2 / 60
第一章 使命の伝承
間違えた言い訳
しおりを挟む
「生贄・・・?」
「簡単に言えば世界の為の犠牲ということだな」
そうじゃない。言葉の意味を聞いたのではなくて、アリスが言っていることがどういうことなのかを聞いたのだ。柚葉の姉、和葉も同じ平凡な日本人で、ごく平凡に生きてきた。ここが異世界だということが本当なら、それこそこんな世界と関わり合いはなかったはずだ。
「生贄って、何の・・・?なんでお姉ちゃんが?」
「・・・まぁ・・・この世界を維持させる為だ。それにミノリカズハが選ばれた」
この世界は数年、もしくは数十年、数百年に一度、世界の滅びの年が来る。町は廃れ、木々や水は枯れ果て、人々は姿を消していく。自然界に宿る魔力がその先の未来の為、全て奪っていくそうだ。だが、今を生きる人々からしたら、想像のできない未来に投資するなんて大きな賭けはできなかった。そこで人々は考えた。同等の魔力を差し出し、世界には手出しをしてほしくないと世界自身に願った。なんとあさましく、醜い願いだろう。それでも世界は応えてくれた。異世界人を差し出す選択肢をくれた。異世界人の魔力はこの世界では増長する。ここに生きる魔力が強い者でも比ではない。それは滅びの年の魔力を補える程だった。その異世界人を喚ぶ空間の歪が数年に一度やってくると、人々の間では話が広がっていった。
「まあこれは昔話、伝説に近いものだけどな」
かいつまんで説明したアリスは、自分自身も信じているか怪しいような表情でそう締めくくった。空を仰いで浮き出た輪郭は繊細で艶めかしい。
「その差し出される異世界人っていうのが、お姉ちゃんだったってことですか?」
「そういうこと。伝説とは言っても、現に滅びの年と呼ばれる年には凶作で国が滅びそうになったこともある」
「空間の歪が出るっていうのは」
「そんなもの、お前が一番の証明だろ」
それもそうだ。今はアリスの言っていることを信じるしか状況を飲み込む手立てはない。よく分からないことばかりだが。
「異世界人はお前の国から選ばれることが多い。この世界に来た時の魔力の増幅が大きいからな。その中でも魔力の大きい者が選ばれるわけだが、今回はミノリカズハだった」
「なのに間違えて私を選んでしまったと」
「そうとも言う」
「このヘッポコ」
「俺のせいじゃない!」
そうは言うが、柚葉にとってはアリスがヘッポコで和葉と取り違えてしまったからこんな目に遭っているのだ。必死に否定されても、弁明の余地はないと訝し気な視線を送る。
「誤解があるようだが!俺は間違った覚えはないぞ!」
「間違った人は皆そう言うんですよヘッポコ。自覚なき間違いが一番厄介なんですよヘッポコ」
「語尾に気をつけろお前!」
何故なら何をどうして間違ったか分かっていないから。120%合ってると思って2Bの濃い鉛筆でテストの答案を書いたものの、返ってくると赤で撥ねてあった時の虚しさと言ったらない。
「俺達は、俺は確かにミノリカズハを喚んだ。お前ではなくてな」
「そう言われましても、私はユズハですし」
「・・・何故だ・・・」
何やら反省なのか、考え込んでしまったアリスを見て、柚葉は仕方ないかとでも言うように小さく息を吐いた。できれば言いたくない。まだあまり口に出したくはないのだけど、話を進めるには必要な情報だろう。
「・・・・お姉ちゃんは去年亡くなりました」
「・・・・何?」
交通事故だった。
和葉はしっかり青で横断歩道を渡っていた。周りの人もいたはずだ。なのに何故か和葉だけが突っ込んできたダンプカーに見るも無惨に下敷きにされた。幸いと言っていいのか、顔はかすり傷くらいだったが、身体はぐちゃぐちゃ。葬式で見えるところが顔だけで良かったと思える程だった。そう聞いたのは和葉より2つ上の兄からだ。柚葉は見ていない。
「去年の今頃。・・・だからじゃないんですか?私がここに来たのは」
「ミノリカズハは死んだ・・・?」
そんなはずは、と驚きを隠せないアリスは地面を睨んで何やらブツブツと呟いていた。確かに神官はそう言っただの、おかしいだの聞こえた気がするが、柚葉には理解できない内容のようだ。
