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痛がりながら暴れる理世の腕を布団の上に押し付け、父親は彼女の動きを封じる。
「ああ、痛かったかい? ごめんね、理世。だけど、パパはこうした方が気持ちいいんだ。理世はいい子だから、ちょっと我慢できるよね?」
そして、これまで聞いたことのない、猫撫で声のような口調で父は姉をなだめる。
抵抗する術がなくなり、理世はひっくひっくとしゃくり上げながら、大人しくなる。
それを見て、父親は再度腰を細かく揺らし始めた。
「パパぁ……お願いだから、もう抜いてぇ……。わたし、いい子にしてるから……」
「何を言ってるんだ、理世。理世がいい子なのは誰だって知ってるよ。だから、パパは理世にご褒美をあげてるんだ。理世だって嬉しいだろう?」
「いや……嬉しく、ない……パパ、お願いだから抜いて、もう許してぇ……」
よほど長い時間泣き続けているのか、理世の声は掠れかけていた。
「もう終わりにするの? パパは理世をもっと気持ちよくしてあげたいし、パパだってもっと気持ちよくなりたいんだけどなぁ。ほら、理世のここはこんなに濡れてるじゃないか。パパのモノを咥え込むのが嬉しくてグチュグチュいってるよ」
音を聞かせるように、父親は少し体を起き上がらせ、腰をゆっくりと動かした。
シュウの元にまでその音は聞こえなかったが、理世は何かを拒絶するように、長い髪を振り乱して必死に首を横に振る。
「理世のここは、まだパパのものに馴染んでないからねぇ……きつくてすごく気持ちいいよ。またっ……いっちゃいそうだっ……」
「あっあっ……うっうっうっ……」
我慢できなくなったらしい父親がまたも腰を振る勢いを速めると、理世は天井を見上げて苦しそうに喘いだ。
「さっきはお口の中に出したからね。パパのザーメンは旨かっただろ? 今度はいつも通り理世の小さな子宮に注ぎ込んであげるよ」
「いや、パパ……もういや、出さないでぇっ……もうや、いやなのぉ……」
「あぁっ……理世っ……いくっ……パパは理世の中でいくよっ……」
「いやあぁぁぁぁぁっ……」
父親が腰の動きは徐々に激しくなり、理世の体はベッドの上で何度も軽く弾んだ。
彼女が一際高く叫んだ瞬間、父親は自分の体を娘に押し付けて動きを止める。
「あ、あぁぁ……うぅ……」
という呻き声を漏らす間、父親の体はビクビクと痙攣し続けていた。
何故か行為が枕のある位置とは反対側で行われていたため、シュウからは父親の様子がよく見えた。
もちろん、理世の様子も。
彼女は背を仰け反らせたまま、顎を上に向け放心状態になっていた。
父親が気持ち良さそうに溜め息をつくたび、ビクッビクッと体が震えている。
彼女の顔を覆っていたのは、おそらく絶望だったのだろう。あるいは諦観か。
何も見たくない、何も聞きたくない、何も感じたくない――彼女からシュウが見えたわけはないのに、姉の瞳は彼にそう訴えているような気がした。
二人の行為を見守っている間、シュウの体は異常な熱を持っていた。
心拍数が上がり、何もしていないのに息が苦しくなる。
そして、姉が叫んだ瞬間、ぞわぞわっと体内を何かが駆け抜け、腰の辺りが熱くなると同時に股間から何かが飛び出すのが分かった。
ぬるりとしたものがパンツの中に放出されたのを知り、シュウは自分がおもらしをしてしまったのかと慌てたが、尻までは濡れていない。
疑問に思ってパジャマのズボンに手を突っ込み股間を探ると、明らかに尿とは異なるぬるぬるしたものが手にはりつくのが分かった。
顔を近づけ暗がりに手をかざして確認すると、白いどろっとした液体のようなものがこびりついている。
それを目にし、シュウは何となく嫌な気持ちになった。
当時の彼の年齢ではまだ罪悪感や後ろめたさという言葉は知らなかったが、名前をつけるとしたら、そういった気持ちだっただろう。
姉にもひどく申し訳ない気がして、シュウはそのままドアの前を立ち去り自分の部屋に駆け戻った。
急いでベッドの中に潜り込み、寝てしまおうとしたが、いつまでも心臓がドキドキと騒々しい音を立て、眠ることができない。
瞼を閉じると、姉の苦しげな声と共に、彼女の裸が思い浮かぶ。
もっと幼い頃には一緒に入浴もしたし、プールに泳ぎにいくことだってある。
だから、初めて見たわけではない。
それなのに、薄暗い部屋の中で、父親に組み敷かれ、揺さぶられていた彼女の白い肌や膨らみ始めた乳房が脳裏に焼きつき、消えてくれない。
何となく重たい気分のまま翌朝を迎えたシュウは、朝食の席で姉の様子がやはり以前とは異なることにすぐに気づいた。
目を伏せてどこかオドオドと怯えた表情をしている。
アメリカで育ち、幼い頃から様々な経験をしていたせいか、理世は日本で育った同い年の十一歳よりかなり大人びた顔立ちをしていたが、その顔は蒼白で目の下には隈くまが浮かび、溌剌さは陰を潜めどこか陰鬱な雰囲気を纏っていた。
反面父親は上機嫌で、そのせいか忙しい母親は娘の様子に気づかなかったらしい。
昨夜見たことを、シュウは母親か祖父母に告げるべきなのかもしれないと薄々感じていた。
理世が泣き、嫌がっていたことを考えても、昨夜の行為は父親が一方的に行っていたものであり、何か「悪いこと」だったというのは彼にも推測できた。
しかし、結局シュウは誰にも告げることができなかった。
子供心に、訴えても誰も信じてくれないのではないか、父親が「知らない」と一言言えばそれで片付けられてしまうのではないか、という懸念があったからだ。
そして、誰にも露見することのない行為は、度々行われた。
母親の帰りが深夜に及ぶ時、なおかつ祖父母が不在の時しか機会はなかったため、そう頻繁ではなかったが、理世はその後も父親にレイプされ続けていたらしい。
シュウが部屋にいても、家の中が静かなため二人の声はどうしても聞こえてしまう。
布団の中に潜り耳を塞いで必死で聞くまいとするが、それでも完全に追い出すことはできない。
一度その目で見、その耳で聞いてしまったため、ほんの僅かな抑揚でも姉が何を言っているのか分かってしまう。
彼女の苦しげな声など聞きたくない。
あの絶望に覆われた表情など見たくないと思うのに、忘れようと思えば思うほど目にした光景が鮮明に脳裏に浮かび上がる。
そして、嫌だと思いつつも体が反応し、気がつくと射精している。
何度か無意識に自分のモノを手で擦っていることすらあった。
そんなシュウの葛藤はその後二ヶ月ほどで終わりを告げた。
「いやっ! パパ、もういや! お願いだからやめて!」
彼がベッドに入ってすぐ、珍しくそんな理世の大声が聞こえてきた。
明らかにいつもと違う、ただならぬ雰囲気を感じたシュウは、ベッドから下りて自分の部屋のドアの内側でジッと聞き耳を立てた。
どうやら、両親の寝室に無理矢理連れて行かれそうになった理世が、必死で抵抗しているらしい。
声は、階段の方から聞こえてくる。
「さあほら、理世。いい子だからおいで。もうそろそろ慣れただろ?」
父親の穏やかな声もそれに重なった。
理世とは異なり、諭すような優しい声なのがかえってシュウの心を不安にさせた。
「もういや! いやなの、パパ、本当に、お願い!」
「そんなこと言わないで、ほら。理世だって気持ちいいだろ?」
二人はしばらく揉み合っていたらしい。気配でそれが分かった。
「いや、いやぁっ!!」
「うわっ……!」
そして、理世が一際大きな悲鳴を上げた直後、父親の驚きの声が聞こえてきた。
続いてダンダンダンダンと、重たいものが物凄い速さで転げ落ちていく音。
同時に地響きと共に家が微かに震える。
その後には静寂が訪れた。
完全な無音。
