滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

１５：食いつめ幼女、正体がばれる

「このあいだは、せ、世話せわになった。おれ……わたしはシ、シガミー、ただのシガミーです」
　やい、棒すだれ。文句もんくあんのか、だまってろ！
「（……）」
　てれかくしに女神めがみの眷属けんぞくをなじっておく。

　あたらしいこの世は、ことばわぁわかるが、礼儀作法れいぎさほうがわからねえ。ましてや女おんな子供こどものしゃらあしゃらしたのは、まえの世界せかいでも見たことも聞いたこともねえってんだぜ。

「そうだ、お父さん、きいてきいて！　シガミーはねー、いままでに見たことも聞いたこともないような頭の良いアーティファクトを持ってるのよ!?　すごいで――――」

「ぬわぁぬぃー!?　それはほんとうかいぃー、シガミー？」
　両肩りょうかたをガシリと、つかまれた。
　さっきまでの、少し無愛想ぶあいそうだけど精悍せいかんな表情ひょうじょうはどこにもなかった。

「そんな素敵すてきなアーティファクトが発掘はっくつされたなんて情報じょうほうは、ギルドに入はいってないがぁぁぁあああぁん!?」
　〝眼鏡めがね〟の横についた〝摘つまみ〟が、ひとりでにグリグリうごいていて、不気味ぶきみだった。

「なんでぃ？　急にひとが変わっちまったぞ!?」
　逃げ場のないおれは、首をまわして娘レイダをみる。

「ごめんなさい。うちのお父さんはアーティファクトに目がなくて」
　もうしわけなさそうに、おれのうしろあたまを指さす娘レイダ。

「ひととおり見せてもらったら、元もとにもどるから、みせてあげてくれない？」
　両手りょうてをあわせ、口もとをひきつらせる。

「さあ、今すぐ見せたまえよ。万まんが一いちうそだったら、責任せきにんをとってもらうよぉぉぉぉう？」
　人の上に立つやつには二種類にしゅるいいて、彼はそのありがちな側がわの人間でもあるらしかった。

「（よくわからんが棒すだれ、〝五百乃大角いおのはら〟の眷属けんぞくだとか、おれが関係者かんけいしゃだとかってのをバレない程度ていどに、相手あいてできるか？）」
　キュキュキュイー。
　ギルド長の〝眼鏡めがね〟の横についた〝摘つまみ〟が、おれたちの会話中かいわちゅうにもかかわらず、うごいている。

「（……）」
　おい、どうした。はやくしろよ？
「（……）」
　んあ？　どうした、きゅうに黙だんまりかよ。
　あ、ひょっとしてさっき黙だまってろって、なじった意趣返いしゅがえしか！

「ええい、どうしましたかぁ？　さぁぁー、はぁやぁくぅぅぅぅぅぅぅぅっ！」
　眼鏡めがねの摘つまみが――キュキュキキュキュィーーー！

「（まさか、壊こわれたんじゃねーだろな？）」
　おれはうしろあたまに手をのばす。
　独鈷杵とっこしょみてえなかたちの棒は、桐きりのようにかるく、おもさはない。
　おれのちいさな手につかまれたやつが、ヴルリとふるえた。

「（問題もんだいありません。発言はつげんの許可きょかをいただけますか、マスター？）」
　壊こわれてねえなら、とっととやれ。おまえ勝手に娘レイダのまえで話してたじゃねーかよ。
　もう、つかまれた肩が痛いてえ。

「ハじめまして。ギルド長どの。私はインテリジェンス・タレット。形式けいシきナンバーＩＮＴアイエヌティーＴＲＴＴティーアールティーティー０１ゼロワンデす。以後イごおみしりオきを」
　おれから手を放したギルド長の手が、棒すだれを凄まじい早さでひったくった。

「す、す、すすすす、すばらしい！　君は私がいままで見てきた中でも、最高さいこうの知性ちせいをそなえている！」
　キュキュキキュキュキュキキュキュィ――――眼鏡めがねの摘つまみがこわれそうないきおいで、あばれている。

「（おい、〝眼鏡めがね〟てのが、おれたちの密談中みつだんちゅうにも動いてたが、どういうコトだ？　まわりはとまって見えるはずなのに）」
「（どうやら、あの眼鏡めがねもアーティファクト・・・・・・・・である・・・と推測すいそく……かんがえられます）」

「はぁはぁ、し、死ぬかとおもったぜ……」
　解放かいほうされたおれは、椅子いすにたおれこんだ。

「ごめんね。でもシガミーは、あのアーティファクトを、ドコで見つけたの？」
「女将おかみのとこで、来た客にもらったんだよ。詳くわしいことはおれも知らん。本人ほんにん……スダレ・・・に聞いてくれ」
　これは本当ほんとうのことだ。うそじゃねーし、そもそも五百乃大角いおのはらから、口止くちどめもされてねえ。

　けど、神仏しんぶつがらみで人と話すと、ろくでもねえ目にあうってのは世のつねだ。
　女神めがみの眷属けんぞくとか関係者かんけいしゃだってのは、口くちが裂けても言わねえようにしねえと。

「じゃ、じゃあ君たちは、美びの女神めがみ〝イオノファラー〟さまの、け、け、眷属けんぞくであり、縁者えんじゃというわけなのだぬぇぇぇぇぇ？」
　いくらか元もとにもどったようすのギルド長ちょうが、おれたちの正体しょうたいをみぬいた。

ーーー
眷属／血のつながる者。配下。
意趣返し／しかえし。