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2:カブキーフェスタへの道
155:龍脈の棟梁(シガミー)、肉球と謝罪と兄神
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すべるように自在にうごく箱が、大女神像の目のまえに止まる。
降り立った狐耳族と、猫頭の獣人族。
「こほん♪ えーあー、まーそのー、なんと言ったらよいのかしら?」
なんだか、歯切れが悪い。口元と目頭が、波打ってる。
こんな姫さんは――ガムラン町の草原で〝殺りあった〟直後にも見たぞ。
「――リオレイニアヲ〝パーティー:シガミー御一行様〟へ勧誘したトきにも見ましタ――」
そうだった。けっこう、確執があるっちゃある。
嫌いじゃねーし、嫌われては居ねぇと思うけど。
仁王立ちの姫さんの顔を見てたら、貸してた耳栓が目に入った。
「どうした――にゃ? そういえば耳栓の片方を、そろそろ返してくれ――にゃ」
猪蟹屋んの毛皮の手を、さしだした。
ふぉふぉん♪
『>そうですね、〝カナル型イヤホン〟はアーティファクトにはあまり見られない構造をしてるので、人目にはさらさない方が良いでしょう」
ビードロの端に、迅雷の言葉が映しだされた。
彼女のまえでは、迅雷――つまり宛鋳符悪党からの念話は、しないようにしてる。
狐耳族やコントゥル家の習慣か――〝宛鋳符悪党〟をつかった暗殺を警戒するからだ。
ぽふん。
猪蟹屋んの手に乗せられたのは、耳栓ではなく――フサフサの手。
姫さんたちが乗ってた箱。
ソレが、いつのまにか目のまえにあった。
段差を物ともせずに駆けあがった――平たくて白い猫車。
小さな車が付いた四つ足が、まるで椅子か馬のごとく……生えていた。
ルコルの〝ギルド椅子〟にも似てるけど、コッチには〝魔法の神髄〟がまるで無い。
ふぉふぉん♪
『>おそらく、最新の神々の技術が投入されています』
そんなことが出来るのは、ひとりしか居まい。
やい、五百乃大角――おまえ隠れて何やってやがんだ!?
ビードロの中に、梅干しの姿はなかった。
「にゃにゃにゃ、にゃみゃみゃみゃにゃ・にゃにゃみゃぁにゃ。リカルルとは旧知の仲だにゃ」
あたたかい、ふさふさの毛皮。
毛色は明るい緑色。
ちなみに猪蟹屋の猫頭青年は、赤みがかった黄色だ。
猫顔のちがいはわからないから、毛色で区別できるのはありがたい。
「おれ、いや、ぼくはシガミーだよ」
白い椅子だか馬にすわり、針みたいな猫目でコッチを見おろす――彼だか彼女だかに、こちらも名乗った。
リカルルの知り合いってこたぁ、それなりの地位に居るってことで。
無礼があっては、ご令嬢の面子をつぶしかねない。
つかんだ手を上下に振る――〝ニャミカ〟みたいな〝名前の出だし〟の猫耳族。
『>ミャニラステッド・グリゴリーです』
「(んぅ? なんか手に持ってるぞ?)」
手のひらに伝わる、ペトリとした感触があった。
手の真ん中に、しっとりとした丸いのが乗せられてて――
ふぉん♪
「>肉球です」
なんだそりゃ?