不気味なほどの静けさに、シュウの心臓が早鐘を打つ。
それなのに体が冷え、手にはじっとりと汗をかいていた。
どう考えても尋常でない、何か重大なことが起きたに違いない。
恐怖で身が竦み、シュウはしばらくその場に固まっていた。
しかし、姉のことが心配だった。
いつも以上に何かひどいことをされたのではないか。
それを思うと居ても立ってもいられず、思い切ってドアを開け廊下へ出ると階段へと向かった。
階段の上では、理世が放心状態でへたり込んでいた。
呆然と一点を見つめたまま、人形のように動かない。
そして、彼女の視線の先に父親がいた。
階段の一番下、でんぐり返しを途中で止めたような窮屈な姿勢でぴくりとも動かない。
彼の首は妙な方向にねじ曲がり、鼻から血が流れていた。
「姉さん、大丈夫!?」
一瞬父親の姿を目にしたシュウは慌てて目をそらし、必要以上の大声で姉に問いかけた。
理世は茫然としたまま首だけを動かしてそれに答える。
姉の腕に触れようとすると、理世は逆に痛いほどの強い力で彼の腕を掴んできた。
そこから、彼女の震えが伝わってくる。
歯の根が合わないほどのひどい戦慄わななきを意志の力ではどうすることもできないらしい。
どうしていいのか分からず、シュウは両腕を回して姉の体を精一杯抱きしめた。
そうすることで彼女の震えを止めようとした。
理世も放心し目を見開いたまま、瞬きもせず必死に弟に縋りついてくる。
警察か救急車を呼ばなければ、という意識が果たしてまだ幼い彼らにあっただろうか。
そうして姉弟は誰かが帰ってくるまで長いこと抱き合っていた。
その状況を最初に発見したのは、当然深夜を回った頃に帰宅した母親だった。
階段の上と下にいる、夫と姉弟の様子を見て、即座に救急と警察に連絡し、彼らの家の近所は一時騒然となった。
連絡を受けた祖父母も旅行先から急いで帰宅した。
姉弟たちにも事情聴取が行われ、そこで初めて父親の行為が明らかになった。
後から判明したことだが、彼はビデオやデジカメで行為の様子を記録していたらしい。
「ああ、痛かったかい? ごめんね、理世。だけど、パパはこうした方が気持ちいいんだ。理世はいい子だから、ちょっと我慢できるよね?」
そして、これまで聞いたことのない、猫撫で声のような口調で父は姉をなだめる。
抵抗する術がなくなり、理世はひっくひっくとしゃくり上げながら、大人しくなる。
それを見て、父親は再度腰を細かく揺らし始めた。
「パパぁ……お願いだから、もう抜いてぇ……。わたし、いい子にしてるから……」
「何を言ってるんだ、理世。理世がいい子なのは誰だって知ってるよ。だから、パパは理世にご褒美をあげてるんだ。理世だって嬉しいだろう?」
「いや……嬉しく、ない……パパ、お願いだから抜いて、もう許してぇ……」
よほど長い時間泣き続けているのか、理世の声は掠れかけていた。
「もう終わりにするの? パパは理世をもっと気持ちよくしてあげたいし、パパだってもっと気持ちよくなりたいんだけどなぁ。ほら、理世のここはこんなに濡れてるじゃないか。パパのモノを咥え込むのが嬉しくてグチュグチュいってるよ」
音を聞かせるように、父親は少し体を起き上がらせ、腰をゆっくりと動かした。
シュウの元にまでその音は聞こえなかったが、理世は何かを拒絶するように、長い髪を振り乱して必死に首を横に振る。
「理世のここは、まだパパのものに馴染んでないからねぇ……きつくてすごく気持ちいいよ。またっ……いっちゃいそうだっ……」
「あっあっ……うっうっうっ……」
我慢できなくなったらしい父親がまたも腰を振る勢いを速めると、理世は天井を見上げて苦しそうに喘いだ。
「さっきはお口の中に出したからね。パパのザーメンは旨かっただろ? 今度はいつも通り理世の小さな子宮に注ぎ込んであげるよ」
