滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

８５：猪蟹屋店主（シガミー）、裏天狗とうめぼし

「（イオノファラーがこのまま消失しょうしつした場合ばあい、この世界せかいはどうなりますか？・）」
　五百乃大角いおのはらが、いまにも消えようとしてるから、内緒話みつだんで時間じかんかせぎをする。

「（んー、ここはあたしが、おいしいごはんを食べるためだけ・・につくった）……もぎゅ……（場所ばしょだから、〝あたしがおいしいごはんを食べている〟ならどういう状況じょうきょうでも、残のこりつづけるんじゃないかしら）……もぎゅもぎゅ」
　てめぇ、あんまり動くな・・・っ――ＳＰなんたらがどんどん減るだろうがよ！

　この世界せかいの最優先ことわり――五百乃大角いおのはらがうまい飯めしを食う。
　なら、コイツが消えたら元もとも子もねぇのに――あんまりゆっくりに・・・・ならねえ。
　コイツが動いてるから・・・・・ってのもあるが――

「（逆ぎゃくに言うと、〝イオノファラーがおいしいごはんを食べていない〟と、この世界せかいが消失しょうしつすると？・）」

「（まあ、そうなるかもね♪　アファファファッファファファファッ――――あーおっかしっ、もう一本いっぽんいっちゃお）――がぶり、うまい♪」
　なに笑わらってんだ！
　てえへんじゃねぇーか！

「（大変てえへんよねぇー？　さあ、どうするシガミー？　ふっははははははっはははっーーーーーーーーっ）げっほ、ごほっ――！」

「（ばかやろうっ！　そーじゃねぇ！　この世よとか、この際さいどーでも良いっ――まずは、てめぇの心配しんぱいをしろよ！）」
「っぎゃっ――ぽとり――ああああっ！　おどかすから、落っことしちゃったじゃないのっ！」

「うるせぇ、よく聞け、あきらめんな！　おれと迅雷ジンライが、かならずどーにかしてやるから、すこしじっとしててくれっ――痛いでだだっ！」
　ったくよ、つい大声おおごえだしちまった。
　じっとしてなきゃなんねえのは、おれも同おなじなんだった。

　声こえを荒あらげたところで寝床ねどこに横よこになったままじゃ、まるでしまらねぇ。
　けど、おれに来世いのちをくれた大恩神だいおんじんである五百乃大角いおのはら。
　その命いのちがわりでもある――ＳＰなんたらが今いまにも尽きる。

　しかも女神そのの中身なかは、どうやらまるで子供《ガキ》の若わけぇおんなだ。
　助たすけねえわけには、いかねえ。

　　　§

「（これが最後さいごの三本さんぼんだ。せめて一本いっぽんよこせ。いいな？）」
　きょうは最初さいしょに揚げた一本いっぽんを味見あじみで食っただけだから、本当ほんとうに腹はらぁへってんだよ。

　ガシャッ、すたん、ギギッ――裏天狗うらてんぐに取ってこさせた串揚くしあげ。
　寝床ねどこのおれにソレを突きだし――あーん、もっぎゅもっぎゅ♪
　うん、うめえな。

「（それって、リモコン操作そうさでしょ？）……もっぎゅもぎゅ……（器用きようなモンね）」
　〝理も魂リモコン〟ってのはなんでぃ？

「（コントローラーのことです・）」
「（魂徒労裏こんとろううらか。修行ぎょうの中のひとつ、経行きょうぎょう……歩あるき座禅ざぜんに似てなくもねぇからな。すぐに覚おぼえたぜ）……もぎゅもぎゅ」
　蓮根れんこんか生姜しょうがみてぇなボコボコした形かたち。
　こいつをつかむのには、だいぶ慣れた。

「（座禅ねぇー。見た目はこんなにカワイイのに。本当ほんとうに中身なかみが僧侶そうりょのおっさんよね）……もぎゅり、ごく――ん、むぐっ！」
　レイダにもよく言われ――あっ!?　喉のどに詰まらせてんじゃねーぞ！

　女神めがみが机てーぶるで、もだえはじめた。
　ＳＰなんたらよか先さきに、お陀仏だぶつなんて洒落しゃらにならん。

　ガシャッ、すたすたすたん、ギギッ――裏天狗うらてんぐで駆けよる。

「みずのたま――うわたった！」
　おぼえたばかりの水みずの魔法まほうで、木の杯さかづきに水みずを注そそいでやろうとしたら――水みずが魂徒労裏こんとろううらにかかった！

「（シガミー、〝子機０１番ＴＲＴＴ０１Ｋ〟……〝裏天狗うらてんぐ〟は魔法まほうが使つかえません・）」
　ふぉふぉん♪
「（右手みぎてがわ中指なかゆびの出っぱり……ボタンを押してください。えらんだ物ものを機械腕アームから出せます・）」

　んっと、この牡丹ぼたんを押して……こいつをえらぶと……おまえの収納魔法しゅうのうまほうの中・がみられるのか!?

　ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉぉん♪
　こまけえ……なんかが沢山たくさんあらわれた。
　小ちいせぇ塊かたまりや、でけぇ塊かたまり。
　長なげぇのや短みじえの、曲がってんのに丸いのに、本ほんみてえのもあるな。まるで和菓子わがしにも見える。

「（わはははっ――長生ながいきはするモンだぜ。一回いっかい死しんじまってるけどよ。こいつぁ、おもしれぇ――なんて言ってる場合ばあいじゃねぇやな！）」
　――するってぇと、このチャポチャポゆれてる四角しかくい〝水みず〟を光しからせりゃ――

　かちゃ――ばちゃばちゃ！
　並ならんだ和菓子こまかいのの向こう、苦くるしむ美びの女神めがみさまに向かって――水みずがいきおいよく流ながれた！

　じょばばばっ！
　魔法まほうは魔法まほうだが、水の魔法みずのたまじゃねぇ。
　迅雷ジンライの収納魔法しゅうのうまほうからでてる――やべぇ、狙ねらうのがむずかしいぜ。

「ぎゃっ、――ごぼがばっ!?　ごくん、ぷはぁ――ちょっと、なにすんのよ！」
　水みずから串揚くしげを死守ししゅする、五百乃大角いおのはら。

　おおきく持ち上げられた皿さらから、串揚くしあげが跳ね――
　ぷるんとした美の象徴しょうちょう――乳ちちとか下っ腹はらとかが、ゆれる。

「わりっぃ――おっととっ――ガシッ！」
　あっぶねぇ、落っこちる所ところだったぜ。
　下手へたしたら、コイツが五百乃大角こいつの――――さいごの飯めしだ。

　つかんだ串くしを、手わたしてやる。
　五百乃大角いおのはらが、ひったくるように串揚くしあげを取った瞬間しゅんかん。

　ごんごん――――誰だれか来た。

「（シガミー、〝裏天狗うらてんぐ〟を格納かくのうしてください・）」
　おう、そうだぜ。天狗テングとシガミーおれは別人べつじんだから、見られる訳わけにはいかねぇ。

　ぐぃぃぃぃ――すぽん♪
　魂徒労裏こんとろううらの真ん中なか。
　いちばん大おおきな出っぱりを、長押しして・・・・・――魂徒労裏こんとろううらを腕輪うでわにしまう。

　手首てくびに巻いた腕輪うでわは、遠征隊えんせいたいをたすけに行ったかえりに、迅雷ジンライがつくった。
　蛇腹じゃばらになった大おおきな輪を手首てくびに通とおして折りたたむと、ピッタリと張りついてどれだけ振りまわしても外はずれなくなる。

　これは収納魔法具しゅうのうまほうぐで、迅雷ジンライがあつめたゴーブリン石いしやほかの素材そざいを、ぜんぶ入れておくことにした。

　便利べんりだし、これだけで十分じゅうぶん売れるんじゃねぇかと思おもったんだが――
　「上級じょうきゅう冒険者ぼうけんしゃにもなれば収納魔法具しゅうのうまほうぐをちゃんと持っていますし、ふつうはゴーブリン石いしを何百個なんびゃっこも一度いちどに運はこぶことはありません。残念ざんねんながら需要じゅようはないかと」
　――まず売れねぇんだそうだ。

　化けウサギの素材そざいみてぇに、尋常じんじょうじゃねぇ大おおきさの物もんを運はこぶことも、めったにねぇだろうしな。


　ごどん――巻いた布ぬのでできた人型ひとがたが床ゆかに落ちた。
　あれは〝裏天狗うらてんぐ〟だ。おれか迅雷ジンライがさわらねえと収納魔法しゅうのうまほうで格納かくのうすることができない。

「（五百乃大角いおのはら、おれたちは一蓮托生いちれんたくしょうだ。食うなよ、騒さわぐなよ？）」
　んぁれ、どこ行った？

　まさかＳＰなんたら切れで、消えちまったのか!?

「（失礼しつれいねぇー！　ちゃあんとココに・・・居・ま・すぅー♪）」
　ココってドコだ!?
　内緒話中みつだんちゅうでも自由じゆうにうごく目を、小屋中こやじゅうにめぐらせる！

　五百乃大角いおのはらが座すわってた椅子いすにも、机つくえのしたにも、どこにもいねぇ――――

「（シガミー、五百乃大角いおのはらを発見はっけんしました。）」
　どこにいた？　どこにも見えねぇぞ!?

　いや、なんか動うごいてる？
　なんか居る？
　どこだ――――――（ココだって言ってんでしょーーーー！）―――――居た！

　それは、びーどろの中なかに居た。
　並ならんだままの――和菓子わがしの列れつ。
　長なげぇのや短みじぇの、曲がってんのに丸いのに、本ほんみてえのの中なかに――まぎれてやがった・・・・・・・・。

「（私わたしの……収納魔法しゅうのうまほうの中なかに格納かくのうされています。）」

「（おおおぉぉぉぉーい、ちょっと聞・い・て・ん・のぉぉぉぉ～～？）」
　梅干うめぼしみてえな大きさになった、五百乃大角いおのはらがコッチを見あげてる。