「それで、喚ばれるはずのお姉ちゃんがいなかったから、間違って私が喚ばれちゃったとかそんなんじゃないんですか?」
「ありうるな。姉妹なら魔力の質も似てるだろうから、ありえない話ではない」
「やっぱり人違いして喚んじゃったってことですねヘッポコ」
「だから俺のせいじゃない!」
「あいた」
口を尖らせて不満そうにする柚葉は、そっぽを向いた。だがすぐに少し身体を前へ傾けたのは、今にも手を出しそうなアリスに叩かれたのではない。瞬間、ピリッと身体の中心から痛みと気持ち悪さが込み上げ、思わず胸を押さえ込んだからだ。
「どうした?」
「あ、いや、なんか・・・胸焼け、みたいな。お腹空いてたからエギレかな」
「おっさんか」
いつもならお腹が空けば学校帰りにパン屋でも寄るところだったが、今日は帰ってからの御馳走を楽しみにしていたため、わざとお腹を空かせていた。それがこんなところで裏目に出ようとは。胃のあたりを摩ってみるが酔ったような気持ち悪さは拭えない。
「ううう・・・」
「魔力酔いだな。魔力に身体がついていっていないんだ」
「魔力酔い?」
だらしない表情をしたままアリスを見上げる。他人事のように清々しい整った顔が妙に腹立たしい。
「言ったろ。お前の世界の人間はこちらでは魔力が増幅する。急激に跳ね上がった魔力に身体が耐えきらないんだ」
「高山病みたいな?」
「何だそれは」
「山とかに登った時に起こる健康被害・・・あれ?ちょっと待って。さっきからあなた私に魔力があったかのように話してますけど、私普通の人間なんで魔力なんてないはずですけど?」
和葉がどうだったかは知らない。もしかして秘めたる魔力を隠し持っていたかも知れないが、少なくとも柚葉はそんなもの持った覚えも感じた覚えも、ましてや使った覚えもないのだ。ないものが増幅するわけない。
「それはただ覚醒していないだけ。生きとし生けるもの、全てに魔力は宿る。ただ小さすぎると感じることも使うこともできないんだよ。お前の国はそういう人間が多いんだろうが、その奴らでもここに来れば皆魔力を感じることが出来るはずだ」
つまりは魔力はあるかないかではなく、大きいか小さいかなのだそうだ。火種は皆持っていて、そこに火をつけられるかどうか。いわばこの世界に来ると酸素を与えられたように火がついてしまうのだ。
「しょ、消火器下さい・・・」
なんだか身体が熱くなってきた。本当に火がつくのではないだろうか。
「ち、ちなみにですが、魔力が増幅しすぎるとどうなります?」
「爆発するな」
「?!」
んな殺生な。間違えられて召喚されたあげく、ほしくもない魔力を覚醒させられ、飛び散って死ぬなんて考えただけでも恐ろしい。人体自然発火とどちらが辛いんだろう。どちらにしろ、このままでは命はないとよく分かった。
「・・・仕方ないな」
「はい?」
ふう、とアリスはため息をつき、柚葉の空いている方の腕を引っ張る。傾いていた身体が持ち上がり、あっという間にアリスの背中に乗せられていた。
「ぎゃあ!」
「っ!うっせぇな!静かにしろ、耳がもげるわ」
「いやいやいや、もげるようなことさせるからでしょ!」
「しとらんわ!」
助けてやってんのになんて言われようだ、とぶつくさ言いながらアリスは歩を進める。どうやらそれは少し先に見える城下町に向かっているようだ。
柚葉はできるだけアリスの背中から身を離そうとしたが、落ちかけたのでやめた。
「ひとまず城へ向かう。神官に処置してもらえば、魔力酔いもなくなるだろ」
「ぷひぃ」
「何だその返事は」
「いや、吐き気を抑えてましたらこんな感じに」
「吐くなよ!?絶対そこで吐くなよ!?」
「フリですか」
「フリじゃないわ!吐いたら速攻捨て置くからな!?」
その場合、捨て置いたとしてもアリスのその綺麗なお召し物は大変なことになります。
「でも、お城なんてそう簡単に入れるものじゃないんじゃないですか?衛兵とかいるもんでしょ?」
「何言ってんだ。王子を入れない衛兵がどこにいる」
「・・・・・・王子・・・誰が?私が?」
「何故そうなる・・・俺に決まってるだろ」
ぶす、と不機嫌な顔のまま、アリスは歩いていった。
