難度SSSダンジョン最下層で発見された░░░░に、命を狙われている件について。

スサノワ

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難度SSSダンジョン最下層で発見された░░░░に、命を狙われている件について。

第5頁

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「――レベルドレインの方陣が禁忌とされることになった原因が、ルシランツェル家のお嬢様が王都を壊滅寸前のうき目にあわせたからでぇー……え、ロットリンデちゃんって、あの〝吸血鬼ロットリンデ〟なのぉー!?」
 驚愕の魔導師。良く分かんないけど、同姓同名なら最初にわかりそうなもんだけど。
 ちなみに、僕とトゥナは〝悪逆令嬢〟とか〝吸血鬼〟なんて聞いたこともない。

「ですから、先ほどからソウ申し上げてるじゃありませんの!」
 ポムン、プスプスンッ。
 不発の魔法を撃ち続けたからか、とうとう煙すら出なくなった。

「えーでもぉ、〝悪逆令嬢〟って言ったらルシランツェル家の反逆者にして破落戸ゴロツキまがいの傍若無人。口を開けば罵詈雑言ばりぞうごん、立てば癇癪かんしゃく座れば愚鈍ぐどん。歩く姿は毒の花とまでいわれ、とうとう断罪されたって聞いたけどぉ――――付いてるわよね、首?」
 ティーナさんは自分の首に手を当てて、蒼い顔をしている。
 そもそも、ロットリンデさんは横柄なところがあるだけで、悪人ではない。

「ぐ、何ソノ尾ひれ……多分、あの宰相があることないことふれまわったのね……行きがけの駄賃に本気で殲滅しておくべきだったかしら……王都を」
 なんか物騒なことを言ってるけど、根は悪人ではない……と思う。

「でも、そうしたら私、会ったことあるわよう? ロットリンデ様に。随分昔……いえ、ほんのちょっと前にだけど」
「様はヤメテください。いまはタダのロットリンデです。でもドコで? ――よっこいしょ」
 ロットリンデが、その辺に落ちてる大石に腰掛けたので、僕達も近くに腰掛ける。

 バコン――ごろーん!
 トゥナが、座った石を粉砕して、うしろにすっ転んだ。
 いまのトゥナの尻に敷かれたら僕の頭も粉砕されかねないので、笑わないでおく。

「私が首都の初等魔導学院に入学した年に、慰問に来て下さったのよ。ものスゴく綺麗なお姉さんだったけど――」
「あら、そんなお世辞はいりませんわよ? 本当のことですから」
 ロットリンデ様は、やっぱり本気でソウ思っているようだった。
 実際に、とても綺麗な人ではある。

「――ものスゴく意地悪な人でも有って、〝リキラ〟を使った盗聴魔法なんて教えてくれたりしたわねぇ。……年端もいかない小さい頃の私に」
「あー、ソレ私だ。転生前の記憶が目覚める前の」

「転生?」「前のマエノ?」「記憶ぅ?」
「あー、いいのいいの。何でもないから気にしないでちょうだい。そーいや慰問した先で、スッゴく飲みこみが速い小さいのがいて面白かったから、普通教えないようなグレーな方陣結界ピクトグラムを一式レクチャーしたっけ、失敗失敗。あれは大人げなかったと認めますわ」

「いーえ、あの方が本当にロットリンデ様、いえ、ロットリンデちゃんだというのなら、あの教えは私の人生にとって例えようのないほどに有益でした」
 立ち上がりエプロンドレスの裾をつまみ、「最大限の感謝を」と正式な礼をするティーナさん。

 あれ? ロットリンデさんの邪悪な正体が知られて、一悶着ひともんちゃく有るのかと思ってたけど、そうじゃ無いっぽい。

「でも、アレから二十……いえ、少し時間が経ってるのに、ロットリンデちゃんは全然変わってないわね~。一体どういう邪法を使ったのかしらぁ~、ウフフ?」
 眼が笑ってない。ティーナさんの背後に邪悪な気配が、膨れあがっていく。

「それは、歳を取らない宝箱に入ってたからだよね」
 邪悪な気配に耐えかねた僕は、口をはさんだ。
「ええ、ルシランツェル家が総力を注ぎ込んで、ようやく作り出したモノですわ♪」

「ソレは今、どこに、有るのですかぁ?」
 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。

「ヴァミヤラーク洞穴最下層の、さらに地の底だよね」
 また僕は口を挟んだ。
「えっ!? 〝王国騎士団が10年がかりでとうとう到達できずに攻略を断念した難度SSSのダンジョン〟の一番下のさらに底ですってぇ?」

 ――シュルシュルルルッ。
 ティーナさんの背後でとぐろを巻いていた邪悪な気配がしぼんでいく。

「ソコへ行くぅ方法は?」
 なんて言いながら〝格闘家のように両手をニギニギする魔導師〟に詰め寄られたロットリンデさんが、僕に助けを求めた。
「ジュ、ジューク、昨日見せてくれた〝片道の跳躍魔法〟。もう一回、か、描けるかしら?」
「片道のぉ……跳躍魔法ぉ?」
 ティーナさんが物凄い顔で僕を見つめてる。
 あの顔は刃物のバーゲンセールとか、7バーテルもあるモクブートを狩りに出かけたときに見たことがある。
 おふざけも嘘も誇張も無し。正直に言わないと跡形もなくなる。

「ごめんなさい、もう描けません! 別の新しいのを覚えた・・・・・・・・・・から、綺麗さっぱり忘れましたぁーーーー!」
 僕の声を聞いた魔導師が崩れ落ち、邪悪な気配も一気に霧散した。
 フカフ村に再び平和が訪れた。

      §

 そういや、村の方はどうなってるんだろ?
 警鐘が止んでるし、喧騒も全く聞こえてこなくなった。

 森の主ファローモはトゥナが倒してくれたから、もう安心だけど……。
「トゥナ? ファローモは倒したんだよね?」
 近くで伸びてる〝角折れファローモ〟を見る。
 
「ウン。トドメ、刺シタヨ?」
 虚ろな顔の幼なじみが、近くに転がってた折れた巨大ツノを持ち上げてみせた。
 どうして、人里に降りてきたのか分からないけど、彼は運が悪かったのだ。

 偶然迷い込んだのが、いまだ目撃例のない成体のファローモだったら、運が悪かったのは僕達の方だったワケだし。
 一見のどかなフカフ村だって、大森林と隣接する最辺境だ。
 共存共栄、森と共に生きてる僕達だって、みすみす命を差し出すワケにはいかないのだ。

 ――――(ズッシィィィィンッ)。
 ん? なんだ?
 なんかいま、僕のHPが勝手に減ったような?

 バタバタバタバタバタバタバタバタッ!
 キキキキキキキキキキキキキキキッ――――♪
 崩落したダンジョン入り口の隙間から、リキラの群れが飛び出していった。
 もう入り口の方陣結界ピクトグラムは無くなってしまったから、モンスター達は自由に出入りできる。
 けど周囲はまだ明るい。夜行性のリキラ達が活動開始するには、少し不自然な時間だった。

 ――――(ズッシィィィィンッ)。
 急にトゥナが近くの木に登って、大森林の方向を指差した。

 あれ? 遠くの林が揺れている。
 大森林の周囲にまばらに点在している、小さな森みたいな木々のしげり。
 村のど真ん中に、あんなの有ったけ?

 ――――――ズッシィンッ!
 これだ、さっきからずっと僕の体力を減らしていたのは。
 あまりの巨体のせいで、接地点・・・から衝撃波が生じているのだ。
 雑木林が近づ・・・・・・いてきている・・・・・・

 いや、雑木林ではないのだ。
 木々の根元には空中に浮かぶ苔むした丘が有り、
 丘の奥には鈍く光る二つの朧月おぼろづき――――

 ソレは人類が、いまだ目にしたことの無い存在。

 森の主と呼ばれる、神話の時代から存在する大猛獣。
 大森林における気候変動をも司ると噂される、天災ファローモの成体。
 苔むした丘は成体のあごで、雑木林は大樹のように伸びたツノだった

 そして、史上初の観測例は、様々な事実を明らかにした。

「う――――――――――――!」
「キ――――――――――――!」
「は――――――――――――!」
 ここに居る全員の声が、出なくなった。
 それと、手を叩こうが、木刀で石畳を叩こうが、一切の物音が聞こえなくなった。

「ジューク、ドウシタノ? フザケテルバアイジャナイヨ」
 どうしてかは分からないけど、トゥナのカタコトだけが周囲に響き渡る。

 村の喧騒が消えたのはコレが原因だった。
 ファローモの特性欄に、こんな事は書かれていなかった。

 ――――――ズッシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!
 この轟音はに聞こえているのではない。
 地を伝わり靴底から這い上がった振幅ゆれが、体の中から・・・・・聞こえているのだ。

「(ど、どうしたらいいんだ!?)」
 迫る無音の震源。
 僕達の視線は自然と一方向へ向く。

 そう、今ココには、〝彼の存在〟の幼生体が居るのだ。
 しかも、亡骸という形で。

 血の気が引いていく。
 この体格差では、たとえ四頭引きの馬車が有ったとしても、とても逃げおおせない。

「(ぱくぱくぱくぱく――――!)」
 ティーナさんが何かを言っている。
「(そう言われても聞こえませんよ!?)」
「(ぱくぱくぱくぱく――――!)」
 ああ、高速詠唱はやじゅもんを唱えているのか!
 どこでも良いから、大都市に繋がる跳躍魔法を唱えてもらえば――――!

「(唱えられるわけがない! 音が聞こえないんだからっ!)」
 ――――ボムボムボボボムムワァン!
 涙目のロットリンデさんが、爆裂魔法を乱発する。
 なにかの魔法を使ってるんだろうけど、彼女に魔法は使えない。

 発動のための鍵は僕が握ってしまったのだから。
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