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6:拡張DLCと、栽培バグ
745:初等魔導学院補習初日、久々の解析指南
教室には補習組のおれたちと、担任教師。
壇上の教卓には、取り上げられた女神御神体が置いてある。
シャシャーッ、カカカカカカッ、シュカカッカ――
黒板に描かれていくのは大きな丸と、中を埋める小さな丸や三角や星型や――読めねぇ文字たち。
「では、この三つの魔方陣にー共通する要素をー、答えてくださーい――レイダさん」
おれの右隣を、筆代わりの――ふぉん♪
『ヒント>チョーク/削れることにより、対象物へ筆跡を付ける筆記具の一種』
細長い石とやらで指し示す。
指されたレイダが、立ち上がり――
「えっと、真ん中のが〝木の実を落とす魔法〟で、右のが……〝扉を閉める魔法〟で――えーっと?」
辿々しくも何かを、ちゃんと考えている。
レイダは阿呆ではない。おれや迅雷の後を付いて来てばかりいたので、色んな事が疎かになっていただけだ。
正直、おれのせいと言えなくもない。
カタン――ヴォゥン♪
生意気な子供を見ていたら――むぎゅ。
「痛ぇだろうが、おれの頬を突くんじゃねぇやぃ」
おれの頬に触れるのは、極太の角材のような太棒。
この、担任教師の魔法杖が、ぴったりとおれに張り付いて居るから、何処にも動けやしねぇ。
「ったくよぉ」
天井を向けば杖は垂直になり――ヴォヴォゥン♪
唸りを上げ、まるでおれを覗き込むように、傾いて来やがる。
おれや他の子供たちには、まだ出来ねぇ――
杖を手元に引き寄せたり、飛ばして乗ったりする術の先にある奴だ。
上級魔術とか高等魔術とか言われる術の、理屈はまるで分からん。
まあ、おれには迅雷が居るし、仕込み錫杖や小太刀を引き寄せるだけなら〝遅延回収スキル〟もある。
だから必要は無ぇんだが、面白い術であるのは確かだ。
おれたちはまだ習ってねぇが、一部の御貴族さま……太くて人が乗れるような立派な杖を持っている連中の中には、既に空を飛べる奴も居る。
現にリオレイニアの縁者であるヴィヴィヴィーは、酷くゆっくりではあるが、普通に屋根よりも高い所を飛んで移動してるのをよく見かける。
ふぉん♪
『シガミー>やい女神さまよお、いい加減に助けろやあ!」
ふぉん♪
『イオノ>>>現在アクセスが集中しており、解析のウヶ実行に時間がかかっております。現在〝バロ件〟待ちの状態でウケヶ竹ケッすしナゥ。』
何だぜ、こりゃぁ?
丸茸の丸目玉が交互に赤く、点滅してやがるぞ!?
担任教師に取り上げられた丸茸は微動だにせず、ずっと目の前の赤く小さな画面表示と向き合っていた。
この世の……自分が旨い飯を食うためだけに作った来世。
その現を取り仕切る大女神像が、壊れかけているのだから――必死なのはわかるがぁ。
大丈夫かぁ――?
「へへーぃ!」
おれは手を上げ、ヤーベルトに物申した。
「はい、シガミー君。何でしょーう?」
細長い石とは別の手――ヴォッ♪
太枝のような、一番使う頻度が多い太い魔法杖でおれを指し示す。
「(――警戒されていマす。細心ノ注意ヲ払っテ行動しましョう――)」
わかってらぁ!