「簡単に言えば世界の為の犠牲ということだな」
そうじゃない。言葉の意味を聞いたのではなくて、アリスが言っていることがどういうことなのかを聞いたのだ。柚葉の姉、和葉も同じ平凡な日本人で、ごく平凡に生きてきた。ここが異世界だということが本当なら、それこそこんな世界と関わり合いはなかったはずだ。
「生贄って、何の・・・?なんでお姉ちゃんが?」
「・・・まぁ・・・この世界を維持させる為だ。それにミノリカズハが選ばれた」
この世界は数年、もしくは数十年、数百年に一度、世界の滅びの年が来る。町は廃れ、木々や水は枯れ果て、人々は姿を消していく。自然界に宿る魔力がその先の未来の為、全て奪っていくそうだ。だが、今を生きる人々からしたら、想像のできない未来に投資するなんて大きな賭けはできなかった。そこで人々は考えた。同等の魔力を差し出し、世界には手出しをしてほしくないと世界自身に願った。なんとあさましく、醜い願いだろう。それでも世界は応えてくれた。異世界人を差し出す選択肢をくれた。異世界人の魔力はこの世界では増長する。ここに生きる魔力が強い者でも比ではない。それは滅びの年の魔力を補える程だった。その異世界人を喚ぶ空間の歪が数年に一度やってくると、人々の間では話が広がっていった。
「まあこれは昔話、伝説に近いものだけどな」
かいつまんで説明したアリスは、自分自身も信じているか怪しいような表情でそう締めくくった。空を仰いで浮き出た輪郭は繊細で艶めかしい。
「その差し出される異世界人っていうのが、お姉ちゃんだったってことですか?」
「そういうこと。伝説とは言っても、現に滅びの年と呼ばれる年には凶作で国が滅びそうになったこともある」
「空間の歪が出るっていうのは」
「そんなもの、お前が一番の証明だろ」
それもそうだ。今はアリスの言っていることを信じるしか状況を飲み込む手立てはない。よく分からないことばかりだが。
「異世界人はお前の国から選ばれることが多い。この世界に来た時の魔力の増幅が大きいからな。その中でも魔力の大きい者が選ばれるわけだが、今回はミノリカズハだった」
「なのに間違えて私を選んでしまったと」
「そうとも言う」
「このヘッポコ」
「俺のせいじゃない!」
そうは言うが、柚葉にとってはアリスがヘッポコで和葉と取り違えてしまったからこんな目に遭っているのだ。必死に否定されても、弁明の余地はないと訝し気な視線を送る。
「誤解があるようだが!俺は間違った覚えはないぞ!」
「間違った人は皆そう言うんですよヘッポコ。自覚なき間違いが一番厄介なんですよヘッポコ」
「語尾に気をつけろお前!」
何故なら何をどうして間違ったか分かっていないから。120%合ってると思って2Bの濃い鉛筆でテストの答案を書いたものの、返ってくると赤で撥ねてあった時の虚しさと言ったらない。
「俺達は、俺は確かにミノリカズハを喚んだ。お前ではなくてな」
「そう言われましても、私はユズハですし」
「・・・何故だ・・・」
何やら反省なのか、考え込んでしまったアリスを見て、柚葉は仕方ないかとでも言うように小さく息を吐いた。できれば言いたくない。まだあまり口に出したくはないのだけど、話を進めるには必要な情報だろう。
「・・・・お姉ちゃんは去年亡くなりました」
「・・・・何?」
交通事故だった。
和葉はしっかり青で横断歩道を渡っていた。周りの人もいたはずだ。なのに何故か和葉だけが突っ込んできたダンプカーに見るも無惨に下敷きにされた。幸いと言っていいのか、顔はかすり傷くらいだったが、身体はぐちゃぐちゃ。葬式で見えるところが顔だけで良かったと思える程だった。そう聞いたのは和葉より2つ上の兄からだ。柚葉は見ていない。
「去年の今頃。・・・だからじゃないんですか?私がここに来たのは」
「ミノリカズハは死んだ・・・?」
そんなはずは、と驚きを隠せないアリスは地面を睨んで何やらブツブツと呟いていた。確かに神官はそう言っただの、おかしいだの聞こえた気がするが、柚葉には理解できない内容のようだ。
「それで、喚ばれるはずのお姉ちゃんがいなかったから、間違って私が喚ばれちゃったとかそんなんじゃないんですか?」
「ありうるな。姉妹なら魔力の質も似てるだろうから、ありえない話ではない」
「やっぱり人違いして喚んじゃったってことですねヘッポコ」
「だから俺のせいじゃない!」
「あいた」
口を尖らせて不満そうにする柚葉は、そっぽを向いた。だがすぐに少し身体を前へ傾けたのは、今にも手を出しそうなアリスに叩かれたのではない。瞬間、ピリッと身体の中心から痛みと気持ち悪さが込み上げ、思わず胸を押さえ込んだからだ。
「どうした?」
「あ、いや、なんか・・・胸焼け、みたいな。お腹空いてたからエギレかな」
「おっさんか」
いつもならお腹が空けば学校帰りにパン屋でも寄るところだったが、今日は帰ってからの御馳走を楽しみにしていたため、わざとお腹を空かせていた。それがこんなところで裏目に出ようとは。胃のあたりを摩ってみるが酔ったような気持ち悪さは拭えない。
「ううう・・・」
「魔力酔いだな。魔力に身体がついていっていないんだ」
「魔力酔い?」
だらしない表情をしたままアリスを見上げる。他人事のように清々しい整った顔が妙に腹立たしい。
「言ったろ。お前の世界の人間はこちらでは魔力が増幅する。急激に跳ね上がった魔力に身体が耐えきらないんだ」
「高山病みたいな?」
「何だそれは」
「山とかに登った時に起こる健康被害・・・あれ?ちょっと待って。さっきからあなた私に魔力があったかのように話してますけど、私普通の人間なんで魔力なんてないはずですけど?」
和葉がどうだったかは知らない。もしかして秘めたる魔力を隠し持っていたかも知れないが、少なくとも柚葉はそんなもの持った覚えも感じた覚えも、ましてや使った覚えもないのだ。ないものが増幅するわけない。
「それはただ覚醒していないだけ。生きとし生けるもの、全てに魔力は宿る。ただ小さすぎると感じることも使うこともできないんだよ。お前の国はそういう人間が多いんだろうが、その奴らでもここに来れば皆魔力を感じることが出来るはずだ」
つまりは魔力はあるかないかではなく、大きいか小さいかなのだそうだ。火種は皆持っていて、そこに火をつけられるかどうか。いわばこの世界に来ると酸素を与えられたように火がついてしまうのだ。
「しょ、消火器下さい・・・」
なんだか身体が熱くなってきた。本当に火がつくのではないだろうか。
「ち、ちなみにですが、魔力が増幅しすぎるとどうなります?」
「爆発するな」
「?!」
んな殺生な。間違えられて召喚されたあげく、ほしくもない魔力を覚醒させられ、飛び散って死ぬなんて考えただけでも恐ろしい。人体自然発火とどちらが辛いんだろう。どちらにしろ、このままでは命はないとよく分かった。
「・・・仕方ないな」
「はい?」
ふう、とアリスはため息をつき、柚葉の空いている方の腕を引っ張る。傾いていた身体が持ち上がり、あっという間にアリスの背中に乗せられていた。
「ぎゃあ!」
「っ!うっせぇな!静かにしろ、耳がもげるわ」
「いやいやいや、もげるようなことさせるからでしょ!」
「しとらんわ!」
助けてやってんのになんて言われようだ、とぶつくさ言いながらアリスは歩を進める。どうやらそれは少し先に見える城下町に向かっているようだ。
柚葉はできるだけアリスの背中から身を離そうとしたが、落ちかけたのでやめた。
「ひとまず城へ向かう。神官に処置してもらえば、魔力酔いもなくなるだろ」
「ぷひぃ」
「何だその返事は」
「いや、吐き気を抑えてましたらこんな感じに」
「吐くなよ!?絶対そこで吐くなよ!?」
「フリですか」
「フリじゃないわ!吐いたら速攻捨て置くからな!?」
その場合、捨て置いたとしてもアリスのその綺麗なお召し物は大変なことになります。
「でも、お城なんてそう簡単に入れるものじゃないんじゃないですか?衛兵とかいるもんでしょ?」
「何言ってんだ。王子を入れない衛兵がどこにいる」
「・・・・・・王子・・・誰が?私が?」
「何故そうなる・・・俺に決まってるだろ」
ぶす、と不機嫌な顔のまま、アリスは歩いていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる