俺は蛙

ガムサボール山道

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俺は蛙

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俺は、蛙。

はじまり

 雨の中に、いる。
 傘はいらない。雨しずくに、体を濡らすのが、何よりも好きだ。顔に、できた雨粒を、下でペロりさせた時、俺は、興奮する。体は、ぬるってしてる。なかなかのぬるっと感。歌うのが好きで、ドレミドレミを、繰り返すが、実は、ファまでいける。だけど、ファは、出さない。ファを出すと、フクロウたちに、みつかりやすくなっちまうからだ。鳥獣は、俺たちの天敵だ。蛇も、気をつけているが、マシな方だ。よく、蛇に睨まれた蛙というが、あれは、実は、お互いに、しゃべっている。
 「君、食べていい?。」
 「いや、だめ。やめて。」
 「食欲がなくなる話するよ?。」
 「俺は、昔、蛇だった。」
 「えー、まじかよー。食べる気なくすわ 
  ー。」 
 「だろ?昨日、雨降ってたよねー。
  雨があがったらさぁ虹が、出てたぜぇ。」
 「へぇ、そうなんだ。」
 「俺の話、聞いてくれる?
  もうすぐ脱皮の時期なんだけど…。」   
 「あぁ、毎年、大変だよなぁ。」
 「脱皮した後の抜け殻を、見るとさぁ。
  死んだ、じいちゃん思い出すんだなぁ。」
 「脱皮中に、急襲だったんだよなぁ。」
 「そうそう。悲しいよ。」
 「元気だせって。あの抜け殻、
  メルカリで高く売れたから、
  これやるよ。」
 俺は、蛇に、ドッグフードをあげた。
 「いやぁ、これはさすがに。」
 「何言ってんだ。コスパ最高だぜぇ。」
 蛇は、ドッグフードを丸呑みした。チキン風味が、口に残る。
 「これは、はっはっはっ。
  けっこういいね、またちょうだいよー。」
 「また虹が、出たらな。」
 「ありがとう。良いよなぁ、その能力。」
 「俺の能力は、特殊だからな。」
 俺は、雨上がりの虹が出る日に、人間様に、変身できる能力がある。これが、とびっきりのラッキーだった。

 あれは、25年前の昼下がり。いつものように、雨が、降ってきた。
 「シャワーでも、浴びるか。」
 そうつぶやいた時に、雷鳴が鳴り響いた。そして、2発目の雷が、光ったと思った瞬間に、池の真横にあった大木に、落ちたのだ。その時の電流が、俺にまで、流れてきた。
 しばらく、気絶していたようだ。ふと、気づくと、俺は、池の横で、仰向けに倒れていた。
 どれくらいの時間倒れていたかは、わからないが、我に、きづき、立ち上がった。
 何かいつもと違う。目線がちがう。空を見上げると、虹がかかっていた。
 俺は、池の中を覗き込み、
「なんじゃこりゃ!!。」と叫んだ。
 池には、人間が、映っていたのだ。
 俺は、人間になったのか
思わず、唾を飲み込んだ。
 そして、俺は、倒れた大木が燃えていることに、気づく。
「あっちち。どおやら人間として、生まれ変わったようだ。」
 俺は、池の裏にある洞窟まで行った。ここは、普段なら、入口らへんでのんびりするんだが、少し先まで、歩いて入った。光が、差し込んでいる所があり、大きな箱らしきものが、ある。少し、箱は開いていた。ゆっくり、俺は、人間の手で、ずらすように開けてみた。中には、色んなものが、入っていた。服に、帽子に、財布に、お金に、そして、手紙が、入っていた。読んでみた。人間の能力も、舞い降りていた。
 「人間をやめたい。生まれ変わった時には、蛙にでも、なりたい。これは、私が、人間の時に、使っていたもの。来世には、必要がないので、箱にしまって、黒魔術をかけた。これを、開かれた時、私は、蛙になる。あなたは、人間になる。」
 どうやら、落雷の衝撃で、箱が揺れ、開いたようだ。そして、その時、呪文が、解かれ放たれ、俺は、人間になったのか。
 洞窟内に、冷たい風が入ってきた。裸のままでは、寒かった。この洞窟に、かつて、この箱を、置きに来た人間がいたのか。サイズもちょうどいい。  
 宝箱に、入っいていた、服を着て、靴を履き、俺は、街へ出ようと思った。ポケットには、財布も、スマホも、入っていた。このチャンスを、逃すわけにはいかない。まだ、見ていない景色を、見に行こう。今日は、初人間記念日だ。
 あらよっと、軽快なスキップをした。それから、立ち止まり、あらためて、背伸びをした。俺は、生まれ変わり、人間を楽しもう。そして、遊びまくろうと、思った。
 「まずは、腹ごしらえだ!。」
 しばらく歩いていくと駅前に出た。どうやら俺がいた池は、都会にある大きな自然公園の一角だったみたいだ。少し歩けば、街に出た、駅前には、たくさん店があり、あちらこちらで、会話が飛び交い、また、店から、良い匂いが、たくさんしている。よだれが、出そうになった。
 「いっけね~。楽しくなりすぎてる。俺が、蛙だということは、誰も気づくようすもないな。」
 完全に人間だ。見た目は、まずまず良い感じだし、何より、そこそこお金が、財布の中にある。そして、不思議なことに、前世で、こいつの暮らしぶりが頭に、残っている。
 名前こそは、わからないが、人間としての能力は、充分にわかる。俺は、さっきまで蛙だった。そんな気持ちを持ちながら、歩いている。なんとも、不思議だ。
 「なんかこの匂いに、誘われるなぁ。ふらっと入って見よ。」
 お好み焼き「はじめ」と暖簾が、かかっている。
 「どんなとこだ。」
 暖簾をくぐり、扉を開けた。
 「いらっしゃいませ~。お一人様ですか?
  こちらどーぞ。」
 元気な店員が、俺に、笑顔で接客をする。嬉しいぞ。ここは、良さそうなところだ。よーし。何にしようか。豚玉、いや、海老玉にしよう。チーズもトッピングしようかな。俺は、こんな感じに、楽しんだ。
 「どおしよーかなぁ。
  人間になっちゃったもんなぁー!」
 そして、しばらくして、トイレに行きたくなってきた。もう生ビールを、4杯飲んでいる。トイレに行こう。チャックをおろして、用をたして、きれいに流そうとしたその時!
 「あ~れ~!!」
 吸い込まれるように、便器に吸い込まれていった。
 俺は、もうこのまま人間様を、楽しめるものだと、思い込んでいた。ふと、我にかえったとき、俺は、また蛙に戻っていた。
 「なんでだよ~!。」
 池の中に戻ってきた。まだ、飲みかけの生ビールも、お好み焼きも、食べている途中だったのに。
 しかしながら、あの場所に行けば、人間様宝箱セットは、まだあるのだろうか。
 俺は、いつも以上に、池から、ピョンピョン跳ねながら、洞窟の奥まで目指した。
 もう、それは、わらに縋るほどの想いだった。頼むから、宝箱が、あれば、また人間様に変わるチャンスが、あるかもしれない。この薄い可能性を、高値買うとしたらいくらぐらいなのだろうか。
 蛙が、人間になる。この微睡む奇跡を、神様叶えてくだされ。ぴょんぴょん。
「あぁ、しんどー。あぁ!
 あれは!もしかして、宝箱じゃないか!。」
 光が差す場所に、宝箱が、まだあった。俺は、その場で、ぴょんぴょん跳ねた。しかし、箱は、閉じられている。
 もちろん、蛙のまま、開ける力などない。無力だ。さっきの喜びから、反転、虚無感に、襲われる。まるで、ひっくり返るときみたいだ。雷が、落ちるなど滅多にないし、開くことが、あるのかわからない。
 でも、俺は、そこで過ごした。ポツポツと、また雨が、降り出した。けっこう激しい雨だった。雨上がり、光が差す上の方、虹がかかった。
 その時だ、宝箱が揺れだし開いたのだ。そして、体が、人間になっていく。
 そう、俺はわかってしまった。確かに、人間様になれるのは、虹がかかったときだ。
 蛙に、戻ってしまうのは、虹が消え、トイレに行った時。2時間ぐらいだろうか。しかし、この特殊能力を、使い、楽しむには充分だった。だが、ひとつ問題があった。
 それは、都市伝説となっていったこと。食事を楽しみ、やはり生ビールを飲んでいると、トイレに、行く。そして流されて、俺は、消えてしまう。もちろん、お勘定もせず、姿ごと消えてしまうので、無銭飲食の姿消し人として、噂になり、都市伝説として語らわれるようになった。顔バレしないように、店に入り、食事をしなければならない。だが、俺は、蛙。
 身の隠しの術など、朝飯前だ。
問題は、実はなかったのだ。
 25年間、俺は、ときどき人間様。
俺は、このまま楽しんでいく。ケロ。
             
                 おしまい
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