【完結】悪役令嬢と自称ヒロインが召喚されてきたけど自称ヒロインの評判がとんでもなく悪い

堀 和三盆

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リリーside

2 私の評判が……とんでもなく良い!

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 お父さん、お母さん、ありがとう!(前世)
 お父さん、お母さん、ありがとう!(今世)

 パン屋の経営は順調だった。魔物が出没するこの世界では保存のきく固いパンが主流だったが、そんな中、私が前世チートで作り出す柔らかいパンは大人気となったのだ。

 地方では魔物の出没は多いが、私の住む王都ではそこまで被害が出ていない。そんな事情もあったのだろう。王都を中心に柔らかいパンは流行り始め、名もなき町のパン屋が今では治安の安定している都市などに十店舗以上を出店する大人気店だ。商業ギルドを通してレシピの販売もしているので、流行に敏感な貴族達の心と財布をがっちりと掴み、今や不労所得だけでも十分やっていけるくらいのお金持ちになった。
当時は手伝いばかりで嫌だったけど、レシピを教えてくれた前世の親には感謝だな。

 そんな中、堅実な今世の両親は働かざる者食うべからずと、未だに一号店で変わらず働いてくれているのだからありがたい。パン屋じゃなくなったら、王子様との出会いがなくなっちゃうからね。

 ただ、予想以上の大盛況に、思わぬ弊害が出てきてしまった。一つは、経済的に余裕が出来てしまったために「勉強したいって言ってたし、学園へ通ってみたら?」と両親から王立学園への入学を勧められてしまったのだ。貴族のための学園だが、裕福な平民も通えるので問題はない。しかし、ゲームの攻略を考えると早期の入学は遠慮したい。攻略キャラのルートによっては早いうちに入学するルートもあるのだが、実はこのゲーム「逆ハーレムルート」は存在しない。その上に、イベント発生は出現キャラによってのランダムなので、攻略キャラを出せば出すだけお目当てのキャラのイベントが発生しづらくなり、好感度も上がりづらくなってしまう。
 しかも、私が狙うのは一番最後に登場の第一王子様。最後に登場するだけあってイベントが起こりづらいし、好感度も上がりづらいし、攻略が難しいキャラとして有名だった。ゲームだったらリセットできるけど、ぶっつけ本番でやるんだから堅実に行きたい。だから、私は他の攻略キャラとは一切関わらないことにした。

 幼馴染は作らない。町で絡まれないよう護衛を付ける。神殿で奇跡を起こさない。勉強は最小限、図書館は利用しない。

 第一王子以外の攻略対象の出会いイベントはこれで全て阻止した。どのキャラも格好良かったし、恋に恋する気持ちもあるけど、とにかく我慢。これで、第一王子の好感度が上げやすくなったはずだ。でも、早いうちに学園に通うとせっかく避けたキャラと強制的に出会ってしまう。出会いイベントは避けたから大丈夫だとは思うが、危険は避けたい。
 なので。

 王立学園を勧める両親には「今が一番、お店にとって大事な時期だから」とか適当なことを言ってごまかした。両親も、「そうだね。お前が大きくしたお店だし、やりたいようにやればいい。お前は本当に働き者の自慢の娘だ」と言って納得してくれた。いや、私、前世で両親が教えてくれたパン作りを再現しただけだし、攻略のことしか考えてないし。と思ったが、近所でも「献身的に両親を手伝う働き者の娘さん」とか言われ始めたので悪い気はしない。私は更に積極的に働いた。

 すると、更に問題がもう一つ起こった。チェーン店は王都にいくつもあるが、やはり両親と私が経営する一号店というのは特別な意味を持つのか、連日の大行列になった。なので、午前中には全てのパンが売り切れる。

 これには困った。なにせ、第一王子様との出会いイベントは「孤児院に売れ残りのパンを安く売る」ことで発生するのだ。肝心の売れ残り品が出ない。焼けば焼くだけ売れてしまう。

 考えた末。私は「昔ながらの固いパン」を大量に焼くことにした。

 表向きは魔物討伐に向かう方々や、旅人の胃袋を満たすため。それも嘘ではない。他の王都のパン屋の主流も柔らかいパンばかりになってしまい、冒険者や旅人にとって必要な日持ちのするパンが手に入りづらくなってしまっていたのだ。それゆえ、彼らには大変に感謝された。この店に来れば、いつでも日持ちのするパンが手に入る、と。とはいえ、それらは大量に需要があるわけではない。結果、狙い通りに固いパンは売れ残ってくれた。

 日持ちがするとは言え、あまり古くなると固くなりすぎてしまう、そう言って私は両親に提案し、近所の孤児院などにその日売れ残ったパンを安く販売するようになった。社会貢献になると、堅実な両親も喜んでくれた。もちろん私も大喜びだ。舞台は整った。あとは、第一王子とのイベント発生を待つだけ。

 不思議なことに近所ではますます私の評判が上がった。

 魔物討伐に出かける冒険者のために、あえて需要のほとんどない固いパンを常に用意してくれている。
 孤児院に安くパンを提供するため、あえて売れ残るパンを採算度外視で、大量に用意している。
 本当は勉強をしたいのに、社会貢献のために自らパンを作り続けている。しかも、笑顔で。

 その行いはまるで聖女のようだ、と。

 ゲームの攻略のことを考えて動いているだけなのに。周りがいい方にいい方に解釈して、私の評価だけがとんでもなく上がっていく。これも、ヒロイン補正なのかしら。

 やっぱりヒロインって特別なのね!



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