ふぉん♪
『>猫や狼などに見られる、手足のすべり止めです』
あー知ってる。押すと爪が出るよな。
獣人族は〝混じり具合〟によって、頭や手足の先に違いが出る。
ウチの猫頭青年に、肉球てのは無かった。
「みゃにゃ、にゃーご♪」
眠るように、笑う目。
そして、ほころぶ口元から小さな牙が覗いている。
やっぱり、〝猫頭〟は見ていて心がなごむ。
モサモサ神官相手に、高ぶっていた気持ちが、おちついていく。
「リカルル――時間を掛けると、ますます言い出しづらくなるにゃぁ?」
馬椅子をクルリと回し、姫さんをみつめる――ミャーなんとか。
〝ミャンとか〟は、まだ手を放してくれない。
振り払うわけにも、いかねえよなー。
「わ、わかっていますわっ……シガミィー!」
猫頭の魔物みたいなおれと、猫頭の猫耳族のあいだに、割り込むご令嬢。
やっと手を放してくれる、〝ミャンとか〟。
「な、なんだぁ――にゃ?」
あとずさろうにも、尻尾が抜けたら女神に怒られる。
「こ、今回のことは全面的に、コントゥル家の落ち度です。まずは家を代表して謝罪いたしますわぁー」
心臓を押さえる手。
垂れる首。
これは、この世界での正式な謝罪の仕草で、下世話な話をすりゃ――コントゥル家にひとつ、貸しが出来たってことでもある。
「にゃっ? 領主の令嬢に頭を下げられるなんて、どんな冗談だ――にゃ!? やめてくれっ心臓に悪ぃ――にゃっ!?」
何の話をしてるのかわからんけど、たぶんきっと――〝全面的〟ではねぇと思う。
そもそもは〝烏天狗のおれ〟と〝オルコトリア〟が、ギルドの建物を、ぶっ壊したことが発端だし。
「ところが、そうはまいりませんのよ。私の母――コントゥル家名代による、領民シガミーへの、〝攻撃並びに神域への強制転移〟は到底――言い逃れることなど、出来ませんっわっ!」
攻撃わぁわかる。けど強制転移ってなぁ、なんでぇい?
たしかに、あの霧のよくわからん場所に、吹っ飛ばされはしたが……。
ふぉふぉん♪
『>神域のことです。正式には〝オープンβ期間中に作成されたDEMOワールド〟で、前プレイヤーである〝オノハラレン〟が作成した世界です』
わからん。けど――輪或弩ってのは、たしか天地のことで。
己腹錬てぇのはぁ……初めて聞いたぞ?
ふぉふぉん♪
『>どうやらイオノファラーの兄が設定した、プレイヤー名のようです』
かんがえた所で神々の〝全部〟がわかるわけじゃねぇから、放っといたけど――神域で兄神がどうとか言ってた奴だな。
美の女神、五百乃大角の兄神。
己腹錬……己の腹を鍛える?
なんだか、ものすごく食うことに積極的な名前だな……イヤな予感しかしねぇ。
降り立った狐耳族と、猫頭の獣人族。
「こほん♪ えーあー、まーそのー、なんと言ったらよいのかしら?」
なんだか、歯切れが悪い。口元と目頭が、波打ってる。
こんな姫さんは――ガムラン町の草原で〝殺りあった〟直後にも見たぞ。
「――リオレイニアヲ〝パーティー:シガミー御一行様〟へ勧誘したトきにも見ましタ――」
そうだった。けっこう、確執があるっちゃある。
嫌いじゃねーし、嫌われては居ねぇと思うけど。
仁王立ちの姫さんの顔を見てたら、貸してた耳栓が目に入った。
「どうした――にゃ? そういえば耳栓の片方を、そろそろ返してくれ――にゃ」
猪蟹屋んの毛皮の手を、さしだした。
ふぉふぉん♪
『>そうですね、〝カナル型イヤホン〟はアーティファクトにはあまり見られない構造をしてるので、人目にはさらさない方が良いでしょう」
ビードロの端に、迅雷の言葉が映しだされた。
彼女のまえでは、迅雷――つまり宛鋳符悪党からの念話は、しないようにしてる。
狐耳族やコントゥル家の習慣か――〝宛鋳符悪党〟をつかった暗殺を警戒するからだ。
ぽふん。
猪蟹屋んの手に乗せられたのは、耳栓ではなく――フサフサの手。
姫さんたちが乗ってた箱。
ソレが、いつのまにか目のまえにあった。
段差を物ともせずに駆けあがった――平たくて白い猫車。
小さな車が付いた四つ足が、まるで椅子か馬のごとく……生えていた。
ルコルの〝ギルド椅子〟にも似てるけど、コッチには〝魔法の神髄〟がまるで無い。
ふぉふぉん♪
『>おそらく、最新の神々の技術が投入されています』
そんなことが出来るのは、ひとりしか居まい。
やい、五百乃大角――おまえ隠れて何やってやがんだ!?
