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2:カブキーフェスタへの道
226:ギルド住まいの聖女(研修中)、一式防具完成
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「(呼・ん・だぁ?)」
呼んでねぇけど、良い所に!
五百乃大角、いまどこにいる!?
「(こっちこっちぃー、窓の外ぉー♪)」
じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――居た!
こっちを見つめるリオレイニアの頭の上。
ちょこんと、鎮座ましまして居られやがる。
§
「ちょっと、ニゲル! アナタのせいでレーニアに、怒られたじゃないのっ!」
「なにいってるんだよ、かってに、あ、あられもない格好で、僕の剣を奪おうとするのが悪いんじゃないか!」
まあ、あっちはリオレイニアに任せとくとして。
呪いの装備は――晴れて、四枚の布になった。
「(五百乃大角、迅雷は?)」
直したテーブルの上。ふんぞり返る美の女神にたずねる。
「(観客席でレイダと一緒に、寝こけてるわよ♪)」
うーん、下手なことしていろいろ面倒なことになるくらいなら、迅雷はそのままレイダと居てもらうか。
夜中に子供ひとりにもしておけないしな。
「じゃあ、神さんを見こんで頼みがある」
「じゃあってなによ、じゃあって! まぁ、すべてのイベントの神采配は滞りなく完了したのでぇー、超暇だけどっ♪」
テーブルの上を見わたす、御神体。
その足の下一面に、作りかけの服が敷かれている。
折角、ニゲルが用意してくれた素材だ。
袖とか裾とかスッパリ切られたローブを、上手いこと使って――
「〝無敵で最強の装備〟を、仕立てないといけないんだけどさ――手伝ってくれない?」
「なんでまた、そんな面白いことになってんの?」
「本戦出場者の装備がボロ……使いこまれてたから、直してあげようかと思って――」
「ふうん、その黄緑色のケープも使って良いの? けっこう良い生地よそれぇ――」
「黄緑……ほんとだ、いつの間にか一号みたいな色合いになってた」
広げてみると、袖のあたりが解れて――まるで短い陣羽織だ。
あの呪いの神髄が抜けたから、縫い目がほどけちまったのかもしれない。
「色が変わる? ……ぺらぺらり、あった。かなり魔術特性に優れた素材みたいよん。どこで手に入れたの?」
「いやまあ、ニゲル……さんが――身を挺して?」
「そうなの? 意味わかんないけど――じゃあ、すこし気合い入れてお手伝いしてあげよーっかしららぁねぇ♪」
浮かぶ玉にのって、テーブル上空を跳びまわること、数分。
「うーん。このネクタイとベストの組み合わせは、悪くないんだけど」
やっぱり、しゃらあしゃらしたのは、奥が深くて美の女神さまでも手に余るらしいな。
〝美の女神とは〟――言ってやるな迅雷の空耳。
「ふーん。じゃあ、いいもんね。あたくしさまには強い味方がいるもんねーだ!」
ヴッ――すたり♪
となりの説教部屋へ飛んでく、美の女神(笑)。
§
「それでしたら――こちら、お借りしても?」
黒板を持ち、手を差しだすリオ。
テーブルの端に置いた、黒筆を寄こせと言ってるのだろう。
「はい、どうぞ」
手渡してやると、彼女は黒板の上に白線をササササッと引いていく。
ぼくでさえ迅雷がいても最初は、かいもく使い方がわからなかったのに。
恐ろしいな。あのじゃじゃ馬を御する手綱、その手腕は伊達ではないのだろう。
「――こんな感じで、いかがでしょうか?」
それは、門外漢のぼくがみても、しゃらあしゃらの極致とわかる。
さすがは、女の中の女だな。
それを図面がわりにして、黒鋏で切って――必要な所は結び目ひとつ残さずに、縫いあわせ――ジンライ鋼を黒手袋で捏ねて、留め具や飾りを作っていく。
厳つい防具の修復の、何倍もの手間と時間が掛かるな。
「ふぅ、ひぃ――!」
迅雷が居ないのにも苦労したけど、ソレを差し引いても――しゃらあしゃらしたのは――実に手ごわかった。
白い甚平の留め具を、銀色のジンライ鋼でつくり、首布には細鎖と白線をあしらう。
袖のない法被の色を灰色にして、腰巻の色とそろえる。
腰巻の裏地に、迅雷式隠れ蓑を縫いあわせ、ココにも白線をあしらった。
隠れ蓑は、急所を守るだけじゃなくて――ふんわぁり……させるタメだ。
理由はわからん。わからない所は、図面のまま進める。
「あら、非常に良い手際ですね。それに非の打ち所のない仕上がり♪」
出来るそばから、服を手に取って確かめるリオ。
「採寸はちゃんと、してあるのですよね?」
伝説の職人に任せておけば、その辺は問題ない。
「はい、親方ぁ!」
最後に、腰帯に凝った作りの鋲を打ちこんで――完成!
「親方ではありません――リオさんとお呼びください♪」
仮面の下から覗く口元が、ほころんでいる。
ふう、なんとか仮面にかなったみたいで良かった。
これなら、依頼主の姫さんにも着る当人にも、気に入ってもらえそう――
「ですが――鑑定」
親方は〝魅了の神眼〟スキルに含まれた、〝中級鑑定〟が使えたはずだ。
チーン♪
上級鑑定を持つ、ぼくのそばで誰かが鑑定すると、こんな鐘の音が鳴る。
ついでなので、ぼくも上級鑑定。
チーン♪
『令嬢の服
防御力12。高貴な貴女のための上下服。
襟元やボタンの猫の意匠が愛らしい。
追加効果/なし』
普通の服じゃなくなってる。
『貴婦人の靴
防御力5。細身の革靴。
追加効果/なし』
こっちもだ。
『社交界のベルト【夜】
防御力3。夜会に最適な高級ベルト。
追加効果/背筋が伸びる』
効果の意味は、わからないけど、【銘】まで入ってる。
「これは、すこし――かなり、いただけませんねぇ」
あれ?
なかなかよくできたと思ったのに、なんか不評だった。
「「あれ? コレじゃダメだった?」」
五百乃大角と、声がかさなる。
「いえ、そういうことではなくてですね――あっ、コラッお嬢様!」
お説教は、まだ終わっておりませんよっ――――!
ドアの向こうから、こっそりとコチラを盗み見ていたリカルルさまが逃げていく。
追うリオレイニア。
「行っちゃったわねぇー、どうするの? コレじゃマズいみたいよ?」
うーんと、あと出来ることっていったら、裏地にビッシリと筆書きして強化するくらいしか思いつかない。
机の上の黒筆を取り――さらりっ。
普通じゃなくなった装備に一筆――【朝】、【昼】、【夜】って書いてみる。
意味はない。
ただ、腰紐に【夜】って銘が付いてたから、それにならっただけだ。
ルコルなら狐。ニャミカなら猫。
そういうのが、あの女の人に有れば良かったけど無かったから。
まさか、女人って書くわけにもいかないし。
「へぇー、なんだかコスプレ衣装みたいな、立派なのが出来たねぇー♪」
開放されたのか、ニゲルが寄ってきた。
「けど、これでもリオレ……リオさんには渋い顔をされたから――」
「もう一つ、パンチが欲しいわねー♪」
衣装の上や中を転がりまくってた、御神体が顔をだす。
「あ、イオノファラー所長、こんちわッス♪」
「はい、ちわッス♪」
イェーイ♪
陽気に手を振りあうほどに、仲良くなっている。
もともと近い時代の生まれらしいから、話も合うのかもしれない。
気の知れない世界で、気の置けない友達ができるのは良いことだ。
ついでにこのまま〝女神の料理番〟も分担してくれたら、最高なんだけど……。
「そっか、オーダーは〝無敵で最強〟なんだっけか。うーん……じゃあこのカワイイ色のをマントみたくして――シリーズ防具にでもしたら、強化されたりしない?」
あー、短い陣羽織な。
切った縁を太糸でしっかり縫い合わせて、簡単な括り紐をつけたけど――コレには文字を入れてなかった。
「シリーズ防具……一式装備のぉ、作り方はねぇー……ぺらぺら、あれ? 載ってない?」
「それ、何を見てるんだい?」
なにかを必死にめくる仕草を見た青年が、興味を持つ。
「あれは、虎の巻らしいよ」
告げ口をしてやる。
「えぇー、ずるくなぁいー?」
だろう?
もう彼は、日の本軍団の一員だからな。
「なによ! ニゲルはノラクエ8とか38とか67とかぉー、ヒント無しでクリアできるって言うのっ!?」
「えぇー、なにそのナンバリング!? まだ11が出たばっかりだよ?」
「えっ!? あ、そっか! その辺のお話ぃ――全然してなかったっけ?」
わからん。
なんか話が弾んでるならソレはソレで。
じゃあ、三つの【朝】【昼】【番】装備を、この陣羽織でまとめてみる。
――さらり♪
【日夜】
ケープの背中。首うしろに、そんな言葉を入れる。
ポォウ――♪
間違いなく強化はされたけど、そのあとは何もおこらない。
出来た服を重ねて――〝一式防具になれ〟と念じてみる。
――――ぽこん♪
スキルによる画面が出た。
『一式装備へのランクアップをしますか?
はい/いいえ』
何か出たから、『はい』を指でおす。
――――ぽこん♪
『SPを1消費しますが、続行しますか?
はい/いいえ』
SPを使うのか。
「(おい五百乃大角、SPを使うみたいなんだけど?)」
コチラを見上げた丸頭が、かすかに傾く。
「(1ポイントだけ、だけど)」
丸頭が、こくりと頷いた。
押してみる――ポンッ♪
ピッカァァァッ!
目映い輝き。
テッテレーッ♪
騒々しい音。
――――ぽこん♪
『シリーズ防具が完成しました』
「できた……みたいだよ」
さーて、どうなったかなー♪
――――ぽこん♪
『日夜シリーズ一式【終日】
全防御力日中336~夜半784(+229~+677)。
全魔法攻撃力日中342~夜半81(+143~-118)。
時間帯によって追加効果が変わる、
摩訶不思議な魔術師向け防具一式。
追加効果/日中INT+30/AGL+30
条件効果/日没中にHPが一割を切ると女神の加護により、
STR+30/ATK+30/VIT+30
装備条件/INT25。成人女性または、成人前の子供』
上級鑑定だと、こまかい数字まで出るから、こうして長くなりがちだけど――
「ん? んぅー?」
何だろこの、ややこしいの。
当然、ぼくの首も傾く。
その傾いた首の、目の前。
ニゲルが黒手袋で鑑定結果をひっつかんで、黒板に押し当てる。
画面をみたリオレイニアが、なんでか床に崩れ落ちた。
ぼくは、女神やニゲルと顔を見合わせる。
「ひょっとして……ひそひそ……コレでも足りなかった?」
「きっと……ひそひそ……そうだよ」
「そうわよ……ひそひそ……どうするぅ?」
ーーー
陣羽織/甲冑や具足の上から着る羽織。煌びやかな装飾あり。
日夜/ひるとよる。四六時中。
呼んでねぇけど、良い所に!
五百乃大角、いまどこにいる!?
「(こっちこっちぃー、窓の外ぉー♪)」
じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――居た!
こっちを見つめるリオレイニアの頭の上。
ちょこんと、鎮座ましまして居られやがる。
§
「ちょっと、ニゲル! アナタのせいでレーニアに、怒られたじゃないのっ!」
「なにいってるんだよ、かってに、あ、あられもない格好で、僕の剣を奪おうとするのが悪いんじゃないか!」
まあ、あっちはリオレイニアに任せとくとして。
呪いの装備は――晴れて、四枚の布になった。
「(五百乃大角、迅雷は?)」
直したテーブルの上。ふんぞり返る美の女神にたずねる。
「(観客席でレイダと一緒に、寝こけてるわよ♪)」
うーん、下手なことしていろいろ面倒なことになるくらいなら、迅雷はそのままレイダと居てもらうか。
夜中に子供ひとりにもしておけないしな。
「じゃあ、神さんを見こんで頼みがある」
「じゃあってなによ、じゃあって! まぁ、すべてのイベントの神采配は滞りなく完了したのでぇー、超暇だけどっ♪」
テーブルの上を見わたす、御神体。
その足の下一面に、作りかけの服が敷かれている。
折角、ニゲルが用意してくれた素材だ。
袖とか裾とかスッパリ切られたローブを、上手いこと使って――
「〝無敵で最強の装備〟を、仕立てないといけないんだけどさ――手伝ってくれない?」
「なんでまた、そんな面白いことになってんの?」
