30 / 64
続編
3 逃走! 自称ヒロイン
しおりを挟む
自称ヒロインは相変わらず愛らしかった。手入れをされた艶のあるピンク色の髪に、輝くような白い肌。しかし幼さの残る顔には僅かに陰のようなものが見え、妙な色気を振りまいている。
同窓会会場に感嘆のため息と、マジかよ、本当に来たよという引きつったため息が響き渡る。
前者は付き合いの浅かった者や、十年たって、喉元過ぎた女子。後者は運悪くイケメンぶら下がり健康器の被害に遭い、恋人や彼女と別れることになった者たちだ。
世話係だった委員長は無邪気に手を振って喜んでいる。
初めて目にする召喚の様子にクラスメイト達は驚いていた。
しかし、何よりのサプライズだったのは。
「今日は私のために同窓会を開いてくれてありがとう! 会えてうれしいわ。でも――」
舞台上で。挨拶もそこそこに。
「ごめんね、みんな! 私、真実の愛にようやく気付いたの。だから、さよならっ!」
そう言ってドレスを翻し、全速力で同窓会会場から逃走する、自称ヒロインの姿だった。
「ちょ、待ってくれリリー! 約束が違う!」
金髪・紫目のイケメン王子様は慌てて自称ヒロインの後を追いかけて行った。
会場に、何とも言えない沈黙が漂う。
一時間がたったころ。ようやく王子は戻ってきた。見事な衣装は着崩れて、唇から血を流し全身ボロボロの傷だらけになっていた。
あちこち殴られたのだろう。足取りはフラフラしている。見るからに大ケガだ。
「くそう、平民の分際で。会場へ道案内をせよと言っただけなのに、こんな」そんなことをブツブツと言っているから色々と察した。
自称ヒロインを捜しているうちに道に迷い、帰れなくなったのだろう。それでよろしくない連中に道を聞き、この態度でボコられたと。
とりあえず救急車を呼ぶか、と相談していたら後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「遅れて申し訳ありませ……殿下!? どうしたのですか、そのお姿は!」
遅れてきた悪役令嬢だ。悪役令嬢は第一王子に駆け寄ると、そっと両手をかざす。
そして。
『癒しの光よ……!』
そのつぶやきと共に、第一王子の傷が、服が、何事もなかったかのように元のきらびやかな状態に戻っていく。
腫れあがって傷だらけだった顔が元のイケメンに戻っていく様を見ていて、同時に俺は見たくもないものを見てしまった。
第一王子の目に、驚愕と、そして明らかな恋情がよみがえる様を。
「ヴィーナ……ああ、ヴィーナ。君は、まだ癒しの力を、聖女の力を維持していたんだね」
「はい。お治しすることができて良かったです」
そう言って微笑む悪役令嬢を第一王子は泣きそうな顔で見つめ。
「十年もの間、僕のために純潔を守ってくれていたのか。ああ、許してくれヴィーナ。リリーとのことは間違いだった。あの女に騙されたんだ」
そして、震える手を伸ばし。
「ヴィーナ! 僕の真実の愛は君だった。迎えに来たんだ、結婚しよう」
悪役令嬢を両手で抱きしめ――
「俺の嫁に触るな」
……る前に、俺が力いっぱい突き飛ばした。
同窓会会場に感嘆のため息と、マジかよ、本当に来たよという引きつったため息が響き渡る。
前者は付き合いの浅かった者や、十年たって、喉元過ぎた女子。後者は運悪くイケメンぶら下がり健康器の被害に遭い、恋人や彼女と別れることになった者たちだ。
世話係だった委員長は無邪気に手を振って喜んでいる。
初めて目にする召喚の様子にクラスメイト達は驚いていた。
しかし、何よりのサプライズだったのは。
「今日は私のために同窓会を開いてくれてありがとう! 会えてうれしいわ。でも――」
舞台上で。挨拶もそこそこに。
「ごめんね、みんな! 私、真実の愛にようやく気付いたの。だから、さよならっ!」
そう言ってドレスを翻し、全速力で同窓会会場から逃走する、自称ヒロインの姿だった。
「ちょ、待ってくれリリー! 約束が違う!」
金髪・紫目のイケメン王子様は慌てて自称ヒロインの後を追いかけて行った。
会場に、何とも言えない沈黙が漂う。
一時間がたったころ。ようやく王子は戻ってきた。見事な衣装は着崩れて、唇から血を流し全身ボロボロの傷だらけになっていた。
あちこち殴られたのだろう。足取りはフラフラしている。見るからに大ケガだ。
