滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

１１４：伝説の職人（シガミー）、なぞの箱

「（――ん～？　まてよ、コレは〝宛鋳符悪党アーティファクト〟なのか？）」
　巨大な山菜まほうつえの上級鑑定じょうきゅうかんていに、『魔法杖（アーティファクトあていふあくとう）』って書いてある。

「――そのようでスね、三世代前さんせだイまえノＡＯＳエーおーエス検出けんしュつしまシた――」
　たしか、迅雷ジンライたち〝宛鋳符悪党アーティファクト〟は、どうやっても壊せない・・・・って言ってたよねー？

「――はイ、シガみー。破壊ロストすることはありませんノで、時間切じかんギれと同時どうジに、強化きょうカされタ効果こウかが消失しょうしツするだけでス――」
　なるほどな、〝宛鋳符悪党アーティファクトは壊こわれない〟ってだけで価値かちがある。
　迅雷ジンライなら一瞬いっしゅんで〝動うごかなくなったのを直なおすこと〟もできるしな。

「（うーん。ならコレは）……修復しゅうふくを念入ねんいりに」
　杖つえを――修復しゅうふく、修復しゅうふく、修復しゅうふく――三回さんかいひからせた。
　もとから綺麗きれいだったけど、磨みがき上げられたように、ピカピカにした。

「（コレで済まそう。あとは触さわらない――なんかもう、怖こわい）」
「――はイ。でハ、ＡＯＳエーオーえスノ更新こうしンだけしておきマしょう――」
　あー、『再生品なんとか』って判子はんを押すヤツか。
　ヴッ――黒くろい手袋てぶくろみたいなのが、机つくえの上うえに置かれる。

　手袋てぶくろをして――目だたない所ところに押そう。

　きゅっぽぉん――♪
　杖つえの足あしの裏うら。
　地面じめんに着いて見えなくなるところに、判子はんを押した。
　おもしろい音おとに、ルコルたちがキョロキョロしてたけど、時間じかんないし放っとく。

「さー、次つぎは――」

　ふぉん♪
『天角シリーズ一式【漆黒・付け焼き刃】
　全防御力１６３８（＋６７５）。最強防具と謳われる甲冑一式。
　追加効果／ＳＴＲ＋５５／ＡＴＫ＋１０２／ＶＩＴ＋６０
　／ＩＮＴ－４８／ＤＥＦ＋１１００／ＬＵＫ－６５
　条件効果／【付け焼き刃】上級職人による一時的な性能強化中。
　　　　　ただし、効果が切れる際に破壊される可能性あり。
　　　　　その確率はアイテムのレア度に比例。
　　　　　【強化残り時間　００：１３：３２】
　装備条件／ＳＴＲ４５、ＤＥＦ２５』

「ギルド長ちょうのヤツだね。これは難むずかしいことが書いてないから――」
　ぱっ――修繕しゅうぜんしてから、一時的いちじてきな強化きょうかを別べつので上書き・・・してやれば良い。
「（迅雷ジンライクン――）」
　ことん――机つくえに置かれた黒筆くろふでを、手に取った。

　――さらさらさらさら――さらさらさらさらり。
　靴くつのかかと、ひざ当て、腰当て、胸当て、ひじ当て、肩当ての出っ張り。

「ふぅ、ひとつひとつに、字を入れてくのは、結構けっこうつかれるぞ？」
　ギルドの〝ギ〟をもじった『義』の文字もじ。
　最後さいごに、兜かぶとの額ひたいにいきおいよく書き入れて、終了しゅうりょう。

「――達筆たっピつでス……が、少々しょうしょウやり過ぎデは？――」

　ふぉん♪
『天角シリーズ一式【漆黒・義】
　防御力１９８８（＋９７０）。最強防具と謳われる甲冑一式。
　条件効果／【義】エリアボスとの戦闘時において、
　　　　　パーティーメンバー全員のＨＰが緑ゲージの時に、
　　　　　攻撃力と自然回復力が最大で３００％ＵＰ』

「（んぅ～？　エリアボスっていうのは、〝姫さんリカルル〟とか〝化けウサギ〟みたいなバカみたいに強つよいヤツのことだろ？）」
「――まア、そうでスね――」
「（なら、いざってときに、これくらい強つよい装備そうびがあってもいいんじゃない？」
　ぼくとか姫さんリカルルが、いつもその場に居るとは限かぎらないんだしさ。