ビードロの中に、梅干しの姿はなかった。
「にゃにゃにゃ、にゃみゃみゃみゃにゃ・にゃにゃみゃぁにゃ。リカルルとは旧知の仲だにゃ」
あたたかい、ふさふさの毛皮。
毛色は明るい緑色。
ちなみに猪蟹屋の猫頭青年は、赤みがかった黄色だ。
猫顔のちがいはわからないから、毛色で区別できるのはありがたい。
「おれ、いや、ぼくはシガミーだよ」
白い椅子だか馬にすわり、針みたいな猫目でコッチを見おろす――彼だか彼女だかに、こちらも名乗った。
リカルルの知り合いってこたぁ、それなりの地位に居るってことで。
無礼があっては、ご令嬢の面子をつぶしかねない。
つかんだ手を上下に振る――〝ニャミカ〟みたいな〝名前の出だし〟の猫耳族。
『>ミャニラステッド・グリゴリーです』
「(んぅ? なんか手に持ってるぞ?)」
手のひらに伝わる、ペトリとした感触があった。
手の真ん中に、しっとりとした丸いのが乗せられてて――
ふぉん♪
「>肉球です」
なんだそりゃ?
ふぉん♪
『>猫や狼などに見られる、手足のすべり止めです』
あー知ってる。押すと爪が出るよな。
獣人族は〝混じり具合〟によって、頭や手足の先に違いが出る。
ウチの猫頭青年に、肉球てのは無かった。
「みゃにゃ、にゃーご♪」
眠るように、笑う目。
そして、ほころぶ口元から小さな牙が覗いている。
やっぱり、〝猫頭〟は見ていて心がなごむ。
モサモサ神官相手に、高ぶっていた気持ちが、おちついていく。
「リカルル――時間を掛けると、ますます言い出しづらくなるにゃぁ?」
馬椅子をクルリと回し、姫さんをみつめる――ミャーなんとか。
〝ミャンとか〟は、まだ手を放してくれない。
振り払うわけにも、いかねえよなー。
「わ、わかっていますわっ……シガミィー!」
猫頭の魔物みたいなおれと、猫頭の猫耳族のあいだに、割り込むご令嬢。
やっと手を放してくれる、〝ミャンとか〟。
「な、なんだぁ――にゃ?」
あとずさろうにも、尻尾が抜けたら女神に怒られる。
「こ、今回のことは全面的に、コントゥル家の落ち度です。まずは家を代表して謝罪いたしますわぁー」
心臓を押さえる手。
垂れる首。
これは、この世界での正式な謝罪の仕草で、下世話な話をすりゃ――コントゥル家にひとつ、貸しが出来たってことでもある。
「にゃっ? 領主の令嬢に頭を下げられるなんて、どんな冗談だ――にゃ!? やめてくれっ心臓に悪ぃ――にゃっ!?」
何の話をしてるのかわからんけど、たぶんきっと――〝全面的〟ではねぇと思う。
そもそもは〝烏天狗のおれ〟と〝オルコトリア〟が、ギルドの建物を、ぶっ壊したことが発端だし。
「ところが、そうはまいりませんのよ。私の母――コントゥル家名代による、領民シガミーへの、〝攻撃並びに神域への強制転移〟は到底――言い逃れることなど、出来ませんっわっ!」
攻撃わぁわかる。けど強制転移ってなぁ、なんでぇい?
たしかに、あの霧のよくわからん場所に、吹っ飛ばされはしたが……。
ふぉふぉん♪
『>神域のことです。正式には〝オープンβ期間中に作成されたDEMOワールド〟で、前プレイヤーである〝オノハラレン〟が作成した世界です』
わからん。けど――輪或弩ってのは、たしか天地のことで。
己腹錬てぇのはぁ……初めて聞いたぞ?
ふぉふぉん♪
『>どうやらイオノファラーの兄が設定した、プレイヤー名のようです』
かんがえた所で神々の〝全部〟がわかるわけじゃねぇから、放っといたけど――神域で兄神がどうとか言ってた奴だな。
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