちゃ仲いいじゃん。つかあの雰囲気って何だよ」
「どう見ても付き合ってる雰囲気じゃん。それか元彼とか」
そして双子は声を揃えてこう言った。
「やっぱ兄さんとモッチーって付き合ってた?」
双子の目がうるうると揺らいでいる。
ルミもルカも不安そうな顔で見つめてきて、そのかわいさのあまり伊央は吹き出しそうになるのをなんとか堪え枕に顔を埋めた。
「教えなーい」
「ちょっ! それはないでしょ兄さん!」
「いい加減はぐらかさないで教えろって!」
「ルミくんもルカくんも意地悪したから僕も意地悪するもーん」
「えー!」
「兄さん機嫌直してー!」
頭上で双子が今にも泣きそうな声で伊央の機嫌を取ろうとしてくるからつい笑ってしまう。
くすくす笑っているとそれに気付いた双子が、む、と頬を膨らませそして抱きついてきた。
「兄さんのバーカ」
「明日の朝はサンドイッチ作ってくれないと俺ら泣くから」
「もう今泣くから。兄さんがどれだけ謝っても許してやんね」
「あーあ、悲しい」
そう言って双子が泣き真似を始めたので「はいはい」とふたりの頭を撫でてやった。途端に双子は笑顔をこぼし「兄さん大好き!」とぺろぺろ顔を舐めてきた。
そして天井を見てぽつりと呟く。
「あのさあ兄さん…俺らのファンってのはわかるけどさあ」
「天井にポスター貼るのだけはやめてくんねえかなあ」
今まで撮影したすべてのポスターを天井に貼っている。もちろん天井だけでは足りないので、寝室の壁には埋め尽くさんばかりに双子が貼り付けられていた。
双子が笑顔で『君も魔法省に入ろう!』というポスターに、ローブを身につけ杖を持ったいかにもな魔法使いスタイルで『魔法使い募集中』というポスター、双子がお互いに銃を突きつけ合い『大事な人を、守ろう』と書かれているポスターなど、魔法省から発行された全てのポスターをこの部屋は網羅していた。
「兄さん抱くのにさあ、俺と俺が目え合うんだぜ? 怖えよ。萎えるよ」
「ポスター貼るのはいいからせめて別の部屋にしてくんね?」
「あとさ、俺らのフィギュア飾るのもやめてほしい。本物いるじゃん」
「俺らのぬいぐるみも別の部屋に置いてくれ。クッションも。俺がいっぱいいて気持ち悪いよ」
「ていうか俺らのフィギュア出てんだな…」
「ぬいぐるみもあるけどさ、これ同じ顔だし二体出す意味なくね…?」
寝室には魔法省が発売した全てのグッズを置いていた。もちろん置ききれないので別の部屋にも飾っている。
えー、と伊央は唇を尖らせた。
「かわいいじゃん」
「かわいくはない」
「俺ら目つき悪いし」
「寝室に置いてるとさ、さみしくなくていいんだよ?」
思わずそう溢すと双子が勢いよく飛び起き伊央の顔を覗き込んだ。
「兄さんもしかして一人暮らしさみしいのか!?」
「俺らも一緒に住んであげるよ!?」
「高校卒業したら一緒に住もうね」
「えー! 今すぐがいい! 今すぐっ!」
「家事するし! 俺らも頑張って家事するし!」
「だからお願い兄さん!」
「一緒に住みたいーっ!」
伊央は遠い目をしてみせた。
「そういう問題じゃないんだよ…ただでさえこんな関係だからキミたちのお母さんに申し訳ないんだよ…」
「別に兄さんが襲われてるわけだしいいじゃん」
「一応兄さんに口止めされてるから言ってはないけどさ、母さんたぶん気付いてる」
「うわあああますます実家帰れない…」
伊央は真っ赤な顔を両手で覆った。
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