「くそう、平民の分際で。会場へ道案内をせよと言っただけなのに、こんな」そんなことをブツブツと言っているから色々と察した。
自称ヒロインを捜しているうちに道に迷い、帰れなくなったのだろう。それでよろしくない連中に道を聞き、この態度でボコられたと。
とりあえず救急車を呼ぶか、と相談していたら後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「遅れて申し訳ありませ……殿下!? どうしたのですか、そのお姿は!」
遅れてきた悪役令嬢だ。悪役令嬢は第一王子に駆け寄ると、そっと両手をかざす。
そして。
『癒しの光よ……!』
そのつぶやきと共に、第一王子の傷が、服が、何事もなかったかのように元のきらびやかな状態に戻っていく。
腫れあがって傷だらけだった顔が元のイケメンに戻っていく様を見ていて、同時に俺は見たくもないものを見てしまった。
第一王子の目に、驚愕と、そして明らかな恋情がよみがえる様を。
「ヴィーナ……ああ、ヴィーナ。君は、まだ癒しの力を、聖女の力を維持していたんだね」
「はい。お治しすることができて良かったです」
そう言って微笑む悪役令嬢を第一王子は泣きそうな顔で見つめ。
「十年もの間、僕のために純潔を守ってくれていたのか。ああ、許してくれヴィーナ。リリーとのことは間違いだった。あの女に騙されたんだ」
そして、震える手を伸ばし。
「ヴィーナ! 僕の真実の愛は君だった。迎えに来たんだ、結婚しよう」
悪役令嬢を両手で抱きしめ――
「俺の嫁に触るな」
……る前に、俺が力いっぱい突き飛ばした。
75
あなたにおすすめの小説
十二回の死を繰り返した悪役令嬢、破滅回避は諦めました。世界のバグである司書と手を組み、女神の狂ったシナリオをぶっ壊します
黒崎隼人
ファンタジー
十二回の死を繰り返した公爵令嬢オフィーリア。十三回目の人生で彼女が選んだのは、破滅の回避ではなく、世界の破壊だった。
「この世界は、女神の描いた三文芝居に過ぎない」
ループする度に歪む日常、完璧な仮面の下に狂気を隠した婚約者や聖女。全てが残酷な神の「物語」の駒でしかないとしたら?
これは、筋書きを押し付けられた悪役令嬢が、同じく運命に抗う謎の司書と「共犯者」となり、狂った世界のシステムに反逆する物語。断罪の先に待つのは救済か、それとも完全な無か。真実が世界を壊すダークミステリーファンタジー、開幕。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆
白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』
女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。
それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、
愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ!
彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます!
異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆
《完結しました》
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
無能な悪役令嬢は静かに暮らしたいだけなのに、超有能な側近たちの勘違いで救国の聖女になってしまいました
黒崎隼人
ファンタジー
乙女ゲームの悪役令嬢イザベラに転生した私の夢は、破滅フラグを回避して「悠々自適なニート生活」を送ること!そのために王太子との婚約を破棄しようとしただけなのに…「疲れたわ」と呟けば政敵が消え、「甘いものが食べたい」と言えば新商品が国を潤し、「虫が嫌」と漏らせば魔物の巣が消滅!? 私は何もしていないのに、超有能な側近たちの暴走(という名の忠誠心)が止まらない!やめて!私は聖女でも策略家でもない、ただの無能な怠け者なのよ!本人の意思とは裏腹に、勘違いで国を救ってしまう悪役令嬢の、全力で何もしない救国ファンタジー、ここに開幕!
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる