滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

２０２：神域探訪、所長のイオノファラーです

「あたくしさまが、所長しょちょうのイオノファラーです」
「はあ……ニゲルです。どうも……」

「どうぞ」
　コトリ。
　置かれた器カップから、リカルルが遊あそびに来たときだけ出てくる、良いお茶おちゃの香かおりがただよってくる。

　戻もどってきたメイドさんが、お盆ぼんを片付かたづけ着席ちゃくせき。
　コッチの長椅子ながいすには、一号おにぎり、二号おれ、メイドさんの三人さんにんが。

「それではコチラに、ご記入きにゅうしてくださいね、うふふケケッ♡」
　低ひくめめの長机カウンターみたいな豪奢ごうしゃな机テーブル。
　フカフカで角張かくばった椅子いすが、長机ソレをはさむように置かれている。
　向き合って座すわるのは、御神体ごしんたいに憑依ひょういするまえの生身なまみの五百乃大角いおのはらと、ニゲル青年せいねん。

　五百乃大角いおのはらの姿すがたは透けていて、その頭あたまの中に〝浮かぶ玉たま〟が見えている。
　ヴォヴォォォォ――――ン。
　〝浮かぶ玉たま〟がジッとしてると人の形いおのはらの映像すがたが、色いろを濃くしていく。

　カシャ――『（迅）』
「プロジェクションＢＯＴボットでス。女神像めがミぞうノ半径はんケい５００メートル内なイで使用可能しようかノうナ、対面型《フェイスとゥフェイス》のチャットアバター機能きノうを有ユうしテ――――ブツンッ！」
　五百乃大角いおのはらの姿すがたが消えて、〝浮かぶ玉なんたら〟がクルリとコッチを向いた。

　カシャ――『（Θ＿Θ）』
「こらちょっと、迅雷ジンライ。制御コントロールを奪うばうんじゃないわよ――せっかく、あたくしさまが素敵すてきに決めてるんだからねっ♪」
　カシャ――『（Θ＿＜ばちーん♪）』
　〝浮かぶ玉なんたら〟が、また片目かためを閉じやがる。
　ヴォヴォォォォ――――ン。
　片目かたを閉じた人の形いおのはらが、また色いろを濃くしていく。

「ひゃぁぁ、シガミーちゃん。アレが本当・・のイオノファラーさまの、お姿すがたなんでしょ？　町まちの女神像めがみぞうにそっくり！」
　一号シガミー（？）に抱きつきながら、なりゆきを見守みまもる……おい侍女メイド、おまえさぁ。
　神々かみがみのソレ・・とか五百乃大角いおのはらのアレ・・に、慣れるのが早はえぇなあ。

　ふぉん♪
『＞順応力に関しては、シガミーも大概です』
　やかましい。

「すっごくすっごく、お綺麗きれいねぇー♪　美の女神様めがみさまなんだから、あたりまえだけど――」
「にゃやぅー？」
　メイドさんに寄りそう一号おにぎり。
　ほんと、仲なかいいな。

「――リカルルさまより、お綺麗きれいなんじゃないかしら？」

「あらメイドちゃん、わかってるじゃない♪　あなたお名前なまえはたしか……〝石狩鍋いしかりなべ〟子ちゃんだったかしるぁ？」
　居敷いしかり鍋なべだぁ？
　この給仕服メイドさんは、そこまでドッシリはしてないだろ？
　姫ひめさんや女将おかみやレイダとくらべたら……リオよりは肉付にくづきが良いけど。

　ふぉん♪
『＞石狩鍋とは、鮭野菜鍋のことです』
　なんだよ、そんならそう言えよ。
　けど……すげぇ、うまそうじゃね？

「ちょっと待って。聞き捨てならないよ、いまの言葉ことばは」
　腰こしを浮かすニゲル青年せいねん……どうした？

「なんですかっ〝イシカリナベ〟って!?　タターです。ただのタターです。しいていうならネネルド村むらのタターです。よろしくお願ねがいします」
　立ち上がり、腰こしを落とす。
　足あしの引き方かたがリオレイニアそっくりで、そうとう仕込しこまれてるのがわかる。
　歳としはニゲルや姫さんリカルルよりは、すこしだけ若わかいかもしれない。

「あら、コレはご丁寧ていねいにどうも。あたくしさまは、美の女神めがみにして猪蟹屋ししがにやの食客しょっきゃく、イオノファラーよ♪」
　椅子いすの上うえに立ち、腰こしを落とす五百乃大角いおのはら。
　透けて見える向こうがわから、ニゲルが手を上げる。

「知ってるだろうけど、ぼくはニゲル。よろしくね。けど、さっきの言葉ことばは撤回てっかいしてほしいな」
　あれ？　なんか今いまさらながら、自己紹介じこしょうかい？

「ぼくにゃ……おれはシガミーだよぜみゃにゃやーみゃにゃ」

　きゅふぉん♪
『＞【おれは、シガミーだよぜ】』
「撤回てっかいって何なんのことですか、ニゲル君くん？」
　ふたりは、顔かおなじみらしい。
「にゃにゃぁん？」
　首くびを傾かしげる一号いちごう。

「あー、もー！　アンタたちは邪魔じゃまだから、呼ばれるまで外そとで遊あそんでなさい！」
　ヴォウォォンッ、ギュォン――ぽこぽこん！
　浮かぶ玉たまが、二号おれの顔かおにぶち当たる！

「痛えなにゃぁ、わかったよみゃにゃん！」
　二号おれと一号おにぎりと、メイドさん……咫田たたって言ったか？
　追いたてられたおれたちは、ドアから飛びだした。

　きゅふぉん♪
『＞追い出されてしまいましたね』
　景色けしきだけは良いけど、あたりには何なにもない。

「じゃあみゃぁん、降りてみるかにゃにゃみゃん」
　しかたないから、岩場いわばをくだる。

「（おい、五百乃大角いおのはら）」
　ふぉん♪
『イオノ＞なあに、シガミー？
　　　　　いま面白い所なんだから、
　　　　　邪魔したら怒るからね！」
　ニゲルは気の良い奴やつなんだから、あんまり虐いじめないでやって欲しい。

「（邪魔じゃまはしない。そのかわり、二号これ脱いで良いか？」
　どーせニゲルには、中身かなみがシガミーおれだってバレてるしさ。
　御前おまえさんたちが話はなしをしてるあいだに、なんか獲物えものを狩ってみたい。

　ふぉん♪
『イオノ＞じゃ何でも良いから、お魚のおっきいのを取ってきてよ。
　　　　　帰かえってくるまでには、うまいこと辻褄つじつまあわせを考かんがえとくから」
　さっきの〝なんたら鍋なべ〟の、具にするんだろーなー。

「ふうにゃ、まあいいかみゃにゃん。お許しもみゃうぁ、出たことだしみゃやーん……」

「温泉入浴八町分にゃにゃんみゃにゃーごにゃご！」
　ぷぴぽぽーん♪
「ハッチ開放かいほうします、ハッチ開放かいほうします」
　五百乃大角いおのはらの声こえだ。

　ふぉん♪
『＞〝頭部防具：シシガニャン・へっど〟を装備から外しました。』

　ぶっつん――ビードロが消えて真っ暗くらになる。
　ぷっしゅしゅしゅぅぅぅぅっ――――ごっぱぁ♪
　おおきな頭防具かぶとが、もちあがる。
　目のまえが開ひらけ、咫田たたの金切かなぎり声ごえが聞こえてきた。

「ま、魔物まもの!?　きゃああ、シガミーちゃんっ!?　あれ？　コッチの中に居るはずじゃ!?　どー言うこと!?」
　火掻ひかき棒ぼうくらいの、小ちいさめな魔法杖まほうつえを取り出すメイドさん。
「まってて、いま助たすけるからっ！」
　光の筋まほうのしんずいがまっすぐ伸びて――――

「まてまて、まって！　これは服ふく！　魔物まものに見えるけど、ただの服ふくだから！」
　ほんとうに、一回いっかいはコレをやらないと、まともに話はなしも出来できないらしい。

「にゃみゃうー！　にゃにゃん！　みゃみゃにゃにゃう！」
　ぽっきゅむぽきゅ――――♪
「まて！　おまえは取るな！　ふりだし・・・・に戻もどっちまうから！」
　頭へっどを取ろうとする一号おにぎりを、あわてて押さえた。

ーーー
食客／居候。