「本戦出場者の装備がボロ……使いこまれてたから、直してあげようかと思って――」
「ふうん、その黄緑色のケープも使って良いの? けっこう良い生地よそれぇ――」
「黄緑……ほんとだ、いつの間にか一号みたいな色合いになってた」
広げてみると、袖のあたりが解れて――まるで短い陣羽織だ。
あの呪いの神髄が抜けたから、縫い目がほどけちまったのかもしれない。
「色が変わる? ……ぺらぺらり、あった。かなり魔術特性に優れた素材みたいよん。どこで手に入れたの?」
「いやまあ、ニゲル……さんが――身を挺して?」
「そうなの? 意味わかんないけど――じゃあ、すこし気合い入れてお手伝いしてあげよーっかしららぁねぇ♪」
浮かぶ玉にのって、テーブル上空を跳びまわること、数分。
「うーん。このネクタイとベストの組み合わせは、悪くないんだけど」
やっぱり、しゃらあしゃらしたのは、奥が深くて美の女神さまでも手に余るらしいな。
〝美の女神とは〟――言ってやるな迅雷の空耳。
「ふーん。じゃあ、いいもんね。あたくしさまには強い味方がいるもんねーだ!」
ヴッ――すたり♪
となりの説教部屋へ飛んでく、美の女神(笑)。
§
「それでしたら――こちら、お借りしても?」
黒板を持ち、手を差しだすリオ。
テーブルの端に置いた、黒筆を寄こせと言ってるのだろう。
「はい、どうぞ」
手渡してやると、彼女は黒板の上に白線をササササッと引いていく。
ぼくでさえ迅雷がいても最初は、かいもく使い方がわからなかったのに。
恐ろしいな。あのじゃじゃ馬を御する手綱、その手腕は伊達ではないのだろう。
「――こんな感じで、いかがでしょうか?」
それは、門外漢のぼくがみても、しゃらあしゃらの極致とわかる。
さすがは、女の中の女だな。
それを図面がわりにして、黒鋏で切って――必要な所は結び目ひとつ残さずに、縫いあわせ――ジンライ鋼を黒手袋で捏ねて、留め具や飾りを作っていく。
厳つい防具の修復の、何倍もの手間と時間が掛かるな。
「ふぅ、ひぃ――!」
迅雷が居ないのにも苦労したけど、ソレを差し引いても――しゃらあしゃらしたのは――実に手ごわかった。
白い甚平の留め具を、銀色のジンライ鋼でつくり、首布には細鎖と白線をあしらう。
袖のない法被の色を灰色にして、腰巻の色とそろえる。
腰巻の裏地に、迅雷式隠れ蓑を縫いあわせ、ココにも白線をあしらった。
隠れ蓑は、急所を守るだけじゃなくて――ふんわぁり……させるタメだ。
理由はわからん。わからない所は、図面のまま進める。
「あら、非常に良い手際ですね。それに非の打ち所のない仕上がり♪」
出来るそばから、服を手に取って確かめるリオ。
「採寸はちゃんと、してあるのですよね?」
伝説の職人に任せておけば、その辺は問題ない。
「はい、親方ぁ!」
最後に、腰帯に凝った作りの鋲を打ちこんで――完成!
「親方ではありません――リオさんとお呼びください♪」
仮面の下から覗く口元が、ほころんでいる。
ふう、なんとか仮面にかなったみたいで良かった。
これなら、依頼主の姫さんにも着る当人にも、気に入ってもらえそう――
「ですが――鑑定」
親方は〝魅了の神眼〟スキルに含まれた、〝中級鑑定〟が使えたはずだ。
チーン♪
上級鑑定を持つ、ぼくのそばで誰かが鑑定すると、こんな鐘の音が鳴る。
ついでなので、ぼくも上級鑑定。
チーン♪
『令嬢の服
防御力12。高貴な貴女のための上下服。
襟元やボタンの猫の意匠が愛らしい。
追加効果/なし』
普通の服じゃなくなってる。
『貴婦人の靴
防御力5。細身の革靴。
追加効果/なし』
こっちもだ。
『社交界のベルト【夜】
防御力3。夜会に最適な高級ベルト。
追加効果/背筋が伸びる』
効果の意味は、わからないけど、【銘】まで入ってる。
「これは、すこし――かなり、いただけませんねぇ」
あれ?
なかなかよくできたと思ったのに、なんか不評だった。
「「あれ? コレじゃダメだった?」」
五百乃大角と、声がかさなる。
「いえ、そういうことではなくてですね――あっ、コラッお嬢様!」
お説教は、まだ終わっておりませんよっ――――!