脳裏で迅雷が囁くが、いまは迅雷とも話は出来ない。
つまりこいつぁ、おれの幻聴の迅雷だ。
常日頃から絶えず一緒に居ると、こういうのが聞こえてくるようになるのだ。
御山の修行中にも、こういうのには良く苛まれた――
そう考えると、何やら懐かしい気がして来ないでもない。
「厠……じゃねぇやトイレに行きてーから此奴ら、ちょっくら退かしてくれやぃ」
と嘘を吐き立ち上がる――ヴォヴォゥゥゥン♪
「ふぅ、わかりました。すぐに戻ってきてー下さい。もし大女神像の間へ行こうものなーらー――リオレイニア見習い講師へ告げ口しまーすのーでー、そのつもーりでー」
ヴォヴォゥ――カタン♪
太杖どもが長椅子へ立て掛けるように、浮く力を無くした。
「へいへーぃ♪」
返事をしつつ教室を出て、廊下に出た。
担任教師はジッと此方を見ていたが、その視線を遮るように、そっと戸を閉める。
「よし、行くか――!?」
驚いた――ヴォヴォヴォヴォゥゥゥン?
辺りには誰も居ねぇ。
担任教師が見ている訳じゃねぇのに、太杖どもが廊下にまで付いて来やがったのだ。
リオレイニアの大量の魔法杖操りとは又、別の術による物なのは確かだ。
ちなみに厠には小窓があったが、それは幅が狭くて子供のおれでも通れなかった。
振り返れば――ヴォヴォゥン、ヴォヴォゥゥン♪
垂直に浮かび控えている、太杖たちと目が合った。
「チッ――駄目か」
此処で此奴らを振り切ったところで、太杖とやり合っている間に、助けを呼ばれちまう。
中々に厄介だぜ、この〝術〟はよぉ。
ふぉふぉん♪
『解析指南>自律型の魔法は、固有スキルによる恩恵に左右されます。』
お、取り上げられた迅雷の代わりに。解析指南が久々に出たぞ。
迅雷が居なくても使えるなら、マジで助かる。
ふぉん♪
『シガミー>おい、さっきの五百乃大角の様子は何だ? とうとう、壊れたか?』
ふぉん♪
『解析指南>女神像ネットワークの処理機能低下と、アクセス増大によるビジー状態…………非常に忙しくて、一行表示に手が回っていないようです』
……忙しいだとぉぅ!?
揚げ芋って言葉に釣られて来た奴が、何言ってやがる?
まぁ良い。どんなに女神像周りが最悪でも、五百乃大角の中身であるMSPさえ無事なら、何の問題もねぇからな。
ばっ――ヴォヴォゥン、くるくるくるん♪
厠を出て、太杖たちを掴もうとしたら――
倒れるような動きだけで、躱された。
此奴ら思いの外賢いぞ。
となると先のスキルの話わぁ、些と面白そうだ。
ふぉん♪
『シガミー>>>スキルってこたあ、出来る奴と出来ねぇ奴が居るって事だな。おれには出来るのか?』
ふぉふぉふぉぉぉん♪
『解析指南>可能です。〝撮像転写制限解除〟、〝分析術〟、〝羅針盤〟、〝魔法具操作術〟、〝魔法具自動操作〟、〝星間陸路補正〟、〝システム補佐〟、〝血流強化〟、〝サブシステム使用許諾〟、〝サブシステムオフライン切替〟、〝ジャイロマスター呼出〟、〝サブシステム用言語使用許諾〟、〝運転術LV1〟、〝使役巧者〟を使用することで、魔法や魔術に類する適応がある物体を自在に自律操作出来ます。』
ふぉん♪
『シガミー>>>出来るって言うなら、あとで色々試すが、随分と沢山のスキルが要るんだな?』
ふぉふぉん♪
『解析指南>基本的には〝魔法具自動操作〟のみで対象物の自律行動が可能になりますが、他のスキルを組み合わせることで一切の強化学習、修練をせずとも、より高度な判断をさせることが可能になります。』
うんうん、順当に分からん。
修練というのは、正に今、担任教師が行っている座学の事だろうが。
おれは教室の高窓へ取り付き、廊下から中を盗み見る。
レイダを相手にヤーベルトが、黒板を指し示したりしている。
ふむ、出てきたときのままだ。
黒板には大きな丸が、三つ並んでいる。
見たことがねぇ奴ばかりだが、その中の一つは――
リオレイニアが使った事がある曼荼羅……魔方陣に似ていた。
五百乃大角や茅野姫も使う数多の方陣を、幾度となく間近で見てきたからか――
何となくだが、分かるぞ――こりゃアレだ。
魔法の神髄で言うところの〝光の筋〟で何かを、押したり引いたりすることしかしてねぇ……気がするぞ。
ふぉふぉん♪
『解析指南>より正確に記すなら、〝魔力作用の対象を杖の先にて、汎用的に指定する構造〟が共通しています。』
お、解析指南が、随分とやる気だぜ。
けど解析指南は魔法……この地の呪い事に、ここまで詳しくは無かったよなぁ?
前もって教えてくれてりゃ助かったことが、コレまでには色々と有ったぞぉ!?
ふぉん♪
『解析指南>スキル対応の高等魔術検索ならびに、魔方陣の系統別文法や解析が進んだのは、〝古代文字逆引き辞典〟の閲覧後になります。ご了承下さい。』
うむぅ、何だっけソレ?
ふぉん♪
『ヒント>古代文字逆引き辞典/古代文字と魔法記述から、該当する共用語を参照可能。』
うぬぅ、何だっけソレ?
ふぉん――♪
『人物DB>ティーナ・コッヘル
コッヘル商会商会長』
女将さんの母上が、どうしたぁ?
彼女は女将さんの実家が営む商会の長であり、大森林の顔役だ。
ふぉん――♪
『解析指南>ディーナ・コッヘルが所持していた書物で、彼女の師であるスデットナー教授なる人物により編纂された物。古代文字のみならず魔法の意味や使用目的に基づいた、検索が可能な希少文献』
あー、あの分厚い紙束か。
大森林に現れる変異種が、猪と蟹だって見抜いた時にペラペラと捲ってたな。
――なら呪い事の説明が出来なかったのも、仕方ねぇか。
迅雷なり五百乃大角なりが、あの紙束に触れたのは、ついこの間だからな。
おれは高窓の縁にぶら下がったまま、廊下の左右を見渡す。
相変わらず誰も居ねぇが――むぎゅ――むぎゅ。
だから痛ぇだろうが、おれの頬を突くんじゃねぇやぃ!
極太の角材のような太棒は、細身の男性講師におれの今の様子を伝えては居ない。
伝えているなら今すぐおれの首根っこを押さえに、廊下に飛び出してくるだろうからな。
さて精々数分の猶予だ。如何する?
迅雷は回収されたから、使える〝画面〟は最低限しかない。
そして、使える物資も激減してる。
「(――警戒されていマす。細心ノ注意ヲ払っテ行動しましョう――)」
また幻聴の迅雷が囁いた。わかってらぁ!
本物の彼奴は今頃、アリゲッタ辺境伯領へ出向いている筈だ。仕方がねぇから奴を呼ぶ。
「(やい根菜、いい加減にせんかぁ! 大女神像の間の様子はどうなってるっ!?)」
辺りにお貴族さまや、狐耳親子の姿はない。
遠慮無く念話を使わせて貰う。
教室の中には二人ほど子供のお貴族さまが居るには居るが、彼奴らは念話を〝暗殺魔法具〟と勘違いして、襲ってきたりはしないからな。
「(もうっ、五月っ蝿いわね! もうすぐ、最後のグループが転移するわよっ!)」
ピポンと視界の隅に現れたのは――根菜丸茸の丸い顔。
美の女神(笑)である五百乃大角は、その身を宿す御神体とは別に、迅雷の収納魔法の中へ〝仮の姿〟とやらを現すことが出来る。
ふぅ、先のとち狂った感じが無くなってるぜ。
梅干し大の此奴は、教卓に置かれただけじゃなくて、恐らく――
大女神像の間に居る敏腕メイドリオレイニアの周囲に浮かぶ球で浮かびつつ、先行する迅雷や、おれの目の中にも居るって訳で。
とてもややこしいが、神々はこういう、同時に色んな事をするのが得意なのだ。
――なのだが、神々どもの手足でもある女神像ネットワークが壊れ掛かっているときに、態々やるようなことではない。
「(じゃあ、おれは如何したら良いんだぜ? 急いで蟹揚げ芋を沢山作ってやらねぇと、いけねぇんだが?)」
「(あー、ソレなんだけどさぁ――今回シガミーわぁ完璧に、お留守番わよん♪)」
微かに震えるだけの顔が、そんなことを言い出した。
迅雷無しな上に、直接視界が通らない現状では、〝仮の姿〟は顔の形があるだけで、画面の中を歩き回ったりは出来ないらしい。
「(何だとぉ!? おにぎりの野郎は相当思い詰めてたから、放っといたら何をしでかすかわからんぞ?)」
ふぉふぉん♪
『イオノ>>>おにぎりに関してわ、迅雷君に丸投げしてあるので心配要りませんよーだ♪』
丸顔が一行表示を、吐いた。
ふぉん♪
『シガミー>>>やい、そいつあ、どういう了見だぜ!?』
「おにぎりのことを抜きにしても、おれが行かなきゃ話が始まらんだろぉがぁ――!?」
ガチャリ♪
教室のドアが、開いた。
「シガミーさん。トイレはもう済んだようですね?」
細身の男が廊下へ首を出して、そう言った。
いけねぇ、又声に出ちまってたかぁ――!?
ドアが大きく開けられ、術者の視線を浴びた二本の太杖が、グルリと回転。
おれの手は振り払われ――ポスン♪
魔法杖に両脇を抱えられ教室へ戻ると――
童どもに盛大に笑われた。
「(てめぇ、イオノ腹ぁ。後で覚えとけ――んむ?)」
此方を見上げていた御神体が、片目を指で押し広げ、舌を出した――すぽん♪
ふぉん♪
『ヒント>あかんべえ/下まぶたを引き下げ、同時に舌を出す行為。相手に向かって侮蔑を表すジェスチャー。』
あっ、くそぅ――うるせぇっ!
視界の隅の五百乃大角の顔に――ブブッ♪
否定を示す記号が重なった。
あの惡神めっ――逃げやがったなぁっ!
壇上の教卓には、取り上げられた女神御神体が置いてある。
シャシャーッ、カカカカカカッ、シュカカッカ――
黒板に描かれていくのは大きな丸と、中を埋める小さな丸や三角や星型や――読めねぇ文字たち。
「では、この三つの魔方陣にー共通する要素をー、答えてくださーい――レイダさん」
おれの右隣を、筆代わりの――ふぉん♪
『ヒント>チョーク/削れることにより、対象物へ筆跡を付ける筆記具の一種』
細長い石とやらで指し示す。
指されたレイダが、立ち上がり――
「えっと、真ん中のが〝木の実を落とす魔法〟で、右のが……〝扉を閉める魔法〟で――えーっと?」
辿々しくも何かを、ちゃんと考えている。
レイダは阿呆ではない。おれや迅雷の後を付いて来てばかりいたので、色んな事が疎かになっていただけだ。
正直、おれのせいと言えなくもない。
カタン――ヴォゥン♪
生意気な子供を見ていたら――むぎゅ。
「痛ぇだろうが、おれの頬を突くんじゃねぇやぃ」
おれの頬に触れるのは、極太の角材のような太棒。
この、担任教師の魔法杖が、ぴったりとおれに張り付いて居るから、何処にも動けやしねぇ。
「ったくよぉ」
天井を向けば杖は垂直になり――ヴォヴォゥン♪
唸りを上げ、まるでおれを覗き込むように、傾いて来やがる。
おれや他の子供たちには、まだ出来ねぇ――
杖を手元に引き寄せたり、飛ばして乗ったりする術の先にある奴だ。
上級魔術とか高等魔術とか言われる術の、理屈はまるで分からん。
まあ、おれには迅雷が居るし、仕込み錫杖や小太刀を引き寄せるだけなら〝遅延回収スキル〟もある。
だから必要は無ぇんだが、面白い術であるのは確かだ。
おれたちはまだ習ってねぇが、一部の御貴族さま……太くて人が乗れるような立派な杖を持っている連中の中には、既に空を飛べる奴も居る。
現にリオレイニアの縁者であるヴィヴィヴィーは、酷くゆっくりではあるが、普通に屋根よりも高い所を飛んで移動してるのをよく見かける。
ふぉん♪
『シガミー>やい女神さまよお、いい加減に助けろやあ!」
ふぉん♪
『イオノ>>>現在アクセスが集中しており、解析のウヶ実行に時間がかかっております。現在〝バロ件〟待ちの状態でウケヶ竹ケッすしナゥ。』
何だぜ、こりゃぁ?
