滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１５２：龍脈の棟梁（シガミー）、モサモサ神官はフルレジスト？

「やべっにゃっ――！」
　切っ先さきが布鎧モサモサに、ふかく通とおった感触かんしょくが残のこってる。

「蘇生薬にゃにゃつかえみゃぁ！」
　っていうか、どうやって飲ませりゃ？
「（患部かんぶに振りかければ、機能きのうします。効果こうかは半減はんげんしますが）」

「（じゃあ、ソレやれっ！）」
　伯爵夫人ルリーロのお達たっしは――〝死なねぇ程度ていど〟だ。

「（はい。ですが、シガミー）」
　どうした？　いそがねぇと蘇生薬エリクサーに必要ひつような〝ひと呼吸こきゅう〟が出来できなくなる。
　いくらこの内緒話ねんわ中ちゅう、辺あたりの速はやさが緩ゆるやかになるからって――モタモタしてたら、モサモサが死んじまう。

「（蘇生薬エリクサーは必要ひつようありません）」
　なんだと？　どういう意味いみだぁ？

　ぴぴぴぴぴっ――――♪
『▼――Unknown』『▼――Unknown』』

　ブゥォ――――ッ！
　ズォォ――――ッ！
　こんどは真横まよこから、鉈剣なたがせまる。
　ひとりは上段じょうだんからの、振りおろし。
　ひとりは下段げだんからの、切り上げ。
　左上右下ひだりうえみぎしたからの、挟はさみ打ち。

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　…………╋：左　右：╋━━━━』
　最初さきに放はなった右小太刀みぎこだちの絵・が、元もとにもどった。あとに放った左小太刀ひだりこだちは、まだ抜刀ばっとうしたままだ。
　なるほど。読み方よみかたがわかったぜ！

　右小太刀みぎこだちは自動的ひとりでに納刀のうとうされている。
　――ガッツン！
　目のまえの・・・・・鉈剣なたを下したから受けた。

　バチィバチィバチイィィィ――――ボォボォォン！
　何なんの音おとだ、なんかが弾はじけた。

　目のまえには５人目モサモサ、背後に六人目モサモサ。
　居合いあいのいきおいで、弾はじき飛ばした一人目二人目モサモサどもも、また鉈剣なたを振り上げた。

　猫耳頭あたまを、強つよく回まわす――がちり。
　しっかりと襟回えりまわりとくっ付いてるから、それ以上いじょうは回まわらない。
　それでも、おれの目は〝弾はじけた音おとの出所でどころ〟を捉とらえた。
　ビードロが視線しせんを追いかけて、うしろを見せてくれているのだ。

　見れば、鉈剣なたを切られた三人目モサモサが、背中から・・・・煙けむりを立ち上のぼらせている。

「（なんだぁ、あの煙けむりわぁ――焙烙玉ほうろくだまでも隠かくし持ってやがったのか!?）」
　それに……たしかに手応てごたえがあったのに――ピンピンしてやがる。
「（周囲しゅういに可燃物かねんぶつの反応はんのうは、ありません）」

　そして、同おなじく鉈剣なたを切られ、布製ぬのせいの鎧よろいを貫つらぬかれたはずの四人目モサモサも――
　バチィバチィバチイィィィ――――ボォボォォン！
　布鎧ぬのよりの脇腹あたりが・・・・・・弾はじけて――やっぱり倒たおれる気配けはいがねぇ。

「（たしかに蘇生薬エリクサーは、いらねぇな！）」
　どういう仕組しくみかはわからんが、あの〝ぼぼぼん・・・・〟で奴らモサモサは――おれの打突だとつも居合いあいも凌しのいじまったってこった。

「（はい、そのようです。胸元むなもとの護符ごふを機能きのうさせるために、大量たいりょうの呪符じゅふを体中からだじゅうに張りつけているのだと思おもわれます）」
　ふぉふぉん♪
　ビードロに小ちいさな板いたが、二枚にまいあらわれた。
　こりゃ、モサモサの――背中せなかか？
　あと、こっちは――横よこっ腹ぱら？
　どっちも黒焦くろこげの布鎧ぬのよろいが、映うつしだされてる。