ドアの向こうから、こっそりとコチラを盗み見ていたリカルルさまが逃げていく。
追うリオレイニア。
「行っちゃったわねぇー、どうするの? コレじゃマズいみたいよ?」
うーんと、あと出来ることっていったら、裏地にビッシリと筆書きして強化するくらいしか思いつかない。
机の上の黒筆を取り――さらりっ。
普通じゃなくなった装備に一筆――【朝】、【昼】、【夜】って書いてみる。
意味はない。
ただ、腰紐に【夜】って銘が付いてたから、それにならっただけだ。
ルコルなら狐。ニャミカなら猫。
そういうのが、あの女の人に有れば良かったけど無かったから。
まさか、女人って書くわけにもいかないし。
「へぇー、なんだかコスプレ衣装みたいな、立派なのが出来たねぇー♪」
開放されたのか、ニゲルが寄ってきた。
「けど、これでもリオレ……リオさんには渋い顔をされたから――」
「もう一つ、パンチが欲しいわねー♪」
衣装の上や中を転がりまくってた、御神体が顔をだす。
「あ、イオノファラー所長、こんちわッス♪」
「はい、ちわッス♪」
イェーイ♪
陽気に手を振りあうほどに、仲良くなっている。
もともと近い時代の生まれらしいから、話も合うのかもしれない。
気の知れない世界で、気の置けない友達ができるのは良いことだ。
ついでにこのまま〝女神の料理番〟も分担してくれたら、最高なんだけど……。
「そっか、オーダーは〝無敵で最強〟なんだっけか。うーん……じゃあこのカワイイ色のをマントみたくして――シリーズ防具にでもしたら、強化されたりしない?」
あー、短い陣羽織な。
切った縁を太糸でしっかり縫い合わせて、簡単な括り紐をつけたけど――コレには文字を入れてなかった。
「シリーズ防具……一式装備のぉ、作り方はねぇー……ぺらぺら、あれ? 載ってない?」
「それ、何を見てるんだい?」
なにかを必死にめくる仕草を見た青年が、興味を持つ。
「あれは、虎の巻らしいよ」
告げ口をしてやる。
「えぇー、ずるくなぁいー?」
だろう?
もう彼は、日の本軍団の一員だからな。
「なによ! ニゲルはノラクエ8とか38とか67とかぉー、ヒント無しでクリアできるって言うのっ!?」
「えぇー、なにそのナンバリング!? まだ11が出たばっかりだよ?」
「えっ!? あ、そっか! その辺のお話ぃ――全然してなかったっけ?」
わからん。
なんか話が弾んでるならソレはソレで。
じゃあ、三つの【朝】【昼】【番】装備を、この陣羽織でまとめてみる。
――さらり♪
【日夜】
ケープの背中。首うしろに、そんな言葉を入れる。
ポォウ――♪
間違いなく強化はされたけど、そのあとは何もおこらない。
出来た服を重ねて――〝一式防具になれ〟と念じてみる。
――――ぽこん♪
スキルによる画面が出た。
『一式装備へのランクアップをしますか?
はい/いいえ』
何か出たから、『はい』を指でおす。
――――ぽこん♪
『SPを1消費しますが、続行しますか?
はい/いいえ』
SPを使うのか。
「(おい五百乃大角、SPを使うみたいなんだけど?)」
コチラを見上げた丸頭が、かすかに傾く。
「(1ポイントだけ、だけど)」
丸頭が、こくりと頷いた。
押してみる――ポンッ♪
ピッカァァァッ!
目映い輝き。
テッテレーッ♪
騒々しい音。
――――ぽこん♪
『シリーズ防具が完成しました』
「できた……みたいだよ」
さーて、どうなったかなー♪
――――ぽこん♪
『日夜シリーズ一式【終日】
全防御力日中336~夜半784(+229~+677)。
全魔法攻撃力日中342~夜半81(+143~-118)。
時間帯によって追加効果が変わる、
摩訶不思議な魔術師向け防具一式。
追加効果/日中INT+30/AGL+30
条件効果/日没中にHPが一割を切ると女神の加護により、
STR+30/ATK+30/VIT+30
装備条件/INT25。成人女性または、成人前の子供』
上級鑑定だと、こまかい数字まで出るから、こうして長くなりがちだけど――
「ん? んぅー?」
何だろこの、ややこしいの。
当然、ぼくの首も傾く。
その傾いた首の、目の前。
ニゲルが黒手袋で鑑定結果をひっつかんで、黒板に押し当てる。
画面をみたリオレイニアが、なんでか床に崩れ落ちた。
ぼくは、女神やニゲルと顔を見合わせる。
「ひょっとして……ひそひそ……コレでも足りなかった?」
「きっと……ひそひそ……そうだよ」
「そうわよ……ひそひそ……どうするぅ?」
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といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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