【完結】昭和アイドル好きの悪役令嬢、中途半端ぶりっこヒロインが許せないのでお手本を見せる

堀 和三盆

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番外編

3 アイドルごっことディナーショー


 あるとき。彼女はメイドに夜食を用意させた。そして、メイドが去ったのを確認すると、それを俺の前に置いた。

 俺の前、と言っても俺の姿が見えているわけではない。用意されたテーブルと椅子に前もって座るように指示されていただけだ。

 手ずからまだ湯気が上がる熱々のスープを目の前に置かれ困惑する。嫌いとされている温かい食べ物。だが、それをこちらから伝える気はない。

「今日はディナーショーごっこをやろうと思います。美味しい食事に夢中にさせつつも邪魔しないように歌やダンスを楽しませる――腕が鳴るわ」

 説明によると、どうやら食事をしながらの「コンサート」らしい。食べながらは見づらいし、認識阻害をかけているとはいえ食事をしているさまを見られるのは流石にまずい。そう思ったが、彼女が歌やダンスに集中しているときや、時折入る衣装替えの間などに意外と食べられ、温かいうちに完食できた。

 ちなみに別室で着替えると俺が付いていくのを分かっているのか、部屋を移動することなくあらかじめ用意した衣装に部屋の隅で着替えているので落ち着いて食べられた。

 俺も気にしないが、見えないからか彼女も俺がいる場所での着替えや入浴を気にしない。久しぶりに食べた温かい食事の影響だろうか。そんな様子を見ながらの食事に、少しだけ顔がほてった。



 ディナーショーごっこを気に入ったのか、それは結構定期的に続いた。その度に用意される温かい食事。夜食として用意されているせいか、軽めのスープなどが多かったが、それを食べながら見るコンサートをいつの間にか楽しんでいる自分がいた。嫌いなはずの温かい食事。なのに。

「貴方はトマトスープが好きなのね」

 ある日のディナーショーのあと、食べ終わった食器を手ずから片付けながら、モモリー様がそう言った。
 聞いて、俺は言葉の意味を理解できなかった。

「いつも、トマトスープのときだけ食べるの早いし。奇麗に食べるもの。影さんはトマトスープが好きなのね!」
 次から量を増やしてもらいましょう、と嬉しそうに言った。

 いつの間にか、嫌いなはずのものまで好きになっていた。




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