滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１９３：龍脈の棟梁（シガミー）、ニゲルのさびた剣

「（シガミー！　ニゲルは日本人にほんじんです！）」
　はぁ、なんだそりゃ？
「（日ひの本生もとうまれ、ルリーロと同《おな》じく同郷人どうきょうじんです！）」

「なんだとっにゃぎゃにゃ!?」
　なんだって、そんな大事だいじなことに気づかなかったんだ――あの飯めしの神かみわぁ？
　それにニゲル青年せいねんも、なんで気づかなかったんだ？

「（おれがぁにゃにゃ、日の本の生まれみゃにゃやにゃだってのわぁみゃぁーご、ニゲルにもにゃにゃ言ったぞぉみゃぎゃうー!?」
「（それを言うならシガミーもです。ニゲルの居た日本にほん……日ひの本もとは、言葉ことばづかいから察さっするにシガミー……猪蟹ししがにが生存せいぞんしていた時ときよりも、ずっとあとの時代じだいだと思おもわれます。そのため、〝日ひの本もと〟という読みが忘わすれられたのではないかと）」
　あとの時代じだい――わからん。
　化狐ばけぎつね……伯爵夫人ルリーロは、東ひがしの都生みやこうまれだって言ってたが、彼女かのじょもか？

「（ルリーロは、ニゲルよりは猪蟹ししがにに近ちかい――古ふるい時代じだいから来たと思おもわれます）」
　ふたりとも、おれの……あとの時代じだいから来た。
　つまりおれが最古参さいこさんで、この来世ガムランじゃ新参者しんざんものだっていうのか――!?
　わからん、わからん。

　いま二号ぼくを亡き者ものにしようと――
　さびた剣けんを、念話並ねんわなみの速度はやさで突き込んでくる――
　リカルル親衛隊しんえいたい（総員一名そういんいちめい）――

「ボクのぉ――よこしまなぁ――下心したごころのぉ――礎いしずえにぃ――なぁれぇぇぇぇっ――――!!!」
　たしかに、この太刀筋たちすじ！
　間違まちがええようはない。
　いくさ場で幾度いくどとなく切結きりむすんできた、日ひの本もとの捨て身とも言える〝刀かたな〟の扱あつかい。

　あとニゲル、あの姫ひめさんにソコまで・・・・入れ込んでるんだ。
　下心したごころだったとしても、決けっして不正よこしまではない。

　ふぉんふぉふぉん♪
『＞ＦＡＴＳシステム内線＃１０２８６を呼び出しています
　＞呼び出しています
　＞呼び出しています
　＞通話が出来ませんでした』

「（イオノファラーが。呼び出しに応じません）」
「（またサボりか!?）」
「（はい、おそらく、シシガニャン二号にごうへの余計な言及・・・・・について、シガミーに糾弾きゅうだん……怒おこられることを恐おそれての事ことと思おもわれ――）」
　本当ほんとうに的確てきかくに、余計よけいな事ことばかりしてくれやがる、あの美の女神めがみ（笑わらい）さまわぁぁ！

　ヴォヴォヴォ――――ン！
　うなる錆色さびいろ。
　突きの神速はやさで間まが詰められ――
　ほとんど組討くみうちの間合まあいから――
　無数むすうの斬激ざんげきが放はなたれ――
　ニゲルの肩かたから先さきが――
　見えない。

　ヒュヒュヒュヒュン――――じゃぎゃりりぃぃん♪
　シガミーの変幻自在へんげんじざいの軸足じくあしで、剣筋けんすじをとらえ――

　すぅぅぅぅぅぅっ――――――――消えた!?
　目で追うと、逆ぎゃくにニゲルのカラダ本体ほんたいが周囲しゅういの景色けしきに溶けちまう。
　なんて速はやさ――――速はやさではないのか!?
　おれの元和元年いまどきの構かまえじゃ、すべてを薙ぎ払はらえない。

「三の構えにゃにゅ、大刀から四方暗器までみゃみゃにゃやーにゅ。」
　ひゅひゅひゅひゅっひゅひゅひひひゅふぉおん！

　ニゲルの切っ先さびいろに、重心じゅうしんを寄せる。

　ぼっ――ゴン！
　ザッギィィィンッ！
　さびた剣の一点いってんに目印めじるしを打った。

　フォヴォォォォォォォォォォォォォォォォン！
　重心じゅうしんがえがく円えんのうごきを、まっすぐなはずの錫杖ぼうに伝つたえていく。

　――ガキッ―――ぎゅきっ！
　ニゲルからは、錫杖しゃくじょうが折れ曲がって・・・・・・見えてるはず。

　―――ぎゃらららっ！
　両端りょうはじに二にカ所しょある、打突だとつの先端さき。
　それをまるで苦無くないや手裏剣しゅりけんのように、四方しほうからとばす・・・・・。
　ニゲルの速はやさのからくりがわからねぇウチは、数かずで凌しのぐしかない。

　どうにか肉迫にくはくするも、ニゲルの正当せいとうな下心したごころは、とどまる所ところを知らず。

「死――ぃねぇ――ぇぇぇぇ――ぇぇぇぇ――ぇぇぇぇ――――――――――――――――!!!」
　さびた剣けん。
　その切っ先さきが倍ばいに増える。

　――――ごこごごっごごっごんふみゃぁぁぁぁぁごぉぉぉぉぉ！
　ギャギギャキギギィィィィン――――!?
　凌しのぎきったと思おもったら――――最後さいごに軽かるく横薙よこなぎ。
「あっぶねっみゃぁご！」
　ぎゅぎぎぃん！
　青年ニゲルの歩ほが止まる。

「（ここだぁ！）」
　おれは錫杖しゃくじょうを水平すいへいにかまえ――――印いんを結むすぶ。
　コレ・・に真言マントラはのらねえが、あるのとないので威力いりょくがなんでか変わる――

「――滅せよにゃご！」
　ドッズズズズズズズムン！

　ふっとぶニゲル――殺やったか!?
　カカカカァァン――――――白熱はくねつしたさびた剣けんが寸断すんだんもされず、輝かがやいている！

「いてて、さすがはシガミーだね。死ぬかと思おもったよ、ひどいなぁ」
　尻餅しりもちをつきながらも、切っ先さきはコッチを向いている。

　さっき、ニゲルも「死ねぇー」とか言ってたよね。
　すっかり、さびの落ちた小剣しょうけんが、いつまでも光ひかり続つづけている。

「（シガミー、ニゲルの剣けんを上級鑑定じょうきゅうかんていしてください）」

　ふぉふぉん♪
『聖剣ヴォルト【打ち直し】
　攻撃力３４。魔王を討伐できる唯一無二の聖剣。
　＞正式な手順で抜剣されなかったため、
　　追加効果や称号は付与されない。
　装備条件／異世界より来訪した勇者』