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2:カブキーフェスタへの道
133:龍脈の棟梁(シガミー)、コントゥル母娘ふたたび
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すぅぅぅぅ――――ニタァリ。
つややかな口元が、微かにゆがむ。
やめて、その笑い。
ふかい呼吸ひとつで、聖剣切りの〝弾込め〟はおわる。
「また、ふりだしに戻っちまったじゃねーか……戻っちゃったね」
「――はイ、シガみー。どうしマしょうか?――」
〝猪蟹屋ん〟の間合いは、この建設予定地のだいたい……半分の半分の半分くらいか。
自在にうごく子供のカラダと、この自然にうごく服があれば――戦闘狂ですら、たやすく押さえこめる。
けど、真っ向からやり合うのは、避けたい。
最近ようやく、まえに戦ったときの遺恨が晴れてきたところだしな――
――ォンヴォン♪
ソレは、突然あらわれた。
木さじ食堂の女将が、木さじを振りまわすときの剣筋。
目で追えない速度を持つ、いくさ場ではあまり会いたくない類いの。
むぎゅりっ――――「リカルルちゃぁん♪ ひぃさぁしぃーぶぅーりぃーねぇー♪」
現場監督を踏みつぶしたのは、空飛ぶ……羊の角か山菜みたいな――ルードホルドの魔法杖。
『▼』――――ピピピッ――――♪
とつぜん現れた彼女を、遅《おく》れて〝動く物を見える化する〟が捉えた。
見た目は狐耳が生えた、若い女性。
娘と並んでも、その華やかさに甲乙はなく、薄暗い地の底に花が咲いたようだ。
事実上の美の女神と、名目上の美の女神(本来の姿)より、乳や尻が……何て言やぁいーんだ?
「――肉感的……〝絢爛豪華〟と表しては?――」
うん、やっぱり、そんな感じだよね。
リオの胸元とかは、少しさみしいからな。
おれ……ぼくも元は男だから、ニゲルの鼻の下が伸びるのも――わかる。
――けどだ。
あの見た目にまどわされると――狐火で心を焼かれる。
「――そノ攻撃ヲ、私は受けていませン――」
そりゃそーだ。化かされたのは――おれだけだからな。
夫人は日の本生まれの――妖狐でまちがいねぇ。
「――でスが、イオノファラーが知らナい転生者ハ、コの世界に存在しませン――」
しませんったって、居るから居るって言ってるだけだ……よぜ?
「――少々お待ちください――」
「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!? お、お母さまっ!? 一体どこからお湧きになられましたのーっ!?」
まるでコレから、合戦に挑む女武者のような――姫さんが、ぼくとか魔物とかを討伐するときと、同じような格好。
「うふふふーのぉーふぅー♪」
「ひさしぶりって、このあいだお会いしたばかりじゃありませんのっ! お放しになって――」
このやり取りは、一週間前にも見た。
けど今日はなんで、あんな勇ましい格好してるんだろ?
ちかくで合戦でも、あるのかな?
ふぉん♪
『>全ファイル検索:インデックス作成『妖狐』xor『転生者』
>検索を開始します
>検索が終了しました
>該当項目は15736件
>創作物や伝承、ならびに『転生者/シガミー』に関する項目を除外
>事象ライブラリに該当する項目は存在しませんでした』
なんか出たけど、すぐに止まって消えた。
「――イオノふァラーの持ツ全てノ情報にアクセスしましタが、シガミー以外ノ転生者や妖狐ニ関すル情報は、一切ありませんでしタ――」
「(なら、ちょっと聞いてみてよ。御神体はいま、どこに居るんだ?)」
ふぉんふぉふぉん♪
『>FATSシステム内線#10286を呼び出しています
>呼び出しています
>呼び出しています
>通話が出来ませんでした』
「――おかしイですね。ガムラン町ノ中ニ居るナら、御神体が壊レでもしない限りハ、通話が妨げられるコとは無いはずでスが――」
棚の隙間にでもはさまって、壊れたりしてないだろうなぁー?
もし、そうなら一大事だ。
「――御神体は私ノ次くらいニは頑丈でスので、壊レた可能性ハ低いカと。イオノファラー側デ、通信ヲブロックしてイる確率74%……七割以上でス――」
そりゃ、サボりってことか?
