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リリーside
22 悪役令嬢と自称ヒロインの再会
しおりを挟む「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
悪役令嬢に会いに行って初めに言われたのがそれだった。
悪役令嬢が近所のうどん屋さんでパートしていることを委員長から聞き出した私は早速店まで行ったのだ。しかし。
「あの、私、実はあなたに話があって……」
「申し訳ございません。お昼時で忙しいのでお客様でないのなら……」
「あっ注文! 注文するから! ええとどれに……」
「本日のオススメは贅沢盛りA5ランク肉うどん、特上天丼付きですが」
「……じゃあ、それで」
「はいっ。店長、贅沢A5肉うどん、特天いっちょう! お願いいたしますわ」
お昼時だったせいもあり、その日は忙しく働く悪役令嬢とはまったく話せなかった。なので、出直すことにしたのだが。
松茸うどん 特上カツ丼セット 小鉢付き。
特上ウナギ御膳 冷やしうどん付き。
三種の極上エビ天ぷらうどん御膳。
翌日も、翌々日も、その次の日も。時間を変えて訪ねても店は混んでいてまったく話すことはできなかった。そして悪役令嬢からオススメされるままメニューの高額ランキング順に4種類ほど食べた翌日。
ようやく悪役令嬢が遅めの昼休憩に入るところに遭遇できた。店は空いていて、悪役令嬢とお店の人以外、人はいなかった。今なら、今なら大丈夫かしら……?
本当は何が何でも話を聞いて欲しいけど、連日の働きっぷりを見ていると、仕事中に邪魔はしづらいし、休憩時間を奪うのも気が引ける。
「あの、少し話したいんだけど。大丈夫かしら? もし、無理なら……出直すわ」
ダメ元で言ってみると。
悪役令嬢は驚いたように目を見開いた後。
「今日は注文はいいですから、試食に協力してくださいませんこと?」
と言って、ふわりと笑った。
ユージはお給料はいいけど、子供にお金はかかるしあまり無駄遣いはできない。悪役令嬢のオススメはどれも美味しかったけれど、連日の贅沢ランチで胃も財布も限界だったから正直有難い提案だった。そうして出されたのは、何の変哲もない素うどんだった。以前の私だったら絶対注文しないだろう。学食で食べたこともない。
それでも、ストレスとここ数日の美食で弱った胃にはシンプルなその味がとてもやさしくて――。
「おいしい」
自然とそんな感想が口から出ていた。食べ終わった後、なぜか悪役令嬢はご機嫌で、休憩時間いっぱいまで話を聞いてくれた。そして。
「分かりましたわ。あちらとの連絡は、私ではなく夫がやってくれていますの。ですから約束はできませんが主人に相談してみます」
そう言って、彼女は仕事に戻って行った。
そうして気が付けば。
「ありがとう。あと…………ごめんなさい」
私は悪役令嬢に頭を下げていた。
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