「――ふゥ、どのミち、その筆スタイラスで書きこんだ効果こうかを消すことは、難むずしいですし、まァ、良いでしょウ――」
　そうそう、町が平和へいわじゃないとおちおち『猪蟹屋しょうばい』もできないわけで。

「ふぅー、つかれたな――」
　正直しょうじき、強化きょうかの加減かげんをするのは難むずしくて、だんだん面倒めんどうになってきた。

「――これで終わりかな？」
　最後さいごの一個いっこは、なんか小ちいさかった。

『双王の鎖箱【亡】☆：０／１
　詳細不明だが、希代の役立たず（アーティファクト）。
　装備条件／ＬＶ１００』

「詳細不明しょうさいふめい――？　これはなんだろう？」
　鎖くさりで巻かれた小箱こばこ。

「あのぅ、コレは何なんですか？」
　修繕しゅうぜんが終わった装備そうびの確認かくにんをしてた、受付係長ウェレにたずねる。

「見覚みおぼえのない箱はこね。どこから紛まぎれ込んだのかしら？」
　たおやかな指ゆびが、箱はこを持ちあげた。

　すかさず猫耳娘ニャミカが――持ってきてたらしい、〝上級鑑定箱じょうきゅうかんてい箱はこ〟を向けた。
　――――かしゃん♪
　箱はこの上うえの隙間すきまから、板いたが飛びだす。

『双王の鎖箱【亡】
　詳細不明だが、希代の役立たず（アーティファクト）。
　装備条件／ＬＶ１００』

「「「「「……装備条件そうびじょうけん――ＬＶレベル１００!?」」」ニャッ!?」コォン!?」」
　ルコルに受付係長ウェレ、近ちかくに居た受付嬢ルィノやギルド長ちょうまでもが口くちをそろえた。

「世界最高位せかいさいこういの冒険者ぼうけんしゃでもある〝央都おうとの騎士団総長きしだんそうちょう〟ですら、ＬＶレベル７０だと聞いてるが？」
　やっぱり、ＬＶレベル６０越えの女将おかみさんは、普通ふつうじゃなかったっぽい。
「――ＬＶレベる１００に到達とウたつしたシガみーも、今いマではトても普通ふつウでハないことを肝きモに銘めイしてくだサい――」
「（うるさいよ？）」

「あははは、そんなアイテム、使つかえる人ひとが居るわけないコン♪」
　なにを隠かくそう、ぼくの本当ほんとうのＬＶレベルは１００だ。つまり使つかえる。

「しかも、希代きだいの役立やくたたずって、ぷひひ……」
「あら、アーティファクトなのね？　ちょっと納得なっとくしたわ、クスクス」
「ニャはは、コレはきっと〝呪のろいのアイテム〟にゃっ♪」
　全員ぜんいんがあとずさる。

　迅雷ジンライのビードロに見えている、この小箱こばこの鑑定結果かんていけっかを――よく見る。
『双王の鎖箱【亡】☆：０／１』

　上級鑑定じょうきゅうかんてい箱はこから飛びでた板いたを――よく見る。
『双王の鎖箱【亡】』

「ゴミだ、物好ものずきの我われにも、ゴミにしか思おもえないコォン♪」
「ゴミニャ、カフェの仲介棚ちゅうかいだなにも置けないカスニャ♪」
　よほど面白おもしろかったのか、いつまでも転ころげまわる、獣人じゅうじんふたり。

「ルコル、楽たのしそうな所悪ところわるいんだけどさ――念ねんのため上級鑑定じょうきゅうかんていしてみてくれない？」
「――えー、別べつに良いけど――チーン♪」
「ええと、『そうおうの、くさり……ばこ？』。鑑定箱まほうぐと一字一句いちじいっくおなじコォン？」

「――シガみー――」
「（わかってる。この『☆かたち』は、ぼくたちにしか見えてない）」
　まちがいなく、五百乃大角いおのはらが言ってた〝百個集ひゃっこあつめると星ほしに住める〟ってヤツがらみだ。