このいそがしいときに。
「――あらっ、シガミーちゃんも居――――うぎゃ!? 」
姫さん、そっくりな顔が――こっちを見つけるなり、ひきつった。
「ぅきゃあっ――シガミーちゃんがぁー、召しあがられてますわぁ!?」
ソレ、さっき姫さんがやったし。
「いますぐぅーたすけぇだぁしぃーまぁすぅーわぁぁぁぁっ!」
三度、剣をかまえる、ご令嬢――
え、だから、さっきやったでしょ?
なんで姫さんまで、またおどろいてんのさ?
「まてまてまってー、食われてない食われてない! 召しあがられてもないよ、こりゃ作り物だぁー!」
声を張り上げ、ジリジリと近寄る。
「(おい、いまのリカルル、おかしくなかったか?)」
「――ふざけている訳では、ないようです。シガミーの〝べらんめえ調〟に対して「魔物が出たぞー!」と大騒ぎになる事例に酷似しています――」
「えーっと、そう、これ毛皮っ! 手作りの毛皮を着てるだけぇでぇすぅよぉー!」
おれの顔を、よーくみせてやると、コントゥル母娘が――しぶしぶ剣と杖をおさめた。
――コレは、ふざけてるだろ。
「まあいいや。そういえば今日は黒っぽい護衛筆頭の……すっごい厳くて面の良い……素敵な人はいないんですか?」
彼が居てくれるなら、この母娘も滅多なことはしないと思うし。
「エクレアのことかしら?」
「じつわねぇー、いま央都にお嫁ちゃんさんぉー、お迎えに行ってるのよぉねぇーん♪」
やべぇ、声もどことなく似てるし、五百乃大角と性格が似てる気がしてきた。
ちょっと怖ぇー。
「ところで、きょうは基礎工事中だって聞いたんだけど……こんな有様でわぁ、四日後の結婚式にわぁ、まにあわないんじゃなぁいのぉかしらぁー?」
崖の亀裂を杖で指す、伯爵夫人。
「お母さまそれは、シガミーが面白い技とやらの一撃でぇ――ー刻みつけたみたいなんですのよ?」
じりじりじり、あれなんで近寄る?
「くすくすくすくすくすくす、あのねぇー。きょうわぁ、どうしてぇ、こぉんなフル装備であそぉびにきたんだぁとぉおもうぅぅ? クツクツクツクツッケタケタケタケタケタケタケタケタッ♪」
なんだろ、その声。
それに、武者ぶるいするのも、やめよう?
ーーー
武者震い/大事な場面や戦いに対して、興奮に打ち震えること。
つややかな口元が、微かにゆがむ。
やめて、その笑い。
ふかい呼吸ひとつで、聖剣切りの〝弾込め〟はおわる。
「また、ふりだしに戻っちまったじゃねーか……戻っちゃったね」
「――はイ、シガみー。どうしマしょうか?――」
〝猪蟹屋ん〟の間合いは、この建設予定地のだいたい……半分の半分の半分くらいか。
自在にうごく子供のカラダと、この自然にうごく服があれば――戦闘狂ですら、たやすく押さえこめる。
けど、真っ向からやり合うのは、避けたい。
最近ようやく、まえに戦ったときの遺恨が晴れてきたところだしな――
――ォンヴォン♪
ソレは、突然あらわれた。
木さじ食堂の女将が、木さじを振りまわすときの剣筋。
目で追えない速度を持つ、いくさ場ではあまり会いたくない類いの。
むぎゅりっ――――「リカルルちゃぁん♪ ひぃさぁしぃーぶぅーりぃーねぇー♪」
現場監督を踏みつぶしたのは、空飛ぶ……羊の角か山菜みたいな――ルードホルドの魔法杖。
『▼』――――ピピピッ――――♪
とつぜん現れた彼女を、遅《おく》れて〝動く物を見える化する〟が捉えた。
見た目は狐耳が生えた、若い女性。
娘と並んでも、その華やかさに甲乙はなく、薄暗い地の底に花が咲いたようだ。
事実上の美の女神と、名目上の美の女神(本来の姿)より、乳や尻が……何て言やぁいーんだ?