「いや、パパ……もういや、出さないでぇっ……もうや、いやなのぉ……」
「あぁっ……理世っ……いくっ……パパは理世の中でいくよっ……」
「いやあぁぁぁぁぁっ……」
父親が腰の動きは徐々に激しくなり、理世の体はベッドの上で何度も軽く弾んだ。
彼女が一際高く叫んだ瞬間、父親は自分の体を娘に押し付けて動きを止める。
「あ、あぁぁ……うぅ……」
という呻き声を漏らす間、父親の体はビクビクと痙攣し続けていた。
何故か行為が枕のある位置とは反対側で行われていたため、シュウからは父親の様子がよく見えた。
もちろん、理世の様子も。
彼女は背を仰け反らせたまま、顎を上に向け放心状態になっていた。
父親が気持ち良さそうに溜め息をつくたび、ビクッビクッと体が震えている。
彼女の顔を覆っていたのは、おそらく絶望だったのだろう。あるいは諦観か。
何も見たくない、何も聞きたくない、何も感じたくない――彼女からシュウが見えたわけはないのに、姉の瞳は彼にそう訴えているような気がした。
二人の行為を見守っている間、シュウの体は異常な熱を持っていた。
心拍数が上がり、何もしていないのに息が苦しくなる。
そして、姉が叫んだ瞬間、ぞわぞわっと体内を何かが駆け抜け、腰の辺りが熱くなると同時に股間から何かが飛び出すのが分かった。
ぬるりとしたものがパンツの中に放出されたのを知り、シュウは自分がおもらしをしてしまったのかと慌てたが、尻までは濡れていない。
疑問に思ってパジャマのズボンに手を突っ込み股間を探ると、明らかに尿とは異なるぬるぬるしたものが手にはりつくのが分かった。
顔を近づけ暗がりに手をかざして確認すると、白いどろっとした液体のようなものがこびりついている。
それを目にし、シュウは何となく嫌な気持ちになった。
当時の彼の年齢ではまだ罪悪感や後ろめたさという言葉は知らなかったが、名前をつけるとしたら、そういった気持ちだっただろう。
姉にもひどく申し訳ない気がして、シュウはそのままドアの前を立ち去り自分の部屋に駆け戻った。
急いでベッドの中に潜り込み、寝てしまおうとしたが、いつまでも心臓がドキドキと騒々しい音を立て、眠ることができない。
瞼を閉じると、姉の苦しげな声と共に、彼女の裸が思い浮かぶ。
もっと幼い頃には一緒に入浴もしたし、プールに泳ぎにいくことだってある。
だから、初めて見たわけではない。
それなのに、薄暗い部屋の中で、父親に組み敷かれ、揺さぶられていた彼女の白い肌や膨らみ始めた乳房が脳裏に焼きつき、消えてくれない。
何となく重たい気分のまま翌朝を迎えたシュウは、朝食の席で姉の様子がやはり以前とは異なることにすぐに気づいた。
目を伏せてどこかオドオドと怯えた表情をしている。
アメリカで育ち、幼い頃から様々な経験をしていたせいか、理世は日本で育った同い年の十一歳よりかなり大人びた顔立ちをしていたが、その顔は蒼白で目の下には隈くまが浮かび、溌剌さは陰を潜めどこか陰鬱な雰囲気を纏っていた。
反面父親は上機嫌で、そのせいか忙しい母親は娘の様子に気づかなかったらしい。
昨夜見たことを、シュウは母親か祖父母に告げるべきなのかもしれないと薄々感じていた。
理世が泣き、嫌がっていたことを考えても、昨夜の行為は父親が一方的に行っていたものであり、何か「悪いこと」だったというのは彼にも推測できた。
しかし、結局シュウは誰にも告げることができなかった。
子供心に、訴えても誰も信じてくれないのではないか、父親が「知らない」と一言言えばそれで片付けられてしまうのではないか、という懸念があったからだ。
そして、誰にも露見することのない行為は、度々行われた。
母親の帰りが深夜に及ぶ時、なおかつ祖父母が不在の時しか機会はなかったため、そう頻繁ではなかったが、理世はその後も父親にレイプされ続けていたらしい。
シュウが部屋にいても、家の中が静かなため二人の声はどうしても聞こえてしまう。