丸茸の丸目玉が交互に赤く、点滅してやがるぞ!?
担任教師に取り上げられた丸茸は微動だにせず、ずっと目の前の赤く小さな画面表示と向き合っていた。
この世の……自分が旨い飯を食うためだけに作った来世。
その現を取り仕切る大女神像が、壊れかけているのだから――必死なのはわかるがぁ。
大丈夫かぁ――?
「へへーぃ!」
おれは手を上げ、ヤーベルトに物申した。
「はい、シガミー君。何でしょーう?」
細長い石とは別の手――ヴォッ♪
太枝のような、一番使う頻度が多い太い魔法杖でおれを指し示す。
「(――警戒されていマす。細心ノ注意ヲ払っテ行動しましョう――)」
わかってらぁ!
脳裏で迅雷が囁くが、いまは迅雷とも話は出来ない。
つまりこいつぁ、おれの幻聴の迅雷だ。
常日頃から絶えず一緒に居ると、こういうのが聞こえてくるようになるのだ。
御山の修行中にも、こういうのには良く苛まれた――
そう考えると、何やら懐かしい気がして来ないでもない。
「厠……じゃねぇやトイレに行きてーから此奴ら、ちょっくら退かしてくれやぃ」
と嘘を吐き立ち上がる――ヴォヴォゥゥゥン♪
「ふぅ、わかりました。すぐに戻ってきてー下さい。もし大女神像の間へ行こうものなーらー――リオレイニア見習い講師へ告げ口しまーすのーでー、そのつもーりでー」
ヴォヴォゥ――カタン♪
太杖どもが長椅子へ立て掛けるように、浮く力を無くした。
「へいへーぃ♪」
返事をしつつ教室を出て、廊下に出た。
担任教師はジッと此方を見ていたが、その視線を遮るように、そっと戸を閉める。
「よし、行くか――!?」
驚いた――ヴォヴォヴォヴォゥゥゥン?
辺りには誰も居ねぇ。
担任教師が見ている訳じゃねぇのに、太杖どもが廊下にまで付いて来やがったのだ。
リオレイニアの大量の魔法杖操りとは又、別の術による物なのは確かだ。
ちなみに厠には小窓があったが、それは幅が狭くて子供のおれでも通れなかった。
振り返れば――ヴォヴォゥン、ヴォヴォゥゥン♪
垂直に浮かび控えている、太杖たちと目が合った。
「チッ――駄目か」
此処で此奴らを振り切ったところで、太杖とやり合っている間に、助けを呼ばれちまう。
中々に厄介だぜ、この〝術〟はよぉ。
ふぉふぉん♪
『解析指南>自律型の魔法は、固有スキルによる恩恵に左右されます。』
お、取り上げられた迅雷の代わりに。解析指南が久々に出たぞ。
迅雷が居なくても使えるなら、マジで助かる。
ふぉん♪
『シガミー>おい、さっきの五百乃大角の様子は何だ? とうとう、壊れたか?』
ふぉん♪
『解析指南>女神像ネットワークの処理機能低下と、アクセス増大によるビジー状態…………非常に忙しくて、一行表示に手が回っていないようです』
……忙しいだとぉぅ!?
揚げ芋って言葉に釣られて来た奴が、何言ってやがる?
