【完結】悪役令嬢と自称ヒロインが召喚されてきたけど自称ヒロインの評判がとんでもなく悪い

堀 和三盆

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リリーside

6 クラスメイトを攻略しよう

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「はあぁ!? 私ヒロインなのよ! やっと第一王子ルートの恋愛イベントターンに入ったトコだったのにどうしてくれんのよ! しかも、悪役令嬢と一緒だなんて!」

 最初は訳が分からなかった。不遇な前世から剣と魔法の世界、それもお気に入りだったゲームの世界に転生してこれからって時に。いきなり車にヒコーキにスマホの現代に召喚されたのだ。これじゃ、前世と変わらないじゃないの。しかも、悪役令嬢と一緒に寮生活なんて冗談じゃない。どういう経緯かは知らないけど、さっきまで王宮で何不自由ない暮らしをしてたのよ。それを、今さら寮生活なんて無理。

 交渉の末、私は高級マンションでの一人暮らしを勝ち取った。王宮とは比べ物にならないけど、まあいいわ。前世ではタワーマンションとか憧れだったし。

 説明によるとどうやら一年五カ月後には元の世界に戻れるらしい。楽しみにしていた恋愛イベントが見られないのは残念だけど、これならギリギリラストイベントには間に合う。なにせこのゲーム、クリアに必要なのはレベルと攻略対象との好感度のみなのだ。

 ――国民に妬いてしまうよ。早く、君を僕だけのモノにしたいのに……いや、王子の僕が言ってはいけないセリフだな。

 王子の表情と口癖から、私への好感度は既にMAXに近いと思われる。それに、王子からのデートの誘いのせいでなかなか上がらなかったレベルだが、ここぞというボーナスイベントには必ず参加したし、低レベル救済のための隠しイベントもクリアした。お陰で、戦闘経験は少なくても悪役令嬢と同レベルくらいには成長した。本当なら、私の方がぶっちぎりで高レベルになれたはずなんだけど、デートの誘いを断ると好感度が下がるから全力を出せなかったのは仕方ない。まあ、これだけのレベルがあればラストイベントは余裕でこなせる。
 もともと悪役令嬢が聖女として立つはずだったのだから、同程度のレベルがあれば問題はないのだ。

 ゲームクリアは確定したようなものだし、あとは元の世界に戻れるまでの一年五カ月を現代社会で気楽に過ごすだけ――そう思ったら悪くないように思われた。



 久々の現代生活は快適だった。お腹が空けばコンビニがあるし、ファミレスだって24時間営業。ファンタジー感あふれるゲームの世界も良かったけど、この便利さを思い出しちゃうと、ちょっと比べ物にならない。侍女さんに頼まなくてもスイッチ一つでお風呂に入れる快適さは何ものにも代え難い。

 生活費も少なくない額貰えたし、さっそくゲーム機を買い込んで、久しぶりに色々な乙女ゲームを楽しんだ。

 あー、この胸キュンのドキドキ感いいな。久しぶり。うんうん。やっぱりピンク髪ヒロインのモテっぷりがサイコー!!

 ……って、何やってんのよ私。これじゃ、前世と同じじゃないの。せっかく同じピンク髪・ピンク目でもヒロインになれるほどの美貌を手に入れたっていうのに。

 考えてみれば。せっかく乙女ゲームの世界へ転生したというのに、第一王子に固執するあまり、まったく恋愛を楽しんでこなかった。予防線を張って、攻略対象すら登場させなかったのだ。

 そこまでの我慢をして第一王子との恋愛ルートに入ったはいいけど、異世界に召喚されてしまったため、これからの一年五カ月はイベントがいっさい発生しないことは確定した。手紙で連絡を取ることさえできない。

 しかし、考えてみればそれは、こちらでどういう行動をとろうとも、王子ルートに影響は与えない、ともいえるのではないだろうか。大体、なぜだか出会った直後から溺愛モードに入っていたため、付きあう、付き合わない、の甘酸っぱい感覚を味わうことはできなかった。それが残念でならない。

 帰ったらすぐにラストイベントが待っている。その後迎えるであろう王子とのハッピーエンド。王太子妃になったら、自由に恋なんてできないだろう。

 降ってわいた、一年と五カ月の自由時間。

 王子に知られることなく、王子ルートへの影響も気にしなくていい期間。これは、チャンスかもしれない。

 ヒロインにもなれる容姿で。現代で。前世でできなかったことをやるチャンス。

 乙女ゲームですっかり恋心を取り戻した私は、この世界でリアル恋愛ゲームを楽しむことにした。



 最初は順調だった。乙女ゲームの経験を活かし、クラスの男子をカッコイイ順に上から次々攻略していった。TOP3までは簡単だったが、ランキング4位のスポーツマンタイプの運動部のイケメンには思いっきり警戒された。しかし、大会前日にポキッと折った骨をサクッと治してあげたらコロッと落ちた。やっぱり聖女の力ってすごいよね。こっちの世界でも使えるんだ。

 そんな生活をしていたら、いつの間にか女子から嫌われ、あっという間に孤立してしまった。

「ねえねえ、貴方、乙女ゲームのヒロインみたいね!」

 そんな状態でも女子のクラス委員長だけは召喚当初から何も変わらず、毎日キラキラした顔で私に話しかけてきていた。彼女は乙女ゲームが好きらしい。話もよく合うし、なんだかんだと世話を焼いてくれる。まるでサポートキャラみたい。彼女とだけはすぐに仲良くなった。

 そうして次に狙いを定めたのは――


 クラスで5番目にかっこいい男子の、生徒会長だった。



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