布団の中に潜り耳を塞いで必死で聞くまいとするが、それでも完全に追い出すことはできない。
一度その目で見、その耳で聞いてしまったため、ほんの僅かな抑揚でも姉が何を言っているのか分かってしまう。
彼女の苦しげな声など聞きたくない。
あの絶望に覆われた表情など見たくないと思うのに、忘れようと思えば思うほど目にした光景が鮮明に脳裏に浮かび上がる。
そして、嫌だと思いつつも体が反応し、気がつくと射精している。
何度か無意識に自分のモノを手で擦っていることすらあった。
そんなシュウの葛藤はその後二ヶ月ほどで終わりを告げた。
「いやっ! パパ、もういや! お願いだからやめて!」
彼がベッドに入ってすぐ、珍しくそんな理世の大声が聞こえてきた。
明らかにいつもと違う、ただならぬ雰囲気を感じたシュウは、ベッドから下りて自分の部屋のドアの内側でジッと聞き耳を立てた。
どうやら、両親の寝室に無理矢理連れて行かれそうになった理世が、必死で抵抗しているらしい。
声は、階段の方から聞こえてくる。
「さあほら、理世。いい子だからおいで。もうそろそろ慣れただろ?」
父親の穏やかな声もそれに重なった。
理世とは異なり、諭すような優しい声なのがかえってシュウの心を不安にさせた。
「もういや! いやなの、パパ、本当に、お願い!」
「そんなこと言わないで、ほら。理世だって気持ちいいだろ?」
二人はしばらく揉み合っていたらしい。気配でそれが分かった。
「いや、いやぁっ!!」
「うわっ……!」
そして、理世が一際大きな悲鳴を上げた直後、父親の驚きの声が聞こえてきた。
続いてダンダンダンダンと、重たいものが物凄い速さで転げ落ちていく音。
同時に地響きと共に家が微かに震える。
その後には静寂が訪れた。
完全な無音。
不気味なほどの静けさに、シュウの心臓が早鐘を打つ。
それなのに体が冷え、手にはじっとりと汗をかいていた。
どう考えても尋常でない、何か重大なことが起きたに違いない。
恐怖で身が竦み、シュウはしばらくその場に固まっていた。
しかし、姉のことが心配だった。
いつも以上に何かひどいことをされたのではないか。
それを思うと居ても立ってもいられず、思い切ってドアを開け廊下へ出ると階段へと向かった。
階段の上では、理世が放心状態でへたり込んでいた。
呆然と一点を見つめたまま、人形のように動かない。
そして、彼女の視線の先に父親がいた。
階段の一番下、でんぐり返しを途中で止めたような窮屈な姿勢でぴくりとも動かない。
彼の首は妙な方向にねじ曲がり、鼻から血が流れていた。
「姉さん、大丈夫!?」
一瞬父親の姿を目にしたシュウは慌てて目をそらし、必要以上の大声で姉に問いかけた。
理世は茫然としたまま首だけを動かしてそれに答える。
姉の腕に触れようとすると、理世は逆に痛いほどの強い力で彼の腕を掴んできた。
そこから、彼女の震えが伝わってくる。
歯の根が合わないほどのひどい戦慄わななきを意志の力ではどうすることもできないらしい。
どうしていいのか分からず、シュウは両腕を回して姉の体を精一杯抱きしめた。
そうすることで彼女の震えを止めようとした。
理世も放心し目を見開いたまま、瞬きもせず必死に弟に縋りついてくる。
警察か救急車を呼ばなければ、という意識が果たしてまだ幼い彼らにあっただろうか。
そうして姉弟は誰かが帰ってくるまで長いこと抱き合っていた。
その状況を最初に発見したのは、当然深夜を回った頃に帰宅した母親だった。
階段の上と下にいる、夫と姉弟の様子を見て、即座に救急と警察に連絡し、彼らの家の近所は一時騒然となった。
連絡を受けた祖父母も旅行先から急いで帰宅した。
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