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4 僕が手に入れた未来(姉の婚約者視点)
しおりを挟む「君との婚約を破棄させてもらう。僕は君の妹を愛してしまった」
僕の言葉を聞いてカメリアが泣いた。それを見て。僕は一瞬冷静になった。
僕はいったい何をしているんだ? 愛しているのは、愛していたのはカメリアの筈なのに。
幼い頃は自然と恐怖し、目を逸らして耳をふさいで、警戒していたはずなのに。いつの間にか僕はアイリスの魅了にかかっていたようだ。
しかしすべてが遅かった。アイリスの腹には僕の子供がいる。今更あったことをなかったことにはできない。
散々泣いた後、悟ったような顔でカメリアは僕との婚約破棄を受け入れた。
彼女は妹に怒った。それならそうとコソコソせずに、ちゃんと手順を踏むべきだったのだと、それをしないのは人を傷つける行為なのだと、泣きながら説明をした。
カメリアの言うことが正しい。僕らが悪い。それなのに彼女の両親は理不尽に彼女を罵りアイリスを庇った。
それでもカメリアは引かなかった。あの日の、4歳の誕生日と同じ目で、愛する妹に語り続けた。思えば、義両親もこの頃少しおかしかった。
おそらく、僕と同じく魅了にかかっていたのだろう。
愛する者に捨てられて、一時的に強くなったアイリスの魅了。スキルの暴走で周囲がアイリスに対し過剰な愛を向ける中、カメリアだけは変わらなかった。産まれる前から妹を愛していた彼女は、魅了など関係なく、真実、妹を愛していた。だからこそ、耳が痛くなるような厳しい言葉も投げかけた。
周囲が庇うせいで最初は反発していたが、アイリスも少しずつ受け入れた。カメリアに諭され気持ちが安定してきたせいか、暴走していた魅了の力も少しずつ治まった。
義両親とカメリア、それにアイリスと結婚した僕。形を変えて家族は落ち着きを取り戻した。
そして、カメリアは家名を捨てて国を出た。
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何度も、何度も裏切られた。その度に僕は誠実なカメリアとの違いに嘆き、離婚を決意するものの本人を前にすると決心が鈍って言い出せない。
家族はどんどん増えて賑やかになっていく。僕のものとは違う髪色をした子供達。まるで色とりどりの花が咲く花壇のようだ。
アイリスは言う。
お姉さまを心に残したまま私と結婚するなんて酷い、私の真実の愛はどこにあるの――と。
僕は違ったらしい。ならば解放してほしいと心から願うが魅了にかかった僕からは別れを切り出せないし、代わりにそれを伝えてくれる女性はもういない。
彼女は白馬に乗った王子様を求め続け、僕はずっと裏切られ続けるのだ。
そして、来年もまた新たな家族が増える。
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