「（護符ごふはわかる。姫ひめさんがくれた〝死なねぇ紐ひも〟と同おなじだろ？）」
　命いのちの肩代かたがわりも鎧代よろいがわりも恩恵おんけいの差こそあれ、同おなじ種類しゅるいのもんだ。
　命いのちなり鎧よろいの鉄板てっぱんなりが、一個いっこふえるわけだからな。

「（シガミー！）」
　――――シュッカァァンッ！
　五人目モサモサに鞘さやを預あずけ――抜刀ばっとう！
　振りかえりざまに姿勢しせいを低ひくくし、六人目モサモサの足あしを切り飛ばす。

　フォァァァァァッ――――六人目モサモサの首元くびもとで護符ごふが光ひかった。
　全然まるで効いてねぇけど、一瞬いっしゅん立ち止まったぞ。

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　━━━━╋：左　右：╋…………』
　二人目モサモサを左鞘ひだりさや（逆手さかて）で受け――ガッツン！
　そのまま一人目ひとりめを――――シュッカ、カッツンッ！

　袈裟斬けさぎりにしたつもりが、すげぇ勢いきおいいでさがられて――鉈剣なたの先さきしか切れなかった。
　くそっ、もう〝波なみのうごき〟で対策たいさくされた。

　バチイィィ――――ボォン！
　踏みこみが甘あまかったからか、六人目モサモサからは小ちいさな煙けむりが上がった。
　三人目四人目モサモサどもが引っこんで、七人目八人目モサモサどもがあらわれる。

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　…………╋：左　右：╋━━━━』

　体勢たいせいをととのえられるまえに、六人目モサモサを鞘さやで強つよく突く！
　ごっつん――――ずどどどどずむ♪
　ふっとぶ、六人目モサモサ。
　モサモサの陣形じんけいに風穴かざあなをあけられた、と思おもったけど――――モサササスサササァ。
　衣擦きぬずれの音おとをたてて、あたらしいモサモサで埋め尽くされた。

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　━━━━╋：左　右：╋…………』
　八人目モサモサを鞘さやで受け、七人目モサモサをたたき切る。
　よし、鉈剣なたを切ってやった！

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　…………╋：左　右：╋━━━━』
　二人目モサモサの突きを鞘さやで弾はじき、引いた小太刀こだちで八人目モサモサを突く。
　手元てもとを強つよく切りつけたら――ガシャン！
　ひるむ素振そぶりは、まったく見えない。けど鉈剣なたを落としたぞ。
　拾ひろいにきたら、蹴りとばしてや――――モサモサスササァー。

　モサモサの陣形なみが引いていく――「来ねえふぎゃーっ！」
　引き潮モサモサを追いかける――ぽきゅっ♪

　ブォォォォォン――――振るわれる鉈剣なた。
　こいつわぁ、何人目ねんにんめだったか。
「個体識別こたいしきべつに意味いみはありませんが、一人目ひとりめです」

　ヒュォォォォン――――ッ！
「（じゃ、となりは二人目ふたりめか？）」
「（いいえ、五人目ごにんめです）」
　なかなか、うまくいかねぇ。
　ほんとうなら、押しよせる波なみに対たいして、盾たてと矛ほこの乱みだれ打ち――
　攻防こうぼう一体いったいの華麗かれいな舞いをおみまいしてやる、つもりだったんだがなぁ！

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　━━━━╋：左　右：╋━━━━』
　一人目ひとりめを――ガッツン！
　五人目ごにんめも――ゴッツン！

　ぴぴぴっ――♪
『▼――二人目』
　真うしろから振りおろされた鉈剣なた。
　アレ喰らったら、この服ふくは裂けるか？
「いいえ。多少たしょうの衝撃しょうげきは感かんじるかもしれませんが――」

　ならば――「こうだっ！」
　うしろ足あしを振り上げた。
　ぽっきゅむん――――ドゴッガァァァァンッ♪
　面白おもしろい音おと――ふっとぶ『▼――二人目』と、その背後はいごに陣取じんどってたモサモサたち。
　なんだよ、鉈剣なたごと蹴り飛ばした方ほうが簡単かんたんだぜ。
　倒たおせはしねぇけど――――空いた隙間すきまがスグ、モサモサで埋まる。