まぁ良い。どんなに女神像周りが最悪でも、五百乃大角の中身であるMSPさえ無事なら、何の問題もねぇからな。
ばっ――ヴォヴォゥン、くるくるくるん♪
厠を出て、太杖たちを掴もうとしたら――
倒れるような動きだけで、躱された。
此奴ら思いの外賢いぞ。
となると先のスキルの話わぁ、些と面白そうだ。
ふぉん♪
『シガミー>>>スキルってこたあ、出来る奴と出来ねぇ奴が居るって事だな。おれには出来るのか?』
ふぉふぉふぉぉぉん♪
『解析指南>可能です。〝撮像転写制限解除〟、〝分析術〟、〝羅針盤〟、〝魔法具操作術〟、〝魔法具自動操作〟、〝星間陸路補正〟、〝システム補佐〟、〝血流強化〟、〝サブシステム使用許諾〟、〝サブシステムオフライン切替〟、〝ジャイロマスター呼出〟、〝サブシステム用言語使用許諾〟、〝運転術LV1〟、〝使役巧者〟を使用することで、魔法や魔術に類する適応がある物体を自在に自律操作出来ます。』
ふぉん♪
『シガミー>>>出来るって言うなら、あとで色々試すが、随分と沢山のスキルが要るんだな?』
ふぉふぉん♪
『解析指南>基本的には〝魔法具自動操作〟のみで対象物の自律行動が可能になりますが、他のスキルを組み合わせることで一切の強化学習、修練をせずとも、より高度な判断をさせることが可能になります。』
うんうん、順当に分からん。
修練というのは、正に今、担任教師が行っている座学の事だろうが。
おれは教室の高窓へ取り付き、廊下から中を盗み見る。
レイダを相手にヤーベルトが、黒板を指し示したりしている。
ふむ、出てきたときのままだ。
黒板には大きな丸が、三つ並んでいる。
見たことがねぇ奴ばかりだが、その中の一つは――
リオレイニアが使った事がある曼荼羅……魔方陣に似ていた。
五百乃大角や茅野姫も使う数多の方陣を、幾度となく間近で見てきたからか――
何となくだが、分かるぞ――こりゃアレだ。
魔法の神髄で言うところの〝光の筋〟で何かを、押したり引いたりすることしかしてねぇ……気がするぞ。
ふぉふぉん♪
『解析指南>より正確に記すなら、〝魔力作用の対象を杖の先にて、汎用的に指定する構造〟が共通しています。』
お、解析指南が、随分とやる気だぜ。
けど解析指南は魔法……この地の呪い事に、ここまで詳しくは無かったよなぁ?
前もって教えてくれてりゃ助かったことが、コレまでには色々と有ったぞぉ!?
ふぉん♪
『解析指南>スキル対応の高等魔術検索ならびに、魔方陣の系統別文法や解析が進んだのは、〝古代文字逆引き辞典〟の閲覧後になります。ご了承下さい。』
うむぅ、何だっけソレ?
ふぉん♪
『ヒント>古代文字逆引き辞典/古代文字と魔法記述から、該当する共用語を参照可能。』
うぬぅ、何だっけソレ?
ふぉん――♪
『人物DB>ティーナ・コッヘル
コッヘル商会商会長』
女将さんの母上が、どうしたぁ?
彼女は女将さんの実家が営む商会の長であり、大森林の顔役だ。
ふぉん――♪
『解析指南>ディーナ・コッヘルが所持していた書物で、彼女の師であるスデットナー教授なる人物により編纂された物。古代文字のみならず魔法の意味や使用目的に基づいた、検索が可能な希少文献』
あー、あの分厚い紙束か。
大森林に現れる変異種が、猪と蟹だって見抜いた時にペラペラと捲ってたな。
――なら呪い事の説明が出来なかったのも、仕方ねぇか。
迅雷なり五百乃大角なりが、あの紙束に触れたのは、ついこの間だからな。
おれは高窓の縁にぶら下がったまま、廊下の左右を見渡す。
相変わらず誰も居ねぇが――むぎゅ――むぎゅ。
だから痛ぇだろうが、おれの頬を突くんじゃねぇやぃ!
極太の角材のような太棒は、細身の男性講師におれの今の様子を伝えては居ない。
伝えているなら今すぐおれの首根っこを押さえに、廊下に飛び出してくるだろうからな。
さて精々数分の猶予だ。如何する?
迅雷は回収されたから、使える〝画面〟は最低限しかない。
そして、使える物資も激減してる。
「(――警戒されていマす。細心ノ注意ヲ払っテ行動しましョう――)」
また幻聴の迅雷が囁いた。わかってらぁ!
本物の彼奴は今頃、アリゲッタ辺境伯領へ出向いている筈だ。仕方がねぇから奴を呼ぶ。
「(やい根菜、いい加減にせんかぁ! 大女神像の間の様子はどうなってるっ!?)」
辺りにお貴族さまや、狐耳親子の姿はない。
遠慮無く念話を使わせて貰う。
教室の中には二人ほど子供のお貴族さまが居るには居るが、彼奴らは念話を〝暗殺魔法具〟と勘違いして、襲ってきたりはしないからな。
「(もうっ、五月っ蝿いわね! もうすぐ、最後のグループが転移するわよっ!)」
ピポンと視界の隅に現れたのは――根菜丸茸の丸い顔。
美の女神(笑)である五百乃大角は、その身を宿す御神体とは別に、迅雷の収納魔法の中へ〝仮の姿〟とやらを現すことが出来る。
ふぅ、先のとち狂った感じが無くなってるぜ。
梅干し大の此奴は、教卓に置かれただけじゃなくて、恐らく――
大女神像の間に居る敏腕メイドリオレイニアの周囲に浮かぶ球で浮かびつつ、先行する迅雷や、おれの目の中にも居るって訳で。
とてもややこしいが、神々はこういう、同時に色んな事をするのが得意なのだ。
――なのだが、神々どもの手足でもある女神像ネットワークが壊れ掛かっているときに、態々やるようなことではない。
「(じゃあ、おれは如何したら良いんだぜ? 急いで蟹揚げ芋を沢山作ってやらねぇと、いけねぇんだが?)」
「(あー、ソレなんだけどさぁ――今回シガミーわぁ完璧に、お留守番わよん♪)」
微かに震えるだけの顔が、そんなことを言い出した。
迅雷無しな上に、直接視界が通らない現状では、〝仮の姿〟は顔の形があるだけで、画面の中を歩き回ったりは出来ないらしい。
「(何だとぉ!? おにぎりの野郎は相当思い詰めてたから、放っといたら何をしでかすかわからんぞ?)」
ふぉふぉん♪
『イオノ>>>おにぎりに関してわ、迅雷君に丸投げしてあるので心配要りませんよーだ♪』
丸顔が一行表示を、吐いた。
ふぉん♪
『シガミー>>>やい、そいつあ、どういう了見だぜ!?』
「おにぎりのことを抜きにしても、おれが行かなきゃ話が始まらんだろぉがぁ――!?」
ガチャリ♪
教室のドアが、開いた。
「シガミーさん。トイレはもう済んだようですね?」
細身の男が廊下へ首を出して、そう言った。
いけねぇ、又声に出ちまってたかぁ――!?
ドアが大きく開けられ、術者の視線を浴びた二本の太杖が、グルリと回転。
おれの手は振り払われ――ポスン♪
魔法杖に両脇を抱えられ教室へ戻ると――
童どもに盛大に笑われた。
「(てめぇ、イオノ腹ぁ。後で覚えとけ――んむ?)」
此方を見上げていた御神体が、片目を指で押し広げ、舌を出した――すぽん♪
ふぉん♪
『ヒント>あかんべえ/下まぶたを引き下げ、同時に舌を出す行為。相手に向かって侮蔑を表すジェスチャー。』
あっ、くそぅ――うるせぇっ!
視界の隅の五百乃大角の顔に――ブブッ♪
否定を示す記号が重なった。
あの惡神めっ――逃げやがったなぁっ!
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[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
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