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続編
5 悪役令嬢の幸せ
しおりを挟む「やれやれ。面倒なことになったし、もう帰るか」
「え。嫌ですわ。まだ来たばっかりですし、まだ会費の元を取っていませんもの」
そう言って、ビュッフェ用の皿をとる嫁。
「しっかりしてるな」
「当り前ですわ。これからは、ますます子供にお金がかかるのですから」
「え? これからって、なんで……」
言いかけて、気付く。ここ数カ月の嫁の体調不良。そして、同窓会を楽しみにしていたのに、「大切な用事」を優先させて出かけて行った。
「ヴィーナ、その、用事って、もしかして……」
急に、しどろもどろになる俺。落ち着け。何度目だよ。ああ、無理だ。三度目でも慣れない。
「三人目、ですって」
そっと、俺の耳に寄せて、愛する嫁がささやいた。今度は男の子かも、と。
ヴィーナには時々、こういうことがある。予言の力というか、先が読めるような。そして、それは不思議なくらい外れない。
「えっ、ヴィーナさん三人目が産まれるの!? すごい! おめでとう」
俺の次に報告を受けた委員長が大声で言う。
遠くで酒を飲んでいた王子がはじかれたようにこちらを向き、幸せそうにお腹を撫でるヴィーナを見て、泣きそうな顔をして一気に酒をあおった。ライフは0だ。
それにしても……考えなしの委員長め。大声で言いやがって。今が大事な時期なのに、何かあったらどうしてくれる。そう思ったが、ヴィーナは気にしてないようだ。予言の力で、既に先のことまで見ているのかもしれない。だとしたら、無事に産まれるのも決定事項なのだろう。
……もしかしたら、王子に自分の幸せを見せつけるために、あえて今日病院に行ったのかもしれない。意外と悪役令嬢的なところがあるから、大いにあり得る。
無事産まれたら、そして本当に男の子だったら、その力も消えてしまうわけだが……。
まあいい。先に何があろうと、俺達が幸せになるのは変わらないし、分からない方が楽しみだ。
「なんだよお前、ネルケさんと結婚してたのかよ。結婚式呼ばれてないぞ」
卒業してから疎遠になっていたクラスメイト達に絡まれた。
「仕方ないだろ。結婚式、国外だったんだから」
「あー、海外挙式か。そりゃ無理だー」
適当に納得したクラスメイト達は、それぞれ次の話題に移って盛り上がっている。
片隅では、役目は果たしたとばかりに、黒ずくめの連中が一緒になって飲んで食って盛り上がっている。オカルト研究会の連中だ。
彼らは異常に結束力が固い。七人のうち四人がうちのクラスだったから、そのせいもあるだろうが――実は、七人のうち、誰がクラスメイトなのかは今でも分からないのだ。
時に誰かの代わりに紛れ込んでいたり。
一緒に授業を受けていたり。
紛れ込む中には学年が違う奴すらいたらしい。しかもあんなに目立つ格好をしているというのに、なぜかいっさい風貌が印象に残らなかった。四人とも地味な顔立ちのせいもあるのだろうが、もしかしたら妙なまじないのせいかもと思っている。
俺がまだ在学中の頃。クラスに埃がダメな子がいたから、掃除がちゃんとできているか教室にブラックライトを持ち込んでチェックしていたら――偶然ソレに気が付いた。オカルト研究会の奴らの机にだけ、目に見えない奇妙な魔法陣があったのだ。それをオカルト研究会の部長に伝えたら、「よく気が付いたな」とドン引きされた。
いや、こっちがドン引きなんだけど。解せない。
まあ、その件に関しては俺やクラスメイトに迷惑がかかるわけでもないし、と放っておいた。そしたらなぜか部長に気に入られてしまった。
その他の件では色々とやらかされて、迷惑ばかりをかけられたが、お陰で俺にはもったいないくらいの悪役令嬢を嫁にできたんだから良しとしよう。
六年前の結婚式の件では世話になったし。
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