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「それで、貴方のお兄さま方なのだけど」
半ば引っ張られるような形でマリアはリリーアに連れられて、一般人が祈りを捧げるホールの長椅子まで来るとそこに座らされた。
目を白黒させながらもマリアは話し始めたリリーアと身体ごと向き合うと続く言葉を待った。
「お兄さま方は、その、とても素敵ね?ご令嬢にとてもおモテになるのでしょうね?」
この言葉は、額面通りではなく“ でもお兄さま方は聖女様をお慕いしておりますから”という言葉を引き出したいという打算からの言葉なのだが、純粋なマリアにその意図が伝わるはずもない。
「私は邸の外に出たことがほぼありませんので、ご令嬢方の事は分かりかねますが・・・お兄さま方が素敵であるという事はその通りだと思っております」
申し訳なさそうに、だけど誇らしげに返すマリアに、欲しい言葉が貰えなかったリリーアは若干イラつく。
だが自分から“ 彼らはいつ自分に求婚するのか?”など聞けるはずもない。
その時。マリアの目の前を光の粒が通り過ぎる。それに気付いたのはマリアだけだったらしい。
リリーアはそれを気にする素振りもなく、要領を得ない言葉を吐き続けている。
マリアはそれが精霊である事に気付いていた。此処が教会である事を考えても聖の精霊であると判断できる。
リリーアは当たり前のように精霊を見る事が出来ると思っていたマリアは首を傾げた。
なぜならば、聖女は聖の精霊に愛されており精霊と意思疎通が出来ると精霊自身に教えられていたからだ。
『彼女は私達が見えなくなったよ』
悲しげに精霊がマリアに囁く。この口ぶりから以前は見えていた事が伺えるが、何故見えなくなってしまったのだろう?マリアは不思議でならなかった。
「あの、聖女様」
「何かしら?」
話し続けていたリリーアは言葉を遮られて不満げにしながらも言葉を返す。
「聖女様はこの精霊さんが見えますか?」
本当は見えているのでは?そう考えたマリアはリリーアに直接聞いてみる事にした。
聞かれたリリーアは眉を顰める。小さい頃に精霊と話をしていたらしいと周りの大人に聞いていたリリーアはだけど精霊の存在を信じていなかった。
幼い子供に見られる空想の友達というヤツだろうと思っているのだ。だからマリアの言葉にリリーアは確信する。
(この子には虚言癖があるのだわ)
もしかしたら常日頃からこんな事を吹聴しているのかもしれない。そんな可哀想な妹が不憫で彼らはこの子を大切にしているのではないだろうか?
先程の彼らの態度を思い出す。美しいリリーアの姿を見て心を奪われただろうはずなのに反応は薄かった。
それは、この子が不憫で目が離せなくて、だからそんな余裕がなかったからなのでは?
彼らの興味のなさそうな態度に納得出来る理由が付いた事でリリーアはほくそ笑む。
それならば仕方ない。妄想の激しい身内が居るなんて、なんて可哀想なのだろう。
リリーアは自分が彼らを助けなければ、と考えた。そういえば。愛読していた小説を思い出した。
主役の恋人たちの前に立ち塞がる悪役が必ず居たものだ。純愛を更に尊いものに昇華する為のいわばスパイスのような。
(妄想激しい妹なんて、まさに悪役のようだわ)
儚げで愛らしい見た目なのに、美しく男らしい兄達に執着し兄達の愛する美しい聖女であるリリーアに害を成す。
それを優しく聡明な彼らが許すだろうか?いくら大切な家族であったとしても、命よりも大切な愛するリリーアを害すればさすがに怒りに燃えるだろう。
リリーアはそこまで考えて、その筋書きがとても素敵なものに感じていた。彼らは改めてリリーアの大切さを再認識するだろう。
「マリアリール様は、精霊が見えると言うの?」
出来るだけ優しく。でも出来れば激昂して手を出して貰えたらこちらのもの。
「え、と」
一方のマリアは困ってしまっていた。精霊が見える事は他言無用であると教えられていたからだ。
リリーアは聖女だから見えると思っていたので聞いてしまったが見えていないのなら言ってはいけなかったのかも知れない。
一度口にしてしまったからにはもう誤魔化せないだろう。マリアはコクリと喉を小さく鳴らすと恐る恐る口を開く。
「あの、はい。見えます」
聖の精霊が酷く悲しそうに周りを浮遊しているのが、マリアは気になって仕方がなかった。
半ば引っ張られるような形でマリアはリリーアに連れられて、一般人が祈りを捧げるホールの長椅子まで来るとそこに座らされた。
目を白黒させながらもマリアは話し始めたリリーアと身体ごと向き合うと続く言葉を待った。
「お兄さま方は、その、とても素敵ね?ご令嬢にとてもおモテになるのでしょうね?」
この言葉は、額面通りではなく“ でもお兄さま方は聖女様をお慕いしておりますから”という言葉を引き出したいという打算からの言葉なのだが、純粋なマリアにその意図が伝わるはずもない。
「私は邸の外に出たことがほぼありませんので、ご令嬢方の事は分かりかねますが・・・お兄さま方が素敵であるという事はその通りだと思っております」
申し訳なさそうに、だけど誇らしげに返すマリアに、欲しい言葉が貰えなかったリリーアは若干イラつく。
だが自分から“ 彼らはいつ自分に求婚するのか?”など聞けるはずもない。
その時。マリアの目の前を光の粒が通り過ぎる。それに気付いたのはマリアだけだったらしい。
リリーアはそれを気にする素振りもなく、要領を得ない言葉を吐き続けている。
マリアはそれが精霊である事に気付いていた。此処が教会である事を考えても聖の精霊であると判断できる。
リリーアは当たり前のように精霊を見る事が出来ると思っていたマリアは首を傾げた。
なぜならば、聖女は聖の精霊に愛されており精霊と意思疎通が出来ると精霊自身に教えられていたからだ。
『彼女は私達が見えなくなったよ』
悲しげに精霊がマリアに囁く。この口ぶりから以前は見えていた事が伺えるが、何故見えなくなってしまったのだろう?マリアは不思議でならなかった。
「あの、聖女様」
「何かしら?」
話し続けていたリリーアは言葉を遮られて不満げにしながらも言葉を返す。
「聖女様はこの精霊さんが見えますか?」
本当は見えているのでは?そう考えたマリアはリリーアに直接聞いてみる事にした。
聞かれたリリーアは眉を顰める。小さい頃に精霊と話をしていたらしいと周りの大人に聞いていたリリーアはだけど精霊の存在を信じていなかった。
幼い子供に見られる空想の友達というヤツだろうと思っているのだ。だからマリアの言葉にリリーアは確信する。
(この子には虚言癖があるのだわ)
もしかしたら常日頃からこんな事を吹聴しているのかもしれない。そんな可哀想な妹が不憫で彼らはこの子を大切にしているのではないだろうか?
先程の彼らの態度を思い出す。美しいリリーアの姿を見て心を奪われただろうはずなのに反応は薄かった。
それは、この子が不憫で目が離せなくて、だからそんな余裕がなかったからなのでは?
彼らの興味のなさそうな態度に納得出来る理由が付いた事でリリーアはほくそ笑む。
それならば仕方ない。妄想の激しい身内が居るなんて、なんて可哀想なのだろう。
リリーアは自分が彼らを助けなければ、と考えた。そういえば。愛読していた小説を思い出した。
主役の恋人たちの前に立ち塞がる悪役が必ず居たものだ。純愛を更に尊いものに昇華する為のいわばスパイスのような。
(妄想激しい妹なんて、まさに悪役のようだわ)
儚げで愛らしい見た目なのに、美しく男らしい兄達に執着し兄達の愛する美しい聖女であるリリーアに害を成す。
それを優しく聡明な彼らが許すだろうか?いくら大切な家族であったとしても、命よりも大切な愛するリリーアを害すればさすがに怒りに燃えるだろう。
リリーアはそこまで考えて、その筋書きがとても素敵なものに感じていた。彼らは改めてリリーアの大切さを再認識するだろう。
「マリアリール様は、精霊が見えると言うの?」
出来るだけ優しく。でも出来れば激昂して手を出して貰えたらこちらのもの。
「え、と」
一方のマリアは困ってしまっていた。精霊が見える事は他言無用であると教えられていたからだ。
リリーアは聖女だから見えると思っていたので聞いてしまったが見えていないのなら言ってはいけなかったのかも知れない。
一度口にしてしまったからにはもう誤魔化せないだろう。マリアはコクリと喉を小さく鳴らすと恐る恐る口を開く。
「あの、はい。見えます」
聖の精霊が酷く悲しそうに周りを浮遊しているのが、マリアは気になって仕方がなかった。
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