「――肉感的……〝絢爛豪華〟と表しては?――」
うん、やっぱり、そんな感じだよね。
リオの胸元とかは、少しさみしいからな。
おれ……ぼくも元は男だから、ニゲルの鼻の下が伸びるのも――わかる。
――けどだ。
あの見た目にまどわされると――狐火で心を焼かれる。
「――そノ攻撃ヲ、私は受けていませン――」
そりゃそーだ。化かされたのは――おれだけだからな。
夫人は日の本生まれの――妖狐でまちがいねぇ。
「――でスが、イオノファラーが知らナい転生者ハ、コの世界に存在しませン――」
しませんったって、居るから居るって言ってるだけだ……よぜ?
「――少々お待ちください――」
「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!? お、お母さまっ!? 一体どこからお湧きになられましたのーっ!?」
まるでコレから、合戦に挑む女武者のような――姫さんが、ぼくとか魔物とかを討伐するときと、同じような格好。
「うふふふーのぉーふぅー♪」
「ひさしぶりって、このあいだお会いしたばかりじゃありませんのっ! お放しになって――」
このやり取りは、一週間前にも見た。
けど今日はなんで、あんな勇ましい格好してるんだろ?
ちかくで合戦でも、あるのかな?
ふぉん♪
『>全ファイル検索:インデックス作成『妖狐』xor『転生者』
>検索を開始します
>検索が終了しました
>該当項目は15736件
>創作物や伝承、ならびに『転生者/シガミー』に関する項目を除外
>事象ライブラリに該当する項目は存在しませんでした』
なんか出たけど、すぐに止まって消えた。
「――イオノふァラーの持ツ全てノ情報にアクセスしましタが、シガミー以外ノ転生者や妖狐ニ関すル情報は、一切ありませんでしタ――」
「(なら、ちょっと聞いてみてよ。御神体はいま、どこに居るんだ?)」
ふぉんふぉふぉん♪
『>FATSシステム内線#10286を呼び出しています
>呼び出しています
>呼び出しています
>通話が出来ませんでした』
「――おかしイですね。ガムラン町ノ中ニ居るナら、御神体が壊レでもしない限りハ、通話が妨げられるコとは無いはずでスが――」
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もし、そうなら一大事だ。
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そりゃ、サボりってことか?
このいそがしいときに。
「――あらっ、シガミーちゃんも居――――うぎゃ!? 」
姫さん、そっくりな顔が――こっちを見つけるなり、ひきつった。
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ソレ、さっき姫さんがやったし。
「いますぐぅーたすけぇだぁしぃーまぁすぅーわぁぁぁぁっ!」
三度、剣をかまえる、ご令嬢――
え、だから、さっきやったでしょ?
なんで姫さんまで、またおどろいてんのさ?
「まてまてまってー、食われてない食われてない! 召しあがられてもないよ、こりゃ作り物だぁー!」
声を張り上げ、ジリジリと近寄る。
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「えーっと、そう、これ毛皮っ! 手作りの毛皮を着てるだけぇでぇすぅよぉー!」
おれの顔を、よーくみせてやると、コントゥル母娘が――しぶしぶ剣と杖をおさめた。
――コレは、ふざけてるだろ。
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彼が居てくれるなら、この母娘も滅多なことはしないと思うし。
「エクレアのことかしら?」
「じつわねぇー、いま央都にお嫁ちゃんさんぉー、お迎えに行ってるのよぉねぇーん♪」
やべぇ、声もどことなく似てるし、五百乃大角と性格が似てる気がしてきた。
ちょっと怖ぇー。
「ところで、きょうは基礎工事中だって聞いたんだけど……こんな有様でわぁ、四日後の結婚式にわぁ、まにあわないんじゃなぁいのぉかしらぁー?」
崖の亀裂を杖で指す、伯爵夫人。
「お母さまそれは、シガミーが面白い技とやらの一撃でぇ――ー刻みつけたみたいなんですのよ?」
じりじりじり、あれなんで近寄る?
「くすくすくすくすくすくす、あのねぇー。きょうわぁ、どうしてぇ、こぉんなフル装備であそぉびにきたんだぁとぉおもうぅぅ? クツクツクツクツッケタケタケタケタケタケタケタケタッ♪」
なんだろ、その声。
それに、武者ぶるいするのも、やめよう?
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