　上体じょうたいを下げた勢いきおいで――――一人目五人目モサモサどもから抜刀ばっとうする。
　くるるん、ごろりっ――――シュッカ、シュッカァァァァァァンッ――――ゴッゴゴンッ！
　まえにとんぼを切り、小太刀こだちを叩たたきつける。
　切っ先さきは通とおらないが、二人ふたりとも倒たおれた。
　体勢たいせいを崩くずしただけでも――――いくさ場では命取いのちとりだ。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉうみゃぁぁぁぁぁぁ、りゃぁぁっぁぁぁぁっふっぎゃぁぁぁぁぁっ！」
　抜き身の小太刀こだちで、チカラ一杯切いっぱいきりつけた。

　ゴッゴォン――バキャゴキャッ！
　また石床いしゆかが割れた。
　もういい、あとでまとめて直なおす。

　フォァァァァァッ――――一人目五人目モサモサどもの首元くびもとで護符ごふが光ひかった。
　バチィバチィバチイィィィ――――ボォボォォン！
　切りつけた所ところと全然別ぜんぜんべつのところが、はじけ飛んだ。

　むくり――起き上がるモサモサども――全然まるで効いてねぇ。

　チキッ♪
『【納刀自動化モード／ＯＮ】
　━━━━╋：左　右：╋━━━━』
　効果こうかはなくても、真っ正面しょうめんから切りつけ続つづけてたら、すこし怯ひるんだ気がする。
　そりゃそーだ。おれだって逆ぎゃくの立場たちばだったら、とっくに逃げ出してるぜ。
　ましてや、この神官モサモサどもは、〝守まもり〟に重き・・を置いている。

　ぴたり――押しよせていた波なみが、とまった。
「ふぅーっふぎゃー！」
　思おもったほどは、呪符ぬのの数かずを減らせなかった。

　このままじゃ、時間じかんがかかる。
　姫ひめさんたちも気になるし。

　あの呪符じゅふが打突だとうや斬撃ざんげきから、〝護符ごふを守まもる〟ってんなら――――「ひのたま！」
　ぼぉわぁっ♪
　強い服シシガニヤンごしでも武器ぶきの出し入れが出来できてるってことは、とうぜん魔法まほうもつかえる。
　つかえる物ものは、なんでもつかう。
　つかわないと、いくさ場では死ぬのだ。

　金剛力うでの力ちからで思おもいっきり、生活魔法せいかつまほうを投げ飛ばした。
　ぼっわぁぁー――十一人目モサモサにぶち当たる。
　呪符じゅふは一枚いちまいも燃えること無く、ひのたまを弾はじいた。

「（魔法まほうはダメか）」
　カタナを切られた奴モサモサや、あちこち焦げた奴モサモサなんかが、うしろにさがっていく。

「（ひとまずは、錫杖しゃくじょうか小太刀こだちによる物理攻撃ぶつりこうげきをつづけるしか無いようです。それとも戦たたかいながら、有効ゆうこうな上級魔術じょうきゅうまじゅつスキルがでるまで、片かたっ端ぱしから収得しゅうとくしてみますか？）」

「（いや、それもなんかイカサマみてぇだからやめとく）」
　モサモサを凌しのぐだけなら、小太刀カタナを振りつづけてりゃ、良いし。

　なによりあの、呪符しゅふをつかった……往生際おうじょうぎわが悪わりぃ〝守まもり〟にわぁ、なんだか負けたくなかった。
　それは、たとえ連中れんちゅうが至善しぜんな集団しゅうだんだとしても、関係かんけいない類たぐいのものだ。

「（わかりました、シガミー。それでは正々堂々せいせいどうどうと攻略法こうりゃくほうを、探さぐりましょう）」
　……お前まえがいるだけで、相当そうとうイカサマだけどなー。

ーーー
焙烙玉／導火線に火をつけ投げる兵器。火薬の性能が低いため、焼夷弾的な使い方もされた。
至善／これ以上ないほどの善。理想的な道徳を実現した状態。